2020/03/02 のログ
ご案内:「第十師団・本拠地」にアマーリエさんが現れました。
ご案内:「第十師団・本拠地」にリスさんが現れました。
アマーリエ > ――これは過日の件だろうか。

先日届けられた書簡を一読し、黙考を経て返信した際のことを改めて思う。
アポイントを求める報せに対して、指定したのは王城内ではなく王都マグメールの郊外に設けた本拠地である。
小さな城でも構えても違和感ない程の敷地の広さは、演習地をその内側に求めたが故だ。
そして何より、連日より途絶えない竜の咆哮を鑑みたためでもある。
口の悪い者であれば、魔獣屋敷とも呼んでもおかしくない其処は竜と其れを駆る騎士達が座す地でもあるのだから。

「そろそろかしら、ね」

堅牢な作りで構えられた屋敷の一室、応接室として作られた部屋の中に黒い騎士服を纏った主たるものが居る。
華美過ぎない落ち着いた風情に整えられた部屋に置かれた時計の時刻は、丁度昼過ぎ。
ソファの上で膝を組みながら、返信の際に書き記した日時を思い返す。
現状、緊急の出撃命令は出していないとなれば、屋敷の外に構えられた厩舎ならぬ竜舎より唸りや叫びが聞こえる。

嗚呼、またやっているのだろう。

騎士同士ではなく、竜達の喧嘩だ。特段止めはしない。この位はじゃれ合いの範囲だ
いざとなれば竜と騎士達の中で一番腕っぷしが立つものが、強引に言い聞かせる。ただ、それだけのことである。

リス > 先日の事、自分の妹が王城に忍び込み、第十師団の団長に迷惑をかけた。
 忍び込んだり悪戯しているという事は知っていたが、先方から呼び出しが来たことにより、何をしたのかが分かった。
 取りあえずは、先方の指示通りに妹を送り出したのだが、それで終わりではないのである、此方は商会であり、組織なのである。
 末端である妹が、悪戯しましたお仕置きされました、で終わらせていいものでは無いのだ、監督者にも監督をちゃんとしていなかったという責が発生する。
 だからこそ、改めて第十の師団長へと書簡を送り、アポイントメントを取る。
 僥倖か、許可があり、返答が来たので指定された場所へと行くことにする、今回は此方の非しかないのだ、どのような場所でも指定されてしまえば、其処に行くべきなのだ。
 指定された時間、少女は指定された場所へと足を運ぶことにする。少女の家の馬車に荷物を載せて。
 御者には家令長を頼んで。

「お待たせいたしました。アマーリエ様。
 私が、トゥルネソル商会、首都マグメール店店長、リス・トゥルネソルと申します。
 この度はお時間を頂き誠に恐縮に思います。
 そして、本来であれば、会長である父母が出向くところではありますが、私が名代としてお話しすること、お許しくださいませ。」

 今回は、まじめな謝罪の場である、普段は身に付けない、濃紺色のカクテルドレスに、失礼にならない程度の化粧、薄い色のリップに、アイシャドウなど。付けているか、付けていないか程度の頬紅。
 髪の毛もちゃんと梳いて纏めてバレッタで止めておく。
 そして―――普段の少女と一番違うのは、その背中に両手、本来の姿である人竜の姿での、来訪。
 尻尾が地面の土を削るのだ。
 竜の喧嘩を気にしないのは、只々、アマーリエの青い瞳を見ているから。
 謝罪のための少女は、只々静かに、彼女の近く、5m程の所まで近づき足を止め、お辞儀を。

アマーリエ > 差出人の名前を見れば、用件はおおよそ想像がつく。
正直に言えば、罰を下した点で内心としては片を付けている。
認知している範囲で被害を被ったのは、第十師団内の書類のみ。それも最終的に外に出る事になる範囲内のものだ。
いずれは公報にも記されるであろう類のものは、時を経るにつれてその機密性は希釈されることになる。
そして、何よりも子供のしでかしたことだ。
そうでなけば、同質・同量の罰を下して免じるという判断はできない。他所で被害が出たら? それはもうどうしようもない。

さらに言えば、先日方向性が違うとはいえ、関係者以外が跋扈している風景を見た。
何を以て対策を講じるべきであろうか。最低限出来るとすれば、それは自衛するほかない。

「――来たようね」

暫し時を持て余していれば、扉の向こうで足音と気配が動く。そのあとに開く扉から入ってくる姿が見える。
正式な面会を求めてのことであるのだろう。身なりを整えた様に立ち上がり、一礼を経て迎えよう。

「御機嫌よう。第十師団の長、アマーリエ・フェーベ・シュタウヘンベルクよ。
 ……取り敢えず、座って頂戴な。用向きはおおむね察しているつもりだけど、わざわざ出向かれるなんて思ってもみなかったわ」

己も名乗りを以て答え、テーブルを挟むように置かれたソファに着席するよう求めよう。
少しすれば、侍従の騎士見習いたちが茶器を持って入ってくる。
注がれる茶の香りは、王室御用達の名店から買い求めた来客用のものである。
少しは名の知れた商家の名代の来訪なのだ。それなり以上に配慮はする。用向きの発端がどうであれ、客であれば猶更だ。

