2019/06/08 のログ
ご案内:「王都マグメール平民地区『酔っ払いの舌亭』」にサウラさんが現れました。
■サウラ > 今日の昼過ぎごろ、何頭かの騎獣を安楽死させた。
捕獲後の環境変化に慣れることが出来ずに衰弱しすぎた個体、
調教師を襲って殺し、人の肉の味を覚えて仕舞った個体、
繁殖用の雌と交尾中に別の雄から突進されて一物が折れて仕舞った個体、様々だ。
なかでも交尾中の事故は高確率で起き易く、かわいそうだが珍しいことではない。
どの個体にも当て嵌まることだが、魔術治療なりを受けさせれば治癒は可能だ。
ただ、物凄く高額なのだ、魔術治療というのは。
よほどの希少種か秘蔵の種雄であれば話は別だが、大抵は割りに合わないとして
今日のように安楽死させたのちに潰して食肉加工されることが殆どである。
焼けたよ、と野太い声と共に、カウンター席のひとつに腰掛けていた己の前に、
太い串焼きの乗った皿がドンと音を立てて勢いよく配膳された。
安楽死をさせた日は必ずこの店に立ち寄って食事をすることにしている。
この店は、潰した騎獣の卸し先だからだ。
ご案内:「王都マグメール平民地区『酔っ払いの舌亭』」にルークス・ルナエさんが現れました。
■ルークス・ルナエ > かん、と硬質の足音。店の入り口の扉をくぐり、カウンター席へ向かう気配。
十分な飽き席がある筈の店内で、その気配は真っ直ぐ、先客がいるカウンター席の隣に腰を下ろすだろう。
長身の女だ。纏う衣服は上等、顔立ちは幾許か冷淡の性を見せてもいる。
長い足を余らせるように座った女は、カウンターに肘を預けながら言った。
「隣の、その肉と同じものを。後は酒だ、強いのをな」
店員へ要求をし、金を出して。酒はそう時間もかからず届くだろう。
手に取り、一息に、まるで水を飲むように飲み干し――衣服に似合わず振る舞いは、粗野な傭兵のものだ。
それから漸く、無遠慮に距離を詰めた先の相手へと首を向けて、
「美味そうだな、なんの肉だ? 匂いにつられて注文したはいいが、それを聞いておらなんだ」
軽く酒が入ったが故の上機嫌さか、舌は良く回る。
■サウラ > ときには行列が出来ることもある評判の店の客入りにしては空席が目立つのは、
店が混み合うには少しだけ早い時刻であるからだ。
己が混雑時間を避けて来店したのだから、当然といえば当然の状況といえる。
空席の目立つ店内に不意に響いた高い物音に、物思いに沈みかけていた意識が引き戻される。
わざわざ振り向いて確かめることなぞしないが、靴音だろうその物音の主が己の席へと近づいてくる気配を
なんとなしに耳で追いながら、先に届いていた真鍮のゴブレットを片手で引き寄せる。
きし、と己の隣のスツールをまるで従えるかに引いて座した姿をちらりと一瞥した瞬間、息を飲んだ。
生来の魔力感知能力が高すぎることが災いし、隣に座った存在が何であるか「判って」しまったから。
ぞわりと項の産毛が一気に逆立つ。
「ああ、これね。これは鎧鹿の肉よ。メグ・メール平原産の。
それにしてもあなた、気持ち良い飲み方をするのね。強いお酒がお好み?」
内心の動揺を押し隠して、やや低めの甘い掠れた響きを持つ声でそう紡ぐ。
■ルークス・ルナエ > 「鎧鹿? また珍しいものを。そうそう流通しているものでもなかろう。
随分と腕利きの肉屋がいるようだ、此処は――おお、来た来た」
軽く話している間に届くのは、隣の客と同様の、串焼きを乗せた皿。
肉を焼くという、原初的にして最も美味な調理方法による産物を、意気揚々と手に取る。
がぶり、と噛みつき食い千切り、また注文した酒で喉へ流し込み。
半分ほど胃に落として、一息。
「強い酒が――ああ、うむ。あの喉が焼けるような感覚が、なんとも言えず、な。
だから、すまし顔をした上品な店より、こういう所の酒が良い。
強い酒に美味い肉、野菜はいらん。多少の甘い菓子類と、後は――」
串を持つ手と反対側、相手側にある手が持ち上がる。
隣席という狭い間合いを、あまり急くことは無く伸びていく、その手の行き先は――耳だ。
肌や髪の色と同様に、種族を示す特徴の耳へ、戯れに触れようと指が伸びながら、
「――美しい女が居れば、尚更に良い。
そう怯えてくれるな、ダークエルフの娘。此処で荒事を始める気はないのだ」
薄い笑みは、いささか嗜虐的な、楽しげなもの。
■サウラ > 恐らく相手は魔力量を抑えては居るのだろうけれど、肉体そのものが人とは違うゆえに
内包する魔力含有量も人とは桁違いなのだ、魔族という存在は。それが今、己の隣の席に泰然と座している。
威圧して来てはいないけれど、気づいて仕舞った以上、気圧されるなというほうが無理な話なのだ。
牛や豚などと違って流通量が圧倒的に少ないヨロイジカの肉について知っているふうの相手に対し、
意外な返答だったゆえに軽く目を見開いたあと、串焼きを手に取る相手の様子にふっと表情を緩める。
手にしていたゴブレットを一口煽るうちに、店員が遅れて運んできたのは黒パンだ。
店員には軽く目礼を返し、先にパンを千切ってから己も串焼きに手を伸ばす。
「私はどちらも好きよ。私が此処で食べるのは、今日私が卸した肉を食べるためね。
――甘党、なの?あなたが?」
串焼きの先端の肉をパンで挟み込んで串から引き抜きながら、思わずそう問い返した。
美味なる度数の高い酒と肉、野菜嫌いまでは想像の範疇だったけれど。
冷淡な美貌の相手が甘い菓子を抓む姿が、初見であるせいか、どうしても想像出来ずに。
面食らった様子で目を瞬きながら相手を見遣る。だから、その手が伸びる先に気づくにも遅れて、
「っ、――……ふふ、凄く敏感なの。だから、これを食べ終える間は、駄目。
お世辞も上手ね。あなたほどの人なら、抱いて欲しいと望む女は山と居るでしょう?」
笑って、嗜める。
相手の指先が細長い耳の縁に触れただけで、ぴくりと軽く肩を竦んだ。
だが、それだけの反応で押し留めた己を褒めて遣りたいくらいだ。
抑制薬を服用しているとはいえ、些細な刺激で欲情し易くなっている厄介な状態なのだから。