2019/05/30 のログ
リィナ > 典型的な捨て台詞を吐いて、店から逃げ出していったふたりを呆気にとられて見送った。
それは少女だけではなく、他の客も同じだったらしい。
シンと静まった店内に、追っ払った張本人のどこか緊張感のない言葉が響く。

『見かけによらずやるもんだな。今日の分は奢ってやる。』

そんな青年に答えたのは、厨房の奥から顔を出した大将の野太い声だった。
それを皮切りに、ついさっきまで喧嘩を煽っていた客たちが
新たなカモを見つけたとばかりに青年に寄ってくる。

「はいはい! 他の皆さんはちゃんとお金払ってくださいね。
 あとお店の恩人に迷惑かけたら、大将の雷が落ちるのであしからず!」

パンパンと手を叩いて、酔っ払いを追い払う。
そうして青年の前に注文を受けていた串焼きの盛り合わせと、シードルを置き。

「ありがとうございました。
 まさか、手も出さずに追っ払うなんてびっくりしました。」

ぺこり、と頭を下げて。
がやがやと元の喧騒が戻ってきた店内を見渡してから、ニコッと笑い。

「とにかく何でもじゃんじゃん頼んでくださいね!
 あと、私はお酒はそんなに強くないけど……お酌くらいはしますから。」

ルシアン > 雰囲気のいいお店と、美味しい料理にお酒、それに頑張ってる新入りの店員さん。
その空気やお店そのものが壊れたりするのが忍びないし、嫌だったわけで。
脅かす程度に術をかけ、うまい事追い払えた…もちろん、そんな事をすればどうしたって目立ってしまう。
本来だったら、こういう事で術を使ったりはしない心算なのだけど、少しその辺の時世が効かないのはお酒のせいだったのかもしれない。

「…えーと…うわわっ!?ちょ、ちょっと…!?」
大将さんからの声に、そのおこぼれに預かろうというのか急にたかりに来たよそのお客さんに目を白黒。
どうしたもんかと迷ううち、気風のいい声で追い払ってくれたのは先ほどの少女で。
安心した、というようにへらっと笑顔を返してみた。

「ん、ありがと。ああいう手合いは、その…割と慣れてるからさ。
 手出しなんかしたら、余計手に負えなくなっちゃう。ああするのが一番」

あははっと明るく笑いながら、少女の言葉と礼に嬉しそうにして。
持ってきてもらったシードルを一口。美味しそうにほおを緩ませる。

「ふふ…それじゃ、お言葉に甘えて。此処のお店、気に入ったからまた寄らせてもらうね。
 あ…ええと。僕はルシアン。ルシアン・エヴァリーフ。君の名前も、教えてもらっても良い?」

お酒の勢いなのかもしれない。お酌をしてもらえれば、なんてカップを差し出しながら。
名を名乗ってみて、折角だからと少女の名も聞いてみたり。

すっかり気持ちよくなってしまったのか、良いお酒のせいなのか。
ちょっと羽目を外しかけつつも、のんびり時間は過ぎていく…。
一度静まった後、

リィナ > 寄ってきた酔っ払いたちに目を白黒させている様子からは、とても「慣れている」とは見えないもの。
不思議な人だなぁ、と笑みを浮かべ。

「はい、御贔屓にお願いします!
 私は、リリアーナです。リィナって呼んでください。」

そんなこんなで夜も更けていく。
常連の酔っ払いたちは、タダ飯に寄ってきたりはせず、軽くグラスを掲げるのみ。
途中、大将からの差し入れとして野牛のステーキが振舞われたり、
他の人はしないお酌をしたりと、賑やかながらも和やかな時間が流れることで――

ご案内:「王都マグメール とある大衆酒場」からルシアンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール とある大衆酒場」からリィナさんが去りました。