2020/11/08 のログ
リフェード >  
「見ただけでわかるのね。安心して、魔族じゃないから。
 どちらかと言えば、世捨て人みたいなものよ。此の辺りで、一人で暮らしてるの。」

見た目は人間に相違ない。
実際、人間の血のが濃いので、人と言われる事も多かった。
今やこの国はまれびとの国と言われるような場所だ。
それこそ、多種多様な人種がいる。
自分のような混ざりものも珍しくないし、きっと彼は勘が良いのだろう。
一種の、"獣の勘"とも言うべきか。少しばかり、感心して頷いた。

「ああ……そんなに?確かに結構臭うけど……ハッキリ言われると少し傷つくわ。」

憂いを帯びた声音とは裏腹に、リフェードの表情の変化は乏しい。
言われるともう一度すんすん、と臭いをかいでみた。
……錆臭さと生臭さのミックス。此れは宜しくない。うーん。

「あら、ごめんなさい。私は勝手に狩っているものだから、獲物を先にとっちゃった。
 結果的に、暫くは平和になると思う。手柄は別に、貴方に上げるから、それで手打ちにしましょう?」

依頼では無く、其処に魔が在れば現れる。
己の宿業だ。だからこそ、手柄などに興味は無い。
譲ると言った最中、ストレートな物言いに流石のリフェードも眉を顰めた。

「……それ、送り狼?私、娼婦ではないし、安くもないわ。」

じとーっ。

黒須 > 「悪いな?俺はれでぃに対しての作法を習ってねぇんだよ…。」

(生まれも育ちも貧民地区であったため、女性の使い方は夜の事以外はあまり知らなかった。
わざわざ遠回しに言うのも面倒であったためはっきりと言ったのだった。)

「別にいらねぇよ。俺が相手していない獲物を貰ったところで、なんも気持ちも晴れねぇよ。」

(別に魔族を相手できるほどの力があるのであるなら、何も気にすることはなかった。
だが、結果を貰う事とは話が別だ。
狩った人間が獲物を得られる。それが常識なのだから。)

「…俺が狼だからと言って、皮肉ってるのか?
確かに、俺は女を抱きまくっている野郎だが、そういった目的でいったわけじゃねぇ。
臭いが残っちまうと、また魔族がくるかもしれねぇし、それに…いつやられるか分からねぇ。
一瞬でわかったのに、あんたが次息をしてねぇと考えると…面倒だろ?」

(可能性のある相手を見つけたのに放っておくことができずに出した提案だった。
眉を顰めてこちらを見る女に対し、小さく鼻でため息を吐き、髪を掻く。)

「ま、あんたがそんな狼野郎に抱かれてもいいって言うんだったら、話は別だがな?」

(軽くニヤリと笑う少し挑発口調で話した。)

リフェード >  
「気にしてないから平気よ。それに、貴方がガサツなのは初対面でもちょっとわかるわ。」

気だるそうな雰囲気に、何処となく野獣めいた雰囲気。
野盗とは違うが、初対面でも隠す事ない雰囲気で何となくわかる。
窘めているわけではない。淡々と述べている。それに、リフェードは嫌いでは無かった。

「狼だったのね、貴方。帽子でよくわからなかったけど……。
 確かに、此の辺りじゃ、耳が付いてるだけで"面倒"だものね。
 結構滅茶苦茶な事は言ってるけど、"一本筋"が通ってる。そう言う人は好きよ。」

その証拠に、彼は悪人では無いだろう。
物臭な言い方では在るが、何処となく筋は通そうとする姿勢は好ましい。
荒くれ者とはよくぞ言ったものだ。ほんの少し、口元が緩んだ。

「抱けるものならね。下手な手の出し方したら、指落とすよ?」

売り言葉に買い言葉。ゆったりとした足取りで、相手へと近寄った。

「それじゃぁ、エスコートお願いできる?」

黒須 > 「そうかい。ま、直せって言われようとも、直す気はないがな?」

(ガサツだのなんだのは何度も言われたことだ。
しかし、それが自分の生き方であるために、一々気にするなんてことはしていなかった。)

「ああ、まあな?
ミレー族だのなんだのと世の中うるせぇからよ?こうでもしないと面倒だろ。
…どうも。」

(相手も事情は詳しくわかっているようだ。
この耳を見られてはまた騒がしくなる。
いくら師団の人間であろうとも、世間は自分をそのように許すことはないだろう。
最後の一言になんともむず痒い気持ちとなった。
口をへの字にし、ポーカーフェイスな表情は崩さずに髪を掻く。)

「ったく、わかってるさ…。
それで…家はこっちか…。」

(エスコートしてくれと言えばそのまま、手を優しく包むように繋ぐ。
今まで言葉に気を付けず、ガサツな様子を露わにしたのにも関わらずにこういったモノだけは優しく対応していた。
歩幅を合わせる様にすれば、犬らしく鼻を鳴らして道を辿った。
遠くの方からこのシスターと同じ匂いがする。
恐らく、そこが住んでいる家だろうと読み、そちらの方へ向かった。)

リフェード >  
「それが貴方の個性なら、それでいいと思う。
 面倒事がイヤなら、少しは考える必要はあるけどね?
 自分から面倒の種を撒いてぼやいても、世話ないでしょ。」

ちょっとした摩擦で衝突する荒くれ者なんて、此の国にごまんといる。
リフェードはそれさえ、否定はしない。
彼のそれも、個性だ。ゆるりと、素直に認めよう。
但し、母親のように窘める言葉は添えておく。
言っておくだけで、意外と効いたりするものだ。

