2020/03/03 のログ
■アマーリエ > 「私の手の内で収まり、納められる事項だった。今回は偶々それだけのことよ」
師団という単位の軍組織を束ねる以上、相応の権限が己の手には預けられている。
軍規の定めにない、埒外とすべき事項が絡むのであれば、己が責任において判断すべき事項もある。それだけのことだ。
故にそれほどでもない、と肩を竦めて、息を吐く。
落書きされた書類の原本は落書き部分は別途書き写したうえで、既に溶解処分済みだ。
あとは、己の胸先三寸次第でどうとでもなる。結果として問題なく済ませた。それでおしまいだ。
「そうねぇ。其処については特段、私からどうしてほしいということはないわ。
いずれ奔放なままでは済まなくなる。いられなくなる。
それを早急に分からせるか、仕込むかは其方次第よ。
大口の仕事を頼むかもしれないけど、その時まではしゃんとしてくれてたら有難いわね」
竜と謂えど、この国に住まう民の一人である。民を守る軍、騎士としての勤めが確かにある。
だが、だからといって子供の暴走に一々関わってはいられないというのが、正直な処だ。
暴虐に振舞う傭兵、騎士崩れはいくら焼き払っても気には留めないが、知った子供に討伐の兵を向けるのは気がひけるというのもある。
力あるものは相応の立ち振る舞いを、他者が求めずともおのずと求められる。その一挙一動を注視されるのだから。
「……――、驚いたわね。槍と、鎧? 改めて後で検分させてもらうけれど、ちょっと待って。出動権?」
さて、眼に見える形での詫びの品というわけではないが、入るとは思えない鞄から出される品々に当惑したように目を瞬かせる。
魔法の鞄という奴であろう。知識は知っているが、全ての兵に配備しようのないものから出る品は銘入りのそれと思える。
何かの謂れのあるものか。一先ず立ち上がり、槍と鎧を手近な台に安置させれば一緒に出される封筒に柳眉を顰める。
まるで肩たたき券のような。そんなライトささえ伴っていようなものに、思わず考える。
ねぇ、あの娘何歳かしらとつい、この女主人に問うてしまう位に。
■リス > 「その、偶々の僥倖で、しっかりと躾てくださった、本当にありがたく思いますわ。」
彼女の人格、彼女の権限……色々な綱渡りを渡り切った結果のお仕置きでの終わりなのだろう、それを取るに足らない事という雰囲気で息を吐く女史に、感謝の言葉と軽くの会釈を。
こういう気質は、軍人に多いのかしらね、なんて、分析してしまいそうにもなる、直ぐに忘れることにしたが。
「それに関しては、既に。というよりも、ずいぶん前から家庭教師を招いて教育中なのですわ。
まだ、子供すぎて身を結んでは居りませんが……ええ。
教育はしておりますから。」
彼女の懸念は判る。之でも、竜を束ねる群れの長なのである、母親は、その上ではあるけれども。
そして、少女は人竜であり、それだけでも人よりも様々な所で優れている、その危険性も併せて。
人の迷惑になるな、と教育はしていても、子供は矢張り悪戯を楽しむ者であり―――それが普通よりも強い気質の妹だ。
リスとしても、自分としても、妹の暴走で国と戦いたいとは思わないのだから。
これでも、この国の一員として平和を享受して居たい、平和主義者人竜(自称)でありたい。
「どういった物か、は此方の手紙に、第二師団の副団長、ミリーディア様の鑑定書の写しです。
はい、出動権です。
このチケット出して、お願いしていただければ、あの子がお手伝いいたしますわ。
ごめんなさいという事らしいです。」
困惑している、まあ、さもありなん。自分も妹がこんなことをするとは思わなかったが、実際に頼まれたのだから、彼女の反省の気持ちなのならば、と頷いた。
そして持ってきて、やはり、自分も困惑する。
それで良いのだろうかという気分もあるのだけれども、出したものは出したし、引っ込めるわけにもいくまい。
「ラファルは10歳、ですわ、人間換算と言う訳ではなく、実際に。
人間換算するなら、もっと低くなります。」
