2017/04/08 のログ
■アーヴァイン > 「そうなる日が来る、そうすることが当たり前に感じる日が」
今は不慣れな感覚を慣らすように、何度も何度もなぞらなければならない。
けれど、一歩踏み込んだ瞬間に人に慣れた彼女が、人らしさを強めるのも遠くない気がするからこそ、表情は柔らかだ。
「そうだ。既に人で、幸せを得る一番の表情…笑顔を覚えようとしている。自ら、何歩も先に歩けている」
剥き出しになった心を撫でる感情は、痛み混じりで擽ったいことだろう。
けれど、既にみずから進んでいるのも事実だ。
微笑みながら頷くと、言葉癖が現れ、一層笑みを深める。
照れ方も、何処か幼いが…それにすら可愛らしさを覚えていた。
もっと笑って欲しい、照れるのも悲しむのも、怒ることも全て感じて欲しい。
こちらも安堵の吐息を零すと、少しばかり目頭が熱くなり、開いた瞳が先程よりも潤んでいく。
「眠れないか、なら……俺の前で素肌を晒して、ルークの全部を確かめて交わるなんて考えたら…頭が焼け落ちるんじゃないか?」
抱きしめて眠るだけ、それだけでも頬に赤みが浮かぶのが分かる。
これだけ可愛らしい一面を持っているとしれば、再び笑みがニヤけそうになるほど。
与えられる感覚を覚えていく中、もう一つ踏み込んだ感情を伝えるべく、くてりと彼女の額にこちらの額を重ねていく。
「俺は心地よくてよく眠れそうだ。ルークが人らしくなってくれて嬉しいのと、人らしくなったことで一層可愛らしくなったルークに安堵するからな…」
彼女が与える変化、それを伝えていく。
人と人が反応しあって生まれるのも、また一つの感情だ。
まずは自分からその波紋を広げて、囁きかける。
■ルーク > 「感情を当たり前に感じる日が来る…。」
アーヴァインの言葉を反芻するように紡ぐ。
そんな未来を想像する事ができなくても、拒絶しなければ一歩、また一歩と壊れた殻の外へと覚束無い足取りであゆみ出していく。
歩む事を覚えた赤子の手を引くように、アーヴァインの言葉がルークを導いていく。
「笑うと、幸せになれる、ですか…。アーヴァイン様、心なしか瞳が濡れているように思われますが」
笑顔になることで、幸せをたぐり寄せることが出来る。
それは、彼が引き合わせてくれたミレー族の少女たちが証明している。
人としての幸せを得るためには、もっと笑えるようにならなければいけない。
そのためには、もっと感情を理解して当たり前に感じられるようにならなければならない。
明確にこれといった規定もないそれに、不安は付きまとう。
ふと、アーヴァインの瞳が潤んでいる事に気づいて、問いかける。
体の痛みなど生理的に滲む涙しか知らなければ、どこか痛いのだろうかと体を見回して・
「……………。」
沈黙。
素肌と素肌を晒し、触れる瞬間を想像してしまったのかアーヴァインから視線を逸らすと更に頬の赤みが増した。
琥珀の瞳は、羞恥の熱に潤んでさえいたかもしれない。
おかしい、道具として抱かれるつもりであった時はその手順を思い浮かべても何も思わなかったはずなのに。
今こうやって実際に触れ合っているだけでも、恥ずかしいという感覚は強いのに服すら取り払って素肌で触れられ、見られるなんて…
と沈黙の中で思考がぐるぐると回っている。
コツンと額と額が重ねられて、更に近くなる距離にびくっとルークの体が緊張する。
「そう、でしょうか…隣でこんなに強ばられては、寝心地が悪いと思われますが……」
アーヴァインから広げられる波紋に、キュゥっと嬉しいときとも苦しいときともまた違った甘いような切ないような感覚が生まれて戸惑う。
近くなった瞳を重ねるのが、なんだか恥ずかしくて忙しなく視線を彷徨わせ。
■アーヴァイン > そうだと頷く。
ある程度、背中を後押しはしたが、寸分たがわぬ方向を示したわけでもない。
ほんの少し先を見せただけで、彼女の人らしさは花開いていた。
「あぁ、笑顔は幸せを呼ぶそうだ。……あぁ、ルークが人らしさを受け入れてくれたのに安心したら、少し涙が出てきた」
安心したのに涙がでる。
彼女の中にある涙は、痛みや苦しみに溢れるものだと覚えているのだろう。
自分の傷がないかと体を見渡す彼女の手を取り、心臓の上へと掌を導く。
涙を押し出した場所、それは正に彼女が嬉しさを痛みのように感じた胸の奥と同じだと。
「……堪らなく可愛いな、ルークは」
