2019/01/28 のログ
■マリナ > 甘い雰囲気が淀む重たい空気に、少女は本当に仕事場で大きな出来事があったのかと
心配していたので、そうではないと言われてわずかに安堵の表情を見せた。
彼と違い、他人の感情の機微に疎い少女でもわかるような変化。
それでも根っこはやはり温室育ち故の鈍さであったり、単純であったり。
頬に触れる手に、嬉しそうに目元を細める。
――――――彼が意を決して告白した言葉の後、少女の表情はほとんど変わらなかった。
1度まばたきして、視線を逸らすことを忘れたように重ね合わせたまま。
もう1度まばたきすると、言葉を紡ぐ彼の唇に視線が移った。
突然のことに頭の処理が追い付いていないといった様子が、ありありとわかる反応だった。
彼が話す間、少女は特に言葉を発さず、まるで寝物語でも聞くかのようにぼんやりしている。
聞く――とはいっても、実際どれだけの言葉を理解しただろうか。
1度で聞くには少々受け止めきれない内容だったのかもしれないけれど。
結局、理解すれば良いことは1つだけなのだ。
目の前で頭を垂れる彼の黒髪を見て、……数秒。
あれ、最後にまばたきしたのはいつだっけ、なんて思考とともに、久しぶりのまばたきが数回。
口を開き、言葉を出そうとしたのだけれど、喉が引き攣ってすぐには出てこなかった。
「ぁ…… あ、あ……ごめ……、ごめんなさい……」
咄嗟に出たのはそんな言葉で、今まで停止していた思考が急に再開されてしまった。
あぁ、どうしよう。なにか言わなくては。彼が困ってる。
「……マリナ、悪いことをしました。あの、マリナを……可哀想に思って下さって
連れてきてもらった、のに……ヴィクトール様にも、奥様にも酷いことを…… ごめんなさい、ごめんなさい」
自分が望んだ場所は始めから存在しなかったというのに、きっと彼を困らせた。彼と彼女を悲しませた。
そうだった。出会った時から自分の境遇を怒ってくれて、哀れに思ってくれた。
そんな彼の優しさに付け入り、面倒事をすべて押し付け、守ってもらったのだ。
言葉にして、ようやくそれを実感した―――この数分、感情を映さなかった緑の瞳からぽろりと雫がこぼれる。
「…………」
この期に及んで涙を見せてはまた優しい彼を引き止めてしまうだろう。
そう思い、手の甲で目元拭ったけれど1度涙腺決壊するとなかなか止まらず。
何度かそうしていると子どもが泣きじゃくっているように見えてしまう。
「あの、あの、……マリナ、もう大丈夫なので……とっても楽しかった、ので……もぉ、悪いことしません」
平静を装おうとするので声は震えてしまい、腹部に力が入って―――きゅ、と膣内に埋まったままの肉棒の存在が強調された。
今も誰かの彼を専有している。立ち上がろうとすれば、ずるりと火照った肉壁を擦り、窪んでいた子宮口が膨らみを取り戻すのだろう。
お湯から出た姿は当然裸で、雫がきらきらと反射する。
こんな状態でなければ走り去ることも出来ただろうに。
■ヴィクトール > 言ってしまったと、その空白の時間がとてつもなく重たい。
彼女の表情が凍りつき、思考が全て止まっていくかのように、ただ呆けているようにも見える。
実際、幼い思考回路の中はメチャクチャになり、色んな感情が渦巻いているのだろうと思った。
だから、自分に向けられるのはそんな真っ白さを踏みにじったという憤りだと、嫌われる覚悟を決めて吐き出した……のだが。
繰り返される瞬きの合間に見える碧玉は、そんな感情とは真逆。
謝罪の言葉に、いや… と、謝られる云われはないと頭を振ったが、続く言葉は想定していなかった。
「……ぁ? いや、そういう事じゃなくてだな……?」
確かに可愛そうだと哀れんだのはある。
だが、それならさっさと兄に事を預けて、拾わせてしまえばよかったのを拗れさせたのは、紛れもない自分だ。
その理由は、可愛らしい彼女を抱きしめて、可愛がりたいと欲張っただけである。
こぼれ落ちる涙に、珍しく慌てふためきながら両手が彷徨うのは、そうした涙に出会ったことがあまりに少なかったからで。
目元を拭っても溢れ続ける悲しみに、胸の奥が締め付けられていく。
別れの言葉が金色の瞳孔を窄めて、震わせ、やっと呼吸を思い出した。
そうじゃない、自分が望んだ答えとは違う。
そう思うと、立ち上がろうとするその身体へ両手を勢いよく伸ばすと、肩に手をかけて一気に引き下ろしていく。
じゅぐんっと蜜と白濁を湯の中へ押し出しながら、やっと寛いだ子宮口を逃さぬと言わんばかりに押しつぶし、鈴口とくぼみを密着させていった。