「帽子をつけて、面倒を回避できるんだもの。
 貴方は、きっと思うより野蛮じゃないと信じてるわ。」

後はほんの少し、柔軟になるだけ。
世間のようだ偏見を持つことは無く、平等に物見をしている。
繋がれた手は、ほんのり冷たく、白魚のように細い指先で、柔らかな指先だ。
思うよりは紳士的なエスコートを拒否する事は無く、彼の歩調に合わせて歩いていく。
リフェードの匂いを辿っていけば、街道外れにひっそり立つ教会が見えるだろう。
白い外壁に黒い屋根。何処にでもあるような教会だ。

「当たり。あれが私の教会。さぁ、こっちへ……。」

今度は此方が誘導する番。
ゆるりとした足取りで教会へと向かえば、慣れた手つきで扉を開く。
長椅子が並び、荘厳としたステンドグラスから月光が差し込む大聖堂。
普段手入れをしているのは、埃が舞っている様子はない。

「奥の方に、私の部屋があるわ。少しシャワーを浴びてくるから、待っててくれる?
 飲み物くらい、もてなす余裕位はあるわよ?……一緒に入りたいなら別だけど。」

なんて、少しからかってみせた。

黒須 > 「撒いたなら撒いたで回収するだけだ。面倒事を起こさないように考えるのでさえも面倒だからな。
一先ず行動して、そうなったらそれらしく終わらせるだけだ。」

(相手からの助言を聞くが、根っこから帰る気が無い。
何かが起こる前に対策を立てるのは御免だと考えていた。
だが、その言葉はどこか隅っこに入れて置いた。)

「…そうかい。ま、薄汚れた生涯を置くてるんだ。
今更、どうこう言っても俺は変わらねぇがな?」

(冷たく細い指。
力を入れれば折ってしまいそうな体をしていると指先で感じた。
その結果なのか、添える程度に力を変えてエスコートしたのだった。
しばらくして見つかった教会。
案内されて中に入れば、かなり綺麗な内装をしており、ステンドグラスが綺麗に輝いていた。)

「…ま、その程度なら受け取るな。だが、風呂までの同行はしねぇ。
それで、首を切られたら終わりだ。ま、俺ならそんな目には合わないがな?」

(並外れた勘と感覚があり、入った瞬間に罠を見つけれるだろうと思い、相手のからかいの誘いを舌を出して軽く噛むようにしイ―っと言った。
その後、また大聖堂の中央、祭壇と言うのだろうか?その場所にゆっくりと近づく。
帽子を脱げば狼らしい二つの耳が生え、腰からも狐のような尻尾が露わになる。
そして、体が一度白い炎のようなオーラに包まれると、肉体、骨格が変わる音を響かせて狼の姿へと変えた。
獣人の姿となり、体格もかなり大きく、先ほどよりも筋骨隆々と言った体だった。
そして、到着すると先ほどのシスターの様に膝を突き、祈りを捧げるような体勢をした。)

リフェード >  
「結構誤解されやすいって言われない?貴方。
 貴方が満足しているのならいいけどね。」

当人が良しとするのであれば、余計な口出しこそすまい。
薄汚れた生涯。此の世界において、どれ程綺麗な人間がいるのだろうか。
煤けているというのであれば、きっとそこに身分は無い。
誰しも穢れを取り繕って生きている。精々、穢れを知らないのは子ども位かもしれない。

相手の反応にクスリ、と笑みを浮かべて振り返る事無く一度シャワールームへと向かった。
服を脱ぎすて、一糸まとわぬ姿となり、その全身に温水を受ける。
暖かな感触が心地よく、一時に纏っていた穢れが何もかも溶けていくようだった。
暫し温水と泡と戯れ、髪を乾かせば大聖堂へと戻ってきた。
此方は洗濯済みのシスター服。シスターなんだから、同じ服位幾つも持っているとも。

「…………」

人狼が其処にはいた、
逞しい肉体とは裏腹に敬虔な雰囲気を醸し出していた。
主へと捧げる祈りの姿勢。邪魔する事は無く、静観していた。

「……綺麗ね。」

その在り方について、思わず独り言ちた。

黒須 > 「・・・。」

(シャワーの音がするも今は祈りをするのに集中し、その音自分の中でかき消していた。
しばらくして、帰って来たシスターの声を聴き、それを合図に目を開けて横目で見る。
人形の時は灰色の瞳をしていたが、今は狼らしい大きく黄色い、まるで絵に描いた月のような色をした瞳をしていた。
ゆっくりと立てば、元々大きい身長もさらに大きくなったように見えた。)

「…俺は神を信じない。
依頼で王城や教会に潜入するから、ある程度の作法は知っている。」

(その場に合わせてそれ相応の態度を作る様に何度も現地で依頼を行っていた。
城なら執事としての立ち振る舞い。
教会の人間ならば清らかな姿にと、場面に合わせて行動をしていたのだった。)

「…神は何でもお見通しなんだろ?
だから、人間の姿でも本質はバレるだろうから、この体で祈りを捧げただけだ…。」

(そう喋ると近くの椅子に静かに座る。
外でのガサツな態度が今では嘘の様に落ち着きのある姿だった。
流石に煙を起こすのは不味いと思ったが、口が寂しいため、煙草を咥えるだけにして、乾燥した葉の匂いだけを堪能した。
気が済めば、おそらく使えなくなるだろう。)

