2021/03/20 のログ
ご案内:「とある小さな農村」にボルフライさんが現れました。
ボルフライ > ここは王国領内にある農村。
肥沃な地形に恵まれたこの小さな村は農業が盛んであり、ここで採れた野菜やフルーツは王都にも出荷しているほど。
そんな豊かで平穏そのものであった村からは、遠目からでもわかるほど黒煙が上がり、悲鳴が聞こえている。

「だからあれほど『お願い』したんじゃねぇか、なぁ村長さんよぉ?」

村の中央は小さな交易所となっており、そこには屋台がいくつか並び、村で採れた作物が良い値段で売られている。
そんな屋台からリンゴを一つ取り、がぶりとかじり美味いとのたまく大男。
ゲーティア傭兵団の首領ボルフライがいた。
傍らには今目の前に広がる村の惨状を無念そうに見つめ膝をつく初老の男性…村長と呼ばれた男だ。

平和だったこの村は傭兵団の標的となり、村人たちは追われ、捕われ、犯され、嬲られている…だが死体となった者はいない。
この蛮族どもはあくまでもマンハンター、不必要な殺しはしない主義だ。
だが平穏だった村が悪党に屠られていくことに変わりはない。
蛮族どもは慣れた様子でまずは若者や子供を捕らえていく…奴隷として売るためだ。
もちろんその過程で女が犯されるなんてことも当然あって、悲痛な悲鳴や泣き声がそこら中に聞こえる。
老人どもは家から追い立てられて、金目のものを根こそぎ奪い取られていく、あとは知ったことではない。

傭兵団の首領たる男はそんな村人たちの悲鳴を煩わしそうに聞きながらリンゴを食べ尽くす。
蛮族たちは最初村長の元に『平穏に』訪れて、こう提案したそうだ。
『村の若者の男女全員を提供すれば、大人しく村から去る』と…
傭兵団を見くびったか村長はその提案を断り、それから数分もしないうちにこの有様だ。
雇っていた用心棒などが真っ先にコテンパンにされた以上、抵抗できる者などいるはずもなく、村はただ蹂躙されていくのみ。

ご案内:「とある小さな農村」にイルルゥさんが現れました。
イルルゥ > ――傭兵団の長に、奇妙な伝令が届くだろう。
村の一角に送った者たちが、苦戦していると。
様子を聞けば、たまたまこの農村に来ていた冒険者らしき者が抵抗しているとのこと。
すばしっこく、小柄である癖に強いこと。
顔は見えないが、声と手足の細さからどうやら女であるとのこと。

団長自ら様子を見るのか、あるいは部下を向かわせるのかは判断次第だが。
確かにその一角では傭兵団が撃退されていく。
滞在していたところが村の外れであったため、抵抗が時間差で始まったようだ。


「――――――――!!」

様子を見に来る部下、あるいは団長が目にするのは。
傭兵団の筋骨隆々の者たちをすり抜け、軽く打撃を加えて村を駆けるフード付きの小さな影。

不思議な事に、軽く当てられただけにも関わらず、やはり報告通り…大柄な傭兵が膝を付いていく。
魔力に精通している首領であれば。
打撃のインパクトの瞬間、打撃の軽さとはそぐわない強烈な魔力が流し込まれ…傭兵の骨や肉が破壊されていることがわかるだろうか。
更に、そこから…抵抗者の種族もわかるかもしれない。

だが数に圧倒的に差があるため、この状況を逆転はできない。
しかし、時間稼ぎにはなってしまっているだろう。
黒煙は上がっており、この抵抗に乗じて逃げ出す村人も居る。
耐え続ければ、討伐依頼を受けた冒険者などが来る可能性もある。

「―――――はッ!!」

それを信じ、村の中で大立ち回りをする冒険者。
また一人、腹に打撃を受けた傭兵が血を吐き、倒れ伏す。
この状況を…どう対処するかは首領の判断次第となるが。止めなければそのまま暴れ続ける事は確実だろう。

ボルフライ > 「…そうか」

報告を受けたボルフライの発した言葉はたったそれだけ。
元より手下の者たちなど信頼もしていなければ期待もしていない。
知性の低さだけが取り柄な者どもの癖に必死に事細かに相手の詳細について伝えてきているようだが、聞く必要などない。
雑魚が何人やられようとも構いやしないが、奴隷を連れ帰る人手が減るのは望ましくなく。
ボルフライは自ら、その女とやらが暴れている一角へゆっくりと歩み始める。

こういう事態は珍しくない。
奇妙な正義感やら義務感やらを持ったお人よしが仕事を増やしてくれる。
結果としては己が出てケジメを付けさせねばなるまい。
最も、暇つぶしとしてはちょうどよく。

さて、報告にあったところに来てみればちょうど派手にやり合っている現場だ。
と言ってもこちらの雑魚どもが一方的に屠られているだけだが。
だがあの抵抗者も感じているだろう。
一歩、また一歩とこの傭兵団の主が近づいてくるたびに、ヒトならざる存在が近づいてくるという奇妙な感覚に…空気が重くなる。
勘の鈍い者でもなければ、その微塵も隠す気の無い膨大な魔力と存在感だけで力量差が歴然であると…
だがこの大男に捉えられた時点で、逃げるという選択肢は無くなったも同然。

「ふっ」

大男は鼻で笑ったように息を吐くと同時に、ただ遠方にいる抵抗者に向かって拳を突き出す所作を行う。
ただそれだけ、たったそれだけの動きなのに、そこから発せられる膨大な魔力は物理的な衝撃波を形成してしまう。
小さな抵抗者を狙ったそれは家々すら巻き込み吹き飛ばすどころか、己の手下たちまでも容赦なく巻き込み、唐突な遠距離攻撃による奇襲をせしめる。

イルルゥ > 「―――――――――ッ!!」

丁度、雑魚をまた一人倒したところだった。
ただし、キリがない。
どれだけ殴っても殴っても数が減らない。
その途中―――

「……は……?」

ぶるり、と勝手に身体が震えた。
何か、ただの略奪者たちにしては明らかにおかしい気配が近寄ってくる。
そんなはずはないのに、手足が重くなり、息苦しくなる感覚。
その大きすぎる気配を探って、辺りを見回した瞬間―――……!

「っっっ!!!」

突如、暴風のような魔力の渦が衝撃波となって襲い掛かる。
村が崩壊し、辺りの何もかもを巻き込んで…当然、少女も吹き飛ばされる。
魔力自体は感知できていたものの、あまりにも範囲が広すぎる上に、強力すぎた。
ごろんごろんと地面を転がり、うつ伏せに倒れ。

「―――………、は、く……っ、……な、にが…」

余りの衝撃にすぐ立つこともできず。
手と足を震わせながら…四つん這いの状態で状況を把握しようとするが。
その間は全くの無防備。骨や肉は傷ついていないものの、回復には時間を要する。