「っ……違ぇよ! そうじゃねぇ! 俺はマリナがマジで好きになってくれたってのに、言えねぇ言葉がずっとあったから、自分がどうしょうもねぇクソだと思ってただけだ! 誰が謝れっていった!?」
あらっぽい口調のまま、何処か怒気が交じる勢いで思いの丈を吐き出す。
また腕を解けば、逃げ出すであろうと思えば、先程の様に苦しいぐらいに小さな体を抱きしめていく。
珍しく目頭が熱くなっていくのが分かると、彼女の胸元へ顔を埋める様に額を押し付けて隠してしまう。
ぱつりと理性だの思考だのという言葉は千切れとび、浮かぶままの言葉しか口を通り過ぎない。
「マリナは悪いことなんざ何もしてねぇよ、だから……ぁ~……すげぇ偉そうな言い方になっちまうんだけど、俺はそれでもマリナが欲しいんだよ、他の男に持ってかれるのが腹ただしいぐれぇだ。だから、妾で我慢してくれるんだったら、ここにいてくれ! それぐらい抱える甲斐性ぐらいみせたらぁっ!」
とりとめもない、滅茶苦茶な思いが風呂場に響く。
思えば外であったことを忘れるような状況だが、そんな二人に耳を貸すのも、山に響き渡ることもないだろう。
どこにも行くなと言わんばかりに、その腕は彼女を抱きしめて離さない。
嫌いだと、嫌だと言われない限りは……真っ白な姫君を手放したくないと。
■マリナ > 立ち上がり、彼から少しでも離れようとした少女の肩が、強引に引き寄せられる。
その瞬間、ごちゅっと子宮口の膨らみが潰れ、痛みさえ伴うような痺れる愉絶が胎内を襲った。
「うぅんっ!あぁっ、――――っは……」
離れようとする少女に反し、一瞬の強い刺激にざわめいた肉襞が、ちぅと竿全体に吸い付く。
逆流しようとした精液も頸管へ、ひいては子宮内部に押し戻され、中でとぷんと波打った。
肉体は快楽を感じていながら、心はそれを享受するほどまだ余裕がない。
また至近距離となってしまった彼の声に、びくっと肩を竦ませ。
――――怒られた。彼に初めて怒られた。
驚きと怯えで別種の涙がこぼれて頬を濡らし、上半身がひくひく震える。
「ふ、ぇ……お、怒らないで…………ぅ、ぐ……」
どうにも、彼の言葉を今の状態で全部受け止めるには未成熟な少女。
本来彼が声を荒らげたことではなく、どんな言葉を今紡いだのかが大事だったのだろうけれど、とっくにキャパオーバー。
さよなら はまだ言っていないはずなのに、返した言葉からそれを悟られたようだった。
遮るようにきつく抱き締められ、呼吸が妨げられる。
ぐぅっと、膣奥に掛かる圧力も強まったので、少女の腰がひくり揺れた。
あまり刺激しないでほしい。彼が痕を付けたのは心だけでなく、肉体も同様なのだから。
これ以上離れる時につらくなるような行為は出来れば避けてほしいというのが、少女なりの傷を守る術であり。
痛い、と口にしようとしたのに、彼の顔が胸元で隠れて言えなかった。
彼の額を受け止める胸が伝える鼓動は、今は思慕に揺れるそれとは違う。
彼の傍にはいられない。集落は出なくては。
みんなともお別れするけれども、まともにお別れ出来る気がしないから、本当に申し訳ないけどなにも告げずに出るしかない。
1人で山が下りられるだろうか。銃だけは後で送り返すからと預かれないだろうか。
出来れば――彼が2度と心配しないよう、遠い場所に行きたいけれど、1人で行ける気がしない。
最悪、従兄のもとに戻るのなら、今後はいかなる処遇にも従うと言えば、許してもらえるのではないか。
ただ、自分の存在は完全に秘匿としてもらわなくては。
少女なりにこの短時間でいろいろ考えたつもりであった。
それだけに、彼の正直な言葉に戸惑う。
無理に逃げ出そうとは思わないけれど、どう力を込めたって解くことの出来ない力だった。
次から次へ考えることが増えるので、しばしの沈黙。
その間もとくんとくんと鼓動は続き、少女が今は誰より彼の傍にいる証でもある。
「………… マリナ……どうしたら 良いのか、 ぜんぜんわかりません……」
はい、とも、いいえ、とも言えないのが今の気持ち。
なんだかどっと疲れて体を弛緩させ―――癖で、彼の背に腕を回しそうになって止めた。
「何故、いま話したんですか……。お薬飲んじゃったから、眠れませんし……、その……終わった後に、話して下されば……」
どこかのタイミングでここから消えることも出来たのではないか。
少女が呟いたのは、そんな恨み言
心を離すために肉体を離したいのに離れられないというのは、なかなか苦しい。
下腹部全体が重たくなる、膨満感。紋がまだ消えないのも、また苦しい。
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