想像を煽っただけで、あれだけ淡々と言っていたくせに、いきなり生娘の様な反応を見せる。
嗜虐心と庇護欲が同時に煽られ、可愛がりたくも意地悪もしたくなってしまう。
満面の笑みでその愛らしさを褒めると、額を重ねていく。
「…華奢で柔らかいし、ぬくもりも心地いい。何より…そんなに恥じらいを見せられると、ずっと抱きしめていたくなるぐらいだ」
恥じらいの感情が心を大きく揺さぶっていくようだ。
祟り神を演じて、じわじわと良心の痛みに苦しみ、素のときには大きく表情は変わらないものの、柔和な笑みを見せはするが…男であることには変わりない。
彼女の見せる変化に心を擽られ、包み隠さぬ本音を囁きかけるほどだった。
■ルーク > 「それは、少し分かるような気がします。ミレー族の少女たちを見たので…。安心したら、ですか?痛みや苦しみ以外で涙が出るのですか」
笑顔の耐えなかったミレー族の少女達。
彼が彼女たちに引き合わせた事で、笑顔が幸せを呼ぶという彼の言葉を理解することができた。
傷がないかと体を見回せば、その手をとられて胸の上へと導かれる。
そこは、規則的に心地よいリズムを刻む心臓の上で。
様々な感覚をルークが体験したのと同じ場所、そこから涙が押し出されてくるのだと教えられる。
「可愛くなどは、ありませんので…まだまだ。感情の理解が追いついておりませんし、可愛いというのは恐らく先ほど会ったミレー族の少女のような者をいうのだと、思われますので…っ」
男女の交わりについては、必要最低限受精する為に必要な知識のみだ。
情の交わし合いとしての儀式というよりも、作業としか認識していなかった。
そこに感情が伴えば、一気にルークの中で羞恥と混乱が広がっていく。
可愛い、と改めて言われるのさえ少し前のように受け流すことができない。
感情とはとても厄介だ。
「――このような体で、アーヴァイン様が良眠を得られるのであれば…その…………抱きしめて、眠っていただいても…構いません…」
こういう時、どのような返答をすればいいのか分からずに返す言葉は、どうしても言いなれた相手の立場に従うものだったが、羞恥の赤は耳まで染めていることだろう。
それは今までとは決定的に違う部分。
祟り神として、精神を、良心をすり減らしている彼を癒せるなどという驕りはない。
けれど、彼が望むのなら決して嫌ではなくて。
■アーヴァイン > 「そうだな、あの娘達も笑顔から一層幸せは広がったからな。あぁ、感情の極まりで出ることもある…あの子達も笑いすぎて泣いていただろう?」
嬉しさに、切なさに、安堵に、そして楽しさに。
普段当たり前だと思っていたことは、言葉にするまで何故と思わないままだ。
自分ももっと彼女に伝えられるように、胸の奥に流れる感覚へ意識を向けようと改めて思う。
「そうやって慌てるところも、恥ずかしさに頬を赤らめるのも…謙遜するのも全てだ。見た目の可愛らしさも存在するが、心の可愛らしさというのも……」
ふと、いいかけて一つの違和感を覚えた。
そもそも、彼女は自分に安々と抱かれるつもりで居たのだ。
確かに、情の混じった交わりに慣れていないのなら、照れくさいことだろう。
だが…それよりも濃い恥じらいは、一つの結論に至る。
考える合間、少しばかし視線をそらしたが、再び恥じらいに視線が散っているだろう彼女を見つめ直す。
「妙なことを尋ねるんだが……ルークは未経験…ということか?」
これではまるで生娘であると、彼女の反応から察し、問いかける。
それなら一層丁重に扱わなければならない、初めてを踏みにじられでもしたら…心が粉々に砕けてしまいそうだからで。
「…月のように静かで、柳のように華奢で美しい。前にもそんなルークの体つきも好きだと言ったばかりだろう? 俺にとっては最高だ。……想像したようなことを、俺がしないとは限らないが、いいのか?」
自分のためにと尽くす言葉は、駒としてではなく彼女の女性らしさから来る答えだろうか。
ただ、その言葉をそのまま受け止めるなら…あっという間に何歩進むことになるのかと思いつつ、少し意地悪かもしれないが、微笑みながら刺激の強い言葉で問いかけて、答えを確かめようとした。
■ルーク > 「感情の極まりで…はい、笑って泣いている少女も見受けられました。…それに、貴方様が祟り神として悪く言われるのが辛いと泣いている少女もいましたね。」
