2020/05/13 のログ
■影時 > 「分かった分かった。お前はお前だ」
翼なく地を這う竜種の類は討伐対象として幾つも見え、撃ったことはあるが知っている。弟子はその類ではない。
そうでなければ、遠く遠く。この二本足では至るには足らぬ高みへと、至るコトも何もできない。
ヒトの域は外れていても、ヒトには到底なしえない事については、他者の助けを足りることが何よりも早い。
為したいことのためには達成の手段は択ばない。
「まァ、そっちに目が向くわな。
良いさ。大きくなるにしてもなンにしても、先ず飲んで喰らわなきゃぁ話にならん」
小さい樽を干してもまだ、次がある。口の味を漱ぐための泡が出る鉱泉の瓶も買っておいた。
大飯喰らいはしないが、時折乾き物を食して、ほっと息を吐く。
人世、こういうのがなければ詰まらない。信心は胡乱ではあるが、酒の神を奉じるものの気持ちは何となくわかる気がする。
「こっちで作れるかどうか、怪しいものがいくつかあったからなァ。
だが、作れン訳じゃぁない。此の手の投げ物が特にそうだな。一つ二つ、仕込んでおいて困るもんじゃない」
秘伝を凝らしたものとなれば、此方の地方で云うマジックアイテムやアーティファクトのような類となってしまう。
製法を知るが故に追われる一端でもある我が身でも、おいそれと作れるものではない。
いいとも、と許せば、巻物状の入れ物に直ぐに見えるものがあるだろう。
必要に応じて、よく使う棒手裏剣の類である。打ち延ばした鋼の平棒を研ぎ出し、刺さるようにしたものだ。
そればかりではない。四方に鋭い刃の棘を生やした星状のものもある。
商会のお抱えのドワーフに見せれば、同じものをより高精度に作ることもできるだろう。
所々にやや粗いところがあるのは、いずれも己が手で打ち鍛えたからでもある。
■ラファル > 「んむ!」
師匠の肯定がうれしいからか少女は、満足そうに笑みを浮かべて見せて一つこくんと首肯する。子供だからこそなのだろう、師匠の、目上の者からの承認がとてもうれしいのだ。
認めてもらうということが何よりもうれしくて、えへへ、とほほを染めて笑い、酒を一口。
「……これ、なぁに?」
たくさんの樽があり、その中身はそれぞれ違う模様、だからこそ。幼女は見たことのない酒をきにする。
いろいろと酒を知っているつもりではあるが、知らないものだってたくさんあるから、ポリポリとつまみをかじりながらの問いかけを。
「棒……手裏剣。」
するり、と手にした幼女、艶消しの黒の色の細長い武器、それは忍が代名詞というような武器。
むろん、それだけではなく様々な形の手裏剣が見える。
それを手にして、少女は目を輝かせるのだ。
わぁと、輝く瞳は、年相応の眼でもある。
■影時 > 「お前さんの翼を借りねェと、俺も行けない処が色々あるからなぁ。
……その意味でもお前はお前だよ、ラファルよ。」
例えば空を飛ぶ場合、風を起こして、凧で飛ぶというのは単独でできなくはない真似ではある。
だが、それは単に「飛ぶ」だけである。目的地までの飛翔という明確な目的を達成できる手段ではない。
故にその点の一つに絞ってみても、他者を認める由縁に足る。
自分に出来ないコトを為せるのだ。其れを素直に凄いと認めない理由には、決してならない。
「手裏剣という。星や棘みてェに刃が出てる奴は兎に角当てたい場合に遣う。
どっちも投げて当てるにゃ苦労するが、奪われても投げ返される心配が薄いのは、棒みてぇな奴の方だ。
服に仕込んで、小さい防具代わりにも出来る。
ここに差し込んでる奴は、見本のようなモンと思ってくれや。数が必要なら商会お抱えの鍛冶師なら作れるだろうよ」
十字状や八方に刃が伸びた掌状の刃を取り出しつつ、ちょっとした座学ついでに用途を示す。
毒塗りの刃や火縄を巻き付け、火薬仕込みとして使う使い方もある。
そんな講釈をしつつ、包みを広げてゆく。次に出てくるのは――、
「お次は此れだな。鉤縄と云う。
……前にあの城跡から幾つか拾って持って帰ったろう? 俺が貰った鎧を直した際、余った端材を鉤に打ち直してもらった。
