2016/04/01 のログ
ご案内:「ルミナスの森」にハーディさんが現れました。
ハーディ > 森の入り口付近に、ぼうっとランタンの光が灯る。
ターバンを巻いた男を中心とする集団があった。
12名の商人と思われる服装の者たち──顔つきはさまざまだ──が馬にそれぞれの荷物を積み、木々に寄り掛かるようにして立っている。さらにその輪の外側には数名の傭兵。護衛だろうか?
小柄な老商人がターバンの男に話しかけると、相手は頷いた。

「ああ。先方にな、通行と取引願いの手紙は出した。
そろそろ使者ぐらいやってきても、おかしくはない頃なんだがな……。
ま、もう少し待ってみて、駄目だったら日を改めるとしよう」

隊商の頭であるこのターバンの男。
今日は律儀に馬を引き、はるばる街道をやってきたのだ。
後ろに見える荷馬の背中には、商品を入れた皮袋や瓢箪に混じり、巻いて筒状にした絨毯が見える。

ご案内:「ルミナスの森」にテイアさんが現れました。
テイア > サクサクと、全く整地されていない道を歩いているとは
思えないほどの軽やかな足取りで森の中を歩く人影。
鬱蒼と茂る木々の合間に見えるランタンの明かりに気づくと、
そちらの方へと足先を向ける。

「おや、…随分と大所帯だな」

近づけば、ガサガサと茂みを掻き分ける音が入り口付近に
集まる人々にその存在を気づかせるか。
明かりに照らし出されるのは、一見すると冷たそうな印象を与える、非常に整った容姿の女。
その髪の色と、長い耳で種族はわかりやすいだろうか。
異なる彩の双眸で隊商を一瞥すると、そんなつぶやきが漏れる。
その手には隊商の頭から出された手紙が持たれており、
迎えの使者かなにかだということが相手に分かるだろうか。

ハーディ > 茂みをかき分け進む音が、森の中に響くと、獣でも寄ってきたかと護衛が気を張り詰めた。
しかし、やがて現れた人影に、商人は一同そろって視線を向ける。
整った容姿、長い耳。左右で色の違う瞳は、オッドアイというやつか。
ターバンの男は少し考え推測を立てる。

(ふむ、エルフか……。慣れた足取り。
すると噂通り、ここにはエルフの集落もある、と)

軍服のようないで立ちという事は、おそらく手紙の主、この森を治める領主が遣わした部下だろうか。手には見覚えのある手紙、間違いなかった。
護衛は相変わらず周囲を警戒したままだが、若いものなどは一目見て心奪われたようだった。仕事をすっかり忘れ、何やら茫然としている。
女の、驚いた呟きが聞こえたのか、ターバンの男はくっくっと笑い、答えた。

「いやあ、こっちは行商人なんだ、取引のためならいろいろ持ってきますよ。
何かひとつでも、お気に召したらいいんですがね。
ところで、貴方が使者の方で?
それと、どこかに落ち着いて腰を休める場所はありやしませんかね?」

一応、確認しておこう。表情には出さないが、そろそろ立ち続けるのがつらくなってきた。

テイア > 「異国風なのだな、さぞや珍しいものもあるんだろう。」

張り詰める空気、集まる視線に少しだけ肩を竦めて、
こちらの言葉に対して、笑いながら答えるターバンを巻いた
オリエンタルな雰囲気の男性へと視線を向ける。
老齢な者などもいるが彼らが口をはさもうとしない所を見ると、
どうやらこの男がこの隊商の頭ということか。

「まあ、そんなところだ。
 手紙には、森には入れない。との事だったが…。
 この森には結界が張り巡らされている。
 森に対して、もしくは森に住むものに対して悪意を持つ
 ものは入れないようになっているのだが…。」

使者か、と問われるのには否定はせずに。
手に持った手紙をひらひらと弄びながら、もう一度集団を見回して。
少し首を傾げれば銀糸の髪がさらりと流れる。
結界に引っかかるという事は、行商人に扮した人狩りや、
盗賊の類ではないのかと見極めようとしているようで。

「…ん…?……ああ、これか。これでよし。森に入ってみてくれるか?」

ふと、その視線がはずれる。領地の森との境界線付近。
そこに違和感を感じて近寄れば、本来張られているのとは別の類。
人の侵入を拒む類の結界が重ねられている。
やれやれと、ため息をつきながらその結界の要の魔法陣をかき消すと、改めて森に入るよう促す。
これでも、森に拒まれるならば悪意のあるものと判断するのだろう。

ハーディ > 「ええ、ええ。
主力は毛織物、砂漠地方の香辛料、その他の調味料。
それから、…女性の方におススメの、とっておきの精油ですな。
しかし、まずは広げる場所がありませんと。
そこらの枝に引っ掛けるわけにもいきませんし」