言われてみれば、笑い転げて涙を流している少女もいた。
そして、兄と慕う存在が祟り神としてある事に涙していた少女がいたことを改めて思い出す。
改めて思い起こしてみれば、感情のヒントになりそうな記憶は既に彼が与えてくれていたのだ。
「恥ずかしいという感覚だと教えていただいた、居た堪れないような感覚に陥ると血の巡りがよくなるようで、その…顔が熱くなっていくのがコントロールできません…。」
恥ずかしさに頬を赤らめる様を指摘されれば、なんとか抑えようとするものの抑えられるはずもなく、意識すればどんどんと顔が熱くなっていく。
視線は小刻みにさ迷いアーヴァインを直視できないようで。
その間に考えるようにそらされる視線、そして問いかけを投げかけられて彷徨っていた視線がアーヴァインへと向けられる。
「性交渉が、という事でしょうか。未経験となります。…子を作る手順は、先ほど申し上げたとおり知識としては知っておりますが、あくまで道具として知っているだけですので、感情の伴った行為というのは…その、よく分かりません。」
未経験と、それを語るのに羞恥はあまり混じらず事務的になるのは殆ど条件反射のようなものだったろう。
しかし、言葉が後半になるにつれてアーヴァインを見ていた視線は再び少しずつ逸らされていく。
作業としての行為に恥じらいは混じらないが、感情が混じった場合どうすればいいのか分からなくなってしまう。
「はい、お聞きしましたが……改めてお聞きすると、恥ずかしい感覚が押し寄せてきます。…………まだ、感情というものが完全に理解できておりません、ので…ご期待に沿うことができるか、分かりませんが……。」
事あるごとに賞賛の言葉をアーヴァインに投げかけられてきたが、それに動く心がなかった。
だから、何とも思わなかったが一度感情の揺れを覚えてしまえば改めて言われる言葉に胸の内を擽られて、キュゥっとまた甘く締め付けられる感覚に見舞われる。
女としての喜びというものも、よく分からない。
もともと、彼に抱かれるならば道具として光栄だと思っていたから拒否する理由もない。
けれど、それとは別に、嫌ではないと芽生えた感情が訴えている。
■アーヴァイン > 「涙は辛いものだけじゃないな」
意図せず彼女に感情の手解きをしてくれた義妹達に感謝しつつ、小さく頷く。
顔が赤くなるのを抑えられないと真面目に呟く辺りもまた、ずれている答えであっても、妙な可愛らしさを覚える。
殻の内側は、とてつもなく純真無垢なのかもしれないと思えば、泳ぐ視線に微笑み続ける。
「…そうか、教えてくれてありがとう。女性にとっての始めてはとても大切だ。だから…この国で、心無い者に踏みにじられるのだけは避けたい」
愛する人に初めてを捧げる、それは永遠の相手ではないとしても、心を通わせた人との深い繋がりを示すものだ。
欲望を満たすために踏みにじられてしまえば、せっかく芽生えた彼女の心が壊れてしまう。
恥じらいにたどたどしくなる言葉に、柔らかに微笑みながらお礼を告げ、くしゃりと髪をなでた。
「……ルーク、いまとてもドキドキして、俺にそうされることに恥じらいと別の高揚が交じるなら…もっと凄い感情を芽生えさせたことになる。恋する気持ちだ」
女としては物足りないと言われそうな体つきだが、その細いラインの曲線美に見せられていく自分がいる。
そして、その言葉に恥じらい否定をしない拙い言葉は、不器用なりの好意を感じさせられる。
ただの錯覚かも知れないが、錯覚かどうかを確かめるほうが大切だった。
額を重ねたまま顔を傾ければ、唇が届きそうなほどに少しずつ近づいていく。
望まぬままに奪うつもりはないが…嫌だと思うか逃げられないか。
そのどちらからだけで、彼女の心が決まるはずと。
■ルーク > 「胸の中の感覚が抑えきれなくなった時に溢れる先が涙なのでしょうか…。」
少女たちの様子や、アーヴァインの瞳に滲んだ涙から想像して答え合わせをするかのように問いかけを投げる。
「大切、ですか。…子を宿すための道具として教えられていた時は、あてがわれた相手には拒否はするなと、けれどそれ以外の相手には不要な血を混じらせない為に孕ませられる事はあってはならないと言われていました。」
その為に少年に見せるチョーカーをつけていたという理由もあった。
初めてが大切なのだと教える相手に、今まで教えられてきた事との違いに少しだけ戸惑う。
