2017/04/21 のログ
■マティアス > 「成る程。では、この王都の貴族がやりそうな類のことはお気に召さない、か」
かくいう己の家は大貴族、というわけではない。
その呼称がよく似合う類のものは他に居るが、宴云々の情報はよく小耳に挟む。
宴には金銭もそうだが、消費されるべき食材等が行き交う。その流れに注意しておけばおのずと分かる。
「ははは、ご期待に沿えなくて申し訳ないけど、僕はそういう益荒男の血筋なんて引いちゃいないよ。
――その土地の守護を約した大精霊と交わり、設けた子が僕の家の成り立ち云々は聞いた覚えはある。
けど、正直それも怪しいものだよ。
力だけはあるのは確かだけど、その約定に今の僕らが従っているかと問われると、とても悩ましい限りだ」
やれ、我が家は何処ぞの戦で武勲を立て、王より認められ――なぞという仰々しいものではない。
確かと言う覚えはあるが、実家の書庫を漁っても見つけきれなかったのだ。
また別の話なのか、それともあまりにもその約定に添えなさ過ぎて記録から抹消したのか、怪しい処だが。
ひょいと肩を竦め、グラスを干そう。その上で手酌で新たに酒を注ぎ直して。
■エアルナ > 「慣れていない、というのもあるかもしれませんが。実家も自分から汗水流し働くのを苦にするようなところではありませんから。」
むしろ手に職をつけるのを生業に、という一面がある。
王都から離れた場所に生活基盤を持つだけに、商いや工業はたいせつなスキルだ。
食料の流通などに関しては、商いを通しても情報はつかんでいるが。
「マティアスさんは…武士ではなくて魔法使いですものね。
始祖の話については、…似たようなものです、うちも。
森の大精霊へ捧げられたはずの村長の娘が、心通わせてその守護を受け子孫はその地の守護となった――そんなおとぎ話が。」
いちおう当時のその娘の絵は残っていますが、と思い出しながら語る。
王のほうに認められるような手柄話ではない、親から子への伝承。
古文書の形になっているのは一冊だけ、当主しか読めない定めというから、そんなことしか知らないのだけど。
ただ。1,2代おきにかの娘とよく似た容貌の魔法にたけた娘が生まれ…その子には必ず森からの守役がくる。
それがあの白狼です、と内緒話のようにうちあけて。
■マティアス > 「――嗚呼、そういうことならば納得だよ。浪費のための浪費を嫌うわけだ」
なるほど、道理ではある。地方の豪族にまつわる者らしい考え方だ。
働かざるもの食うべからず、ではないが、楽して生きることを嫌う風潮はあるだろう。
何にしても人手は要るのだから、為すべきことを為すことが何よりも大事だ。
「…………成る程、ね」
そして、酒の合間に頼んだものを食しながら、聞く話に、そっと嘆息を零す。
この手の話は割とどこにでも転がっているもの、か。
絵図面でもとはいえ、ちゃんと残しているのは流石というべきだろう。信憑性は増す。
実家とは大違いだ、と口元が皮肉げに歪む。
当時の尊き志をは裏腹の現実に、後ろめたさを覚えたから、であろうか。
「では、君が当代の、というワケか。伝承通りの流れならば納得だよ」
ここからでは見えないが、窓から顔を遣ればあの白い狼が見えることだろう。
伝承の裏付け人が居るのなら、とても信頼のおける話であろう。
■エアルナ > 「ええ、それに、働く方が楽しいのですよ。民の上で惰眠をむさぼるばかりでは、いろいろなところがなまってしまう…兄の口癖ですが、同感です」
真面目な顔で頷く。そもそも彼と知り合ったのも、商いの品の輸送の途中だったし。
その品はもちろん無事に届けて、目的は果たしている。
「ええ、マティアスさんのところとは別の精霊…の、はずですけど。」
昔はこの国も、少なからぬ精霊たちがいたらしい。
だが、いまは…言わぬが花、というものだろう。
「森の精霊の血筋だから…花の香りをまとうのが、娘達の証だともいわれています。
ええ、私の前は、祖母に当たるのが先代でした。」
そのかわり、といってはなんだが。
子孫全員に血の証が出るわけではなく、魔法も使えない場合もあるのだと、明かして。
一部にはなんというか、羨まれていますと苦笑した。
■マティアス > 「良い心がけだと思うよ。生憎、領地持ちじゃない身なのでね。想像で補うほかないけど」
逆に自分は、どうだろうか。祖先の国を守るという当初の志を果たしているのだろうか?
