2019/09/05 のログ
エルディア >   
半分流体の様な動きでずるりとお湯に体を沈める。
躰に絡みつく髪の毛が幾分か煩わしい。
お湯に沈んだまま湯面に上がっていく細かい泡を眺め
きらきらと輝く様にきれいだなーと何処か他人事のように思いながら息を吐く。
一際大きな泡が細かい泡を押しのけ弾ける様を眺めるとゆっくりと上半身を起こす。
水音と共に水面上に顔を出すと軽く頭を振り周囲に雫を飛ばしながら髪の水を切りながら周囲を見渡した。
ゆっくりと当たりを見渡した後、お目当ての物を見つけるとゆっくりと近寄りそれを手に取る。
陶器の瓶と小さなカップ。その中に満ちているお茶と氷が揺れるからんという涼しげな音に満足げに僅かに頷くと、
カップに良く冷えたお茶を注ぐと岩に背を預け、ゆっくりとカップを傾ける。

「ふやぁ……」

ふにゃーっと目を細めて一息満足げなため息を吐く。
温かい中で冷たいお茶を飲む。
これが最近覚えた贅沢の一つである。

エルディア >   
体の芯を通り抜けるような冷たい感触に少しだけ感覚が落ち着いてきた。
飲み干したカップを指の上でくるくると回転させながらぼーっとそれを見つめ、ふぅと息を吐きかける。
それは次第に回転が止まると同時にぴしぴしと小さな音を立てながら氷を纏い、数秒後には小さな氷塊と化す。

「……ん」

他人には判りにくい、僅かな表情を浮かべながら
陶器の瓶にも手を伸ばし、それも同様に凍っていくのをみると僅かに頷く。
こうしておけば暫くの間は凍ったままだ。
そうして湯舟に身を沈めると瞳を閉じた。
それと同時に気配が急速に薄れていく。
もし今真横に人が居たとしても、彼女の存在に気が付くことができないであろう程、薄く、薄く。
そのままゆっくりと首が傾いだ。

「……すぅ」

やっと穏やかになってきたのだもの。
誰にも邪魔されない夜に暫く虫の声に耳を傾け、
こうして微睡むのも……悪くない。

……数刻後、完全に湯当たりした幼女がふらつきながらその場を後にするのはまた別のお話。

ご案内:「九頭竜の離れ温泉」からエルディアさんが去りました。