リフェード >  
「信じても何も変わらないから、かしら?
 ……こんなご時世だもの。縋る者位、欲しがる人はいるわ?」

何処で何を間違えたのか。
上の判断一つで世界は、国は斜陽に傾いた。
傾国は何れ朽ち果て、多くの犠牲が出るだろう。
これは恐らく、避けようのない未来。あの斜陽の王都の辿る滅び。
それでは、偶像は何をしてくれるのか。
信じる者は救われる、と人は謂う。……救われた気、と言われてしまえばそれまでだ。
それでも、その御心が救われていれば、人は幾らでもあるけはする。

「……そうね。何でも知ってるからこそ、傍観しているだけなのかも。」

覆らないものだからこそ、救いの手は其処にはない。
神は天より全てを見下ろす。故に、我らは唯歩むのみ。
ある意味、彼の感性も間違っていない。
その物言いにほんの少しばかり、寂しそうな表情を浮かべた。

「此処は、皆の教会だからゆっくりしていって。
 ……少しだけ眠いから、私は奥で寝ちゃうけど……暴れなければ、何をしてくれてもいいから、ね?」

難民を受け入れるだけの準備はある。
元より、そういう場所だ。その煙草を吸う仕草も、何処となく寂しげに見えてしまった。
だから少し、そっとしておこう。敬虔なる狼に、少しでも救いが在らんことと……と、踵を返すのだった。

ご案内:「夜の街道」からリフェードさんが去りました。
ご案内:「夜の街道」から黒須さんが去りました。
ご案内:「墓所」にパメラさんが現れました。
パメラ > 朝方まで降り続いた雨の名残か、空は薄灰色の雲に覆われ、陽の光は薄く弱く、
時折吹き抜ける風も、未だ湿り気を含んでいるよう。
贅を尽くし趣向を凝らした、瀟洒な佇まいの墓石が規則正しく並ぶ、
広々とした墓所の一角に、白百合の花束を携え、訪れるのはもう何度目だったか。
黒衣の裾を重たげに揺らし、俯く面をヴェールに半ば覆わせて、
かつては若き精鋭と名を馳せた、夫の名が刻まれた白い墓石の前に。
ドレスが湿るのも気にせず、跪いて花束を墓前に供えると、
冷たく滑らかな台座の上へ右手を添え、目を伏せて更に深く頭を垂れた。

化粧らしい化粧もしない侭、生来の薔薇色を保つ唇が微かに動く。
密やかに紡ぐのは故人の魂の安寧を願う言葉―――――それも、いつもの事だった。

ご案内:「墓所」にグラムヴァルトさんが現れました。
グラムヴァルト > 「――――墓参り……とか言ったか。ニンゲンって奴ァたまによくわかんねェ事しやがるよなァ。」

低く掠れた、しかし妙に通る声音が人気のない墓場に響く。
それは、今は無き夫に祈りを捧げる未亡人の背後、誰とも分からぬ墓石の上に粗暴な格好で腰掛けた長躯の男から発せられた言葉。
未亡人が墓場に訪れた際には存在していなかったこの男が一体いつ現れたのか、素人である彼女には分かるまい。
恐らくは貴族なのだろう品の良い喪服に包まれた、熟れた果実の如き雌肉を見つめる瞳は白目部分の多い三白眼。深い影を落とす彫り深い眉庇の奥でギラつくそれは、灰色の蓬髪と浅黒い肌と共に野生の狼めいた獰悪さを感じさせる事だろう。

パメラ > 墓石に刻まれた名は夫のものだが、実のところ、この下には、
誰の遺骸も埋められてはいない。
ただ、故人の愛用の品々が納められた軽い棺が在るだけだ。

夫がどんな敵と、どのように戦い、どんな最期を迎えたのか。
己には知る由も無く―――――あるいは、覚えておらず。
それでも尚、三日と間を措かずこの場を訪ねているが、今まで、
誰かに声を掛けられたことなど無かったからこそ、その『声』は酷く異質で、不躾で、
振り返った己の面にはきっと、繕い切れぬ不興の色が滲んでいた筈だ。
夫とは似ても似つかぬ部類の男であると、ひと目で見て取れれば尚の事――――、

「……何処の、何方かは存じませんけれど、
 ――――貴方に、無理に理解して頂く必要は御座いませんわ。
 これは、わたくしの自己満足、ですもの」

細く掠れがちな、けれども確固たる信念を保った声音。
跪いた姿勢の侭に、誰ぞの墓石を椅子代わりにする無作法者へ、
冷ややかな眼差しを宛がって。

「……貴方、大切な方を亡くした事は御座いませんの?」

ふと思いついたよう、そんな問いを向けた。

グラムヴァルト > 「――――クハッ。いいねェ。見た目通りのただのエサかと思えば、存外に活きが良さそうじゃねェか。」

こちらに目を向けた未亡人はグラムヴァルトの予想に反し、身を竦ませるどころかいっそ冷淡なまでの翠瞳を真っすぐに向けて来る。
それに返すのはクワッと両目を見開いて、禍々しい鋭牙の生えそろう大口を開いた凶笑。
片膝を立てた座姿が長脚を伸ばし、石畳にロングブーツの靴底を付けて立ち上がると、悠然たる動きで彼女に近付いていく。