リス > 「ごきげんよう、アマーリエ様。
 其れではまず、失礼いたしますわ。」

 示された場所、室内へと入れば少女、謝罪の言葉を紡ごうとしたのだが、先んじて座るように言われる、座っての会話を望むのであろうことに理解を示して少女はソファに腰を下ろすことにする。
 ぎしり、と軋むが其れでも少女の体重を受け止めるソファは、柔らかくいいスプリングを使って居る事を思わせる。

「お構いなく、お願いしますわ。」

 侍従たちが用意するお茶、凄く良いものなのが見て取れる、少女は微笑みを零しながら、侍従に、その主に一言。何故なら、今回は謝罪に来たのだ、確かに客とは言えども、其れは気を回しすぎではないのかと。
 だから、と少女は薄く笑みを浮かべて見せる、流石に、此処は不快感を表していい所ではないのだから。

「組織、と言う物は、当事者だけで終わるという事は稀ですもの。
 それに……私自身あの娘を御しきれてなかったのですし、ご迷惑をおかけして、家族として、彼女の上司として、謝りに出向くのは自然な事と思いますわ。」

 出向くには、十分以上の理由があります、少女は目を伏せて、はぁ、と軽くため息を零す、今も自由にどっかを走り回っている暴走娘。
 迷惑になる事は控えなさいと言うのに、と頭を抱えたくも。
 そんな姿を見せ続けるわけにもいかないので視線を上げて少女は、もう一度桜色の唇を開く。

「個人的な謝罪は、ラファルの方から。
 商会としての謝罪は、私の方からさせて戴きます。」

 本当に、申し訳ありませんでした、少女は深く彼女に頭を下げる。

アマーリエ > 「この前の件であれば、気兼ねなしに願いたいわ。
 元より大事にするつもりもないの。だから、客として最低限遇させてもらうわね」

嗚呼、やはりか。鎧を纏った騎士が座しても荒れることなく、重みを支えるソファの音を聞きつつ困ったように笑う。
己の中では既に終えたこととしている。蒸し返すつもりもない。
公にするには半ば公然の事実であるかもしれない危惧と、何よりも王城には闖入者の備えが弱いという下らない認識を散らす疑いがある。
近衛とてけして脆弱でも愚鈍ではあるまい。
備えの網を縫って侵入できるものが一筋ならぬ力量の持ち主であったからこそ、でもあろう。そう考える。
だから、表立った事柄にはこれ以上したくない。

「そうね。何は兎も角、私の胸先三寸で収まったからこそ、でもあるわ。
 落とし前をつけに来た、というのは有難いけど、これ以上の謝罪は特に要らないわよ。

 私個人としては、あの娘のお尻を叩いて躾させてもらっただけですっきりしてるの。
 後は出来たら、考え無しの無茶はしないように手綱を引いてもらったら……助かるわね」

大事にならないようにセーブできたのは、権限の及ぶ範囲内で収まったという事柄が何よりも強い。
頭を下げる姿に上げるよう促して、自分の分として淹れてもらった茶を満たしたカップを手に取る。
侍従には、あとで片付けに来るように命じて下がらせて、何やら頭が痛そうな様相にしみじみと遠い目をしよう。
元気がいいのは大変宜しいことだが、まつわる悩みは数尽きない。そんな風情に微かに同調を覚えて。

リス > 「そういう事でありましたら、では。」

 はふ、と吐息を一つ少女は吐き出そう、妹から聞いている性格、実際に言葉を交わしてみると思った以上にさばさばしていると言える。
 しかし、それではいそうですか、と言えないのが、組織としての難しい所であるのだ。
 王城の警備などそういったものに関しては、少女は―――知らない、兵士さん頑張ってますね、という程度の認識でしかない。
 侵入者の備えとか、防諜とか、そういった言葉も、首を傾いでしまうぐらいに判らないのだ。

「お言葉、お心遣いはありがたく思いますわ……しかし、それでも、それを良しとしてしまえば。
 暴走した娘を放置して、それを良し、とする商会と言う噂が出てしまいます。
 
 ええ、ええ。今後はそのような事が内容、更に目を光らせることは約束しますわ。」

 当人同士で終わらせられないのが、組織と言う物であるそして、所属する場所の長としては、妹のしでかしたことを諫めてくれた事に感謝はある。
 其れとは別に、形だけでも、謝罪に来たというその事実も、必要なのである。

「それと、手土産を一つお持ちしましたわ。
 これは、謝罪……はもう必要ではないという事なので、ええ。
 あの子を止めてくれたお礼、正しいことを教えてくださった感謝の気持ち、ですわ。」

 少女は、にっこりと笑って見せる、謝罪はもういいというなら別の形で気持ちを表せばいいだけと。
 そして、小さなハンドバックに見えるそれから取り出すのは一本の槍と、一セットの鎧。

 後、その隣にある白い封筒である。

「これを、お納めくださいまし。
 ラファルからのごめんなさいを、表現した結果でもありますわ
 目録としては、風の槍に、風の鎧、あと、ラファル出動権という所ですわ。」

 槍と鎧は、ラファルが以前魔族の国の城に入り、手に入れてきた武器防具の一セット。
 出動権と言うのは簡単に言えば、彼女がお手伝いするよ、というそれである。