2017/08/15 のログ
リュシー > (可愛いの、というフレーズに誘われるよう、視線が壁際の棚へ向かう。
ふわふわと柔らかそうで、愛らしい彼女たちに相応しい、優しい拘束の道具。
―――また、微かに痛みを堪えるような表情になりながらも、そっと頷いて)

ああいうやつなら、肌が傷ついたりしなくて良いね。
奴隷は奴隷でも、いかにも、愛されてる、って感じに見えるし。

――――― いや、え、……お、王族?

(なるほど、彼の、すこし変わっている兄上が、なにやら、
ものすごく真面目に取り組んだらしきことはわかった。
しかしどうやったら王族にまで食いこめるのか、思わず目を丸くして、
返す言葉をどもらせてしまう。
けれど同時に、ああ、そこまで食いこんでいるからこそ、こんな施設を
運営していられるのかもしれない、とも、ゆるい頭なりに考えて)

……なんか、ほんとにすごいん、だね。
―――― っ、………

(裕福な家に生まれ、あらかじめ約束された将来がありながら、
それらを無為に食い潰してきた己とは、なんと違うことか。
ますます苦い思いで俯きかけた己の頭へ、ぽすりと大きな掌が乗せられる。

己が子どもでなどないことも、女性ですらないことも知らないのに、
当たらずとも遠からず、なところをついてくる物言いに、ぴくん、と
わかりやすく肩が跳ねてしまった。

くしゃくしゃと湿った髪を撫でられながら、ぐらぐらと揺れる小さな頭のなかで、
なんだかもう、罪悪感と呼ぶのもおこがましい重苦しい感情が膨れあがり、
黙っていたらこのまま、息もできなくなりそうで―――
はぁ、と、大きく肩を上下させて、意識して息を吐き)

――――― ぼくは、さ。
ヴィクトールが思うより、たぶん、ずっと悪いこと、してるよ。

(女の子に対して、無為に暴力を振るってはいなかった、と思う。
けれど決して、どこまでも優しい「主」であったとは言えない。
俯いたまま、噛み締めた奥歯の間から絞り出すように。

もう一度、すぅ、はぁ、と、深呼吸をしてから)

……でも、もう、……きっともう、二度としない。

(微かに語尾が震えたのは緊張のためか、それとも眦あたりへ、
ほんのり滲み始めた潤みのせいか。
いずれにせよ、いささか不格好な微笑をほんの一瞬だけ見せて、
カラ元気を振るうよう、スプーンを高めの位置で構え)

……と、とりあえず、これ、食べちゃうね。
冷めちゃったら、作ってくれたあの子に申し訳ないし、さ。

(そう言い置いて、再びスプーンを動かし始める。
―――ほどなく、皿の中身は綺麗に、己の腹の中へおさまってゆく筈で)

ヴィクトール > 「だろ? うちはちょいと違うぜ~ってアピールにもなるってよ。 あぁ、詳しいこたぁ知らねぇけど、昔の仕事馴染みのツテでな。ティルヒア戦争のときにわざと敵側付いて暴れてよ、その後土地よこしゃ雇われてやらァってやって……あれだ、九頭竜山脈の麓にある集落あるだろ? あそこの取りまとめしてたのも兄貴だぜ」

戦争で名を挙げ、それを逆手に居場所を広げ、その手腕を買われて王族の養子へ。
いろんな困難を乗り越えて、力を蓄えていった兄は、弟としては自慢の兄だ。
そんな足跡を語ると、つぶやかれる言葉にそうともというように何度か頷く。

「……そか、でも責めねぇよ。責めたって、消えるわけじゃねぇ。もうしねぇっていった言葉が、リュシーにとって、大切なんじゃねぇか?」

あやすように髪をなでていくと、呼吸が崩れていく。
肩が揺れるほどの大きな息、そして絞り出すような言葉はこちらが耳にしても苦しかった。
知らず知らずのうちに虐げていたのだろうと。
緩く頭を振って、彼女の言葉を受け止めながらも、安い救いの言葉も紡がない。
次しなければいい、その決意を褒め称えるのみ。

「…あぁ、喉詰まらせんなよ?」

クツクツと楽しげに笑いながら頷くと、あっという間にドリアが片付いていく。
彼女の胃が満たされた頃、風呂場から感じていた魔石の力が消えていくのが分かると、グラスをトレイに戻し、立ち上がる。

