2016/04/02 のログ
■テイア > 「ああ、まずは少しでも疲れを癒す方が先だな。
わざわざ、通商の許可の手紙を出されたのだから、
受け取った本人が出迎えるのは当然だと思ったまでだよ。
少し名乗るタイミングを逃してしまってね。薄々は感づか れていたかもしれないが…。
う…。その二つ名はいい、忘れてくれ…。
改めてよろしく、ハーディ。既にご存知かとは思うが、
この森は珍しい動植物と鉱物が多い。気に入ったものが
あれば、交渉して商品に加えてもらえると嬉しい。」
慣れぬ森歩きは、歩きなれた隊商の者でも辛いものがあったと見える。
集落の女たちに、まずは酒の用意をするように伝え男達には
相手方に差支えがなければ荷解きの手伝いをするように指示する。
しばらくすれば、まずはと自家製の果実酒などが隊商の面々に配られることか。
朗らかな笑い声につられるように、女の唇にも笑みが浮かぶ。
大仰に驚かれるのには、肩をすくめつつも上の方の立場であろうと勘ぐる言葉を口にしていた相手に気づいていたのだろう?という視線を向ける。
そして出された異名。
こういう場で出されるのはどうもむず痒いのか、困ったように視線を一瞬逸らし。
ハーディ、と名乗った相手に対して握手のために手を差し出していく。
「……。ふむ…。そこの者、それは事実か?」
見知った顔?と初めてこの森にきた筈の相手の言葉に怪訝な表情をしていたが、
やがて相手の口から語られる事実に難しい表情になる。
ミレー族の少女に、こちらに来るように言うと渋々といった体で歩み出てくる。
その少女に事実確認をすると、暫くの無言の後にこくりとひとつ頷いた。
「…はあ、他人を騙し、金銭をとるとは。確か、砂漠の国の方では、盗人は腕を切り落とされる…だったか。」
ため息ひとつ。だまし取った金を持ってこさせたあと、
ハーディの方に確認するように問いかけていく。
そして、次の瞬間一陣の風が舞ったかと思えば、
娘の右手が深く切り裂かれる事になる。
血も殆どでない、しかしスッパリと深く切れたその腕に娘が悲鳴をあげる。
「手当してやれ…。申し訳なかった。これで、あの娘を許してやってはもらえないだろうか」
風の中に治癒魔法を込めていたから、見た目ほどの痛みは娘には走らなかっただろう。
しかし、切られたというショックが大きく娘は失神する。
それを抱きとめると、数名に声をかけて運ばせる。
だまし取った金をハーディに返しつつ、謝罪を述べて
■ハーディ > 一行はやっと表情を崩し、腰を下ろし始める。
集落の男たちに細かな指示を出しながら、商人たちは積み荷を整理し、護衛たちは振る舞われた酒に舌鼓を打つ。
よほど疲れていたのだろう、思い思いにくつろいでいるようだ。
「何を恥ずかしがることがあるんです、立派な通り名じゃあありやせんか。
世の中には、あらぬ風評から、ひどい綽名をつけられる王侯貴族も多いというのに。
こちらこそ。
今のところ欲しいのは果物や木の実、鉱石だが、他のものも見てみたいですなあ」
気まずそうな領主へ、朗らかに──といっても覆面で目元以外は見えないが──応え、
差し出された手を、赤褐色の手がしっかりと握った。
さて、領主はこの件についてどう判断し、処分を下すか。
腕組みをし、やり取りを黙って見守った。
と、ざあっと風が舞い。
次の瞬間、下手人のミレー族の腕を音もなく切り裂く。鎌風か何かだろうか。
ハーディは倒れた少女を数人が運び去っていくのを、眼で追っていた。
「あ、ああ。確かに依頼料だ、しっかり返してもらいましたよ。
ふむ……領主自らが、罰を下すか。」
ハーディは差し出された金銭を指で数え、間違いないとわかると、考え込むようなしぐさをした。
あれは風を使った斬撃のようだった。だとするとこの領主、少なくとも風や大気に関係する術を使うことになる。
しかも詠唱をしているようには見えなかった、無詠唱の即席術式か? だが、それにしては綺麗な切り口、さらに別の術式を混ぜたか、思ったほどの傷ではない。この領主、優れた術師と考えられる。ハーディはそう判断した。
「罪を犯した部位を具体的に切る。手癖の悪い盗人ならば腕を……
我が出身国に、たしかにそういう法はあるが。
あくまで国内の決まりだ、ここは外国。
少しの間、労働させるくらいに留めておこうと思ったんだが……
まあ、手を汚すことなく事が収められるならば、それでいいでしょう。」
テイアの問いかけに、納得したように頷く。
思ったよりもあっさりと、処罰が下されたのをこの目で確認した。
