2021/01/04 のログ
ご案内:「王城の一角」にシャノンさんが現れました。
シャノン > 定期的に行われる聴取の帰り道。
ふと、何時もとは異なる景色に気付く。
明らかに来た道とは違う渡り廊下に視線を移ろわせ、其れから目の前を進む兵士の後ろ姿を眺めた。

「――――………。」

そう言う先導の兵士も、見かけた事が無い。
己の移送を行う者は大抵同じ面子。
たまたまだ、と言われてしまえば其れ迄ではあるが―――。

「―――……行きとは違う道のようだが。」

静かな声音で兵士へと声を掛けた。

ご案内:「王城の一角」にヨアヒムさんが現れました。
ヨアヒム > 「心配無用。この道で正しい」

 おっとりとした声は、彼女を先導する兵士達の前方からだった。恰幅の良い、声音通りのいかにも穏やかそうな男が通路の角から現れ、兵士達に目配せする。

「久しぶりだな、シャノンさん。王都での暮らしぶりはどうかね? もう、慣れて貰っていると良いのだが」

 かつての力を持っていた魔族であれば、片手で容易く殺せるほどの、ひ弱な中年。それが今、笑みを浮かべて薄暗く冷たい廊下に佇んでいる。

「私を……覚えているかね?」

 笑みを絶やさぬ男が問いかける。初めて会った時に何が起きたかを考えれば、忘れられる方が難しいだろう。

シャノン > 前を行く兵士の向こう、聞き覚えのある声が耳に届く。
足を止め、深くお辞儀をした後、其の道を開ける様横へと控える兵士から、現れた男へと視線を移し。

「ご健勝そうでなりより。不足なく過ごさせて頂いている。」

覚えているか、との言葉に双眸を薄めた後、外套の下で片手を胸元へと宛て軽い会釈を一つ。
短い挨拶を返しては姿勢を正した後、緩、と頭を傾げ。

「所で、この道で正しい――とは如何言う事だろうか。」

ヨアヒム > 「それは結構なことだね。捕虜の扱いは……特に貴女のような捕虜の扱いは、間違いがあってはならん」

 左右の壁に寄る兵士達の間を抜けた男は、両手を後ろで組んで目礼した。そして相手の問いかけにひとつ、頷いた。

「聴取の後だということは、承知している。しかし通り一遍の取調べでは見えないこともあるだろう。私には、シャノンさんの保護者としての責任が……すなわち、私独自の取調べを行う責任があるのだ。お分かりいただけると思うが」

 にこやかな中年男は、そう言って金刺繍がなされた外套を纏う魔族を見つめた。背の低い男の視線は、主に腰のあたりに向けられていた。

シャノン > 相手の言う所の間違い、は今の所起きてはいない。
微かな吐息を逃がしながら、続けられた言葉には傾いだ頭を正しつつ肩を竦め。

「私が差し出せる情報など、これ以上無いのだが。」

実際、率いていた隊以外の事で己が知り得る情報等、微々たるもの。
それも、毎回同じ内容を詳らかに告げるだけで、監視下に置かれている己に、目新しい情報など生み出せはしない。

「―――それでも構わないのであれば、まあ、私の立場で拒否も何も無いよ。」

ヨアヒム > 「いやいや、そんなことはない。貴女が差し出せるものの中には……私を、とても満足させるものが含まれておる。意味する所は分かるとは思うが」

 面白いものを見つけたかのような恰幅の良い中年男が、肩を揺すって笑う。そして相手の答えを聞けば、もう一度、大きく頷いた。

「話が早くて助かる。私も、あれこれ言ってシャノンさんの気分を害したくないからね。……それでは、此方へ」

 目で合図した中年男は兵士を伴って王城の廊下を歩く。しばらくして着いたのは、とある部屋の前だった。同じような扉が整然と並ぶその場所は、ベッドや簡単な厨房がついた、いわば使用人の休憩室のような場所。

シャノン > 男の浮かべる表情に反する様、浅く眉間に刻まれる皺。
口にはしないものの、愉快な気分になれる話ではない。
然し、己自身が告げた通り、拒否を出来る立場でもないのも事実だ。

促す言葉と共、兵士を伴い進み始めるのに些か重い足取りで其の後を追って行けば、やがて辿り着いた一室。
部屋の中へと入れば、己の手錠の鍵を兵士が男へと差し出すのが横目に見えた。

ヨアヒム > 「有難う。……さて」

 扉が閉まるのを見た中年男は、手錠の鍵を掌に乗せて女性魔族の顔を見上げる。2人きりになった狭い部屋の中、喉を鳴らして低く笑った。

「そう固くならずに。シャノンさんも、結局は愉しめたろう?」

 言いながら、中年男は手にした鍵を魔族の両手を戒める枷へと差し込み、拘束を解いた。乾いた音を立てて外れるそれを手に取った男は、近くのテーブルにそれを置く。

「では……まず取り調べの為に、着ているものを脱いで頂こうかな」

 少し顎を上げた男は笑みを深め、当然の権利であるかのごとく要求した。

シャノン > 「私の意志ではなかったみたいだが。」

声を荒げる事は無いが、不快だと感じている、と言う事は相手に伝わるだろう、険のある声音。
外された枷が音を発てて床へと落下すれば、手首に残る感触を誤魔化す様に其処を軽く撫で擦り――次いだ言に、眇めた眼の儘、相手へと視線を投げた。
数秒、鋭さの増した眼差しで男を睨め付けていたが、軈て男の言う通り、身に纏う衣服を脱ぎ始める。
その後は投げられる言葉に然したる抵抗もせず、男の言葉に従う事になるのだろう―――。

ご案内:「王城の一角」からシャノンさんが去りました。
ご案内:「王城の一角」からヨアヒムさんが去りました。