竜の感覚で言うなら、生後間もなく程度でもいい位の年齢、其れはリスも同じではあるけれど。
困惑する彼女の問いかけには、少女も苦い笑いを零して、返答を。
■アマーリエ > 「どういたしまして。でも、二度目はきっと無理よ。それだけは肝に銘じておいてちょうだいな」
偶々だった。そう判断する。そう考える。
露呈すると危ない場面で偶々、賽の目が都合よく揃ったかの如く、取り繕うことが出来た。本当にそれだけなのだ。
次はそうもいくまい。露呈させるべきではないタイミングで露呈したとなれば、他所の師団などからの干渉も想定せざるを得ない。
貴族同士のアレコレというのは意に介さないとしても、組織同士の遣り取りとなれば心底より面倒なのだ。
「……不断を超えて、一層の努力を要請するしかないわね」
洒落ではなくとも、普段よりやはり努力はしているのだろう。
しかし、それでも抑制がない、利かないというのは根っこから変えるのが難しい事柄なのだろう。
体罰を以て分からせたとしても、いつ再発する、暴発するしかないリスクというのは願い下げにしたい。
この辺りは自分が出る幕ではないとなれば、家庭教師とやらの努力に頼むしかあるまい。それが余人としての願いだ。
「折り紙付き、という訳ね。あとで一読の上、どうするかは考えさせてもらうわ。
気持ちは兎も角として、……分かっていたけど、若い。――若すぎるわね」
かの御仁の鑑定済みとなれば、不明な要素は省かれている、除かれていると考えて差支えはないだろう。
知らない魔力の発動条件があり、それが暴発してしまうとなるという事態は避けたい。
自分が使うか、腕の立つ己以外の筆頭騎士に預けるか。使い道を考えながら、もう一つのチケットの取り扱いに考えあぐねる。
口にされる年齢を聞けば、一層困惑げな表情が深まる。見た目にも幼女であるのだ。そんな姿を従軍させるというのは、体裁としてどうか。
「無碍には出来ないし、いただいてはおくわ。
……従軍させるつもりはないから、強制社会見学用とスカウトとして使わせてもらう位で良いかしら?」
カップの中の紅茶を飲み干す程度の時間で考え、出したのは無難な落としどころだろう。
如何に竜とはいえ、幼女を軍の最前線に立たせるのは論外だ。善くて偵察、並びに補佐。この位が限度か。
■リス > 「良く含んでおきますわ。」
あの子は悪戯が好きで軽々な性格だが、愚かではない……はずだと思いたい。今現状したことがすでに愚かであるとは言えなくないけれど、同じことを無為に繰り返すようなことは無いだろう。
少女は、こくんと頷いて見せて、今一度の返答を。
自分も何度もこういう場所―――危険な場所に来るのは御免こうむりたい、怖いからこそ、家で一番強い家令を供にしてきているのだ。
怖いのはドラゴンではなくて夜盗の方だが。
「はい、伝えておきますわ、家庭教師にもその方面での教育を重点的に、と。」
最上級にほど近い要請を承る。
もともとが、風のドラゴンとして自由を良しとする種類なのである、あれでも十分自重しているのだ、本人的に。
其れでは足りないと言われるから、足りないと伝えて直すしかなかろう、と、少女は目を細め、返答する。
「品物に関しては、贈って渡した時点で、私はもう関知は致しませんわ。
どのようにお使いいただくかは、アマーリエ様がお決めいただければと。」
武器と鎧、それをどういう風に使うのかは、専門家に任せてしまった方が良い、というか、自分ではどう使うべきなのかすらわからない。
なので、彼女の判断が正しいので、自分からは何も言えないと両手を上げて見せる。
もう一つ贈り物のチケット、若いと評したのはおそらくその数だろう。開けば出る出る100枚綴り。
使い切れるのだろうかとか思うし、そんなに渡して大丈夫なのか、とも思うのだ。
本人が良いのだから、少女はそう、としか言えなかった。
「そちらのチケットに関しましても、ええ。
私としては、危険な目に合わなければという程度ですわ、彼女に関しては、それこそ、竜相手でなければ、大丈夫と信じてますが。」