縄も氣を乗せやすい蟲の繭から紡いだ糸を縒って作った。
つまり、お前がぶん回してもそうそうヘタれん奴だ」
いわゆるフック付きロープである。鋼鉄と違う輝きを艶消しされているとはいえ、湛える金具が目を引くものである。
冒険者の七つ道具などと呼ばれるキットなどにも入ってはいるが、秘伝を凝らしたが故により上質と化している。
作成と調達に金を使ったが、弟子が使う分には困らないだろう。
■ラファル > 「えへへ……」
人ならぬ身故に、少女を阻むののというのは、多くないのである、行きたいところに行ける。
距離も高さも、時間さえあれば超えることができる、そして、その時間に関して、とても、とても、人の数倍では言えないぐらいに多いのである。
それを含めて肯定されると、テレテレと照れて、少女はお酒を飲む事さえもやめて喜んでみせるのだ。
少なくとも、市場に認められ、言われるのは、とてもうれしく感じたから。
「……えっち。」
棒手裏剣、十字手裏剣、車手裏剣……様々な形のそれがあり。それもどれも投げて使うべきものである。
師匠の言いたいことはわかるけれど、幼女の格好は―――基本的に肌を露出させているものでだ。
仕事などの際に着るときにしまい込めばいいのだ、判っているからこそ、幼女はあえて、己の胸を手で隠し、言う。
その表情は、ニマニマニマニマ、いたずらな、子供のそれだった。
「おおおおお…………。」
移動のための道具としてのそれは、幼女には必要がない。
しかし、この道具はそれ以外の用途が多々あるゆえに、腐ることはないという道具。
武器としても捕縛するための道具としても。
生半可なものでは切れない強度のそれを手にして、七つ道具のほうを見落としてしまうぐらいに。
フックロープを見て、持ち上げるのだ。
「―――!ありがと!」
顔中に喜色を称え、少女は礼を言う
■影時 > 旅情を愉しむにあたり、飛べぬという不自由というのは別段問題となるものではない。
だが、「行ってみたい」「行ってみよう」と発起するにあたり、高みだけが邪魔するというのは、聊か我慢ならない。
踏破する愉しみを得るに当たり、踏破すること許さぬ何某かが存在するなら、一足飛びに至る手段を講じることに何の躊躇いがあるか。
「分かって云ってるだろうが。
どうせ蟲惑するならもっと育ってから宣ってくれや。愉しみにしておいてやるから」
投じるのみならず、手に持って寸鉄代わりとすることも、火打石代わりにすることもできる。道具は使い方次第だ。
しかし、ピンポイントで身を守る防具とするには如何せん、布地が多い服をこの幼女は好まない。
如何にも心得ているという風情で、薄い胸を隠してにまにま笑う様に、噛み締めるように口の端を釣り上げる。
コルクを噛んで、引き抜いて新しい酒杯に注ぐ透明なそれは、酒精が強い。
当地の芋と水で醸して、蒸留させたという類の火酒だ。酒に弱ければ、それだけで昏倒しそうな味わいに興味深げにして。
「持っていねぇという気がしたからなぁ、丁度良かった。
……なら、次の此れも役立つだろう。俗に三尺手拭とか呼んでる類よ。細かく織った布だ。覆面にも出来るし、遣ろうと思えば武器にも出来る」
贈り物は、いわば当地で調達できる素材を使った忍び道具の見本といってもいい。
良いってことよと双眸を緩めつつ、次に取り出す藍染の布を広げて、気を練る。
注ぐ布がしゅるしゅるとうねり、伸びて棒の如く姿を変える。
「石を包んで殴りつけるも善し。湿らせて叩くも善し、だ。締めるのもアリだろうさ。道具はどれもこれも使いようよ」
そう講釈する。どれもこれもと抱えて身を重くするのは、忍びの常道ではない。
■ラファル > 「むむむ。」
わかっているのだ、師匠の好みはばいんばいんぼいんなおねーちゃんであって、自分のようなひんそーな小娘ではない。
しかし、判っていても言われると、こう、むかむかするのは女としてのプライドだろう、ぷくり、とほほを膨らませて見せれば、遺憾の意を表明しますと言わんばかりに、じろりとにらむ幼女。
最初に挑発したのは自分だけれども、それをさらりとかわされて不満に思う程度には、子供であった。