くしゃりと髪を撫でられれば、また胸の奥がキュゥっと甘く締め付けられて何度も繰り返す内に、切なくどこか心地よく感じるようになって。
「…恋する気持ち…その、先程からアーヴァイン様に触れられると苦しいのとは違う、嬉しい時と似ているような、けれど少し違う胸の中がキュゥっと縮こまるような感覚に襲われます…。その感覚が来ると、胸が一層ドキドキしてよく分からない気持ちになります…。」
感情に目覚めたばかりで、恋という言葉を出されても実感できるだけの経験がルークにはなかった。
けれど、恥じらい以外の高揚は確かに胸の内にあってその感覚をなんとか正確に伝えようとするように、胸に手を当てて視線を少し彷徨わせて言葉を選ぶ。
額を重ねたまま、近しい距離にある彼の瞳を見つめると、彼の顔が傾けられて唇が触れ合いそうなほどに近づいていく。
キュゥっとまた甘く胸を締め付ける感覚が襲いルークはきゅっと瞳を強く閉ざして、けれど拒絶も逃げることなく唇が重なるのを受け入れていく。
■アーヴァイン > そういうことだろうと頷きながらも、初めてについての言葉に、チョーカーの理由がつながってくる。
ただ無意味だからと男にする必要はなかったはずだ。
義父のなら、そういう理由で彼女の純潔を守らせる可能性はあったが…今回ばかりは、それについて感謝すべきだろう。
戸惑う様子に、柔和に微笑みつつ、黒髪を撫でる手が頬へと滑り、そこを撫でていく。
「その理由はあまり好きじゃないが…ルークに大切な思い出を残せるモノが残っていたことは、いいことだ。今のルークなら分かると思うが…心を許してない相手に裸を見られたり、貞操を奪われたりはしたくないだろう?」
自分にはある程度心を許している分、大丈夫だろうと思うが、それ以外となれば想像に及ばないか、嫌悪が浮かぶはずと思い、確かめる。
そして、彼女の語る心の締め付けは正に…恋心そのものの言葉。
その痛みから逃げず、胸に手を当て戸惑いながら答える姿は、誰が見ても愛らしいと言うことだろう。
彼女の言葉に答えるより先に…近づいた唇を、瞳を閉ざしながら重ねていく。
重なり合うだけの甘ったるい口吻を、ほんの数秒ほど。
高揚感の高さ故に、それが長く感じるほどに鼓動が加速する。
ゆっくりと唇が離れれば、するりと掌を彼女の頭の後ろへと回し、改めて密着するほどに抱きしめた。
「初めてのキスも同じぐらい大切だ、それを捧げられる相手というのは、愛した相手だけだ。こんなにも…感情豊かなのに、閉じ込められていたんだな」
求められず、愛されず、ただ目的のために育てられてしまった彼女だったが、奥底にしまわれた少女らしい感情は生き残っていたようだ。
本当は飢えていたのかもしれない、ぬくもりや愛情に。
思うほどに、大切にしなければいけないと思うばかりだ。
抱きしめたまま耳元に、その気持ちを低くも落ち着いた音で囁きかける。
大切にする、まるで宣言のような一言を。
ご案内:「ドラゴンフィート」からアーヴァインさんが去りました。
■ルーク > 「…あの…アーヴァイン様にも裸を見られるのは恥ずかしいのですが…他の男性と考えると、恥ずかしさよりも不快なような気がします。」
髪を撫でていた手が、頬へと滑ると魔法弓を扱う硬い感触の男性の手で包み込まれる。
触れられる事への慣れない感覚と、恥ずかしさはあるがどこか心地よくて、不快感は感じられない。
彼の言葉に、彼以外の男に素肌を晒すことを想像してみるが、漠然と浮かんだのは、恐らく嫌悪と不快と感じるだろうということ。
道具として、体を差し出す意識であったときには考えもしなかった感覚だ。
「――……っ…」
ぎゅっと閉じた瞳、そっと重ねられる唇の感触に、ぴくっと肩が小さく揺れる。
呼吸をどうしたらいいのかと、戸惑うほどに数秒ほどの口づけは長く感じられる。
「これが、キス…ですか…。唇と唇が重なるだけだというのに、何故かすごく胸の中が熱くなります…。」
隙間もなくなるかのように、強く抱きしめられながら、囁きを聞く。
ほんの数秒重ねていただけだというのに、のぼせてしまいそうなほどに体の熱が上がっているのを感じる。
それと同時に、胸の内に泉のように湧き上がるその感情を自覚する。
愛しいと思うその心を。
大切にする、と低い囁きが耳へと滑り込みルークは、素直に一つ頷いた。
ご案内:「ドラゴンフィート」からルークさんが去りました。