2017/06/01 のログ
ご案内:「洞窟神殿跡」にマティアスさんが現れました。
ご案内:「洞窟神殿跡」にエアルナさんが現れました。
■マティアス > ――よく云われることだが、人の手が入らなくなった建築物は荒れ果てるという。
これは主に人が住む住宅の類で云われるものだが、これはきっと建物の大小に限らないことだろう。
年月の経過は次第に如何に堅牢な建物であろうとも、朽ち果てさせてゆく。
たとえ、それが深き山奥に穿たれた洞窟を利用したものであっても、変わらない。否、もっと深刻だろう。
時間経過に加えて気候の変動、長き年月をかけて染み入る水、そして何よりも人の代わりに棲む魔物。
人と、信仰も失せた場所にはかくして、魔が住まう。そして、訪れるのもまた然り。
「……さて、と。どの位進んだかな?」
手には古風なカンテラ。鼻先に引っかかった眼鏡を押し上げて、周囲を見回しながら一息をつこう。
眼鏡に施した魔術により、視野は確保できていても注視するには光源が要る。
比較的、複雑な作りではないが、時折出てくる魔物の類は多いという一言に尽きるだろう。
それだけ、信仰の産物であったこの廃墟は広大に作られていた。
天上は高く、進む通路の幅も広い。
そして、天然そのままではなく、丁寧に削られて何かを現していると思しい起伏の残骸が見える。
だが、それを見る影もなくしているのは漏出した水による害と、付着した糞便等だろう。
それを仰ぎ見て、そっと息を零す。学者紛いのような身分だが、多少は見識がある故に。
■エアルナ > 「ん―…地図が正しければ、まだ入り口から半分も来ていないですね。さらにその半分くらい?」
同じようにカンテラの光の下、以前の冒険で手に入れた古文書の地図を広げて。
周囲の地形と照らし合わせて出た推測を、提出するのは冒険の相方なつもりの娘。
その傍らにはいつもの通り、忠実な白狼が付き添っている。
「あの天井なんか、当時はきっと丁寧な彫刻だったでしょうに…いまは見る影もない、ですね。
英雄譚だったか、当時の神話だったか…それくらいしか見当がつかないです。」
彼の視線の先を見れば、小さく頷き、同感だと示す。
寺院か神殿、そういうものの遺跡なのはわかっているだけに。
■マティアス > 「……うん、そうだね。地図通りであるなら、僕もそのように見るよ」
幸い、現在のところは小休止である。足元の四方で小さく魔力の光を灯すのは魔文字を刻んだ小石<ルーンストーン>である。
作った陣の中の存在の気配を外に漏らさず、隠蔽する作用を持つそれを以て小休止と情報整理に勤しむ。
手元に構えるボードに張った紙に黒鉛を以て、描くはこれまで進んだ経路を示す簡単な絵図面。
この大回廊を進めば、三叉路に出るだろう。
左右には居住区や修行の場、と思しい領域、直進すれば大礼拝堂と云うべき空間に出る。
迷宮というほどではない。しかし、もとは天然の洞窟なだけあり、ここまで至るには長い道がある。
地下水脈もある場所には、当然ながら陽の光を厭う生き物が集う。善きも悪しきも問わないならば、あとはお察しだ。
「興味深くはある事物なんだろうけどね。
如何せん、ここまで侵食されていると解読するにも手間だよ? ……まして王国の学会に持ち込んでも、ね」
金になる云々の前に、きっと誰も見向きはするまい。今のこの国はそういうモノである。
しかし、僅かなりとも興味はあるのだ。
深山に作ることに神秘性を見出したのか、それとも追われてやむを得ずここに至ったのか、等々。
だが、少なくとも先人は居た。この地の作り手と、見捨てられた場所に何かを仕掛けて去った何者か、と。
先日手に入れたある地図は、その後者の存在を明確に示している。
小休止は終わりだ。ボードをローブの裏に仕舞い、効力を失った小石を丁寧に拾おう。
■エアルナ > 「そうですね、洞窟の中だからもう少し保存状態はいいほうに期待してたんですが…岩に刻んだ文字もあれだけ風化しているとなると。」
近くにある、石碑か石板か。案内図「だった」ろう図面が刻まれたとおぼしきものを見て、零れるのは溜息。
「解読、の呪文でも。どこまで読み取れるか、疑問ですね――」
そして、学会の今の状況はと思い出せば、苦笑するしかない。
治世が荒れれば、学問の探求もまた、左右される。
視点が政治利用の方角に、シフトされるからだ。
「この先…まず確認するのは、礼拝堂ですよね?」
なにかが。あるとすれば、そこだろうと。
師匠ともいうべき青年を仰ぎ見て、判断をあおごうとする。
■マティアス > 「風の通りがあるとなると……間隙を抜けて来るモノもあれば、染み入る水もある。
エアルナ、覚えておくといい。水はね。何物も溶かし得る溶媒となりえるよ?どんな条件が揃えば、そうなり得るかは宿題にしておくとしようか」
水質にもよるが、長い年月をかけて或る種の洞窟は水に溶けた岩質が堆積し、奇景を生み出すという。
きっとこの洞窟を形作る石も、その種のものに近いだろう。
加工しやすい反面、水の具合によっては折角刻んだ彫刻等が台無しになってしまうこともある。
腰に付けた水袋より一口、水を啜って喉を潤す。水の質によっても、この具合はより変わるだろう。
この種の話で本を紐解くならば、良い勉強にもなり得る筈。師の如く振舞う己として、皆までは語るまい。
「如何にも。――では、此の侭前に進もうじゃないか。明かりを絶やさず、足元と天上に気を配りながら、ね。」
腰に帯びた剣の柄に手を乗せつつ、首肯と共に前に進む。無造作に。だが、視界は広く持って注意深く。
罠の有無は現状確かめ難い。歩いて確かめたが、進むこの場は外敵に対する守りを考えているとは、言い難い。
堆積した埃や、そこに浮かび上がる足跡の有無を確かめながら進めば、おのずと開けた空間に出るだろう。
王城の広間もかくや、というべき広大な空間。それこそ竜でも踊れそうな広さが。