2017/03/02 のログ
エアルナ > 「ぅ。それは…」

他に、と言われると微妙に口ごもる。
なんというか、変化球に紛れるとストレートの威力が増す、というのか。
が、いまは。

「形からして、魔族に近いですよね、あれは…」

モデルがそうなのか、イメージがそちらに偏ったか。
幻に近い存在ではあるが、青年の言う通り、無害なものに戻してやるのが道理か。
仕方ない、と頷いてその場にとまり、子鬼が白い光の中、さらさらと砂のようにほぐれていくのを見守ろうーー

「おやすみなさい…花の中で、眠るといいわ」

そう、つぶやいたのはせめてもの…たむけ。

マティアス > 「また、――是非君を手折らせていただきたいものだね」

耳元に囁くように吹き込めれば、もっと良いか。
少し詩的に紡いでおけば、多少はらしく聞こえよう。率直に言うよりも己の趣向にも沿う。

「見た目だけで魔族と断定するのは、少々早計だと思うよ。
 連中は僕たちと全く同じ姿をしているくせに、全く別物だったりするということもあるよ。

 ……――と、こんな風にね。何か変なのが残ってたりするのが、困ったものだ。」

講義するような物言いと共に力を振るう。
周囲の魔力を借りればいいのだが、如何せん遣り過ぎるとよろしくない。
また、強引にやるとなると、また別の意味で被害を及ぼし得る。
朝日を受けて、消えゆく夜露の如く、儚く消えゆくモノを見届けて、一息つこう。

「エアルナも見ていて、何か変なのがあったら素直に言ってくれると助かる」

エアルナ > 「…っ」
囁きが聞こえた証のように、頬が紅潮する。
囁き声、というのがまた…夜でもあり、何かを連想させるものだからよけい厄介だ。
ましてその、一気に深い仲になってしまった間柄としては。

「あぁ、…人間そっくりに化身した魔族もいますよね。
かと思うと、魔族に化身したような人間もいるのがなんですが‥。」

ぽつり、つぶやく。それは今、言っても詮無いことだけど。
いまここには…いないだろう、そういう輩は。
儚く消えていったモノを見送り、一つ、頷いて。

「変、というかーー見事だと思いますよ、あちらは。」

言われて指さす先には。
夜の月光に映える銀の蝶…の、翼をもつ小さな人影。
ゆら、と触角をゆらして宙を舞う、妖精のような姿。
無邪気なしぐさと表情の、幼子のような顔形が、花の上を飛んでいる。

マティアス > 「うんうん。可愛いね」

見えるその仕草に、口元が緩むのを隠せない。隠さない。
今、ここでそうしてもいい。素直に欲求に従うべきか悩むところではあるが。
一気に身体を重ねるに至った間柄ではあったが、人間としての欲求はどうしようもない。
下手に押さえつけるからこそ苦しいのだ。適度に吐き出すことが、心地良さに繋がる。

「嗚呼、そういう類の付き合い方に対して、真理と言えるものはあるよ?」

分かるかな?と。小首を傾げつつ、呟く姿を見遣って問うてみよう。
見た目は清楚なのに悪逆非道を究める美少女や、
或いはこそ酷く醜いのに、その心はとても清らかなものだっているだろう。
一々扱いを切り分けていても仕方がないなら、方策は絞られる。

「……――どうしたもかなぁ、アレ」

あれか、どうしたものだろう。目にする今度は妖精のように見えるモノに、考え込む。
所作としては、よくできている。真正の妖精であろうか、それとも魔法の産物か。
一先ずは、様子を見てみよう。どのようにふるまうことかが問題だ。

エアルナ > 「…マティアスさん…」

今が夜でよかった、と赤い顔で小さなため息。
こういう場面にはどうしても、経験値のようなものがものをいうのだろうが、あちらのほうが絶対っ…上、だ。

「シンリ?それは――内面。心のほうを優先して対処する、…ということですか?」

見た目に油断するな、とかそれは注意されてきた。
そして、白狼もそういう仮面には敏感だ。
まず会話してみれば、たいていは分かる(と思う)のだが…
どうだろうか、と青年の答えを待ってみる。

