2017/01/13 のログ
ご案内:「骨董屋”影の国”」にスーさんが現れました。
スー > さて、今日も今日とて。
影の国――暗くひっそりとした、骨董屋。

その中で――……

(そろそろ、動いてもいいころ合いかしら?)

手紙が届いて。何日か。目をつけられていた師団は
今はこっちを見張る余裕はないらしい。
伏して、伏して――約、一年。

どうしようもなく辛く、どうしようもなく乾く日々だったが。
だが、それでも――

「…………――」

ぎぃぎぃっと、椅子が揺れる。
揺れて、ただ、静かに。
上に座る、老婆をゆりかごのごとく寝かすのみ。

来客を待つように。時を待つように

ご案内:「骨董屋”影の国”」にロザリアさんが現れました。
ロザリア >  
「相変わらず辛気臭い店であるな」

軽やかな、鈴のような声
それが何もない店の空間から聞こえる

そこには小さな、光る蝙蝠がはためいていた

スー >  
「……――」

幻聴か、それとも夢か。
聞こえるはずのない声が、聞こえた。
そう、聞こえた――

「……--」

がばっと起きて。
ぎしぃっと、椅子がきしむ音がより大きくなる。
そしえ、声がするほうを、見た

ロザリア > はたはたとはためく小さな光の蝙蝠

そこから聞こえてくる言葉は聞き違え用のない、あの声だろう

「はて、返事がないな。眠っているのか?スーよ」

はたはたとはためきながら、小さな蝙蝠はスーの周辺をまわりはじめた

スー > 「――いるよ、ここに」

声だけ、絞り出すようにして出す。
ぎぃっと椅子はなりながら。
独りごとのように――……

「……こっちにくるなんて、珍しいじゃないか」

そんな風に強がりを言いながら。
老婆のような声で返す

ロザリア >  
「何だ、いるのであればすぐに返事をせよ」

その声を聞いて、コウモリはくるくると旋回するように、光の尾を引き描いてゆく

やがてその光の中にふわりとドレスを翻す少女が現れた

薄金の髪にエメラルドの瞳をもった、よくよく知った姿で

「久しいな、スー」

スー >  
「――無茶いうんじゃないさね。なにせ、こっちに来るだなんて思わない」

悪態をつくように、ぎしぃっと椅子を揺らす。
こっちがどんな気持ちでこっちでいたのか。

「そうだね、久しぶりだよ、ロザリア。運ぶことができてなくて悪かったね」

改めて椅子に座りなおす。

ロザリア >  
「良い。
 こちらも少々事情が変わったのでな。
 女の身一つで城に来させるわけにはいかなくなった」

目を潜めてそう呟き、適当な椅子へとその腰を下ろした

「──随分忍んでおったようだな。吾との繋がりでも嗅ぎつけられたか」

スー >  
「女として相手されるか、怪しいもんさね」

くつくつと、喉を鳴らせば。いつもの雰囲気がやってくる。
場所こそ違えど、あの薔薇園と同じ――

「あぁ、そうさ。第七師団。そこの団長に”ヤマ”張られてね――もらった首飾りお釈迦にしちまったさ」

おかげで商売あがったりだと、溜息ひとつ

ロザリア >  
第7師団、という言葉に僅かに眉を顰める

「……ふん。
 魔族との付き合いがある人間は見境なしか。
 程度がしれるというものだな」

鼻で馬鹿にするような態度をとる

「どうするのだ。
 このまま人間の国で生きてゆけるのか?」

スー >  
「――なんだい、余計に機嫌が悪くなったね。”あそばれた”かい?」

くつくつと笑う声だが、声は笑ってない。
そうだとしたら面白くないことだ

「――生きてるからね。まだ、大丈夫だろうさ。まだね」

ロザリア >  
「元より人間共に良い感情などもってもらぬ」

ふっと雰囲気がピリリとしたものに変わる
不機嫌そうに、手を口元にあてて、言葉を続ける

「安寧が崩れたとしても、人間である貴様を我が城に匿うことは出来なくなった。
 貴様を助けられる手は吾にはなくなったということだ。
 ……それでも人間で居続けるか?」

その唇に小さな牙を覗かせながら、少女は老婆と会話を続ける

スー >  
「――より人間嫌いになった、みたいな言いぐさじゃないか?」

老婆のしゃがれた声。口はいつもより饒舌に回る
そのしぐさを見れば――老婆は”足を組んだ”

