2017/04/04 のログ
ご案内:「設定自由部屋4」にアーヴァインさんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋4」にルークさんが現れました。
アーヴァイン > 王都から馬車に揺られ、街道を進むと九頭竜山脈の麓へとたどり着く。
そこから二つの方向へと別れる分岐点に居を構えたのが、龍の足元と名を冠した、ドラゴンフィートである。
普段なら、使役獣の隼の背に乗り、ひとっ飛びで戻るところだが、今宵は従者の彼女がいる。
場所を知ってもらうにも丁度いいと、組合が運営する装甲馬車に乗り、ゲート前へまでたどり着く。
第九師団副団長以外の存在は全て、等しい存在とされる。
その説明の後に門が開くと、馬車は発着駅へと向かっていく。
窓からは商業区の賑わいが見えるだろう。
共同鍛冶場と小さいながらも己の店を求め、集まった若い鍛冶職人や、己が最強と思う武具を声を張り上げて売りに掛ける商人と、健全な競争が行われていた。
発着駅へとたどり着くと、降りようかと声を掛け、ぽんと軽く肩を叩き、馬車を降りる。

「さて、ここから門の方へ戻って観光区を抜ければ組合の敷地だ。少し歩くぞ」

口調も顔立ちも素の彼のままだが、馬車に乗る前に服用した魔法薬のお陰で瞳と髪の色が変わっている。
青い瞳に茶色の髪、仕立てのいい軽装の防具に普段使用する武器類は背負袋に纏めておき、なるべく彼らしい特徴を隠していた。
数時間ぶりの外の空気に、心地よさそうに目を細めながら、ぐっと背伸びを。
そして、彼女へと振り返ると、いこうかと手のひらを差し出す。
エスコートしようと、彼女の手を求めた。

ルーク > ガラガラと装甲馬車の車輪が駆ける音、振動が座席に伝わりながら窓の外の景色が変化していく。
王都の町並みから、街道。暫くは暗い夜の帳が降りる中で、木々が深くなったり平野に差し掛かったりとそんな風に変化するのを無感動な瞳が眺めている。
王都から出るのが初めてというわけでもなく、別段珍しい光景でもなかった。
行き先はドラゴンフィート。
ルークが付き従う目の前の彼が設立した集落。
その場所に行く用も必要性もなかったルークにとっては、初めて訪れる場所だった。
馬車が一度門の前で止まれば、ドラゴンフィートのあり方の説明を行われ再び馬車が門の内側へと進んでいく。
商業地区へと入った馬車の窓からは、鍛冶場の音や職人や商人の声、それに集まる客と活気に満ち溢れる様々な音が聞こえてくる。

「はい。」

魔法薬を服用し、いつもと違う髪と瞳の色に変わった彼はけれどいつもと同じ素の彼のままルークに接する。
ぽんと肩を叩かれ、先に降りた彼の続き馬車から降り立つとドラゴンフィートの土を踏む。
外に出れば、その活気と音が直接肌に伝わり――それは、王都にはない空気と感じられる。

「………後ろに付き従いますので…。」

エスコートするために差し出された手に、少しだけ視線を逸らしてそう告げる。
彼に仕えるようになってから、このやりとりは幾度繰り返された事だろう。
祟り神としてほかの貴族の前に出るときは、当たり前にそういった行為をすることはないが素に戻った彼は、事あるごとにルークを気遣うように動く。
それに、対するルークの返答は同じだがそれでも繰り返される彼の行為に少しだけルークの反応に変化が見られた。
最初は瞳も動かさずにただただ淡々と断っていたが、それでも何度も気遣われるのに出会った時に差し出された手に困惑を示したように、視線が少し動いて戸惑いを滲ませる。

アーヴァイン > 王都の腐敗はそうそう止められるものではない。
だが、彼の義父としても、腐敗の程度が過ぎれば国の根底から崩れ、王政も、貴族階級も紙くずに変わると知っていた。
そういった点では、清流となって国にマトモな水を流すここは、唯一のオアシスといったところか。
活気づいた声がいくつも響き渡る中、手を差し出すと彼女がその手を断ろうとする。
戸惑い、そらされる視線。
嫌だといわないのなら…と、こちらから更に一歩前に踏み出して、その手を握りしめてしまう。

「わざわざ俺だと分からないようにしているんだ、ルークがいつもの様に振る舞ったら奇妙だろう?」

自分が寝る時は、自室に準備した彼女用のベッドに寝かせ、まもりは夜の警備をする衛兵達に任せる。
自室での食事は一緒に同じものを食べるし、食の好みを聞いたり、他愛もない話をしたりと、親しく接していた。
ある意味では、素の自分と彼女と二人での初外出だ。
笑って欲しい、そう願いながら手を引いていくと、商業区を抜けていく。
実用性重視のものも多いが、女性向けに可愛らしいデザインのダガーといった、護身用のものもある。
そして観光区へと入れば、ミレー族と人間が入り混じって賑わう店が所狭しと敷き詰められ、夜でも明るい。
何気なく……屋台の多い通りを歩いてみる、匂いは彼女の生い立ちからすれば感じ取りやすいはずと思ったからで、少しでも好みの品があれば、何か反応するだろうと、彼女の中身を知ろうと、ひっそりと調べてみることに。