「あァ? 大切な方ってェのがそもそもよく分からねェが……ま、ツルんでた連中はほとんどくたばってンだろォな。」

彼女の言葉にチラリと脳裏をよぎるのは、子供じみた小躯と理知的な眼鏡が特徴的な少女の姿。とはいえ、その少女は別に故人という訳でもなく、今も王都でみすぼらしい店を切り盛りしているはずだ。
次に思い出したのは、忌々しい研究所から共に抜け出した同胞の姿だが、彼らの多くは脱走の際に施設を守る手練れの兵との戦闘で命を落とし、その後も執拗に追跡を続けて来たハンター共に狩られている。
残った少数とは生きたまま別れたが、彼らが今どうしているかなど分からぬし、生きていようが死んでいようがこれといった感慨は湧かなかった。
そんな思考を巡らすうち、長躯が未亡人の間近にて足を止めた。
もう一歩踏み込めば、襟紐のはだけられたシャツから覗く鋼板めいて鍛え上げられた胸筋が彼女の鼻先に触れようかという距離は、互いの身長差を殊更に強調する。
傲岸な銀眼が値踏みするかに喪服姿の淑女を見下ろす。唇の薄い大口は片端を釣り上げ、鋭い犬歯を覗かせる歪な笑みを浮かべたまま。

パメラ > 餌、という単語に、微か、眉尻が跳ねるような反応を示す。
男の意図とは異なるのかも知れぬ、文字通り生き物の血肉となる『糧』という意味であれば、
―――――もしも、それが男の目的であるならば。

しかし、この男の笑い方は良くない。
こちらを見据える眼差しの色も、己の秘めたる願いを叶えてくれるとは思えなかった。
だから、常に無く敵意を露わにした眼差しが、真っ直ぐに男を射抜く事になる。
立ち上がりはしない、未だ、跪いた姿勢の侭ではあるけれども。

「―――――つるん、で? ……らした方は、大切な方、ではありませんの?

 お幸せですこと、………この痛みも、苦しみも、虚しさも、貴方はご存知無いのね」

だからこそ、誰かの大切な人が眠る墓石に、平気で腰掛けられたのだろう。
そんな思いは語らずとも伝わるであろう、声音には僅かばかり、冷笑めいた色が滲む。
近づいて来た男の長躯が、こちらに触れて来ずとも充分な威圧感を放ち、
見降ろす眼差しが己を、ただの肉と見做しているとしても。
薄いヴェールの影の下から、掬い上げるような角度で男を見据える翠の双眸には、
今やあからさまな嫌悪の色ばかりが際立ち。

「―――――そのお幸せな方が、こんな場所に、一体何の御用ですの?
 餌とやらを御所望でしたら、街へいらしたら宜しいわ」

食べ物が目的でも、別な意味の餌が目的でも。
己がその役を果たす気は無い、と、はっきり示すつもりで。

グラムヴァルト > 「――――ッハ。確かにオレァ幸せモンだ。そろそろ薄れちまってンだろォと思って臭い付けの為に帰ってみりゃあ、肝心のメスガキはどこぞに出掛けて不在でよォ、ま、匂いを辿りゃすぐに居場所も知れンだろォが、久方ぶりの王都だ。ブラブラすんのも悪かねェと思って出歩きゃ旨そうな肉が召し上がれと言わんばかりに辺鄙な場所で一人きりと来たもんだ。こんな幸運に恵まれる奴ァそうは居ねェだろうぜ。」

跪いたままの彼女のヴェールに包まれた鼻先の間近には、黒色のブレーの股間とそれを歪に持ち上げる野太い牡肉。子供の腕程はあろうかという長さと野太さが、今にも布地を突き破らんばかりにいきり勃っているのが否応もなく視界に映る事だろう。そして、幾許かの距離を隔てていてさえムッと鼻を衝く臭いは、長旅を終えたばかりの冒険者の如き生々しくも濃密な牡の精臭。

「分かってねェなァ。既に切り分けられて食卓に上げられる様な餌じゃ愉しめねェだろが。てめェみてぇに活きが良いのをとっつ構えて蹂躙すンのが良いンだよ。」

言いながらヒョイと長脚の膝を曲げて片腕を伸ばし、未亡人の細頸を鷲掴む。無造作に見えて相手の機を読んだ素人には決して反応出来ぬ絞首の一手は、軽い圧迫で硬い指先を柔肌に食い込ませながら彼女を立ち上がらせる。巨人の剛腕めいて強靭な掌握は、戦闘などとは無縁の未亡人には振りほどく事の出来ない力強さを保持しながらも、軽い息苦しさのみを与える絶妙の力加減が加えられた物。
そして、続けて伸ばした逆腕が黒ドレスの襟首に指先を引っかけたかと思えば、次の瞬間、一気に引き下ろした5本の鉤指がビィィッと絹裂の音を響かせて彼女の着衣を引き裂こうとする。
襟元から股下まで、喪服のみならず豊満な柔肉に密着する下着まで含めた粗雑な破服は、未亡人の白肌にも鮮血を滲ませるやも知れぬが、それはそれで興奮を煽ろうという物だ。

パメラ > 男の物言いは多分に粗雑で、己には耳慣れぬ単語も散りばめられていたが。
世俗に疎い己のような女でも、流石に、男の言わんとする事の骨子は掴める。

「―――――なんて、無作法な方かしら。
 そんな仰りようで誘われて、頷く女が居るとでも、………っ、っ!」

妻女だか恋人だか情人だか知らないが、そんな相手が在りながら、
肉欲だけを他の女で発散しようなどと―――――見下げ果てた、と言わんばかり、
鼻腔を衝く雄臭にも遠慮無く顔を顰め、そう言い募りかけたところ。
男の腕が伸びて、手指が頸に掛かり、―――――締め上げられるか、圧し折られるか、
生き物としての本能がその結末を回避すべく、吊り上げる力への抵抗を諦めた。
踏鞴を踏みながら立ち上がり、それでも両手を伸ばして、頸を捉える男の腕を掴もうとし、

