2020/08/29 のログ
ご案内:「平民地区/図書館」に獣魔目録さんが現れました。
■獣魔目録 > 平民地区の一角にあるとある小さな図書館。
司書も居らず貸し出して続きはあってないような物であるし、返却された本もカウンターに雑に積まれている、そんなレベルの粗末な図書館の形をした図書館に満たない図書館なのであるが、今宵はその図書館に司書が居た。
そもそも此処は無人であり、平民地区の人間や市井の流行の本を探しに来る富裕地区の人間が稀に来るような、子供達が大声で走り回り、恋人達がいちゃつくのに使うような、そんな図書館であったが、その奇妙な司書が夜にだけ通うようになってから書架は綺麗に整理され、走り回る子供は減り素直に本を読むようになり、富裕地区の人間も騒がず本を借りるようになり、恋人達は相変わらず片隅でいちゃついているが、書架が整理され本が丁寧に扱われる事で利用者の意識が変わり始めたか、少しずつ図書館として成立を始めている。
その司書はフードを被り口元しか見せない、ローブで全身を包み隠して指先を見せるのは本の貸し出しや返却のときだけと言う怪しい人影はカウンターの席に座り、人影がいない時に返却された雑に詰まれた本達を撫でながら、中身を検分し汚れがないかを確認しながら1冊1冊の分けて籠にしまう作業をしていた。
「本はもう少し丁寧に扱って欲しい。ほら、パンくず。」
1冊の絵本を手に取り、頁と頁の間に挟まっているパンくずを自分のローブの裾で払いながら大きな溜息を吐き出す。
愚痴を零すその声色は昔は酷いものだったが、今は小柄な人影に早々の少年あるいは少女のような声で、どことなく人間っぽくない声だがしっかりと普通に喋れるようになっていた。
――…何故こんなことになっているのか、話せば長くなる。
なので返却本を清掃しながら端的に言うと、逃げてきた。
路地裏で露店商の真似をしていたら、いかつい男たちがやってきて、ミカジメリョウ?とかいうモノを請求しながら本を踏みつけ始めたので逃げてきた。
手元に有る数多の魔導書を使えば簡単に処分できただろう。
だがその一線を越えてしまうと、衛兵や治安維持の為に働く冒険者に目をつけられてしまう、だから逃げた。
その逃げた先がこの図書館、ボロボロであるが数多の本がある図書館であれば昼間は姿を戻し、夜はこうして人の姿となり司書の真似事をすれば怪しまれないだろう、と。
――…小さな図書館にいる怪しい人影。
人影に本の事を訪ねれば本が収まる書架の場所、お勧めの本を聞けば喜んで何処からとも無く本を取り出し、難しい言葉の本の翻訳や鑑定をしてくれるだろう。
夜間限定の司書である、周辺には便利な司書が居ると言う噂にはなっているだろう。
今宵は図書館の来訪者はあるだろうか?
図書館の扉は少なくとも夜は開放されている。