ルーク > 国が腐敗しても、人というものは逞しく生きていく。
王都でも、屋台や酒場の呼び込みの声や喧騒といったものは聞くことができる。
しかし、この場所で聞く喧騒は王都のものとは全く違う安心感のようなものが流れている。
理不尽に搾取されることもなく、自身の力量を試し認められるといった安心感。

「ですが…手を引いていただく必要は…。」

エスコートするように差し出された手を断ったが、その手を半ば強引にとられ引いて歩き出されるのに、戸惑いの色が少しだけ強く現れる。
従者や駒といった立場を仮に取り払ったとして、いくら初めての場所だからといってはぐれる幼子でもあるまい。
何より、二人で過ごすときは素に彼が戻るといっても今までは城の中での生活で手を引かれるような状況になかった所為もあり、その手の温もりに戸惑う。
幼い子供の時でさえ、誰かのこうやって手を繋いでもらった記憶などなく握られる手の感触が、温もりが落ち着かない。
彼の行う一つ一つが理解できない。
それは、城での生活もそうだ。今までの生活からルークの生活は一変していた。
主が就寝するときは、就寝中の主の邪魔にならないよう陰に潜み護衛を行い、食事も身支度も主が寝ている間に行うのが常であった。
彼に仕えてからは、ベッドを用意され食事を用意され彼とともにテーブルにつき、他愛ない会話をふられる。
そんな日常を与えられ、戸惑いの日々を送っている状態。
彼が部屋から出て、貴族に接するときに祟り神として振舞う間に今までと同じように影として仕えるその時間が落ち着く時間となってしまっている始末。

商業地区を抜けて、観光地区へと入ればまた様相は異なる。
所狭しと並んだ店の数々、露店には様々な商品が並べられ細かい細工のアクセサリーから、実用性の高そうな武器、果実などの食べ物や飲み物の販売まで。

「ミレーと人間が、軒を連ねて商売をしているというのは少々奇妙な光景ですね。」

王都ではまず有り得ない光景に、ぽつりと思わず感想が漏れていた。
これも、彼と過ごす中で起きた変化の一つ。
以前であれば、命じられずに口を開くことなどあり得なかったし必要もなかった。
しかし、彼との間に会話の機会が増えたことから意識せずに感想がこぼれていた。
屋台の多い通りを歩けば、夕食を求める人々の流れのまた増える。
肉の焼ける匂い、魚の焼ける匂い、と様々な匂いがただよっている。
そんな中で、ふわりと香る果実の絞られる甘い匂いに無意識に視線が動く。
その先にあったのは、様々な果実を搾って販売するジュースの店だったか。

アーヴァイン > 「ルークは美人だからな、歩く度にお誘いの声がかかったら大変だ」

チョーカーを外した、女としての姿も何時もこうして褒めている。
戸惑う様子が見えると、あの人形だった表情が崩れてきたことで嬉しそうに微笑みつつ、歩き始めた。
あの義父の態度からすれば、言葉通りの駒として彼女を育てたのだろう。
だが、与えられた駒をどう扱うかは此方次第だ。
人らしい感情と感覚を、少しでもいいから体に染み込ませて欲しい。
何より、柳のようにスラリとした姿は綺麗だと思う人のほうが多いはずだ。
女としての自覚も少し芽生えればと、必要な時以外はチョーカーを外すように告げている。

「そうだな、本当は王都全体で見られるといいんだが……それより、珍しく自分から喋ったな? 良いことだ」

感想の一つも、中々彼女からは聞けないだろう。
満面の笑みで、己のことを口にした彼女を褒めると屋台通りを歩きつづける。
ふと、彼女の視線が動いたのに気づけば、その先へと目を向ける。
果実のジュースを販売している店が見えれば、ちょっと寄ろうかと、彼女の視線の先にあった店を指差し、そちらへと歩いていく。
小さな樽に絞込用のハンドルを付けた物がいくつも並ぶ店からは、先程よりも強めに甘い果実の香りが感じられるだろう。

「ルークはどれがいい?」

腰に掛けていたゴルドの入った小袋を手にすると、彼女に視線を向けながら問いかける。
店主はどれも新鮮でおすすめだよ!と景気のいい言葉を掛けながら、竹で作られた器を準備していく。

ルーク > 「そのような事はないと思いますが…。貴方様の連れと周囲に分かる距離で付いていきますので。」

今はチョーカーを外し、女としての姿である。
上着を着ているから、そう体のラインが見えることはないがそれでも少年に間違われることはないだろう。
彼の居室でいるときも、チョーカーを外して女の姿でいるが彼は事あるごとに褒める言葉を紡ぐ。
その言葉に照れたり、喜んだりといった感情の発露はまだ見られず何故自分に対してそんな言葉を向けるのかと、理解できずにいた。
今はまだ、戸惑いや困惑といったものの類が気配や顔に滲むのが大半だが、それでも彼と過ごす中でルークの中に変化が見られている。

