2019/01/30 のログ
ご案内:「平民地区・冒険者ギルド」に影時さんが現れました。
■影時 > 山籠りをしていると、どうにも世俗に疎くなる。それは大変宜しくない。
遣ろうと思えば文明から離れた生活を営むことは、決して難しいことではない。
元々山育ちであり、狩人と同様の技能を積み重ねの中で学びえている。
しかし、そればかりでは足りないものがある。
細々した物資の補給であり、何よりも酒を切らすというのはちょっとした娯楽の意味でも宜しくない。
「よゥ、邪魔するぜ――?」
そして、そうだ。何よりも金だ。金は心を鈍らせると一端の武芸者気取りは嘯くこともあるが、現実は逆だ。
人が集う街があり、その営みを円滑に回すために金が要る。そして金は幾らでもあっても困ることは無い。
王都の平民地区に数ある冒険者ギルドの一つに、己は名前を登録している。
偶に足を運ばねば、生死不明ということでその名を抹消されかねない。
夜となれば、併設する酒場で飲み食いして騒ぐもの、失敗に涙ぐむ者など、様々な様子が其処にある。
「更新に来たぞ。俺の名はまだ消えちゃァ、いないな? ン?」
それ等を横目に、慣れた風情で左腰の太刀を揺らしながら事務員たちが詰めるカウンターに歩み、挨拶と共に要件を告げる。
懐から取り出すのは小さな金属板に打ち出された登録票。
刻まれた符牒と照らし合わせて、確認に掛かる姿を眺め遣りながら用件が済むのを待とう。
ご案内:「平民地区・冒険者ギルド」にカリノナさんが現れました。
■カリノナ > 「ふむ…」
冒険者として登録したのが数日前。
そして初仕事である薬草採取をしてきたのが本日の昼のことだった。結果はといえば…仕事は失敗した。が、臨時収入はあった。
まず薬草のほうだが、特徴を聞いて探したのはいいが…どうやらその薬草、根をつかうものであったらしく、葉ばかりをむしってかえっても買い取っては貰えなかった。結果、失敗。
そして、その採取の最中、うっかり出くわしたイノシシを狩って、きっちり血抜きまでした肉を持ち帰ってきたので、こちらのほうで収入を得ることが出来た。
差し引きで言えば、予想よりもプラスと言うことになるのだが…
「……わからん」
戻ってきてから、この辺りに自生する薬草について勉強していた白髪の女は、あっさりと投げだした。色々種類があるのは解ったが、草は草である。
と、丁度入ってきた男に視線を向けてわずかに目を細める。
自分と同じ刀を持っているというだけでも、興味は惹かれるところだが…
足取りや歩き方を見ても、どうにも自分に近い匂いがする。
周囲に彼が視線を向けるなら、軽く手を振って合図を送ろうか。
ご案内:「平民地区・冒険者ギルド」からカリノナさんが去りました。
ご案内:「平民地区・冒険者ギルド」にカリノナさんが現れました。
■影時 > 「悪ィなあ。最近はどうだ? 帰り道の途中、戦端を見かけたがね」
顔見知りであれば、邪魔にならない範囲で世間話に勤しむことに何ら迷いはない。
情報収集の手段の第一歩だ。人が集う場所に足を運んで、耳を傾けていれば自ずと幾らは察し得る。
小耳にはさんだ諸々の答え合わせと望むとなれば、日ごろ冒険者達と言葉を交わす者達と話すことだ。
彼らは守秘義務は大なり小なりあるとはいえ、真っ当な手段で知りえるものであれば、言葉にすることに迷う由縁はあるまい。
もっとも、砦が騒がしいやら、軍の動きがある、といった具合は常通りの具合であったが。
詰まりは世は事もなし。人が殺し合い、殺され合う。ヒトデナシも含めてまた然り。
事が済めば「どーも」と片手を振って、依頼の類が並ぶ掲示板へと何気なく足を運ぶ。
見るものが見れば、少しは気づくものだろうか。
際立つほどではなくとも肩の動きがぶれることなく、足音も喧騒にひっそりと紛れてしまう程だ。
いざ、遣ろうとすればこの場全ての人間から掻き消えることもできよう。
何か直ぐ腹こなしの如く、こなせるものはあるだろうか。もっとも、そういうものこそ直ぐに駆け出し達が食いつくものだが……。
「……ン? 俺を呼んだかね?」
ふと、視界の片隅に手を振るような動きを認め、足を止めて振り向く。見えた先をもう一度見れば、成る程、間違いはない。
気のせいではあるまいと断じながら纏う長衣の裾を揺らし、手を振る相手の方に歩み寄りつつ声を放とう。
装束の造りこそは王国風に寄せながら、異邦のものに近い。さながら、侍なる戦士が纏いそうな風情のものだ。
もっとも、中身は侍ではない。華々しさとは裏腹の陰に潜む者だ。
■カリノナ > 「呼んだとも。実に面白そうだと思ってな?」
にこにこと手を振るのは、霜のような髪を短く切った女。
着ているものは、その辺を歩いている市民のようだが、首元や袖口から鎖帷子が垣間見えるはずだ。
防寒用であろうコートを椅子の背にかけ、腰には男の刀と似た刀の大小が二振り。少なくともこの二本は、こちらの大陸の品ではないと察せられるはず。
その割に、先ほどまで目を通していた本は、新米冒険者が世話になるだろう、この地域の薬草の分布と種類を記したもので、机にはまだ書き込みがほどんどない子の周辺の地図が広げられている。
そこだけを見ると、ギルドに登録したての半人前に見えるはずだし、事実ランク的にはその通りだった。
「ここには随分慣れているように見えたが、其方は冒険者で間違いはないか?」
■影時 > 「ほほぅ。面白そうってのは、ココか? それとも俺かい?」