もし領民に甘かったら、態度を変えようかとも考えたが、統治はしっかりしているらしい。
■テイア > 「あーいや、うん。…なんというかな、気恥ずかしいというか。
ドワーフなんかは、鉱石類や貴金属の加工も得意とする
種族だから、評判は良いようだぞ。
なかなかに気難しい連中だが。」
汚名よりも良いというのは確かなのだが、気恥ずかしいものはどうしようもない。
相手の手をしっかり握り返して、それぞれの種族の得意分野を紹介する。
「外から来たものばかりに、重い罰を課すわけにはいかないからな。
内部の者を甘やかしても良いことはない。」
笑みを浮かべていなければ、冷たい印象を与える容貌。
抑揚のない声は更にそれに拍車をかけているか。
瞬間的に真空の状態を作ったかまいたちによる傷。
傷口は鋭利な刃物以上に切れて、組織を潰していないため治癒するのも早いだろう。
「まあ、あの娘もこれに懲りる事を願うばかりだ。」
国外での法ではあるが、その流儀に合わせたほうが相手も納得しやすいだろうとの判断。
また、娘には悪いが相手に対しても抑止力となりうる。
とはいえ、分からぬように治癒魔法を混ぜて痛みを軽減させた事までは語る必要もないが。
「さて、商人達の準備もいいかな?品物をみせてもらっても?」
異国の品物に興味津々な集落の人々の視線を指して、
果実酒で喉を潤した商人達に声をかけてもらおうか
■ハーディ > 「うわさは聞いております。
まあ、今回は金属材料と、石探しですね。鍛冶のほか、魔術媒介としても使える宝石霊石類などを見てみたいと」
まずは安定した交易路の確保だ。
武具はまた今度にしたい。
「全くおっしゃる通りで。
優れた統治能力をお持ちのようですな。
なかなか、内部、身内には甘い頭目も世の中には大勢いるものですから」
苦笑いをして応える。
黙していればきびしそうな領主の顔ではあるが、やはりエルフの名に違わず、美しさがそこにはあった。
少なくとも、ハーディはそう感じた。
「ええ、それでは御覧に入れましょう。
……おい」
テイアに促され、ハーディが商人たちに合図すると、皆、瓢箪の容器や皮袋の口を開けて、中を見せる。
色とりどりの毛織物。絨毯のほか、ガウン等の衣装、カーテンや寝具。
小瓶に入れたスパイスの数々。シナモンの乾燥皮、クローブ粉末、乾燥ジンジャーの根茎、カルダモンの乾燥種子、ブラックペッパーなど。
岩塩、山羊のチーズ、これらは王都でも手に入りそうなので脇にのけておく。
砂漠の街から大事に運んできた椰子油。瓢箪の保存容器。
そして、──これが一番人目を引いたようだが──精油である。
今回はサッパリしたローズマリーや、シナモンやブラックペッパー等の香辛料由来のもの、乳香などの異国情緒漂う香り。
様子見を兼ねてあったので、バラ精油などの希少なものは避け、価格はなるべく控えめに設定し、種類はそこそこであったが。
だいたい、このような内容であった。
品目の一覧を帳簿にまとめ、テイアに丁寧に手渡し。
交易の窓口担当者はいないか、尋ねておく。
「次回以降来るとき、取次が容易にできたら嬉しいんですがね。
テイア様ご本人に毎回出張っていただくのも御手間でしょう? 我々としては他の商人連中に、親密な関係をアピールできるので、いいんですがね」
■テイア > 「金属関係ならドワーフ、霊石や魔術関連に使うような触媒ならエルフ、果物や薬草類ならミレー族の得意とするところかな。」
ふむ、と相手の望むもの。それを叶えるのに適した種族を挙げていく。
集落の者に二、三声をかけて。
「統治能力などないに等しいよ。基本的には、森で暮らすもの達に任せきりだし」
相手の苦笑いと共に言われる言葉に、困ったように小さくえみを浮かべれば、
その印象は柔らかなものに変わる。
「さすが異国の商隊だな。珍しいものばかりだ。」
手渡された目録にさっと目を通せば、砂漠の国ならではの
毛織物や、スパイス、精油の種類に感嘆の声を小さくあげる。
オリエンタルな柄の毛織物や民族衣装などは目を楽しませるし、
スパイスや精油のいい香りがあたりには満ちているのだろう。
女性たちはいい香りのする精油のところに集まっているのだろう。
男性たちも、毛織物やスパイスの説明を商人から受けて感心しているのが見える。
見知らぬ土地から齎された品々に、皆興味津々といったところか。
そのさまを微笑ましげに眺めて。
「そうだな…交易の取次か…。私が毎回、というわけにもいかなくてな。