「――――――――ん、ッ………!」

襟元に食い込む指先、薄紙のように引き裂かれるのは、漆黒のドレス一枚では済まず。
上質な絹で誂えられた下着も、その奥に息衝く女の柔肌にさえ、鮮やかな爪痕を残し―――――真っ直ぐ、下肢の付け根まで。

悲鳴は無かった、堪えたのでは無く、上げるゆとりが無かった。
大きく見開かれた瞳が、得体の知れぬ異形でも見るように、男の顔を捉えて。

「……… は、
 ――――― 離し、なさ……い、この、下郎、ッ…………!」

息詰まる沈黙は一瞬、直ぐに、己の眦が朱に染まる。
左手は男の腕を掴む侭、右手を振り上げて、男の横っ面を張り飛ばしてやろうと。
貴族女の細腕、避けるも退けるも、男にはきっと容易かろうけれど―――――。

グラムヴァルト > 「――――ハ、ハッ。今一瞬、てめェの顔に怯えが走ったな。その上で尚この物言い………クククッ。いいねェ。あのチビガキにァ無かった反応だ。」

強姦魔は苦し紛れに振り上げられた平手を避けもせずに精悍な顔立ちで受け止め、瞬き一つ寄越さぬままに狂笑を深めるばかり。むしろ彼女の手の平に岩塊でも叩いたかの様な痛みが走るだろう。
女その物の脆弱さで、それでも尚抵抗を止めずにこちらを睨みつけてくる翠瞳は、グラムヴァルトの嗜虐を煽るばかり。漆黒の絹衣より露出した純白の肌に、プクリと鮮血の珠を滲ませる爪跡にも獣性が疼く。このまま柔らかく熟れた柔肉に凶牙を食い込ませ、貪り食ってしまいたいという獣めいた欲求を舌なめずり一つで押し殺す。そして、鷲掴みにしていた細頸を乱雑に突き飛ばし、夫の墓石にて彼女の背筋をしたたかに打擲した。
柔肌の下、大きく揺さぶられた肺腑が咳き込み、しばらくの間は呼吸すらままならなくなる程の衝撃で逃げ足を奪う。ギチギチに張り詰めたブレーのボタンを引き千切るように外して合わせをはだけ、股間に突っ込んだ手が黒ずんだ棍棒の様な物を引きずり出した。
それは、色濃く淫水焼けした男の逸物。臍上まで反り返った剛直は、彼女の拳と大差のないサイズの亀頭を先走りでぬめり光らせ、凶悪なまでの段差を誇るカリ首と蔦めいて血管の這う肉幹を備えた肉凶器。
先に着衣越しに臭わせた獣臭が一層強く匂い立ち、眼前の獲物にこれから自分は犯されるのだという事実を否応も無く感じさせる事だろう。
人気の無い墓所での未亡人にとっては不幸な邂逅が、この後にどれほどの傷跡を刻み込む事となるのか。それを知るのは当事者たる二人のみ―――。

ご案内:「墓所」からグラムヴァルトさんが去りました。
ご案内:「墓所」からパメラさんが去りました。
ご案内:「王城 王族用の個室」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 御約束待ちです
ご案内:「王城 王族用の個室」にリシェさんが現れました。
リシェ > 「そう、言われてしまうと。わたしも、同じです…そうでしょう?ひとでなしで、王族、です。
ギュンター様も、くれぐれも、お気をつけ下さいませ…わるい、わるい、わたしに。何をねだられてしまうのか…」

(まずは。聞いて、頷いて。真剣に受け止めておきながら…も。返した言葉は、冗談、本気、どちらも混じった言葉。
こうやって、冗談の一つくらい、交わし合えたりする、誰か…というのも。少女にとっては、ほとんど居ない。
真っ当な王族である、彼に対して。こういう事、本当は、してはいけないと思う。
だから、きっと今夜だけ。特別な一夜、今だけ見せる顔。きっと。)

「はい、わたしにとっては…大事な.素敵な。そういう、事柄なのだと。……思っています。
怖い人、悪い人。あなたさまが、そう呼ばれているのだとしても。わたしが、どう思うかは。…わたしだけの、物ですから。
いつか。……はい、いつか。きっとそうなのでしょう。…生きていれば、そのいつかが、訪れるのだと……」

(そんな事すら、最近までの少女には、考える事が出来なくて。ずっと、ずっと。何一つ変わらない、生き方しか出来ていなかった。
もし、あのままだったなら。今日この出逢いも、きっと。まるで形の無い物か。色の無い、無味乾燥な物でしかなかった筈。
恐れられている、そんな噂を聞く、彼が。こうして微笑んでくれるのだという事すら。知らないままで終わってしまった、だろうから。)

「夫婦でしたら…そうなる、のでしょうか?いえ、既に夫婦だったのなら…特別感が無い、と、言いますか…
うぅ…うぅ、ん…寧ろ、これからそうなるような、関係の方が……わたしにとっては、何とも…」

(恥ずかしいだとか。感じ入る物が有るだとか。上手く、言葉に出来なかったものの。
取り合えず、少女が、想定してしまったのは。慣れてしまうまでいかず、そうやって、名前で呼び合う事自体が新鮮な…恋人やら、その辺の関係性らしい。
どのみち、言われて何か、考えついてしまうと。そこはそれ、少しだけでも、頬を染めてしまうから。
彼の目論見は、ある程度は、成功した…と言えるかもしれず。
むぅ、と小さく、呻いた後。それ以上、からかわれる前に。また、口付けを。幾度もくりかえして、言葉を塞いでしまおうと。)