だから、子供は子供らしく。
ぐい、と酒の盃を突き出すのだ、その酒を頂戴と無言のうちに。
酒精が強かろうが、甘かろうが、お酒はどれも大好きなのである、そして、酔わない。
「確かこれ……こないだの、お城捜索の時に、師匠が口を覆うために使ってたあれだね。」
思い出されるのは、彼が粉塵を防ぐための防護として使っていた布。
長くて、柔らかな布は、それだけでもたくさんの使い道がある、外法な方法として、水で濡らしそれで口をふさぐとかもまた、使い方。
呼吸ができなくなり、海の中にいるような状態にできるのだ、と思い出す。
その手ぬぐいを、マフラーのように首に巻く。幼女の細い首に巻けば、ひらり、と棚引く布の出来上がりだ。
■影時 > 「取って喰らうのも、そうだが。
……あれだなァ。親――という言葉は俺みてェな無頼が宣うのも、烏滸がましいが。
ちゃんと育って、大きくなるのを眺めるのはそれはそれで愉しいモンだろうな」
さながら竜ならぬ子栗鼠の類の如く、頬を膨らませて見せる幼女が杯を突き出す。
その仕草に、へいへいと透明な酒を注いでやりながら嘯くのだ。
孤児を弟子に取ったわけではない。ちゃんとした両親が居るのだ。いずれも存命である。
そんな肉親の喜びを横取るのとは違うが、成長して大人になるという様を眺めておきたいというのは、師の心だからだろうか。
ふと、首を傾げながら思う。女好きではあるが、魚色の趣味はない。
自分好みの容姿になるの最良としても、人としても竜としても成長するのを願い、祈るのは悪いことではあるまい。
「覚えてたか。そうだな、毒除けの薬草や炭を挟んで瘴気を濾すのにも使える。
あと、竜に効くかどうかは分からんが、気付けや毒下しの薬種入れも入れておいたぞ。
もし気になるなら、訊け。薬研や本草学の類は覚えておいて損はない」
護りにも殺しにも使える。忍者の容姿の記号の一つでもあるが、伊達ではないのだ。
細首に巻く様に黒染めの奴もあるぞ、と。包みから別の色も出しつつ、ついでにこの辺りで珍しい印籠も見せておこう。
人間用ではあるが、この地方で見つけた、あるいは再発見した薬種から煉ったものが入っている。
商会の売り物とするには、幾つかの秘伝がある故に今は教えないが、訊けば伝授する用意はある。
■ラファル > 「今は、おいちゃ……師匠が、パパ上のようなものでしょ?」
とくとくとく、と音を立てて注がれていく酒、透明なそれが酒杯に注がれて並々と揺れるのを見て、少女はそれを口に含んで言う。
両親は、ダイラスから出ることはほとんど無く、三姉妹はこのマグメールで、思い思いに過ごしている訳である。
育児放棄というよりも、基礎を教えてあとは自由にというところで、そういう意味では長女はいまだに両親に教えを請いに戻るのだ。
戻らないで居るならそれはそれでという所なので、自分と姉はこちらで自由にしている、そういう意味では姉がつけてくれた家庭教師。
目の前の男性が、師匠であり、父親のようなものである。
正直言えば、本当の父親よりは共にいる時間は長いと思うから。
「ま。ね。
……あれ?前に教えてもらっていたのは、あれは入門編なの?」
彼からは一通り教えてもらっていた気がする、薬学に関しても調合に関しても。そして、それらを修めたからの、忍者としての認定だと思っていた。
師匠の言葉を聞けば、確かにあの程度で全部とは足りない気がする、まだ、幼い幼女は学習能力の高さを引いたとしても。
もっともっとあるだろうと思た。
実地の訓練が多かったというのも印象にあるゆえに。
授かった印籠を矯めつ眇めつしつつ、かぱ、と開き。薬のにおいにくちゃ、と顔をしかめたり。
■影時 > 「……――そうかぁ。子をこさえたつもりはねェが、己はそういうモンか」
成る程。改めて聞く事を思えば、己も思った以上に年齢を喰ったかとふと思ってしまう。
精神や性根は見た目に左右されるものと思ってはいても、近い見た目の者より長く生きている。積み重ねはある。
そうであれと願って、嫁を娶って孕ませて真っ当に子供を儲けていたら、こういう気持にもなるのだろうか。