果たしているともいえるし、果たしていないともいえる。
心震わす由縁をどこに求めているか、にもよる。
例えば、悪逆非道の徒が、同等かぞれ以上の理不尽によって潰されるのはとてもとても心躍るものではあるが。
「――少なくとも、僕に限って言うならばあまり考えない方が良いのだろうね」
何せ、享けた血を濃くするための近親婚等もあった、とも聞いている。
さながら名馬同士を掛け合わせ、より強い魔力が出るように試みた等、という記録もある。
国を守るために人道は重要視されないこともあった。それは人の理に添えることだろうか?
「ははは、良いじゃないかな。
それはそれで大事に思われているというコトだと思うよ? つくづく、僕には勿体無い限りだ」
恨み嫉みが過ぎると良くないが、その気配は相手の口ぶりからは伺えない。
自分の家であれば、即座に殺されてもおかしくない気さえするのだ。
再び酒杯を空にしながら、遠い目をしよう。隣の家の芝は何とやら、か。ふと、そんな格言も思い出す。
■エアルナ > 「想像力は魔法の源、みたいなものかもですよ?」
とっくに知っているだろうけど、と笑みを浮かべる。
こうあれ、と変化を引き起こすにはどうしたいかイメージを明確に脳裏に描くことが必要だ。
それに、働くのを厭うような「貴族」は…尊敬できるものではない。
「なんの血を引いているか、にもよるのでしょうけど…」
なんとなく。口ぶりでは、あまり聞かれたくないことも混じっていそうな感じがして、そこで止めておく。
精霊と一口に言っても、その内訳は広い…その血に宿るものもまた、そうだろう。
「…マティアスさん?」
遠い目をする様子に、つい、心配になり。そっと手を伸ばして。
かなうなら、空いているほうの手に触れよう。
なにか、つらい思いをしたのかと…案じるように
■マティアス > 「まぁ、ね。――普通にはできないことを実現するのが、魔法だ」
勿論、限度はある。しかし、条理を逸した現象を引き起こすのが魔法の在り方である。
夢と希望を持っている、と感じられる言葉に、こそばゆい思いを抱きながら小さく頷こう。
だが、時に夢とロマンは不条理を究めた現実に覆されることもある。
在り方が歪んでいるとはいえ、魔導を究めることを求めた家に生まれたからこそ、よくわかる。
「さて、何の精霊、だろうかな。……――けど、どうかな。その祖には善く思われてない気がするよ」
少なくとも、知性のある力あるものに相違はあるまい。
しかし、混血が混じれば彼女らのような純粋なるものとは、また在り方が変わっていることであろう。
そう思わずには、やはりいられないのだ。己の在り方が正道であるのかと言えば、否だ。それを自覚するからこそ。
「――ん。 いや、なんでもないよ。さぁ、食べてしまおう。君の折角の料理が冷めてしまうよ?」
触れる手の熱に、気を取り直す。
ゆるりと首を振れば、空になった杯に酒を注ぎ直して、さぁ食べようと促そう。
己の身の上を語ることほど、仕様ののない話はない。
生まれてしまったならば仕方がない。故に重要なのは、これから――そうでなければ、生きている甲斐がないのだから。
■エアルナ > 「魔法使いも。普通ではないことを実現するだけに、…責任は痛感してます。
…マティアスさん。自分の子孫を、愛しく思わない親などいませんよ――」
よほどの、変わり種でもなければ。
そう、まだ信じていることを堂々と口にするのは、まだ青い証かもしれないが。
「それに。大切なのは、どんな先祖をもったかじゃなくて――どんな生き方をするか、です。」
促されればこくりと頷き、微笑みを返す。
自分の人生は、先祖のものではなく、自身のものなのだから。
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