「――それは、”やめるってこと”?」

人間であることをやめるという、意味。
それともう一つ。

そうだといったら、友をやめるっていう意味なのか。

後者の意味も混じったからか、糸目の奥の瞳が涙で揺れたような気がした

ロザリア >  
「変に腹を探るのはよせ、スー」

小さく息を吐く
これ以上踏み込んでこなければ、話つもりもなさそうで

「───魔に堕ちれば、こちらで過ごすことはできよう」

スー >  
「そんな寂しいことを言うからさ」

はぁっとため息をついて――
すごく疲れたような溜息。そういうのは人間だけで沢山だ。

「悪かったよ、ごめん」

あやまってから――

「何かあったの、ロザリア。そんな風に、急かすなんてらしくない」

ロザリア >  
「むしろ、貴様こそなぜ急かない?
 第七師団も復権したと聞く、貴様に次はあるのか?」

じ…と睨めつけるような視線
友人であるからこそ、そのゆったりとした姿勢が気に入らない

「吾との繋がりを責められ、
 人間に酷いことをされても良いのか?」

スー >  
「――なに、”私”が気長なのが気に入らない? 次? 次はないかもしれないね」

――でも。

「そうだね、されるかもしれない。でも、ただ唯一の親友に警鐘を鳴らす方法だから仕方がないさ」

人間の動きを知るなら、これが一番だ。

ロザリア >  
「───」

理解できない
そう言いたげに眉を顰める

「……未来が要らぬのか、怖くはないのか?
 吾には何も理解できぬ…吾が若し人間であったなら理解できたのか?」

苛立ちと困惑の入り混じったような表情で問いかける

スー >  
「未来はほしい。生きたいって思う」

それは嘘じゃない。でも戦えない自分には守る手段はこれしかない。
守られてるだけなんて嫌だ。

「――でも、大切なものを守りたいんだよ」

いらだちと、困惑。
あぁ、懐かしい。出会った時を、思い出す。

「理解する必要はないよ。ロザリア。だってロザリア、私のこと嫌いじゃないでしょ? それで十分」

そして――

「私はロザリアのこと、好きだし。親友として、ね」

しゃべり口調は似合わないくらいに若々しい。
表情は、なにものよりも醜い表情。
だがロザリアには――

すがすがしい笑顔に見えた。
そう、ロザリアには

ロザリア > 「だからこそ理解ができぬのだ阿呆めが!!」

それは少女にしては珍しく、声を荒げた

「貴様だけは他の人間とは違う!!
 吾には貴様の命を救うことができると言っているのになぜ縋らぬのだ!!
 それほどまで、人間であることに固執する必要があるのか!?
 魔族との繋がりを疑うだけで貴様を殺すかもしれない人間という腐った種に!!」

スー > 「叫ばないでよ、ロザリア。ほんとに何があったの?」

目を見開く。荒げる少女。
その姿は――前に、出会ったときに自分と会話した彼女とは違って。

「――忘れちゃった? ロザリア。私、会ったときに言ったわ」

――私は、人間が好きなの

そうだ、人間が好きだ
そんな汚いと知っているからこそ――……

輝きはきれいだ。
それは、ロザリアは知っているはずだった。
スーという老婆が、いや少女が。
死ぬはずだったあの時に、一緒に生き。
気まぐれにも、共に生きてきたロザリアには。

「――それに、私。そんなにほかの人間と違う? そりゃ、見てくれはこんなだけど」

苦笑。いつもの憎まれ口をたたけない。
ゆっくり、歩みを進めて――

「どうしたのよ、ロザリア。ほんと、何があったの。私がいない間に――」

まるで薔薇の茨のようだ――今の彼女の姿はそれほどささくれ立って見えた

ロザリア >  
「自分自身の身がいよいよ危ぶまれてもまだそう宣うのか」

半ば呆れたように、声のトーンを落としてゆく

「貴様に話すようなことではない。
 ──人間の内にも貴様だけが特別だと知っただけだ。
 そのような汚れた場所に友人を置いておきたくない、その気持ちはわからぬか?」