「ギュンター…さま、終わったら、また。…おはなし、して下さいませ。
今は、その前に、こうして。…言葉よりも、身体を、快楽を、交わしたいと思います…」

(その口付けは。直ぐに、深くなる。奪われるなら、差し出して。喰われるという事をすら、少女自身が、望んでみせる。
唾液が滴る音をさせ、舌を交え、口内も貪って…貪られて。息すら置き去りにするような、激しい口付けに溺れながら。
…勿論、それだけ、では終わらなかった。口付けながら、少女の両手は、上から順繰りに。ボタンを外し、衿を広げ。彼の服を脱がせていく。
ひたり。胸と胸が、直接肌を触れ合わせて。)

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「……リシェが人でなしかどうかは、意見の分かれるところではあると思うが。しかして、共にカルネテルの命脈を継ぐ使命を帯びているのは事実故な。
……く、ハハハ!成程、なるほど?それは用心せねばなるまいな。手折った花が毒花であったかどうか、最早知る由も無い。私に何を望み、何を強請るのか。楽しみにしているよ、リシェ」

果たして、眼下の少女は"わるいこ"になってしまうのか。
少なくとも今の少女は、噂に聞く『唯々諾々と男に抱かれる』だけの少女ではない。
それが好ましくもあり、新鮮でもあり、興味をそそるものでもあり。
愉し気に浮かべた笑みと共に、そんな少女の言葉に応えるだろうか。

「……私は噂通りの男だ。傲慢で、横暴で、悪辣な男だ。
けれど、リシェはそんな私に関わった。それもまた、きっと変化を齎す一歩、になるはずだ。
リシェは、きっと最初の一歩を既に踏み出したのだろう。それがどの様な事柄で、大きな、或いは小さな一歩だったとしても。
歩みを止めぬ限り、そのいつかはきっと訪れる。
少なくとも、立ち止まった者には、決して訪れぬのだから」

変化を齎す為の一歩。自らが変わる為の一手。
それは、かつて桜の木の下で出会った後に、彼女が踏み出した一歩。それは尊ぶべきものだと、静かに笑いながら頷く。

「……何というか、存外気恥ずかしい事をいうものだな。
いや、まあ、リシェくらいの年齢の少女であれば、そういう事に憧れを抱くのは十分理解出来るが…」

確かに、彼女の羞恥心を軽く煽ることには成功した。
とはいえ、それは諸刃の剣。彼女のイメージが、或いは憧れが、恋人の様な仲睦まじいものであるのだと知ったなら。
此方は小さな苦笑いの中に、ほんの僅かな羞恥の色を滲ませるのだろう。

そして、繰り返される口付け。
啄む様な、軽く、甘いキスは、互いの言葉を封じてしまうのだろう。

「……そうだな。夜は長いが、何れ明けるもの。
陽光が、此の部屋を照らす前に、照らす迄に。
共に、肉欲に溺れるとしようか、リシェ」

呼吸すら忘却の彼方へ追いやる様な、深い口付け。
少女の甘ったるい様な唾液を啜り、己の唾液と混じらわせて。
絡み合う舌先は、蛇の様に。或いは、樹木の根の様に深く、複雑に。
そうして、貪り、貪られる様な口付けの最中。己の衣服をはだけさせる少女には、僅かに瞳を細めるだけの、笑みを浮かべてみせようか。
其の侭少女の背に手を回せば、強く抱き締めて直接触れ合う互いの胸を、擦り合わせる様に軽く少女の躰を揺する。
同時に、下衣を押し上げる様に隆起した雄の象徴が、少女の躰のそこかしこに、押し当てられるのだろうか。

リシェ > 「共に…とは。言い難いのですが。…血を引いている、それだけは。否定出来ません。ひとでなしである、それと、同じ程に。
それでも……えぇ、えぇ、わたしは。これからもっと……色々な事を、していくと、思います。出来るかどうか、わかりませんが。
結果、ギュンターさまに…カルネテルの、方々に、ご迷惑をお掛けする…かも、しれません。それも含めて。…見守って、下さいませ。」

(わるいというのも、色々と。単なる、悪戯程度から。世間に迷惑を掛ける、仇為す所から。…人の命を奪う、それ程の物も。在るだろう。
今は、まだ。少しばかり、こまっしゃくれたような、可愛い物でしかないが。この先は、どうなっていくか、わからない…少女は、もう、魔なのだから。
そんな事を、自覚した上で。おねだりの一つとして、彼に求めた物は…自分で、自分を、どうにも出来なくなった、そんな時の為。
もしかすれば。そうなのかもしれず。)

「ギュンターさま。…ギュンターさま、本当の意味で、人に仇為す悪い人は…決して。自分で、自分を、悪人とは。言いません。
もっと…悪辣で。狡猾で。誰にも知られず、悪い事を、進めてしまうのです。
或いは……悪い事を、悪い事だと、自覚せず。自分は正しい、間違っていない、そう決め込んで。正しい事だと、疑いもしない。
自分で。自分の事を、正しく評価出来る、ギュンターさまは。きっと。ご自身で、思っていられるよりは、ずっと。…間違っていない。そう、思います。
……でなければ。こんな風な、お話など。してくれる筈は、ありませんから。」

