2020/05/12 のログ
ご案内:「宿屋」に影時さんが現れました。
ご案内:「宿屋」にラファルさんが現れました。
影時 > ――ようは、何のことは無い。偶々ではなく、狙った通りに行き着く先は同じだけだったことだ。

雇い主から弟子が行き着く先を訪ね聞いていた、という点もある。
大股に歩むもの――ストライダーを名乗るものの移動速度に、日に千里を走るというのは言い過ぎでも、身軽な忍びが追い付けない道理はない。
思い通りに見かけ、呼びつけ、ついでに当地の酒瓶を幾つか買って宿屋を取れば後は呑むだけのことである。

「……っ、は。思ったより強ぇなァ、これ。流石に俺も樽で飲める気がしないぞ」

そんな声を零すのは、或る街の冒険者向けに開かれた宿屋。
マグメールと動乱で騒がしいアスピダへの道筋にある街道街であれば、人の行き交いは多い。
信用あるものから、如何にも風体怪しいならず者も含めて、様々だ。
そういう処であれば、大体高めの宿屋を押さえておけば間違いはない。
もちろんぼったくりは論外だが、安心と信用を謳う店は値段の設定に由縁がある。それを見極めるのが、冒険者の経験の賜物だ。

部屋は決して広くはないが、清潔なリネンと整備された調度、しっかりと鍵のかかる扉やチェスト等納得できるものがある。
外した鎧を装着するためのスタンドもあるが、今は丁度そこに携える太刀を横たえて寝台のシーツの上で胡坐をかく。
弟子の誕生日を祝うという名目の、ちょっとした酒盛りだ。

ラファル > 一応、幼女とて、いっぱしの冒険者である、冒険者としての保護者がいるとしても、だ。
 アスピダの一軒に関しては、いくつかの対応がある、まず、実家の商会……トゥルネソル商会としての対応。
 人竜ということもあるし、ドラゴンをたくさん抱える姉としては、人の争いに手を貸すべきではないという見解があり、商会としては、アスピダの事件は見守るつもりである。
 ただ、その事件が終わった後のアスピダに突撃して、いっぱい物を売ろうとかそういうことは考えている模様。

 次、冒険者としての幼女、ラファルとしては―――実は、今別に依頼を受けている、姉からの依頼で、姉の友人の護衛という状態。
 離れるにしても、氣で練り上げた分身を置いて護衛としている、影分身の術というやつであり、本体とそん色なく動く以上に、ダメージさえも気にしないで良いので、盾にすることだってできるので問題は無かろう。
 が、依頼を受けているという身でほかの依頼に手を出すのは冒険者としての仁義に悖るので、冒険者としては参加できない。

 あとは、忍者の弟子としての幼女だけれどもまあ、師匠がそんな無体なことをいうような人物ではあるが。
 無意味にそういった無体な命令をするわけではないので、おそらく今は問題はないというのが幼女の考えだ。

 で、今、その師匠につかまっていて、宿屋に連れ込まれたわけで、何かあったのだろうか、と先を歩く師匠の後頭部を眺めつつ、ちょこちょこついていく。
 少女の職業、ストライダーは、シーフ系の技能上位種で、暗殺などよりも、移動や、罠の設置解除などを中心としている、移動することに特化している職業だ。
 たぶん本気を出せば、師匠とて容易に捕まえることはできない―――と信じたい程度には、移動速度に自信はある。後、落ち着きのなさ。
 とはいえ、忍者の劣化版と言っていいだろう、というか、忍者はシーフ系の最上位と位置付けていいだろうと思っている。

「――――?」

 案内された部屋は、それなりに綺麗で、清掃も行き届いている場所。
 クンクン、とにおいをかいでも、変なワックスなどは使われていない、ちゃんとしている宿なのがわかる。
 そして、目の前の樽からは、芳醇な酒精のにおい。
 幼女はただただ、首をくり、くり、とかしげるのだ。
 家の人は兎も角、師匠に誕生日を教えたことはないので。

影時 > 風体として、侍に身なりを装っている忍者――もっとも抜け忍ではあるが、この男もまた冒険者である。
弟子を一人抱えている者である。だが、同時に自由人である。気ままに動く無頼である。
悪人がその身に贅肉の如く蓄えた悪徳で自滅するのを嗤い、時には小さな話に一喜一憂、涙することもある。
その身の生まれとして、如何なる種が己という肉身<ミ>を結び、世に落としたかは知らぬ。どうでもいい。

――しかし、伝え聞く限りとして、その生まれを寿ぐ行いというのは、それはそれで良いとも思うのだ。

「嗚呼、呑め呑め。
 お前さんの姉から聞いたぞ。この前が誕生日だったと。何を以て祝うべきか、ちぃと悩んだが、祝うからにゃ酒は欠かせんわなァ」

この幼女は、酒を呑む。不思議なことではない。水の代わりに酒を飲用する習慣のある土地は幾つか巡ってきた。
見目幼いものの祝いの品として、酒というのもおかしいかもしれないが、気質等を知る者として、下手な品は喜ばれない。そんな気がした。
贈るものについてはいくつか、用意した。だが、まずは祝いという名目で先日得た臨時収入を使い果たすのも粋だろう。
ドワーフ仕込みのエールという触れ込みの小さな樽を引き寄せ、ほれ、と栓を引き抜いて、空いた酒杯に注ぐ。