「……。奴隷であるミレー族と人間が対等にある姿が、ですか…。」

ぽつりと溢れた感想、自発的な言葉に満面の笑みを浮かべられて繋がれていない方の手で唇に触れる。
言われてみれば、問われたわけでもなく命じられたわけでもなく感想がこぼれていた。
思わず感想が出たのは、あまりにも奴隷の立場であるミレー族と人間が肩を並べている光景が奇異に映ったからだ。
それでも、問われたわけでも命じられたわけでもなく物である自分が言葉を発するなど、もしルーアッハに仕えていた時であれば冷たい視線とともに、不要な物として棄てられていただろう失態。
なのに彼に自発的に溢れた言葉を、責められるでもなく逆に褒めるように笑みを浮かべられるのに胸の内がほんの少しだけ擽ったいような感覚に見舞われる。
その感覚が何なのか、まだ自覚はない。
気のせいだと、そう流してしまえるほどに微かな感覚。

「ジュース、ですか」

果実の甘い香りは、肉や魚が焼ける匂いよりも芳しくルークの嗅覚にとらえられた。
それほど大きく視線が動いたわけでも、ルークにとって意識してそれを見たわけでもなかっただろうが、一緒に生活するなかで、彼はルークの小さな視線の動きなどにも気づくことができるのだろう。
足先を店へと向ければ、微かに様々な匂いに混じる程度だった果実の甘い香りが強くなる。

「……………。では、林檎を。」

じっと、感情のない瞳がアーヴァインへと向けられる。
これは、命令としてどれか選べということか…恐らく違う。
今までのアーヴァインの言動から、そういうことではないのだと感じ取る事はできるようになっていた。
喉が渇いたのなら、自分に気遣わずに彼だけが飲むべきだと思うがこれまでの経験則上言ったところで無駄な問答に終わる。
沈黙の間に少しだけ視線を動かしながらそう考えれば、中でも甘い匂いを強くさせている林檎を選択する。
恐らく、ジュースの種類を選んでいたための沈黙でないことは彼には見通せてしまうだろう。

アーヴァイン > 「そうか? 俺が弟みたいな性格をしてたら…真っ先に声を掛けたくなるが」

その姿を褒めても、謙遜というよりは、事務的な受け答えに近い言葉が返る。
それでも、表情にどう受け止めればよいかという感情が見えるだけでも、満足そうに微笑む。
悩めるのは、その感情をどう受け止めるかがわからないだろうと思うから。

「母がミレー族の研究をしていた学者でな、昔は人間もミレー族も友好的に交流があったと言っている。昔のようになって欲しいものだ…ルークはどう思う?」

彼女の言葉に、そう願う理由を答える。
ただそれだけでも、雑談の受け答えをするのすら、駒扱いの彼女には少ない事だと思えば、些細な事でも確りと答えていく。
そして唇に手を当てる彼女へ、微笑みながら意見を問うのも、またその一つ。
自我による答えを、小さくても少しずつ繰り返せば…駒ではない彼女が出来上がるはずと、子供に考えることを教えるように、柔らかな音で問いかけた。

「あぁ、ちらっと見ただろう?」

常に洞察力がフル活動するわけではないが、彼女の前では全力で使っている。
ほんの小さな意志、思考、それが伴った動作に触れていけば、彼女の好みや思考も確立されるはずだ。
…寧ろ、公務より気を使っているのはひっそりと心の中に潜めているが。

「じゃあ林檎と、俺は葡萄を貰おうか」

何となく考えていることはわかっているが、笑みのままに答えを受け止めて、自分の分も合わせてオーダーしていく。
店主が毎度!と活気づいた声で答えれば、絞り器のハンドルを回す。
注ぎ口の前に置かれた竹の器に注がれていくと、心地よい林檎の香りと、濃厚な葡萄の甘い香りが広がっていく。
代金を渡すと、竹の器を手に取り、彼女へと差し出す。

「飲みながら行こうか、人にぶつからないように…は、言わなくても大丈夫か」

人混みの合間をすり抜けるぐらい、教え込まれてそうだと思うと冗談めかした言葉にして微笑む。
ジュースを楽しみつつ再び観光区を奥へと向かうと、娼婦宿の多いエリアに差し掛かる。
場末の宿の様な淀んだ雰囲気でもなく、富裕層の多いエリアにある宿の様に、派手な店構えが多いわけでもない。
それなりに小奇麗にされた女や少女達が、男を誘っていく。
買い手が売り手を食い潰すと言った雰囲気もなく、良い賑わいだけが聞こえるそこを抜ければ、警備門が建てられた組合敷地が見えてくるだろう。