「風呂わいたみてぇだから入りな、なんなら一緒に入るか?」

冗談めかした言葉を繋げて風呂を勧めると、トレイを持ってドアの方へ。
扉を開き、隅の方へそれを置き、片付けていく。

リュシー > …いやいや。ちょっと、どころじゃないと思うよ。

(勿論、女の子たちの扱いが悪くない娼館は他にもないわけではないが、
それにしても、とは、己がかつて、そうした場に出入りしていたからこその実感である。
それにしても随分と豪胆な人物であるらしい、と彼の兄を評する傍らで、
彼がどれだけ兄を誇りに思っているか、もわかってしまう。
俯いたくちびるから、ぽつり、と)

………ヴィクトールはさ、…お兄さんのこと、ほんとに好きなんだね。

(ストレートに示されるその感情が、なんだかとても羨ましく思えて。

ほんの少しだけれど、家が、親が恋しくなったりもして―――
なんだか、このままでは泣いてしまいそうだ、とも思ったからこそ、
ドリアを平らげる勢いは、いっそう派手になるのだが。

ごちそうさまでした、と行儀良く両手を合わせ、彼の言葉につられて、
浴室と思しき扉の方を見やりつつ)

あ、ほんと?じゃあ失礼して、―――――

……ヴィクトールの、ばぁ、か。

(一緒に、などと言われると、ぱちぱちと目を瞬かせながらしばし、彼を見つめたのち。
端的な罵言ひとつを残して、ベッドの中から素早く滑りでる。
肩から掛けた大きなタオルで半端に身体を覆うまま、
脱兎の勢いで風呂場へ飛びこみ、後ろ手に扉を閉めた。

ほかほかと立ちのぼる湯気のなかで、浴室をひとわたり眺めれば、
ここにも、女の子たちの肌を優しく清めるためのものがしっかり揃っていて。
思わず小さく笑ってしまいながら、ありがたくそれらを使わせてもらおう、と。

己のなかではすっかり、一緒に風呂、云々は終わった話だったのだが、
さて、彼にとってはどうなのだろう。
ちなみに、浴室の扉は閉めただけで、鍵などは掛けていないけれども。)

ヴィクトール > 「好き……んー、そうだな、あと感謝してるってのもあんな。兄貴とは兄弟だけど、腹違いでよ、数年前に会ったんだ。 俺ぁ学はねぇし、戦うぐらいしか出来ねぇのに、読み書きとか、最低限の振る舞いを教えてくれたりな。親父代わりでもあんのかもな」

彼女に言われた言葉に、思案顔で今までのことを思い出す。
仲のいい兄弟…と言われることはなかったが、母を失ってからは、彼がいろんな面倒を見てくれたのは事実だ。
結局色々考えても、彼女の言う好きなんだという言葉に戻っていき、照れくさそうに笑っていた。

「おうよ、元気になって良かったぜ。って、だぁれが馬鹿だっ」

瞬く瞳、驚いたようにも見える様子だったが、悪態を冗談のようにつきながらベッドから降りる姿にカラカラと楽しげに笑う。
先程まで怯えきった様子だった少女が、こうも元気になった事を素直に喜びつつ食器を片付けると、扉が閉まる音が聞こえるだろう。
風呂場にある洗剤やスポンジも、そこらの高級娼館の様な立派なものではない。
だが、瓶詰めにされた石鹸水は果物の皮をすりつぶしたモノを混ぜたのか、心地よい香りが広がり、ヘチマのスポンジも柔らかく出来上がっており、使い心地は良さそうに見えるだろう。

「で、リュシーはこれからどうすんだ? 行く宛ねぇならここでもいいし、山脈の麓の集落で、人並な生活するってのもありだしな」

ギッと扉が少しだけ軋む音が響き、壁一枚越しながらに声が綺麗に通って届くだろう。
意志を具現化する魔法を言葉に乗せ、互いの声が届きやすいように力を巡らせた結果だ。
彼女が『いい』と言わなかったのもあり、ガサツな割には気遣ってそれよりも先に入ろうとはしない。
気にかけるのは、彼女のこれからのことだった。