ぼうっと突っ立っている若い護衛を、年上の護衛が肘で小突き、我に返らせる。
それを目の端で捉えると、ターバンのリーダーは若いな、と心中でつぶやいた。
エルフの警戒を弱めるように、指を折り数え、具体的な品々の種類を上げていく。

「なるほど、なるほど。
森に対する悪意に反応する結界と。厳重な警備ですな。
まあ悪意といっても定義が判りかねますがね。
巡回があまり見当たらないので、不思議に思っておりましたが」

なぜ引っかかったのか、それについて深く考える様子もなく。
使者?のエルフに言われるままに、歩きはじめるターバンの男。

(まだこの森の中を見てないしな。相手のホームグラウンドで不用意に焦って行動起こすほど、俺は愚かじゃない)

魔法を使う者なら、ほんの一瞬だけ、隊商の頭がゆったり着こなす長衣の一か所、腰の辺りから小動物とも違う、奇妙な気配がするだろうが。
やがてするりと境界を通ると、より澄んだ空気に感嘆のため息を吐いた。

「たしかに。今度は入れたようですな。……しかし、ふむ。
結界といいましたか、貴方はそれの開閉を操作できる権限をもっている、と思われる。
ただのお遣い、ではないようですな。領主か、それに近しい地位でなければ、おいそれと、そういう事はできますまい。
ま、トップ自らが単独出向くなんて不用心なことは無いと思いますが」

振り返り、素直に感じた疑問を投げかける。
碧色の瞳が、いぶかしむように向けられた。

テイア > 「ほう?若い娘も多いから、喜ぶだろうな」

色彩豊かな毛織物や精油は娘達が喜ぶだろうし、
異国の香辛料や調味料は食卓を豊かにすると、指折り数えて
挙げられる品物の数々に頷きながら聞き入り。

「逆に、悪意がなければ魔族でも拒みはしないがね。
 この森には月の女神の加護がついているから、安心して暮らすことができる。」

警備といっても、女神の加護があってこそだと軽く肩を竦めて。
ふと感じた違和感。相手の腰辺だろうか。しかし、それも一瞬の事。
するりと境界を越えたのを見れば、気のせいかとも思い。
先程までいた境界の部分にも、木々は生えていたのだろうが、
境界を越えれば清浄な空気と共に、他ではあまり見ることのないような、
樹齢何百歳と超える大きな木々や、珍しい花々が出迎えることか。

「いや、先程のは本来の結界とは別のものが仕掛けられていてね。
 外界の者を嫌う者たちも少なくないもので…。
 これから案内させてもらう集落は、外の者に対しても友好的な者達の所だから、安心してもらっていい。
 ………ふむ……。自ら出向く、というのは礼儀かと思っていたんだが…。」

森の中をスタスタと歩きながら応じる。
本来の加護の結界とは別に張られたもののことを説明した後、これから案内するところは安心していいと付け加えながら。
そして、無用心と言われた事にやや難しい顔で考え込み。
結界を抜けることが出来たから、立場を明かそうと思っていたのだが、明かすべきではないのか、とぽつりと小さなつぶやき。
戦場で騎士として戦う時も、領主として来訪者を迎えるのも、
自ら先頭に立っていくのが礼儀だと思っていたのだが…。
そうして暫く――森に慣れぬ者達には長く感じられる位歩けば、
開けた場所に出ることとなる。
木々を上手く利用した住まいが立ち並ぶ、中規模の集落。
単独の種族で暮らす集落もあれば、色々な種族がより集っている集落もあり、案内したのは後者の方。
来訪者の気配に、エルフやミレー族、ドワーフなんかが顔を出し始めるか

ハーディ > 「でしょう?
まあ、領主さまにお目にかかった後になりますが、楽しみにしててくださいよ」

とりあえず幾つかの品は相手の興味を引いたようだ。
これは期待できるかもしれない。

「なるほどなるほど。月の女神、ですかな。
興味がありますな。後で時間があれば、森にまつわる伝承などを聞かせてもらっても?