言いつつ、眺め遣る相手を眇め見て観察する。短い白髪をした女だ。
装いだけは市井のもののようだが、細部のディテールは見逃さない。
如何に防寒対策になるとは雖も、わざわざ綿入れではなく重さのある鎖帷子を着込む婦女子は居ないだろう。
そして、何よりも腰に見える得物だ。両刃の剣ではなく、反身の片刃剣を携えるというのは余り見かけるものでない。
勿論何事にも例外はある。其処は幾つか探りを入れないことには、断定はできないが。
「そりゃ駆け出しを名乗るにゃ既に過ぎたなァ。冒険者だよ。
そういうお前さんは……成る程、駆け出しと来たか。イロハのイ、をまだ良く知らぬと見た。如何に?」
出来る事があれば割とえり好みする事はしないが、場数を少なからず踏んだ冒険者には違いない。
相応の落ち着きの具合を見せつつ、広げられた本と地図をちらと覗き込んで推測をしよう。
採取系の仕事は良くも悪くも、依頼達成の手本として真っ先に上がるものだ。
■カリノナ > 「どちらもだが、特に其方だ。強いだろう?」
にこにこと笑いながら、僅かに目を細める。黒目勝ちの目の瞳孔が細くなり、相手の力量を計るような視線に。
とはいえ、見ただけで解る事もあれば、実際に立ち会わなければ解らないこともあるので、大まかな指針という感じになるが。
「おや、正解だな。今日も薬草採りの仕事を失敗してきたところでな」
ははは、と朗らかに笑って失敗談を明かす。ギルドの受付嬢に言わせれば、素人が一度は失敗するという依頼であるらしい。
まあ、採取に失敗して、そのついでにとイノシシを持ち込んだ駆け出し冒険者は珍しいと言われたが。
血抜きを終えたイノシシは無事肉屋に買い取られ、明日にでも売りに出されるはず。
■影時 > 「そうさなァ。――強いぞ。強いともさ」
自惚れる位は冗談交じりでも良いだろうか。
何を以て強いかというのは人の定義にもよるが、武勇の身の一点であればそれなりのものはある。
至難と言える任務を単独で果たし得るほどの力を強い、と称するならば其の位置に己は居る。
椅子を引き、腰の刀を外して卓に立てかけながら相手の対面の席に座そう。
その何気ない所作にも、余分な音を立てる事を忌避するような慣れが滲むだろうか。
「当たりか。……何を採ろうとした?
薬草もピンキリだ。雑草のように抜きゃあいいってものばかりじゃァない」
そして、嗚呼、と。まさにあるあるといった風情で頬杖を突きつつ、思いっきり遠い目をしよう。
本草学の知識を得尽くすまで、己もあった。肝心の薬効がある部位を持ち帰り損ねてどやされたこともあった。
失敗は成長の糧という。それこそ、誤って毒を喰らってのたうち回る位のことでもなければ、だ。
■カリノナ > 「やはりそうか。うん、いいな…とても、楽しそうだ」
穏やかな笑顔は話しかけた時と変わらず、しかしその目は完全に狩人のそれだ。物音がしないように無意識にでも気を配る様子から見ても、相当な手合いであることは解る。
自分より強いのか、弱いのかは解らないが…少なくとも、試したい。面白そうだと、そう思える相手。
うずうずとついつい片手が刀の柄にかかりそうになるも、もう少し待とうと、とりあえずは占領している机の上の片づけを開始して
「確か名前は……なんだったかな?
冬でも青々と茂っていて、葉は麦の葉に似ているからすぐにわかる、と聞いたような…いや、違ったかな?」
今日の昼に受けた以来のはずなのだが、既に記憶は曖昧。
これでは失敗して当然だろう。薬草どころか、草花全般に対する知識が不足しているのは十分見て取れるはず。
■影時 > 「おおーっと。抜いてくれるなよ? 此処で刃傷沙汰はご法度だ。
催して困るってなら、寝台の上でなら幾らでも付き合ってやるが」
待った待った、といった風情でおどけた風情で両手を持ち上げ、垣間見える相手の所作を制しよう。
目付きもそうだが、何よりも呼吸に伴う気配と身体の運び方より察しては先に手を打つ。
必要とあれば、無造作に刀を抜けるものが居るけれども、場所は弁える。
此処はそのための場所ではない。刃に血を吸わせたいなら、その時は幾らでも望めよう。
故に半分冗句混じりで、向こうの戦意を宥めておこうと。
「……分かった分かった。今は、止めとけ。多分お前さんにゃァ向いてない。
まだ切った張ったが、マシだ」
そのレベルか。特徴で脳裏ですぐにピンとくるものがあれば、件の本を取ってぺらぺらと頁をめくってみようとするか。
慣れた者であれば暗記できるだろうけれども、人間には向き不向きというものがある。その証左だろう。
■カリノナ > 「楽しそうなんだがなぁ…」
実に残念そうにしながらも、まだ抜かない程度の理性は残っている。寝台の上との言葉には、したいのか?と首を傾げて問いかけた。こちらは別に冗談の意図はない。純粋に疑問に思ったからこその言葉。
「うむ、私もそう思う…本を貸してもらったのだが、違いが判らんな」
ははは、と笑って向いていないことは素直に認めよう。
捲られたページに目をやれば、確かに言われた特徴の草がそこに書いてある。昼間採ったのと似ているような気が、しないでもない。
むう、と眉間に皺を寄せて、その隣のページに書いてある薬草と見比べ、どう違うのかと首をひねる。ちなみにそちらに書いてある薬草はヨモギ科。イネ科の草とはそもそも葉の形が大いに異なるはずだし、挿絵にもその特徴は書いてあるのだが…