リュシー > (腹違いの兄弟、という関係自体は珍しいものでもないが、
彼とその兄との関係は、世間一般のそれよりずっと良好に聞こえ、
だとすればやはり、互いに相手のことを家族として愛しているのだろう、と思う。
照れ臭そうな笑みを見せる彼に、こちらまで何やらこそばゆい気持ちにもなりつつ、
くふ、と小さな笑み声をこぼして。)

ほーら、やっぱりヴィクトールは、お兄さんのこと大好きだ。

(囃し立てるような語調ではあるが、そこに揶揄う意図は皆無。
ただ純粋に、なんだか羨ましい、とだけ思っており。

ばたん、と閉ざした扉のこちら側で、タオルを傍らへ畳み置き、
柔らかなヘチマのスポンジを手に、石鹸水の瓶詰の蓋を開け、
甘く爽やかな果物の香りを楽しみながら、身体を清め始める。
家で使っていたような高級品では勿論ないだろうけれど、
滑らかな泡は肌にとても優しく馴染む。

扉一枚隔てているにもかかわらず、はっきり聞こえてきた声に、
一瞬、ぎくりと身を強張らせて辺りを見まわしたが―――)

……びっ、くりした……。

(本当に入ってきたのかと思った、などとひとりごちてから、
再びゆっくりと手を動かし始める。
これから、どうするか―――どこへ行くか、何をするか。
自然、深く眉根を寄せてしまいつつ)

どうする、って……ここでお世話に、なんてなれないよ。
明日になったら出ていく、……だって、食い扶持稼ぐ才覚ないし。
恥ずかしい話だけど、今まで、働いたことなんかないからね。
ホントに、なんにもできないし……、

(自虐でも自嘲でもなく、それが現実なのだから仕方ない。
身体についた泡を洗い落とし、湯船に浸からせてもらおうかというところで、
ああ、と思い出したように己の首輪に触れて)

それに、ぼく、いわゆる逃亡奴隷、ってやつだと思うんだ。
5万ゴルドで買われた先から、こっそり逃げてきちゃったからね。

……ぼくが厄介になってると、ヴィクトールにも、ここにも、
迷惑がかかるかもしれないからさ。

(迷惑になるかもしれない、という点では、麓の集落とやらでも同じことだろう。
たぷん、と浸かった湯船のなかで、心地良さげに四肢を伸ばして目を伏せる己は、
この心地良さは今宵限りのもの、心ゆくまで味わおう、という心持ちでおり)

ヴィクトール > そうだなと彼女の微笑みに頷き、扉に軽く寄りかかっていく。
語りかけた声が綺麗に響くと、彼女の驚きの声も、元々の耳の良さもあって、しっかりと聞こえていき、楽しげに笑う声が再び綺麗に届くだろう。

「まぁ…貴族の嬢ちゃんなら、額に汗して働くなんざぁしてねぇだろうな。でもな、それはここにいるアイツ等も同じだ。ろくに何も出来ねぇから迷惑かけたくねぇ、出来るとすりゃ身体売るしか働き様がねぇ。まぁ、だから綺麗な仕事の娼館にしたかったんだろうな」

何となく想像していたことが当てはまっていたなら、彼女のいう言葉にも納得がいく。
だが、だからといって何も出来ないわけではないだろうと語りつつ、続く言葉は確かにどうあがいても迷惑をかけそうなものだ。
しばらく無言の間が空いたが、不意にドアを開けて中に入っていく。
金色の瞳が真っ直ぐに碧眼を見つめた。

「知らねぇよんなこと、これでまた外に放り出してみろ、俺の目覚めがワリィじゃねぇか。なら俺が抱えてやるよ、もし、リュシーの持ち主がきたら、倍額以上叩きつけて買い取ってやらぁ」

ドア越しでは顔は見えない、本気だと言わんばかりに自身の顔を見せるべく、ここにやってきたのだろう。
先程までの軽口を叩いていた表情とは代わり、眉間に少しシワを寄せた険しい顔だが、それだけ真面目だということだ。

「俺ぁ馬鹿だから、小難しいことはどうこう言えねぇよ。俺ぁリュシーを手放したくねぇ、だから俺の手が届くところにいろよ。迷惑掛けた分は、リュシーができそうな事が見つかった時、返してくれりゃ納得すんだろ? 自分もよ」