「…こういう場所ですから。本物の妖精が紛れ込んでても不思議じゃないですよね?」

声が聞こえたのか、妖精?がこちらをむいた。
小さな笑い声をたてて、くるっと宙で一回転すると、その手に花を一輪持ち。ふわふわとこちらへ近寄ってくるーー
白狼は、唸りもせずただそれを見つめていて。

マティアス > 「あはは、そのままの君で居てくれるといいね――と言い難いのが難しいご時世なんだよねぇ。
 そう、それもまた一つ。より究極的に言ってしまうと、自分の敵か否かという乱暴な分け方があるよ」

殺伐としているけれどね、と。そう言い足しながら大仰に肩を竦めよう。
結局のところ、自他の敵となり得るかどうか、である。
敵ではないのなら、そこに歩み寄る余地はある。交渉の結果、敵対関係となるのは致し方ないこともあるが。
さらに敵である場合は、そこから派生して弄べるものであるかどうか、といったものもあるが。

いずれにしても、どうにも純心なままでは居難い世の中である。ままならないと息を吐いて。

「……そうだね。この場の環境を保つために役立ってくれるなら、より言うことはないよ」

然り、だ。小妖精の類がこの場に紛れ込んでいたとしても、不思議ではない。
害を成す類のものなら、彼女の伴の白狼が猛っていることだろう。
花を受け取る役ならば、恐らく自分よりも彼女のほうが相応しい。

近寄る姿を認めれば、一歩後ろに引こう。

エアルナ > 「…甘い、ってことですねそれは。」

言われた覚えがあります、と微苦笑して頷くしかない。
この時世、青年のいう通り、平穏無事とは到底いえないのだ。
いつどこに敵が潜んでいるかは、わからない。
しかも人間同士だけ、ではなく他の種族も多いから余計判断は難しい――波乱な時代だ、と嘆息して。

「…ですよ、ね。…あら?」

近くに飛んできた小さな妖精が、そっと花を差し出し。
受け取ろうと伸ばした手の中に、白い花がふわり、とおちた。
爽やかな香りがするそれを、受け取ったのを見ると…蝶の羽を羽ばたかせ、妖精は花の咲きみだれる中へと戻っていくーー

「これ…パールリリーです。この季節じゃ希少な薬草のーー」

お礼、と。言われたのはきっと…気のせいではないだろう。

マティアス > 「甘いも何も――その切り分けが出来る程にまだ世を知らない、とも言えるかもしれないね」

心底から死を請われるほどの敵意も、噎せ返るような血と汚物の薫りも、まだ恐らくは知るまい。
自分とて弄べる悪逆の徒を見れば、その手の形容が似合う憎悪を向けられることもある。
つくづく、善い振る舞いとは言い難い。だが、何時しか気づいた衝動を止める必要性も感じない。
だからこそ、尊いものはそのままであって欲しい。少し、そう祈りたい。

「おや。……さっきのアレを解呪した御礼、なのかもしれないね。
 今の僕には使い道がないし、そのまま君が貰ってくれると有難い」

そして、見える光景にほう、と声を零そう。相手が受け取る花の正体は、名前を聞けばピンとくる。
いいものを貰ったねと笑い掛けながら、また花咲き乱れる向こうへと戻ってゆく姿を見送る。
希少な品は貰って困ることはないが、相応しい者がそれを受け取るべきだろう。

夜空を仰ぎ、星辰の位置と月の傾きで時刻を察しながら歩き出そうと彼女を促す。
まだ、夜は長い。しっかりと見回り切るまでが、自分たちに課された仕事だ。

エアルナ > 「そうですねーー兄やペロがいてくれましたから、世間知らずの小娘の一面はあります。」

素直に認める、事実。それが幸いかどうかといえば、今後どう生かすか、によるだろう。
けれど。それでも。

「…お礼なら、マティアスさんにしたほうがよかったんじゃ?」

なんて、大事に花を手にしながらも首をかしげる。
花そのものは分けられなくても、加工すればいい素材になる。
あとで彼にも分けようと胸の内で決めながら…促され、歩き出す。

魔法の庭の見回りは、夜空の下、まだしばらくは続くだろうーー

ご案内:「空中庭園「水晶庭」」からエアルナさんが去りました。
ご案内:「空中庭園「水晶庭」」からマティアスさんが去りました。