2019/09/29 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
■エレイ > 温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。
その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。
なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。
「──くーわわわ……」
──そんな中の一室で、施術台の横の椅子に座って待機しながら大欠伸をかましているのは、スタッフ用の作務衣に身を包んだ金髪の男。
男は正規のスタッフではないが、スタッフの一人である知り合いの頼みでヘルプとしてこの場に入っていた。
一応、名目としては冒険者としての依頼という形にもなっており、報酬も出すとのことなので、男としては断る理由もなかった。
──で、そんな事を定期的に繰り返しているうちに、男のマッサージは客の間で徐々に評判に
なりつつある、というのを知り合いから聞かされた。
男としてもここ最近妙に指名が多いような気がしていたが、どうやら気の所為ではなかったらしい。
まあ、評判になっているというのであればそれは良いことだと思う。
思うのだが──
「いや、それはいいんだが……俺様は一応冒険者なんですがねぇ。なんかもう
流れのマッサージ師にでも転身してやろうかにゃあ……おおっと?」
なんて、男個人としてはなんというか複雑な胸中をブツブツと吐き出していると、
ふとカーテンが開く音がして我に返り、顔を上げる。
さて、訪れたのはマッサージを所望の客か、それとも──
■エレイ > そして男は訪れた客を個室に招き入れ、カーテンは静かに閉じられ……温泉旅籠の淫靡な夜はしめやかに更けてゆく。
ご案内:「九頭龍の水浴び場 マッサージ室」からエレイさんが去りました。
ご案内:「娼館2階・角部屋」にサウラさんが現れました。
■サウラ > 「無理が祟ったのね。今はゆっくり休むのが一番の薬よ」
ベッドに寝そべる友人の肩口にまでリネンの掛け布を引き上げ、寝台の傍の椅子に腰掛ける。
此処で部屋持ちの娼婦である友人が体調を崩して寝付いたと聞き、見舞いに訪れていた。
訪れてみれば己のほかにも見舞い客が居て、楽師も片隅に侍って控えめな旋律を爪弾いている。
訪れた目的は適度な会話でほどよく友人を疲れさせ、ぐっすりと眠らせることだ。
友人とほかの見舞い客、そして己の声が代わる代わる話に花を咲かせること、暫し。
ごめんなさい、と、か細い声で謝る友人の額からさらりと髪筋を優しく払いのける。
「ふふ。気弱になると謝る癖、抜けてないわね?
それとも…、此処に居る私達に心許してくれてるって証かしら」
悪戯っぽくそう告げ、友人の肩口あたりを片掌で穏やかにたたく。
■サウラ > 今の今まで会話し続けていた友人の瞼がゆるゆると下がり始めて、
程なくして小さな寝息が立ち始めるのは、その直ぐあと。
「――…眠ったわ」
同じように見舞いに来ていた者に無声音でそっと伝え、
離れた位置の楽師には軽く目配せを送れば、旋律がふつりと止んだ。
「さて――…、ほんとのところ、お見舞いにいらしたのかしら?」
見舞い客のすぐ傍へと近づき、笑い含みの潜めた声で問う。
「……熱いひとときを過ごそうと思っておいでになったのに、
彼女、こんな状態なものだから、肩すかしを喰わされたのはない?」
■サウラ > 「折角お会いしたのだから、もう少しあなたとお話がしたいわ。
――…彼女が起きるまでの間でいいから、…ね、行きましょう」
隣室に御茶を用意させたから、せめて帰り際に寛いで行って欲しい。
そう友人に予め告げられていたので、やや強引にも見舞い客の片腕を引き、
静かな足取りで部屋を辞去して隣室へ向かおう。
此処に用意されなかった理由は、食物の匂いを嗅ぐと吐き気を催すからだそう。
大したことではなさそうに振舞っていたけれど、友人は随分と具合が悪そうで、
その上『帰らないで』と友人の瞳には、ありありと浮かんでいたものだから。
嗚呼この見舞い客と友人とを二人きりには出来ないな、と。
内心の溜息と諦め混じり、引き受けた次第。
――貸しひとつ、よ。
心の中でだけそう紡ぎ、病身の友の安寧を護るべく一肌脱ごう――…
ご案内:「娼館2階・角部屋」からサウラさんが去りました。