これまでの事を後悔するような少女が、このまま食いつぶされていいとは思えなかった。
もっと歳を重ねて、育ったなら、きっといい女となる。
何より、心に触れた彼女の壊れた姿などみたくもなかった。
勝手で乱暴な言い様だが、それだけ彼女を想う言葉を紡ぐと、まくし立てて息切れした呼吸を整えるように、少し肩で息を繰り返す。

ご案内:「娼婦宿 Colorless」からリュシーさんが去りました。
ご案内:「娼婦宿 Colorless」からヴィクトールさんが去りました。
ご案内:「娼婦宿 Colorless」にヴィクトールさんが現れました。
ご案内:「娼婦宿 Colorless」にリュシーさんが現れました。
リュシー > (程よい温度の湯がたっぷり満ちた湯船に浸かり、ちゃぷん、と掌で掬った湯を、
湯面から露出した肩や首筋へかけながら―――おそらく何某かの術によるものだろう、
扉を隔ててもはっきり聞こえる声に、今度はビクつくこともなく聞き入り。
また、少しばかり思案する間を措いてから口をひらいて)

うん……だから、でも、……ぼくは。
気軽に、娼婦にならなれる、とか、言いたくない…、
そんな風に言ったら、あの子たちを、馬鹿にしてるみたいだし。

そういう考え方するんじゃ、なくて、―――――

(最終的に、ひとりで生きていくとしたら、その道を選ぶのだとしても。
その選択には己なりに、ある種の誇りを持つべきだと思う。
なし崩しに、楽な方へ楽な方へと流れるのではなく―――真面目に、真剣に考えてから。

己にしてはとても珍しく、そんな風に頭を使っているところへ、突然。
ばたん、と扉が開く音がして、ぎょっとして視線をあげれば、
乱入してこないものと思っていた相手が、目の前にやってきていた。
しかも、―――軽口など許されなさそうな、真摯な表情をして。
知らず、湯のなかへ浸かった身体が、ぴりりと緊張を孕むほどに。)

――――― ヴィクトール、

(抱えてやるだとか、買い取ってやるだとか、手放したくないだとか―――
言葉つきこそ荒いものの、そのなかには暖かい感情が滲んでみえる。
甘ったるくて、こそばゆくて、浸ればきっと心地良くて。

でも、だからこそ。
こちらもまっすぐに彼を仰ぎ見て、その金色の瞳を見据えながら。)

ぼくのことをぜんぶ抱えられるのは、ぼく自身、だけだと思う。
だから、ぼくは自分で、これからのこと、ちゃんと決めなくちゃ。

……弱音を吐かせてくれたことも、こうやって甘やかしてくれることも、
本当に嬉しいし、幸せだと思ってる。
でも、下で働いてる女の子みたいに強くなるためにはさ、
やっぱり、自分の足で立たなきゃダメだよね。

(ふにゃりと眦を下げて笑いかけ、それから、胸の前で両腕を組んで)

……って、いうか、さ。
女の子のバスタイムに、不意打ちはあんまり感心しないぞ。

(彼が風呂場へ入ってきた真意に気づいていながら、わざと戯れごとを繰り出して)

ヴィクトール > 「……固ぇな、出来ることがあるだけいいだろ?」

小さい割にはよく考えると思いながら、苦笑いで呟いた。
そして彼女の前へと飛び出せば、彼女が緊張するのも気に留める余裕もなく言葉を吐き出す。
意味深に呼ばれた名前に、少しだけ熱が落ち着いていくと、わりぃと荒くなった事を詫ながら視線を落とした。

「……つってもよ、何もなく外彷徨いたら、今日みてぇなことの繰り返しだろ?」

立ち上がれるだけの時間を手にできる場所、それがなければ再び追い掛け回され、檻に入れられるのがオチだろう。
自力でどうにかしようと決意した言葉を、覆すことはしないが、それでも追い掛け回されていた今宵を助けた身としては不安になる。
どうしたものか、どう切り出したものか。
馬鹿なりに少ない知恵を振り絞ろうとギュッと目を閉ざし、考え込むほど。

「……ん? ぁ、あぁ…わりぃ…」

反応が遅れ、顔を上げれば彼女の笑みが見える。
言われるがままに謝るものの、同時にふと妙案が浮かび上がった。
自分で立つ、そういうのだから、対価であればよいのだと。

「なぁ? なら、俺が今晩、買わせろっていったなら、それはアリなのか?」

娼婦になるかどうかも決めてはいないようだが、金稼ぎとしての提案だ。
それなら、自分が今宵の対価として何かを渡しても彼女の働きだろう。
充満していた湯けむりが少し晴れて、一層よく彼女の顔が見えてくる。