スー >  
「話すようなことじゃないって――特別と言っておきながら、それはないんじゃない?」

ぎしぃっと椅子をきしませながらも、足を組む。
老婆らしからぬ動作。それが徐々に目立ち始める。

「――親友を、万が一の危険から守りたい。その気持ち、わかってくれない?」

質問に質問を返し――……

「そういう風に言ってくれるのはうれしい。濡れてきちゃった……」

なんて――……

ロザリア >  
「人間を好きだと主張する貴様に言うような話ではないと言っているのだ。
 聞いたところで吾の人間に対する怨嗟しか伝わらぬ」

浮いた腰を椅子へと落ち着きなおし、浅く足を組む

「気持ちは分かろう。
 しかし吾は自分で自分の身を守ることができる。
 貴様とは違う」

向けるのは鋭い指摘と、現実的な視線
同時に───

「売女か貴様は」

再び、呆れたように目を潜めた

スー >  
「別にいいじゃない。それでも。怨嗟を吐き出すのって大事よ?」

首をかしげながら、くすりと笑う。
別に人間が好きだからと言って、全部が全部というわけではない。
それこそ同調だってできるだろう。

「それを言われるとなぁ……ただの人間だしね。私」

はぁっとため息。
ルーン文字、仕込み――道具。
それらがあっても、英雄並みにはもちろん将、いや――下手するとただの兵士にすら勝てないかもしれない。

「――愛情に飢えてるって言って。相手してくれる人、一年間ほっとんどいなかったんだから」

ここは、ほんとに相変わらずな一面だった

ロザリア >  
「互いに気にかける気持ちが同じであれど貴様は守られなければならぬ状況だ。
 吾が貴様に拘ることと、貴様が吾に拘ることでは重みが違う」

正論を吐き終われば背もたれにどっしりと体重をかける

「どうせ一人で慰めていたのだろう?
 残念だが今宵は貴様の情欲を弄んでやることはできぬぞ」

そう言って立ち上がり、スーに触れようとすると
ロザリアの手をするりとスーの身体をすり抜けてしまった

スー >  
「――それはそうだけど」

正論を言われればぐうの音も出ない。
でも、それとこれとはやっぱり違うのだ。

それが彼女の人間らしさというべきか。

「うるさいですぅ。ちゃんと貞操帯つけてましたー。水浴び以外は」

いけずと思いながらも、本当に寂しそうに、顔を伏せる。

「――ロザリア。ちゃんと頼れる人、いる? 向こうでも。大丈夫?」

ロザリア > 貞操帯をつけていたという言葉に僅かに苦笑する、そして
 
「子供か吾は。
 頼れる者などいなくとも自分自身と城、そしてその眷属を守る力くらいは在る。
 ──幾人もの魔王の血を飲んだ。貴様が心配するようなことはないのだ」

触れられないままに、その顎を撫でるように手を動かして

「吾の心配は貴様のことだけだ」

スー >  
なにさ、と苦笑には抗議の目
いつからかロザリアの前では、美女がそこにいた。

「そうじゃなくて。ちゃんと”弱さ”、見せられる人。いるのってこと。強いのは知ってる――でもそれだけじゃ……」

手を動かされれば――気持ちよさそうに目を細め。

「ばーか。そういうのは想い人にでもいいなさい。抱くつもりもないのにその気にさせないの。それとも、そんなに私がほしい?」

憎まれ口をたたく。
だが表情は柔らかく

ロザリア >  
「心配には及ばぬ」

それは暗に"いる"ことを肯定しているようにも、
心配する必要自体がないと言っているようにもとれるだろう

「…む、莫迦だと?
 吾はただ貴様が人間どもに……」

不満げな表情を見せ、離れる

「……まぁ、良いわ。
 貴様が生き続ければ、また遊ぶ機会もあろう」

スー >  
「そう? なら、いい」

くすりと微笑む。
なんだか、こうして話していると今生の別れのようにも聞こえる。

「そういうのいらないから……やめてよ、いかにも私、死んじゃいそうじゃない」

まったくと、溜息をついて。

「また、ロザリア。今度は、”いつもどおり”のあんたでね?」

くすりと微笑めば、見送る姿勢に

ロザリア >  
「ありえぬ話ではないからこそ、先程のような問答をしたのだ」

わかっておらなんだのかと、やれやれといった仕草を見せて

「あぁ、"また"だ。
 口約束といえど吾との約束、違うことは許さぬ」

…いつもどおりの自分、という言葉には応えなかった
数多くの魔王の血を飲み続け、魔族の国でも有数の怪物となったロザリアは、
きっといつもどおりに戻れないと思っていたから

踵を向けると魔力の光となって飛び散り、小さな光の蝙蝠が天井の闇へと吸い込まれるように消えていった───

ご案内:「骨董屋”影の国”」からロザリアさんが去りました。
スー >  
「それはこっちの台詞よ、ロザリア」

そう、彼女に何があったかは知らない。
知らないが――

「私たちの関係は、変わらないわよ。だからいつもどおりに、ね?」

親愛なる、我が友へ――

見送りの文字と、言葉を影にともる店内に。
描いて――

ご案内:「骨董屋”影の国”」からスーさんが去りました。