(確信を持って、言い切れる。彼は、そういう人で。信じても良いと。…だから、少女は、彼の言葉にも。頷くのだと。
不特定多数の”おきゃくさま”でもない、一纏めにした”異性”でもない、彼個人への判断も。きっと、あの頃なら、出来なかった事の、筈。)

「無いものと、考えると、ますます……ぁの、ギュンターさま。お気に障ったようでしたら、其処は…
わたし自身。漠然と、考えただけで…す、普通の、男女関係という物を。わたしに、想像しろと仰るのは、お門違いですので…」

(言いだした側の、彼でも。少しは、恥ずかしくなる、物であるらしい。若干慌てて、首を振り、今の台詞は無かった事に、と。
恋人という、そのイメージも。世間一般に語られるより、余程曖昧、頭の中にしかない、その程度の知識。
小さく、ぱたぱた、両手も振って。頭の中に、浮かべた物を、追い払うようにしてから……改めて。
施す、口付けは。最初だけは、恋人同士のようでも。直ぐに。より深い、肉欲に根ざした、その為の行為へと、すげ替えられていく。)

「は……ふ、…もしか、すると。…ギュンターさま、しだいですが…
夜明けが来たら、それでお終い、とは。…限らないかも、しれません……ね…?」

(そうなれば、そうなったで。拒む事なく、少女は、受け容れるだろう。
先の事は、解らない。想像の上。が、思い浮かべてしまうと、また。影響されてしまうのは、仕方なく。
更なる、快楽の深さを、予感してしまったからだろう。彼の服を、はだけさせていく動きが。少しばかり、速くなる。
抱き寄せられて、くつろげるように、胸同士がよりしっかりと、押し付け合わせられる頃には。上半身を、すっかり、はだけさせてしまい。
止まる事なく、少女の指は、更に。下半身へと、移っていく。
貪るような、口付けの合間。時折だけ、息を求めていけば。間隔を開けた、一呼吸毎に、息はどんどん、熱くなっていく。
臍に。腿に。何度も感じる、堅い物を…直接。手の内へと、引き出してしまえば。途端、どくん…一際、少女の胸が、高鳴って。)

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「…フフ、此処迄言っておいてなんだがな。私の一族は、カルネテルの血を引いている訳ではない。
その昔、資金繰りに困った当時の王に多額の金を貸し付ける代わりに、王族の地位を得ただけに過ぎぬ。
だから、私の事を"カルネテル"等と呼ぶ必要は無い。傍流どころか、カルネテル王家から見れば赤の他人だからな」

そんな己の一族ですら、今や正式な王位継承権を持ち、己は王位を狙える立場にいる。
その事自体がおかしいものだろう、と笑う。
それでも、見守って欲しいと告げる少女の言葉には、自らの立場に対する皮肉気な笑みを浮かべながらも小さく頷くだろうか。

「………フン。知った様な口をきくものだ。
しかし、悪である事を自覚した上で、悪を為す者もいるだろう。
リシェ、少なくとも私は――正義の味方ではない。
それだけは、努々覚えておくように。私は、リシェを助ける正義の騎士では無い故な」

そう。己は、清廉潔白な騎士ではない。
彼女を救い出せる騎士ではなく、正義の勇者でもなく。
此の国のありふれた、悪辣な王族でしか無いのだと。
――それは、己自身に言い聞かせている様にも、少女には見えるかもしれないが。

「いや、別に気に障った訳ではない、んだが。
何というか…そうさな。存外、可愛らしい一面もあるのだなと、リシェに対する感想を抱いただけだ。
それ以上の他意は無い」

ぱたぱたと手を振る彼女に、クスリと笑みを零しつつ。
その笑みもまたゆっくりと、静かに。
どろどろとした情欲のものに、挿げ替えられていくだろうか。

「……どうかな。それは私次第でもあり。或いは、リシェ自身の選択による、やもしれぬ。
その答えは、夜明けのみが知る事。情事の痕を照らす陽光しか、答え合わせは出来ぬ。
だから、だからリシェ。今は唯、お前を、寄越せ」

多くの者に汚され、穢され、それでも尚、歩き続ける少女。
そんな少女に比べれば――己のなんと、浅ましい事だろうか。
だから、少女の言葉には僅かな苦笑いと、肉欲の本能に任せた躰で、応えるのだろう。

重なり合った躰。互いの熱が、互いを高め合う様な、熱の逢瀬。
そして、少女の掌が己のモノに直接触れるのなら。それは既に雄々しく、硬く脈打って、雄の匂いを濃厚に発しているのだろうか。

少女の唇を貪り、其の侭首筋へと口付けを落としながら。
脈打つ肉棒をほんの僅かに、少女の手に、ぐり、と押し付ける。

リシェ > 「………そう、なのですか?…だとすれば。血筋という物なんて、存外、アテにはならないのですね。
名前だけ、血筋だけ、偉そうに誇る方達と、比べたのなら。ギュンターさまの方が、余程…そういう、血、に。相応しく、思えます。
半分、カルネテルの血が、入った…そんな、わたしが。言うのも、難ではあるのですが…」

(金で買った、偽りの、血。それを、知る者からすると。確かに、彼やその一族を、認められず。敵対するのは、当然かもしれない。
結果として、周囲に、敵ばかりが増えて。それがますます、彼を、今のような立場に。凝り固まらせてしまうのも。
だとしたら、結局、血筋というのは。何なのだろう。それを、穢した存在だからと、今の立場に堕ちた、自分も含めて。ますます…解らない。
もしかすれば。人それぞれであって、どれだけ考えたとしても、たった一つの正解など。無いのかもしれない。)