リュシー > いやいやいや。
できる、と思えることなんかないから、せめて、
ちょっとは頭使って、真面目に考え、て、ん、のっ。

(カタイ、という評価は己の人生において、なかなかに新鮮だった。
実のところ、目の前の彼が思うよりずっと長い年月を生きている己だが、
カルイ、ユルイ、と言われたことはあっても、頭がカタイ、とは、
一度たりとも言われたことがなかったので。
ほんの少し面白がるような表情にもなりながら、詫びの言葉にはそっとかぶりを振って)

うーん……まぁ、確かに……。

(さすが、己の好みを網羅した外見、というべきか。
街を歩いて危険な目に遭った回数など、数えるのも虚しいほど。
そろそろ本当にどうにかしなければ、と思ってはいたので、
腕組みの姿勢をそのままに、顰め面で低く唸ってみたりもし―――

しかし。
どこか上の空とも見えた彼から、とんでもない提案が飛び出したものだから、
碧い瞳が更に大きく、ぱちりと見開かれることとなり。)

――――― はい?

(買う、とはつまり、ソウイウコトだろうか。
アリか、ナシか。そう問われれば、それはまあ―――)

……いや、まあ、……うん、ナシではない、と思う、けど……
いや、でも。あの、……えっと、その。

(いやいやいやいやいや。
洗いざらしの髪を振り乱し、勢い良くかぶりを振って)

ない、やっぱりない。
だってほら、ぼく、テクとかスキルとかないし。
そんな、売りものにできるようなものじゃない、と……。

(思うんですが、なんて、語尾がやたら丁寧になってしまうのは、
わかりやすく動揺している証拠である。
しどろもどろになりながら、あたふたと両手をばたつかせて)

ヴィクトール > 「考えすぎて足止まるのも良くねぇぞ?」

彼女の実際の姿など知る由もなく、ただ一人の少女に対してとして接していく。
此方の言葉に少しでも元気が出るなら、それはそれで良いらしく、そうかと笑っていた。
此方の問いかけには、彼女も納得せざるを得ないらしく、言葉に詰まっていく。
ならば尚の事、自分が今宵を買って、ある程度何かを与えられれば、まだ安心して過ごせるだろうと考える。
その提案は、彼女にとって予想外だったというのは、見てすぐに分かるが、そんなに突拍子もなかっただろうかと分かって無さそうな様子で軽く首を傾げていた。

「ならアリか、んじゃ買うぜ? ……んなもん、気にすんな。尽くすのが上手ぇとか下手とか、結構どうでもいいんだよ。ヤリてぇって思った相手なら別によ」

しどろもどろに曖昧で否定気味な言葉を紡がれるも、Noと確りと言わない限りは、敢えて分かっていないふりを決める。
じゃあ成立だと告げると、ドアを閉めた。
バサッと服を脱ぎ捨てれば、ところどころに傷跡のある戦う体を晒しつつ彼女の元へと歩き、遠慮なくバスタブに足を突っ込んでいく。

「よっと……いいねぇ、これぐらいの大きさだとすっぽりだな」

ひょいっと体を抱え上げ、それから湯船に体を沈めると、自身の股座の上へ座らせるようにして抱きしめ、あたたまる。
後ろから抱きすくめながら、少女らしい柔らかな肌の感触に目を細める。

リュシー > それはね、あのね。むしろ今までが、考えなさ過ぎたというか…、

(そんな言い方をすればミもフタもないが、おもに下半身の衝動だけで
生きてきた結果が、コレ、なわけで―――やはり少しは、考えねば、と思うのだ。
ただ、今までの人生でものを考えなさ過ぎた弊害か、ひとつの思考が長く続かない、という。
とくに、こんな風に、ポン、と新たな問題を投げこまれれば、一発で前の思考は霧散する。)

いや、アリだなんてまだ、ぜんぜん言ってな――――、ちょ、
だって、だって買うんだって言ったじゃん!
買うってことは、売り物になるかどうかって結構大切じゃ、……ちょっとお、っ!

