2019/06/09 のログ
■ルークス・ルナエ > 「ふむ、お前が卸した――エルフにしては珍しいことをする。
あれは植物ばかり喰らっているような連中という印象があったが……
世の中、変われば変わるものだ」
外見とは裏腹の年寄りじみたことを言いながら、串に刺さった肉は早々に平らげた。
そうして酒をまた注文し――加えて、チョコレートを一皿。
焼け付くような酒と、菓子の甘さとを交互に楽しみながら言うには、
「酒に、菓子は合うのだぞ? チョコレートでも、飴でも、試してみるがいい。
寧ろ酒を使った菓子もあるが……まぁ、あれは特殊例だな」
実際に喰らう姿を見れば、菓子と酒の取り合わせは、そう珍奇なものとも映るまい。
器用に片手だけを用いて、甘さと酒精を交互に味わう女――もう片手は、戯れるままだ。
耳の縁に触れた指は、言葉でこそ咎められたが、打ち払われはしなかった。
それを良しとして、女は厚かましく指を留めたまま。寧ろ、指先にて弄び始める。
爪と指の腹で、耳の輪郭をつうっとなぞる細やかな戯れ。
そして唇を寄せて、酒精の匂いに染まった息をも耳に吐きかけながら言うには、
「なら、早く喰ってしまえ。……確かにお前の言う通り、傅く女に困ることはないが。
だが私にも好みがある。食事も酒も、抱く女も、私の好みで選ぶのだ。
……まぁ、つまり。お前を口説いているのだとも」
指先。吐息の温度、風。声音はテーブルに残る菓子のように甘ったるい。
衣服の襟さえ乱さぬまま、耳を犯すような戯れは、振り払われぬ限りは続くだろう。
■サウラ > 偶々空席だった己の隣も今しがた塞がり、
「ふふ、エルフといっても色々居るの。肉を食べる種族もいるの、私みたいにね。
でも肌の白いエルフみたいに野菜も果物も食べるわ。
美味しいし、綺麗になれるもの。」
ダークエルフはオークと交わって生まれた種族だとか、
人間を食べる種族だと場所によっては誤解と侮蔑の対象にもされることがある。
だがそういった偏見は、隣に座る相手には無縁のもののようだ。
第一印象の話ででいえば、相手の年齢も不詳だ。
探求する賢者のようであるし、苛烈な覇者のようでもある上に、
話術を好んでいるといえばいいのか、会話そのものを愉しんでいる節さえある。
不思議な魅力を持つ相手の隣で、ゆるりと己のペースで肉を咀嚼し、平らげてゆく。
「ええ、お酒に甘いものが合うのは知っているわ。チョコレートなら、シェリー酒に合わせるのが好き。
でも、ごめんなさい、私が勝手にあなたに抱いていたイメージとは随分違ったから。
――あなたのことよく知らないのに、おかしな話ね。」
相手の指先が耳殻の内側の、余りにきわどいところを撫でたときにだけ、ふい、と時折貌を背けて逃げる。
官能を逃がさなければ、直ぐにでも濡れて仕舞いそうなほど相手のの触れ方はとても細やかで、
そして同時にとても手馴れて居る。沢山の女が相手の事を愛し、相手に触れられた女は悦んだのだろう。
本気の拒絶を抱けないのは、この人の指先と吐息とで、躰の奥に欲望の火が小さく燈されて仕舞ったのを感じたから。
「食事と酒で満足したら、次はデザートね。
……直ぐ口説かれるような尻軽のデザートに、あなたが満足するといいのだけれど。」
■ルークス・ルナエ > 指先で耳を弄ぶ、その戯れは暫しの間続けられるだろう。
誰の目をはばかることもなく――向けられる視線はせいぜいが店員のものだろうが――急かず、飽かず。
それでいて獲物が逃げるそぶりを見せた時には追うこともなく、
だから官能はある線から先まで、なかなか溜まって行くこともない。
或いは相手が逃げることを諦め、嬲られるままになれば、その火は愈々高まるのだろうが。
「互いのことを知るには、一度の夜では短いな。
かと言って、日の高い内から語らうには、出会いの場も方法も仄暗い。
全くままならん。いっそ時まで自由に止められるならと思うが――」
暫しの戯れの後に、その指は漸く耳殻より離れる。
その手が向かう先は――肩だ。肩を抱き寄せ、引き寄せるように、その手は動いた。
近づく距離、体温、声。腕の力は強い。傷みを与えぬようにこそしているが、敵を葬る為の、戦士の腕だ。
そうして〝獲物〟を捕らえた女は、愉しげな声音で言う。
「私が選んだ以上、外れということはあるまい。
こう見えて長く生きている。目利きには自信があるのでな」
――食事が終わったならば、女は宿を取るだろう。