言葉にし難い感覚を覚えつつ、己も手酌で酒杯を満たし、ふと空を仰ぐ。
袴に包まれた両足で胡坐を組んだ上で、その膝上をぽんぽんと叩いてみようか。
「いんや、基礎だ。教える際は応用編よ。
風や竜の吐息、腕力で解決できないコトをどうにかすンなら、小技の積み重ねよ。
下手な術に頼るより、道具を揃えた方が早くて手間がかからんこともある。それを教えてやろう」
実地訓練、研修と出来る事例の積み重ねはこの先も多い方が望ましい。経験に勝る訓練はない。
その実感に基づく方針は変わらない。
この先培うべきとなれば、過去の経験や実践を踏まえ、他にどういう備えがあれば、よりよくできるかという考察も必要だろう。
人、それを反省という。省みた結果を反映して、高めるのだ。
弟子が嗅いで顔を顰める薬毒でも、水で薄めて溶いて使えば虫除けになる。使いようだ。
竜だから使わない、覚えなくてもいいというものでも、伝授して困ることは無い。
■ラファル > 「―――だって、血縁のみが、親子、とは言わないじゃん。」
血がつながっていても、殺しあうものがいれば、血がつながっていても、愛し合うものがいる。
血のつながりというのはただの種族という流れでしかないと幼女は考えてだからこそ、親子というものは、後から成るものなのだ。
それこそ、師弟関係などは、内弟子としてなれば、一緒に生活するのだし親子とみてもいいものだと思っている。年齢的にも。彼は不本意かもしれないが。正直、自分の父親よりも年上だし。
そして、彼が、太ももを叩く動きに、少女はちょこちょこ、っと移動して、その胡坐の中にちょこんと座り込み、その胸板に己の頭を預けるのだ。
にひ、と笑うのはなんかうれしいから。そのうれしさを表現するような言葉が、見つからない。
「打撃も術も手段でしかないんだもんね?
それなら、様々な手段を覚え、揃えて、状況に対応する―――だったよね。」
忍者とは総合職業のようなものだ、戦士にもなる盗賊にもなる、魔法使いまがいのことだってする。薬師もする。
広く浅く技能を選び、状況に対応するための修練が必要となる。
忍者にも役割があるのだと聞いた、大きく分けて、表で派手に目立ち、忍者を宣伝する陽忍。逆に本当の意味での忍者の陰忍。
万能に離れないから、広く浅く、その中で専門をという形になるのだろう。
そして、自分のためではなく他人のための術も時には必要故に、それを、覚える必要がある、ということでもあろう
■影時 > 「確かに、なァ。……よく分かる。よぉく、な」
己が胎から生まれたものでなくとも、子として愛で、慈しむ者がいる。相反する真逆のものが居る。
それらから派生して、疑似家族、血縁として集団への帰属意識を高め、強めて一党を為す手管を知る。
良くも悪くも人心を得る手段は思考の端に、勢いよく投げ遣っては、胡坐の上に座り込む姿の熱を間近に感じる。
己の胸板に頭を預けようとする仕草を感じれば、そうしやすいように背を伸ばしてやろう。
笑う気配を感じれば、丁度腹の上がくすぐったい感じがする。それが面白くて、己も快く笑い声を零すのだ。
左手でシーツの上を突きつつ、杯を干す。呑むか?と向こうの盃の具合を見下ろし、問うて。
「然り。それが何よりも基本だ。一つの手段に拘れば囚われちまう。
知っているコトがあれば、それは刃にも盾にも化ける。
あと――、こいつは忍びじゃねェが、ひとつ宿題だ。帰りにお前さんの家の執事に、一つ花の鉢植えを預けておく。
名も無ェ花だ。育てて、種を結んだら、再度植えて、また花を咲かせてみせろ。
手に入り辛い薬種の類は、自分で育てるしか無ぇこともあるが、生命を育てるコトの何たるかを覚えるにゃイイ機会だろう」
そうだった、と。卓上の一角を指差す。
其処に採取用の胴乱が蓋を開けた状態である。大振りの花弁ではないが、薄紫色の花弁を咲かせた花がある。
在庫が尽き掛けていた薬種を採りに行ったついでに、目に入った花を土ごと丁寧に採取したものだ。
好事家に売るというのも手ではないが、草花を育てる感覚を学ぶには、良い機会だろう。
