2018/05/03 のログ
ご案内:「平民地区の細道」にミンティさんが現れました。
ミンティ > ぽこぽこと靴音を鳴らして薄暗い細道を歩く。両手でしっかり取っ手を握った袋の重みに揺られているから足取りは頼りない。数歩進むごとに右に左にふらつくたびに取っ手を握り直して、ふーと息を吐く。

馴染みのお客様から古書の訪問買い取りを頼まれて、そこそこいい品を調達できたのはよかった。しかし数が多すぎて帰るまでが一苦労。
あたりも暗くなってきているから表通りを歩いていこうと思ったけれど、重さに負けて途中で断念。近道となる細い路地を進む。

ミンティ > しばらく歩き続けて、店までの距離は残りわずか。帰ったら整頓は後回しにして腕を休めようと考えながら、気持ちが急いて小走りになる。
とたん、指先に嫌な感触。取っ手と紙袋を繋ぎとめていた部分が想定外の重量に限界を迎えたようで。紙が裂ける音が聞こえたと思うと同時に、片方の取っ手が完全に外れてしまう。
傾いた紙袋から放り出される何冊もの分厚い古書。

ぴたりと足を止めて地面を見つめる。

眉を困った形に変えて、もう、と愚痴っぽく小声がぼやいてしまう。袋の破れた場所を確認してみたけれど、道具もなくては直せそうにない。
溜息をこぼして、こうしていても仕方がないからスカートを片手でおさえ、しゃがみ込む。重たい本を積み重ね、抱えて運ぼうとして。

ご案内:「平民地区の細道」にマヌエラさんが現れました。
マヌエラ > 「まあ、たいへん」

少々間延びした声と共に駆け寄る姿は、ローブに包まれた肢体に自身の長い金髪を絡ませた魔術師然とした風貌。
ミンティの前にしゃがみこむと、分厚い書物の一部を手袋に包まれた手で拾い上げた。

「あのぅ、差し出がましいようですけれど、これをお持ちになって帰るのは、少々大変ではありませんか?」

数冊でも重たい。

ミンティ > 表紙についた埃を払って、ようやくすべての本を積み上げ終えた。
一番下から指を差し込み持ち上げようと試みる。持てなくはないけれどバランスを取るのが大変なのは歩くまでもなく予想がつく。
それでもここに捨てて帰るわけにはいかないから、細い腕にできる限りの力をこめて古書の山を抱え上げようとして。

前方から声がする。駆け寄ってきた女性をしゃがんだままの姿勢で見上げた。
親切な申し出に対応しようと思ったけれど、性格が災いして、とっさに声が出せなかった。
非礼を恥じて目を伏せつつ、彼女の言うとおり大変だと思うという考えだけでも示そうと、こくんと頷いてみせる。

マヌエラ > にこ、と微笑む。

声がないことに対しては、一切不快そうな素振りはない。反応されたことだけで嬉しいとでも言うかのような、見目より幼い所作と表情をしていた。

「でしたら、お手伝いいたします」

当然のように為される申し出。掌を差し伸べる。
と、思いきや、その掌の先に異変が起きた。掌によって落ちる影の中から、にゅっ、と――頭足類のそれを思わせる触手が顔を出したのだ。
地面から生えるような形となって、するする伸びる。その先端部が水平にぐるぐる渦を巻いて――丸で小さなテーブルのようになった。
特に生物的な何かでべちょべちょしているということはなく、ぶにぶにしているが同時に乾燥もしていた。本が汚れる心配はなさそうだった。

触手だが。

ミンティ > すみません。そう言えたのは唇の動きだけだった。感謝の意思はきちんと伝えようと顔を上げて彼女を見つめる。まわりが薄暗いせいか背丈も年頃もはっきりとは知れないけれど、自分よりは年上の大人びた女性。笑った顔は少々幼げなものにも感じられた。

「……では。」

積み重ねた本を渡そうとして、びくりと震える。女性が差し伸べた手の影から顔を出したものを、目をまん丸にして見つめる。
どうしても抵抗感が先立ってしまう触手を前にして、動きが固まってしまったけれど、魔術か、人とは違う種族なのだろうと察しはつく。あまり怖がっているのも失礼だし、幸い汚れる心配もなさそうだと考えて、テーブルのように渦を巻いた触手の上に本を重ねていく。

ミンティ > 触手の上には古書の半分を預けておいた。こんなに持たせてしまって悪いと思う半面、自分の手で安定して運べそうな量もこのくらいだと思ったから、女性を見上げてもう一度頭を下げる。

「んっ…。」

そして再び腕にありったけの力をこめた。当然ながら重さが半分になれば、そこまで力まずとも持ち上げられる。このくらいなら大丈夫そうと、落とさないようにしっかりとバランスを取ってみて、こっちですと女性に視線を向けた。
店まではそう遠くなかったから、数分も歩けば見慣れた看板が見えてくる。
店先で何度もお礼を言いながら預かってもらっていた本を受け取り、最後にもう一度頭を下げる。

別れ際には女性の姿が見えなくなるまで見送って、それから自分も店の奥へと姿を消した。
そういえば名乗りもしなかったと反省したのは、布団に潜ってからだったとか。

ご案内:「平民地区の細道」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にジードさんが現れました。
ジード > 貧民地区の中でも一層治安の悪い路地裏の片隅。
ちょうど平民地区と貧民地区とを繋ぐ裏道に当たる路地に怪しげな露天が構えられていた。
とはいっても場所が悪いのか訪れる人影もほとんどなく店の様相は閑古鳥。
繁盛していないのは一目瞭然。

「さて。普段なら訳アリが結構通りかかるんだがなあ。こっそり娼館に出かける人、とか」

はて、と声を上げながら騒々しい繁華街のある方角に目を向ける。
そういった手合いを当て込んでの商売場所であるが本日は当てが外れたらしい。

ジード > 「こうも入りが悪いとさすがに商売にならないな…もう少しいい場所探すかねえ」

娼館街の喧騒とは裏腹に静かな路地の様子に苦笑いが浮かぶ。
これはどうにもならぬと思ったか立ち上がると手早く荷物を片づけ、
路地の向こう、繁華街へと消えていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からジードさんが去りました。