酒場からさして離れてもいないところにある、平民地区としては上等の部類に入る宿。
その一室に招かれて行くか、拒むかの選択肢は、ダークエルフの女に与えられている。
もし、友に行くことを選んだのなら――その夜は眠りを許されぬ、熱いものとなろう。
ご案内:「王都マグメール平民地区『酔っ払いの舌亭』」からルークス・ルナエさんが去りました。
■サウラ > 此処が誰の目もない宿屋であったなら、
耳を弄られる間に蜜の滲んだその場所を相手の目前に晒すこともしただろう。
此処に来たからには、ちゃんと食べてあげたい。
些細だけれど、この店に来た理由こそが己の理性を留める枷となる。
「っ、…あなたに、時を止める力を与えなかった神に感謝しなくては。
時を止める能力まで備えていては、わたし、逃げる術が無くなって仕舞うもの。」
相手の指が離れたことを惜しむ前に、強い力にくっと躰を引き寄せられる。
その腕に抱き寄せられることで、相手の本質を知る。
随分と手加減してくれてはいるけれど、戦人の腕だ。
相手の長躯にすっぽりと収まる己の躰は随分と頼りなくて、腕のなかで小さく笑った。
「自信家ね。でもね、もし本当に「外れ」だったとしても、途中で止めては嫌よ。
そんなことしたら、あなたのお腹を抓るわ。」
きっと抓るだけの贅肉なぞ、相手には無いのだろうだけれど。そんな軽口を紡ぐ。
嗚呼、類稀な美貌が気紛れに己の隣に座ったことで大変に気の散る…、否、
途轍もない誘惑に満ち溢れた食事を済ませた、そのあとは。
力強い腕に抱かれて連れ立って二人きりになれる場へと移り、
時を忘れ果てるほどに散々と鳴かされる羽目になるのだろう。
そして相手に再び見えることとなった暁には、今宵抱かれた記憶が瞬時に蘇って、
「雌に堕された夜」のことを赤面する一幕もあったことと――。
ご案内:「王都マグメール平民地区『酔っ払いの舌亭』」からサウラさんが去りました。
ご案内:「廃墟」にルビィ・ガレットさんが現れました。
■ルビィ・ガレット > しん……と静まり返る暗闇の中。硬質な靴音がひとつ。
その正体は異形だ。漆黒の影を衣服のように身にまとい、白いかんばせに際立つ赤い双眸。
白に近い銀髪は一部が赤く発光しており、それは女の背まで続いている。
ひとり。人の姿を解いて、ここにいた。
原型をほとんど留めていない建物。欠けた柱。瓦礫の低い山。
屋根部分は完璧に破損しており、腐った骨組みが歪なバランスで一部残っている。
明かりがなくても鮮明に見える、目の前の風景。
その場に立ち尽くして、物思いに耽っている……。
「……………」
■ルビィ・ガレット > 時折、遠くからこちらの様子を窺う野生動物の気配がする。
彼らからすれば上手く身を隠しているつもりだろうし、
こちらが怪しい動きを見せれば、襲うなり逃げるなりするつもりだろう。
しかし、索敵能力の高いこちらからすれば、彼らの位置特定はたやすく。
殺した息遣いも手に取るようにわかる。視線には警戒や怯えが感じ取れた。
……思索を途切れさせ、それに苦笑するダンピール。
「……私は、動物にはやさしいほうなんだけどな」
■ルビィ・ガレット > 警戒を保ったまま、遠ざかっていくいくつかの気配。
実質、彼らに逃げられたのだ。危害を加えるつもりがなくとも、
怯えられているうちはどうしようもない。
「……はぁ。――?」
やるせなく、僅かに重たい息を漏らした。……が。
間髪入れずがさがさと音を立て、茂みから勢いよく動物が飛び出していった。
こちらを遠回りに避け、足早に木々の向こうへ行ってしまう。
「――誰」
知性の感じられる、野生動物とは違って原始的ではない気配。
目を細め、周囲を警戒しながら通る声で問うた。
慌てて去った獣は、自分以外の「誰か」に驚いたのだろう。
■ルビィ・ガレット > 返事はない。相手の息遣いは確かに感じられる。
でも、応答がない。……やりにくい。
せめて、敵意の有無を示してもらいたいところ。
向こうにこちらが視認できていることを前提に、
こちらの意向を示してみるか。
「今すぐ大人しく、両手を上げて出てくれば殺さない。
――さもなくば、殺す。……自分が何をするべきか、簡単でしょう?」
口角をつり上げ、鋭い牙を見せながら嗤った。
廃墟の闇向こう、木々の中に身を潜めている「誰か」にプレッシャーをかける。
照準を絞ってその姿を捉えようとしているが――、
さて。相手はどう出るか。