「悪い人。…たくさん、見て、参りましたから。
自覚があって、その上で、というのは。……言い方は、悪いのですが。マシだと、思うのです。…わたしからすれば。
…その上で、何度でも、言わせていただきます。ギュンターさまは、よっぽど、良い方なのですよ?
それに、正義なら、良いとも。限りません。…いえ、正義の味方なら、きっと。わたしを…許してくれません、から。」

(そう、少女は、この国の正義に照らし合わせれば。
生かされているだけマシ、直ぐ討たれても仕方ない、そういった存在だから。
が、その事実を、この場では口にしない。半ば以上、公然の事実だから、というだけではなく。
何となく…彼には、言い辛い。聞いて欲しくも、言って欲しくもない。彼とは逆に。)

「でしたら。…いままでは、どう、見られて居たのでしょう。少し…気になってしまいますよ?ギュンターさま。
そもそも。考えるべくもない、と言いますか。…そういった仲に、憧れるような立場でも…無い、でしょう。」

(どちらが、ではなく。どちらもが。頬を膨らませたり、噴き出すように笑ったり、一頻り表情を変えた後。改めて、そう口にして。
可愛らしい関係など、最初から、通り過ぎてしまっているような。直接肉を、情欲を貪り合う、より深い関わりへ。身を沈めていく。
何度も、何度も、口付けを続けながら。首から下は、更に先へと、進み続ける。
首筋に吸い付かれて、痕の刻まれるような口付けに、ぴくん、震えながらも。掌に触れる、男根を。そっと包み込んで。同時に、もう片手も、働き続けて。
中途半端に、はだけた形、から。慣れているからこその、器用さを見せて。腕から、脚から、衣服を抜いていき。彼の側にも、すっかり、全てを脱いで貰おうと。
…それだけ、何もかもで、求め合いたい。から。)

「ぅん、ん、ぁ…っ、む…んく………ふ、っふぁ、ぁ。勿論、何もかも、捧げるつもり…ですが……
まだ、良いでしょう…?ギュンターさま、わたしにも…欲しい、です。させて欲しい。改めて…」

(先程、言いかけていたように。ちゃんと、役目としての、奉仕も。させて欲しいと。
口付けを解いて、唾液の糸で、互いの唇を繋げたままで。見下ろしながら…これもまた、ねだってみせると。
柔らかく、握ったままでいた男根を。万遍なく、扱き上げていく。
そのまま、改めて少女から、口付ければ。唇から、喉へ。鎖骨へ。段々と、唇が降りていく。
何を、しようとしているのかは。言わずもがな。)

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「……相応しく思う、か。まごうこと無きカルネテルの子孫であるリシェにそう思われるのは、光栄の至りとでも言うべきなのかな。
それとも、リシェこそ王位を戴く正しい資格の持ち主だと、けしかけるべきなのかな?」

血筋。血統。生まれや育ち。
自分では選べない事が、自分を大きく縛るという事に苦笑いを浮かべながら、少しだけ冗談めいた言葉を彼女に告げる。
それは冗談の様な本気の様な。あらゆる立場上、非常に困難である事は理解していても、少なくとも己よりは彼女の方が、カルネテルの血を継ぐ王に相応しい血統なのだから。

「……そうか。では、そうさな。私が許そう。
私だって何度でも言う。私は決して、正義の味方ではない。正義の騎士でも無い。
だから、私ならリシェを許せるだろう?此の国の悪を戴く者として。悪辣を誇る者として。
何もかも許すさ。正義では無い、リシェが抱える何かをな」

多くは聞かない。何か、と問わない。
唯、許す。それだけ。
悪辣を自称するからこそ。それを象徴する地位と権威を誇るからこそ。
彼女が抱える"何か"が正しくない事であっても。それを許す、と笑う。

「…今迄?そうさな、良く言えば従順。言葉を選ばぬなら、自己の意志の弱い少女だと、正直思っていた。
いたが…まあ、今宵で大分覆された。それが正直な感想だ。
……私は兎も角、リシェはそういった物事に憧れても良いとは思うのだがね。此の城を出る未来とて、あり得ぬ話ではない。そうなった時、想い人と結ばれる結末くらい、夢想する権利が、リシェにはあるだろうさ。
……まあ、今宵、この褥の上では…無いやも知れぬがな」

肉欲を、情欲を貪り合うベッドの上で、そんな想いを馳せる間も無いだろうと、薄く嗤う。
少女の首筋に、所有の証の様な痣を刻んで。薄く鬱血したその部位を、擽る様に舐めあげて。

その間にも、器用に解かれ、脱がされていく己の衣服。
僅かに身動ぎしてその動きを手助けしながら、器用なものだと暢気な感想をぼんやり抱いていたり。

「……ほう、良いぞ。その我儘、聞き届けよう。
ならば浅ましく求め、淫らに私に仕えると良い。
今宵のリシェの主に。今宵、リシェを喰らう私に。
懸命に、切に、奉仕することを、許そう」

少女の言葉に、緩やかな笑みと共に頷けば、躰の力を抜いて少女の奉仕に身を任せようか。
握られた儘の肉棒からは、こぷり、と透明の液体が少しずつ、少しずつ零れ、少女の手を汚す。
そしてソレは、少女の唇が下へ、下へと下る度に、びくり、と震えるだろう。
与えられる刺激に反応している様でもあり――これから行われる奉仕に、期待している様でも、あり。