それに、一番の得意がスカウト等であるから、その使い方に文句は出ないだろう。
戦争とか、そういった事はさっぱりなので、返答のしようがなく、困ったように眉根を落とすのみでした。
■アマーリエ > 「いずれも重ねてお願いするわ。――本当にね?」
どちらもよく念押すように述べて、話題はここまでとしよう。
今すぐは無理であるにしても、改善を求めるように仕向けなければどうしようもない。
風の竜だからなんだ、という事柄でもある。人世に関与するのだから、人の報を優先してほしいというのは間違いではあるまい。
カップに口を受ければ、もうすでに飲み干した後だ。
形の良い唇を枉げ、肩にかかる髪を払って一瞬瞑目する。直ぐに気を取り直して。
「そうね。こういう武具を集めるのは趣味だけど、騎士達への褒賞として扱わせてもらうわ」
軍人の家という訳ではないが、師団長を務める家柄として此の手の武具を飾るのは一種のステータスでもある。
特性を考えれば、死蔵するよりは誰かに使わせる方が真価を発揮するものだろう。そう考える。
問題は、この百枚綴りはありそうなチケットの束である。
正直使い切れるのだろうか。ふと、思う。
引き出しの肥やしにしてはいけないとは思う一方で、週一の勢いで消費しないといけないだろうか?
スカウトを方々に遣わせて、集めるべき情報は多い。魔族の国の情報だって、縦深にかの地に踏み入らなければ手に入らないものも在る。
「無理のない処で考慮するわ。無茶ぶりして、別の問題を作りたくはないもの。
でも、そうね。社会見学はして貰いたいのは事実だわ。世を知らないといけない年頃よ」
竜相手ではというのは、無理かもしれない。暴竜対策に出向くことも多いのが我々だ。
街中に出張る盗賊、他国の間諜対策から始めた方がいいだろう。あと、騎竜たちとのやり取りなどの雑用か。
小さなことを重ねていけば、きっと使いきれる。そう判断しながら、手を叩く。外に控える侍従を呼ぶ。茶を補充させるために。
■リス > 「はい、判りました。」
念を押す様は、よっぽどの必死を感じて少女はこくんと頷くことにする。
これで、謝罪も終わりという所で良いだろうと、内心で少女はふう、と吐息を吐き出した、そして、お茶を一口唇を湿らせて。
向かいでは、彼女が飲み物を飲もうとしていて中身が無かったようだ、今、一口頂いたがとてもいい紅茶であるのは、間違いは無かった。
「はい、どうぞ。」
だれが使おうとも、其れは彼女の判断を支持するという意味で少女は微笑みを浮かべて頷くのだ。此処の騎士がどのような人がいるかが判らないから、というのが大きい。
使ってもらえるなら、武器も鎧もうれしいだろう、そう思うだけであった。
そして、持て余し気味なチケット、言わないで置いたのだけれど其れは、妹が自ら手作りしたのだ、全部メイドインラファル。
たくさんある方が良いよね、と屈託なく笑って作る妹、手作りだと知ったらどんな表情になるのだろう。
ちょっとだけ興味が湧くけれど我慢。
「軍の行く先々、で有れば安全に色々調べる事もできそうですわね。
ふふ、妹の成長楽しみに思いますわ。」
彼女はどんな景色を見せてくれるのだろう、妹は何を見るのだろう。
姉として其処は楽しみに思えるのは―――竜だから、だろうか。
■アマーリエ > 必死というよりは、早急に改善しないと後々禍根を生む危うさを抱かずにはいられないからだ。
その禍根は自身だけではなく、他を巻き込むようなものであってはいけない。
「私が使うものであれば既に足りているもの。そうであれば、ね?」
普段遣いの剣は自身が冒険者をしていた頃に得たものだが、あとはあれば困らないのはそう多くはない。
倉庫の肥やしとするよりは、託すに足るものに使わせる方が軍備として間違いではない。
無いよりはある方が励みになるのは、必定であろう。
足り過ぎて困りそうなのは寧ろ、この数は沢山あるチケットだろう。
この色々な意味で味わい深い造りは若しかしなくても、手作りなのだろうか?