それを首を傾げる姿に、差し出すのだ。

ラファル > 「え?お酒?わーい!」

 酒と聞いて目を輝かせる幼女は、それはもう、お酒は大好きなのだ、蟒という言葉は、大きな蛇の事であり、そして、当方の八俣の蛇がお酒大好きだったからできた言葉と言われる。
 別に蛇ではないし、蛇種でもなく、ドラゴンだが、ドラゴンもたいがい、お酒は大好きなのである。
 つまり、幼女もお酒に目がない。師匠の意気な計らいに、目が輝くのだ。

「……蛇じゃないもん!」

 よく判らないだろう釘を刺した幼女は、樽に飛びついて頬ずりするのだ。たぶん師匠がいなければ、今頃樽毎パックンとお酒を飲んでいた屋も知れぬ。
 そして、グラスに注がれていく琥珀色のそれは、芳醇な香りと強い酒精を匂わせる。
 おいしそうというのが第一の感想で差し出される杯を両手で受け取るのだ。
 その小さな手にはとても大きな酒杯で、しっかりとそれを支えるように持つ。

「おいちゃん、ありがと!」

 満面の笑顔、ものもいいけれど、こういうもののほうが特に嬉しく思えた。
 そういう意味では、師匠の判断は、大正解だったといえる。
 そっと酒杯に唇をつけて、こく、こく、と少しずつ飲み干して。

 ふはぁ。と酒精こもる息を吐き出した。

影時 > 「ははは。蛇のようなものでも、蛇そのものじゃァあるまいよ」

ちっこいうわばみめ、と。そう言い足しながら笑う。
今でこうであれば、大人になればどれだけの酒飲みとなることであろうか。
四海をも干しそうなものであれば、伝え聞く話で聞いたような気がするが長じればもしかすると、そうなるかもしれない。
そうなってしまうと、最早忍びでも何でもなくなってしまう気がするが、それはさておく。

「……――なァに、礼には及ばんさな。また、次も祝えるよう健やかに在ってくれよ」

ドワーフ仕込みのエールという前評判だったが、存外外れではなさそうだ。
麦を仕込んだ酒というのはこの辺りに来てから頻繁に喉を湿らすために頻繁に飲用しているが、匂いで分かる。
これは、きっといいものだ。決して安くはないが、それに足る味わいをきっと自分達にもたらしてくれるに違いない。
乾杯とばかりに己の方の酒杯を掲げて、んぐ、んぐと呑んでゆこう。
ちょっと温めではあるが、逆に此れ位が丁度良い。つまみの干し肉やナッツの類も小袋に分けて買っておいた。

「邪魔にならん程度に祝いの品というのもなんだが、幾つか持ってきた。
 講釈はした記憶があるが、本式に伝授はしていなかったよな? 忍び道具の類は」

近くにあるテーブルに空にした杯を置き、立つ。壁際に設置された物入れを開き、取り出すのは巻物状にした布包みだ。
それを陶製の酒瓶と一緒に抱え、椅子代わりの寝台の上に戻って弟子の近くに置こう。

ラファル > 「へびじゃないもん!」

 もう一度、きっぱりはっきりしっかりと否定しておく、ええ、ドラゴンですもの。しゃぎゃぁと叫ぶドラゴンです、ちゃんとブレス吐けます。
 お酒好きなのは否定しません、いっぱい飲んで大きくなります。
 大人になればきっと……きっと。レディになることでしょう多分きっと恐らくメイビー。

「あい!まーかせて!」

 どんと、胸板を叩いての言葉だが、その視線はおいしそうな、細やかな泡が目立つ麦酒。
 それもおいしそうだな、と人の手にあるのは自分のそれと同じでもおいしそうに見える不思議。
 幼女もししょうにあわせて、くぴくぴくぴと、飲み干していく、飲み方は遅くても、飲む量の一口が長く飲み干す時間はさほど変わらずに。

「わ!わ!わ!」

 美味しそうなおつまみ、どれもこれも、お酒に合う食べ物ばかりだ、おいしそうだなと、少女はうれしそうに笑って見せて。
 豆を手にしてぽりぽりぐびぐびと。まさに酒のみの飲み方であった。

「えっと……あい。必要になった時に、と言ってもらってたと思うー。」

 そもそも、忍びの道具は特殊なものが多く、そして、それの大半の製造方法は当方の忍びの里にあるという。
 技術が秘匿されているので、こちらで再現するのも難しいと聞く。
 素材もまた、特殊なものが多いからで。
 差し出された道具、袋包みのそれ、開けていいの?とちらちら。