力ある者は往々として、他者の生命に無頓着になりやすい。情操教育の観点としても、動植物を育てるのは見るものがあるだろうと。
■ラファル > 「えへへ、あったかい。」
血縁の話に関しては、それ以上の話はやめておく、正直言えば別に家族仲が悪いわけではない、むしろ良好ともいえるのだ。
ただ、ほかの過程よりも不干渉な部分が多いだけであり、それは本人たちにとっては普通である故に。
その辺りは、人外の感覚ということで納得してもらうしかあるまい。
今は、背中から感じる父親の大きさ、温かさを堪能すべき、目を閉じて、すりすり、と後頭部をこすりつけるのだ。
「ちょーだい。もっと、飲む。」
盃が空になり、パパ上のお言葉に甘えるように、あい、と盃持ち上げて、お強請る。
新たな酒が注がれれば、くぴくぴぷはぁ、と飲み、酒精混じると息を吐き出すのだ。
「―――宿題?お花?」
師匠としての言葉に、きょとんとして、少女は下から、見上げる。
命を育てるという言葉に、コトンと首を傾いで、まずは一度、それを育ててみることにしたほうが良さそうだと。
そう考えて師匠の指に従い視線を向ければ、そこにあるのは何らかのお花、名もない花というのだからそうなのだろう。
となると、とても難しいかもしれない。
名前がないということは育て方がわからないともいえる、野生に生えてたなら、それなりの強さはあるかもだがそうではないかもしれない。
むむむむ、と幼女は――――胴乱を眺めるのだった。今はお酒、後で考えることにしよう、と。
■影時 > 「酒を呑んでいても、夜はまだちぃと冷えるからなァ。丁度良い」
不仲ではないなら、良いことだ。雇用者の内情に首を突っ込むのはマナー違反だが、仲違いしている風には見えない。
ただ、家族で有ればもう少し交渉があるのではないのか?と、そんな感覚をひねくり転がすだけだ。
そんな中でも、父親か、或いはそのかわりか。
身を擦り付けて慕ってくる、慕ってくれる感覚とは、思う以上に悪くはない。そう思うのだ。
「おう、呑め呑め。飲み切らねぇと帰りが重くなっちまう。
……犬猫を仕込んでみろとも思ったが、お前さんらのコトを思うとうまくいかねェ気がしてな」
情操教育のために、動物を育てるという親たちが居る。それらを踏襲する訳ではないが、手段として無為ではない。
自分とは違う時を生きるものを理解し、別離と誕生の疑似体験を前もって知るということ。
第二に、忍者の領分として手ずから育てたものから、必要な薬種などを収穫して使うということの予行演習と。
ついでに言えば、以前見た弟子の部屋の有様を見るに、もう少し彩りがあってもいい。そう思ったのだ。
種類について知らないなら調べることも、不在時の水やりを誰かに頼むことも、禁じはしない。
与えた命題をよく考えて、取り込むことが――重要と。いくつかアドバイスなどを肴に、酒を呑もう。
呑むものには困らない。道具の使い方の補足などもしていれば、きっと夜が明けるくらいには干していることだろう――。
■ラファル > 「ボク、あったかいの?」
丁度良いという言葉、幼女は首を傾ぐ、子供は基本的に代謝が多く、ほんのり暖かいのだ本人に自覚はなくとも。
それはそれで良いや、という結論に帰結し、にこにことうれしく笑う。
「犬猫……グリム君とかのことかな。
もっと飲むー!」
犬猫というならば、姉の嫁のゼナが狼犬を拾ってきている、一つ上の姉が基本的に散歩させたり、ゼナが冒険に連れて行ったりする。
たまに家にいるときに、ちょっかいかけたりしているくらいか。あれは育ててるとはいえるのか言えないのか。
とはいえ、それよりも師匠に指示されたのは草花の育成なので、そちらのほうを重視することにする。
そして、それよりもお酒をたくさん飲みたい、今日は祝いでお酒の席なのだ無粋なお話は後にしたい。
お勉強、修業はもう少しだけ後にして。
今は師匠と二人の祝いの酒を堪能すること、これが一番――――。
ご案内:「宿屋」からラファルさんが去りました。
ご案内:「宿屋」から影時さんが去りました。