2020/08/01 のログ
ご案内:「平民地区:裏通り」に獣魔目録さんが現れました。
獣魔目録 > 平民地区のとある裏通り。
通りから通り、通りから酒場や宿や冒険者ギルドのある区画へ、富裕地区から平民地区へとを結ぶ細い通り道である。

その裏通りは確かに各方面に移動するには近道となる通りなのだが、その呼び名の通り【裏】酒場や宿屋諸々の店の裏手を通るからなのか、薄暗く、人通りは殆ど無い治安的にもあまり宜しくない通りなのだが、今宵は不思議な事に一つポツンと人影がある。

その人影は人通りなんて殆ど無い裏通りなのに、敷物も敷かず地面に直接正座をして座り、代わりに自分の前に小さな敷物を敷いて其処に商品を並べて、客を待っている……。

灯りを照らすなら、その人影は酷く小柄で少年少女あるいはドワーフなどの背の低い亜人のように見えるが、全身を襤褸切れのように穴の開いたローブを身にまといフードを被り口元以外をすっぽりと隠し覆っている。

「……導書ニ……絵………スイ………カガ………。」

その人影が置物でも既に街の洗礼を受けたあとの亡骸ではない証拠にか細く路地に吹き込む風に簡単に掻き消されてしまうような小さな声で商品をアピールしている。

聞けば声色もまた若いが男女の性別の判別が難しい声であり、人の声よりもその手の知識が有ればゴーレムや魔導人形が人の声帯を真似して発するような声に近しい。

扱い商品は数冊の本。

可愛らしい絵柄の童話の本
如何にもな本格的な小説
タイトルの何もない怪しげな本
それと魔獣の皮で装丁された魔導書
他にも数冊の本が並べられている。

もし、通りかかった人間が本を手に取り中身が読みたいと言えば、人影は喜んで本を頷くだろう。

もし、ほしいと言えば喜んで人影はその本を売るだろう。

どの本を選んでもそれはもう嬉しそうに……。

獣魔目録 > 今宵は更にもう1冊。
穴の開いたローブの人影は何もない空間に手を伸ばすと、ずぐり、と何も無い筈の場所に指を食い込ませ、掌を手首を捻りこんだ後に1冊の本を空間より臓物の如く引き摺りだした。

それはこの場にある何よりも白い1冊の本。
獣魔目録なる書と対になるような真っ白な表紙に金で装丁された少し集めの本である。

この場の本から魔力を感じるとすれば、この本からは魔力よりも神聖な力に近しい力を感じる事が出来るだろう。

そしてその力は間違いなく魔力と反する事の証左。
ローブを着込んだ人影の指先が真っ黒く炭化を始め、それでも人影はゆっくりとした動作でその真っ白い本を他の本と一緒に並べる。

「新……価……。ト………スイ……カガ……ズイ……。」

人影の指先の炭化と同時に魔獣の黒い皮で作られた表紙の魔導書、獣魔目録からも僅かにその白を拒むような黒紫色の魔力と薄らと煙がでていた、が……後は何も変わらない。

人影はただ来訪者を待ち、購入者を裏通りを訪れる客を待ちわびるだけである。

蚊のなくようなか細く老若男女の判別をつけるに難しい声で存在をアピールしながら。

獣魔目録 > 例え来訪者が無くとも人影は本を売り続ける。
ならびに並んだ本たちに早く主人をつける為。
人気のない裏通りに小さな小さな声が響き続けるのであった。

ご案内:「平民地区:裏通り」から獣魔目録さんが去りました。