(軽くパニックに陥っている間に、相手が目の前でさっさと服を脱ぎ捨ててしまった。
戦場を生き抜いてきた者特有の痕跡が目立つ身体を前に、ほんの少し、
男としてのプライドが刺激されたりしているうちに―――なんとも軽々と、
抱えあげられて降ろされた。
首筋が、背中が、腰が、すっぽりと彼の体温に包みこまれる体勢。
抱き竦められてしまえば、もはや、じたばたする余地もない。

―――頬どころか、耳朶まで赤くなるのを感じつつ、盛大に肩を揺すって溜め息を吐き)

……強引だなぁ、もう。

(風呂、というのは、ひとの戦闘意欲を削ぐものだと思う。
彼の腕のなかへ抱きこまれた体勢のまま、両手をそっと伸ばし、
己の身体にまわされた、彼の腕を指先でたどる。
正確にはその肌のあちこちに残る、古い傷痕と思しきものを)

ヴィクトール > 「それも…良くねぇな、よく分かるぜ…」

考えなしに、思った通りに行動する度に、一声かけろだの、少しは考えて行動しろだのと兄に拳で小突かれた事が多かった。
最近はそういうことが無くなる程度には考え、妙なゴタゴタに巻き込まれなくなっている。
考えなし過ぎるのはよくない、妙に納得したように静かに頷いていた。

「聞こえねぇなぁ。ん? 別に腐ってるわけでもなけりゃ、壊れてるわけでもねぇだろ? 気にすんな」

慌てふためいた抗議に白々しい返答を返しながら、近付いていく。
両腕は太く、無駄のない絞り込まれようであり、相棒と呼ぶ大剣を振り回す腕力からすれば、少女など軽い。
抱きしめると、暴れる様子がなくなり、怒ったか?と思いながら、恐る恐るその顔を覗き込もうと近づけていく。

「……馬鹿だからな、こういう時は楽だ」

恥じらいに染まる頬、熱は耳朶まで染め上げていく。
呆れたような呟きながら、恥じらい混じりのそれに淡く欲望を唆られながら、ニヤッと笑う。
伸ばされた両手が触れる腕は、引き締まった筋肉を浅黒く固い皮膚が覆う。
裂傷、刺傷、そういったたぐいの傷跡らしき部分が幾つも盛り上がっており、縫い跡も多い。
こそばゆそうにピクリと腕を震わせると、耳朶に唇を寄せ、擽るように息を吹きかけてお返しをした。

「やっぱ育ちのいい女の手は気持ちいいもんだ、感触がいい……つか、手だけじゃなくて、全部だな」

腹部や脇腹を撫で回しながら、下腹部に掌を添えるものの、割れ目にまでは届かせず、腰回りを軽く撫でる。
硬い皮膚を這わせつつも、臀部の下では徐々に肉棒が熱を帯びていき、肉の杭といった大きさのそれが尻の谷間に食い込み始めるだろう。

リュシー > …………でしょ?

(どうやら彼にも、考えなしの弊害について、思い当たるところがあるらしい。
そうだろうそうだろう、と言わんばかりに頷く仕草は、少し失礼だったかもしれないが。)

く、……腐ってるって表現は、ちょっとどうなのかなぁ。
それ、肯定されたらどうするのさ。返事に困ると思うんだけど。

(そもそも、人間が腐っているとはどういう状態なのか。
それはいわゆる、生きてないもの、というやつではないのか、などと、
またしても己の思考はどこかへ飛びかけている。
どうやら、まだ若干、パニックが続いているらしかった。

俯き加減に、首輪のついた細いうなじを晒しながら。
いっそ無邪気な興味を露わに指先を滑らせるうち、耳朶が熱い呼気で擽られた。
ぴくん、と肩を竦ませ、指先の悪戯を止めたのは、ほんの一瞬。
すぐにまた、目立つ縫い痕を擽るように触れはじめて)

な、に……言って、んだ、かな、…ぁ……んっ、

……… ぁ、…ちょ、っと…早い、んじゃない、かな……?

(肉づきの薄い腹から脇腹、下腹へと滑る掌の、剣を握る者特有の硬さに肌をざわつかせながら、
ふと、まろやかな双丘の狭間へ、明らかに兆し始めている熱の存在を感じて、
軽く息を詰め、それからくふりと笑み声を洩らす。
彼の腕をなぞっていた右手を後ろ手に、彼の腹からその下へ、
そろりと探るように触れて―――もう、熱くなってる、と吐息交じりに呟き)