この集落だけでいうなら、村長に話を通しておけば問題ない。
が、ほかの集落も、となるとそこは開拓していってもらうしかない。
一応、私の証文を用意するからよほど人嫌いの集落でない限りは門前払いはないと思うのだが…。」
全体を取り仕切る窓口はない、というのが返答になってしまう。
様々な種族が暮らしている分、考え方も様々でひとつに取りまとめるというのはなかなかに難しい。
先程声をかけておいたのに対して、ドワーフ、エルフ、ミレーの三つの種族から代表のような者達が集まってくる。
こちらも、ルミナスの森の全体を取り仕切るわけではないが、
それぞれの種族が得意とする分野の商品を、ある程度まとめて流通させる事ができると説明して、相手に紹介していく。
■ハーディ > 「しかし、先ほどの処分に関して、特に不満の声は上がりませんでしたな。
統治者と認められなければ、こうはいかないかと」
以下に優れた術師である領主といえど、多数の領民に反旗を翻されてはたまらないだろう。
しかし、一見した限り、そういった動きがないのを見ると、テイアの言葉は謙遜しているように聞こえる。
「そりゃあもう。ありきたりなものでは、皆さん面白くないでしょう。
今日は控えめな品揃えですが、いずれ色々と持ってくるつもりですよ。」
広げられた品物に集まる民衆。
とりあえずこの集落の心はつかんだようだ。
「なるほど、ではそのように。あとで村長には何か贈り物をもっていくとしましょうか。
……いやあ、流石にこの大森林、いきなり全域と取引できるとは思いませんな。
何より、廻るのに時間がかかるでしょう。
幾つかの集落を回り、そこから流通させていくのが望ましかろうと。
余所者は嫌いでも、同じ森の民ならば交流はあるでしょうからな」
進み出てきた三種族の代表とおぼしき者達。
一人ずつに挨拶をして、さて、今後の取り決めについて話したいところだ。
「ところで、領主さまに用事ができた場合は、また神聖都市側にお手紙を出せばよろしいですかな?」
しばらくは交易に励むつもりだが、何かあった場合の連絡先は尋ねておいたほうがいいだろう。
そう考え、問いかけてみる。
■テイア > 「多種多様な者たちが一緒に暮らすからこそ、秩序が守られなくては暮らしていけないからな。
そういうところは、理解してもらえているようで助かるよ」
私が優れているのではなく、暮らすものたち一人一人の意識の問題だと言い。
「しばらくして帰ってきたら、異国情緒あふれる森になっていそうだな。
これで控えめとは、次回以降も期待できそうだな。珍しい酒でもあれば嬉しいのだが。」
毛織物など、とても特徴的な柄だが物珍しさとその美しさによく売れているようだ。
この分だと、異国の村のような雰囲気になってしまいそうだと笑い。
「そうだな、同じ種族や民に協力してもらえばやりやすいと思う。
そこは、商人殿の腕の店どころということで。
ああ、わたしはあちらにいることの方が多いのでね。
何かあったら同じようにしてもらったほうが早く連絡がつくと思う。」
相手の言葉に頷きながら、あとは現地の者との交渉次第か。
連絡先についても頷いて、今回と同じようにしてほしいと伝える。
そうして、商人達と集落の者との売り買いは続けられ
ひとつの交易の足がかりが刻まれるのだろう。
■ハーディ > 「まあ、我が砂漠の王国も似たような考えですからな。奇遇なことに」
くっくっと口元を抑えて笑うが、軽く手を振って否定する。
「さながら、この辺りだけ別の地域になってしまいますか。
……いやいや、さすがにそれはないでしょう。
いくら友好的な集落とはいえ、そこまで染まりやすいとも思えませんがね。
酒は、我々が提供できるものは、せいぜい山羊や羊の乳を発酵したケフィア酒くらいでしょうか。
ただ今回は持ってきてませんので、次回以降になりますかな。まあ、考えておきましょう。
穀物由来の酒が多い地域にも、そのうち足を延ばしてみる予定ですので」
言いながら、3種族から手渡された目録をぱらぱらとめくる。
「なるほど、こっちはこっちでいろんな種類のものがありますな。
この果実と、薬草類の一部は、精油にも使えそうだ。」
説明にふんふんと頷きながら、時々質問をしている。
ハーディ達一行は、その後数日にわたって、集落に滞在し、やがて去っていった。
■テイア > テイアPL:入室時PCNoに誤りがありました。申し訳ございません
ご案内:「ルミナスの森」からハーディさんが去りました。
ご案内:「ルミナスの森」からテイアさんが去りました。