……いや、これほど広大な森林。いろんな考えの者が居りましょう。
外から入る者に対して、ある程度警戒の念があるのは仕方がない。
おう、友好的な集落に案内してもらえるのはありがたい。
我等は所詮、余所者ですからなあ……」

発言を聞いてエルフの女が考え込む様子を見せると、ターバンの男は何かに気付いたようにポンと手を打った。

「ああ、これは失礼。国が違えば文化、礼式も違うという事を失念しておりましたな。
しかし、そうするとますます、ただものではないように見受けられますが。
……え、なんですって?」

エルフの女が何やら呟いたような気がしたが、足音にかき消されてうまく聞き取れなかった。

年を経た大樹や珍しい動植物に囲まれて、鮮やかな森の中を歩く。
やがて、森に慣れぬ護衛の傭兵が音を上げそうになったころ、視界が開け、隊商はひとつの集落にたどり着いた。
あちこちから顔をのぞかせ、物珍しげに一行を眺める、エルフ、ドワーフ、ミレー族と、多彩な者達。
来訪者の格好を指して、商人の一団だ、と誰かがささやくのが聞こえた。
好奇心旺盛な視線の最中にあって、ターバンの頭目が、何かを視界の端でとらえる。
それは一人の若いミレー族の少女だった。オリエンタルな服装を一目見て、ささっと物陰に隠れてしまう。
その姿を確認した男は、記憶と照らし合わせ、僅かに眉をひそめた。

テイア > 「そうだな、楽しみにしている。」

さて、領主というのをどう切り出すべきか、と品物は領主に会ってからとの言葉にやや困り顔。

「あくまで我らに伝わる伝承でよければ。
 
 まあ、気持ちはわからなくもないから責められない所だな。
 森に入った外の者とトラブルが全くないとはいえないし…。
 一応、念の為に言っておくが、友好的な者達でも
 外の者がなにか悪さをすればすぐに追い出されると覚えておいてくれ。」

何かあれば、すぐにこの耳に入ると一応は釘を刺して。

「…。さあ、皆。森の外から行商の者達が来てくれた。
 珍しい物が沢山あるようだから、見せてもらうといい。
 そして、森の外からの来訪者達。ようこそ、ルミナスの森へ。
 私、テイア・ルア・ルミナスが領主として歓迎しよう。」

呟きは、木々が隠してくれたらしく相手は聞き取れなかった様子。さて、集落についたら自己紹介をしなければな、と考えながら。
隊商は、集落の広場へと案内される。
多種多様な者たちが、好奇の視線を送っている。
商人の一団だ、と誰かが囁けば家から出てくる者達もちらほらと現れる。
その者たちを安心させるように、女が声をかければ
わっと人が広場に集まることか。
そして、くるりと商人達の方に女は向きを変える。
明かされる名前と、領主という立場。
商人に与えるのは、驚きか、あるいは予想通りという納得のどちらだったろうか。

「……どうかしたのか?」

眉を顰めるのを目ざとく気づけば、そう問いかけて。

ハーディ > エルフの女使者が微妙な顔をしているのに対して、
ターバンの商人は不思議そうな顔をした。もちろん、心の中では表情を抑えるのに必死だが。

「ええ、ええ。気をつけますとも。
我々としても、貴方方の機嫌を損ねて貴重な取引先を失いたくはないですからなあ……え?」

エルフの女使者、いや、ルミナスの森領主、テイアと名乗った相手に対し。
男は神妙な顔でうつむく。
と。く、くっくっくっと肩を震わせて。
やがて、ハッハッハと、朗らかに笑い出した。

「ほほう、貴方が。
これはこれは、まさか領主さま自らがおいでになるとは。いやあ、お人が悪いですなあ。
…とはいえ、先ほどの失言、どうかお許しを。
戦場を駆け抜ける『ヴァルキュリア』の異名、戦名は遠く砂漠の街まで聞こえておりますぜ。
お会いできて光栄です。

おっと、挨拶が遅れましたな。
名はハーディ。砂漠の王国より出て、各地を回っているしがない商人でございます。
噂にきく自然の宝庫、ルミナスの森、ぜひ通商を結びたく思いまして。手紙を差し上げた次第」

そう言って、ターバンの頭──ハーディと名乗る男は、推測通りであったとする内心とは裏腹に、大げさに驚いてみせる。
思ったよりもはるかに多い群衆に圧倒されかける隊商。
しかし、まずは荷物を下ろし馬や護衛を休ませる必要があった。
あわててなだめにかかる姿は、落ち着いた様子のハーディとは違い、普通の商人たちに見えるだろう。

「……これは失礼、つい、見知った顔が見えたもので」

流石に目元の動きは感づかれるか。
ハーディは言いづらそうな様子だったが、やがて話し出す。

「いえね……
この森に来るとき、最初は案内人を頼んだんですよ、あるミレー族の若者に。
その者とはとある酒場で会ったんですが。前報酬だけ受け取って、入り口にたどり着く前に姿をくらましましてな。おかげで森を出るのに苦労しましたよ。
我々としましては、契約不履行の者には厳しい処置を課したいところですがね。
せっかくですから領主さまに伺ってみましょうか。……どうしましょうね?」

余所者が悪さをした場合の末路はさきほど漠然とだが聞いた。
しかし、逆の場合はどうなのだろうか。