そう思えば、己の顔つきもいよいよもって、複雑な面持ちが増す。
子供のしでかしたことに対する、子供なりの侘びを無碍にするのは大人として、どうすべきか。その辺りはまだ年季が足りたいか。
「その辺りはもう少し、姉として努力もお願いしたいところだわ。
あ、ついでだけど。師団の正式な依頼として物資の確保をできる筋を確保しておきたいわ。具体的には……」
成長の働きかけになるかどうかは、確約はし辛い。
偵察兵の補佐や即席の根拠地造りの土地の選定、罠の排除等、地味な仕事が多くなるのかもしれない。
あとは、別件としながら商人として幾つかの依頼を行うことで謝罪から交渉、商談の場として移してゆこう。
この師団の活動の肝は何よりも、食糧の確保にある。それを為せる筋は多い方がいい。
即時ではなくとも、戦地へのピストン輸送を行える手段の背景を得るために、紅茶を補充しながら話を進めようか――。
■リス > 「誰かに使わせた方が、より戦力になる、ですわね。」
彼女の装備は見たことはないが、足りているというので、この武器は彼女は使わないのだろうと認識する、先程も言ったので、其れに関しては問題は無い。
武器防具はこれで良いのだろう。
視線が動くのが見えた、困惑の表情が強くなるのも見える。その視線の先には100枚綴りのチケットである。
よくもまあ、そんなに作ったわね、というのが少女の―――姉としての思考。
それを持て余しているような様子の彼女に、掛ける言葉が無かったというか……何を言えばいいのか判らなかった。
何せ、それをどうするのかは、彼女にゆだねられていて、少女には権限が無いし。
「あら、あらあら。
私、戦争には、軍には関わり合いになりたくないのですが―――仕方がありませんわね。」
商人であり、様々なものを取り扱うからこその物、依頼が飛び込んでくる、売り上げにはなるのだけれど、軍とはあまり商売をしたくは無かった。
大口顧客としては良いのだけれど。民間とのやり取りの多い―――皆に愛される商店の積りであった。
が、妹の不始末で出来てしまった縁である、仕方がないわ、と切り替え、少女は商人に戻ろう。
意図が理解できてしまった。
確かに謝罪の場でもある、贖罪として、取り決めを曲げるのも致し方なしと。
少女は、提案する、ドラゴン急便を使用したピストン輸送などを。
何を如何使うのかは、此処からの相談次第になるのだろう―――
ご案内:「第十師団・本拠地」からアマーリエさんが去りました。
ご案内:「第十師団・本拠地」からリスさんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
■エレイ > ──温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。
その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。
なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。
「──はーいお疲れチャン。また来てくれたまへ」
そんな中の一室から、満足げに出ていく宿泊客を笑顔で見送る、スタッフ用の作務衣姿の金髪の男が一人。
今日も今日とて知り合いからの依頼で、臨時のマッサージ師として仕事に精を出しているのだった。
「ふぃー……こういう普通のマッサージも悪くはないのだが、そろそろ一発エロマッサージでもしたいところであるなぁ」
個室内に戻り、施術用のベッド脇の椅子に腰掛け首を傾けくきくき鳴らしながら、そんな詮無い独り言を漏らす。
今日は現状、立て続けに男の『標的』にならない客の来訪が続いたため、男はごく普通のマッサージ師として
仕事をこなすばかりであった。
男としてはそれもそれでやりがいを感じなくはないのだが、やはり役得の一つぐらいは欲しいところであった。
「まああそれも時の運というヤツなのだが……──おっとと一息つく暇もなさそうだったな」
ボヤキを続けようとしたところで、閉じたばかりのカーテンが開く。
さて、やってきたのは男の『標的』になりうる客か、それとも──