2016/02/20 のログ
ご案内:「平民地区借家」にグリュネイさんが現れました。
ご案内:「平民地区借家」にユリゼンさんが現れました。
グリュネイ > 平民地区の一角、コクマー・ラジエル学院にほど近い場所にある借家に今の住人が入ってもう三ヶ月以上経つ。
今もその住人は、部屋の中に本や器具をところ狭しと並べ椅子に足を組んでいた。
本格的な実験を行うわけでなし、机に頬杖をついて時折外の雨音に視線を流す。

学院で行われているプロジェクトに本格的に関わる以上は、こうして住む場所を定めた方がやはり便利だ。
何もこういったことは珍しいわけではない。
一年二年と同じ場所で雇われることもよくあることだ。
そうし続けて、この体が変わらないままそれなりの時間は過ぎた。

グリュネイ > 今のプロジェクトでは、そういう意味では対象に後輩のような……妹のような感覚がないわけではない。
とはいえ向こうは随分と先達だが。
人の自信作に煩いのが玉に瑕だ。

「ま、経過も悪かねえし、器に問題は起きねぇはずだが」

ひとりごちてペラペラと紙の束をめくる。

ユリゼン > 常々思うところではあるが、人界の空は狭すぎる。
いびつな形をした建物に低層の気流が乱されて、いちいち滑空の妨げになる。
ほんの一度や二度羽ばたいただけで、地上では上へ下への大騒ぎになる。
煩わしい。おおよそ耐え難いほどに煩わしい。

空が狭いとこの身は思う。つまりは、飛び心地の問題なのだ。
もっとも、今日はすでに騒動を起こしている。ゆえにこの空にいる。

流血の惨事になっただろうか。人死にが出ただろうか。
知ったことではない。思いを巡らしてやるほどの事でもない。
憤怒と激情にかられて王都の空をあてどなく飛ぶ。
どこかを目指していたわけでもない。あの言い知れぬ嫌悪感から抜けだすために羽ばたいていた。

いつまでもこうしてはいられない。いつかは地上に戻らないといけない。
この家の壁をブチ抜いて転がり込んだのも、ある意味では必然だったのだ―――。

「……………はぁ……はぁっ……!!」

揉みくちゃにされて乱れた着衣。ブラウスのボタンは解れて、リボンはもぎ取られたまま。
降りかかる木屑と粉砕されたモルタルを浴びながら身動ぎもせず。
ぎりりと、奥歯を噛んだ。

「……グリュネイよ、邪魔をする…」

グリュネイ > 「う、お、お、おおおォ!?」
轟音と雨風が金の輝きとともに舞い込んだ。

なぎ散らされる器具と薬剤は、まぁ高価なものではなかった。よかろう。
しかし賃貸中の損壊は当然自分が家主に補填しなければならい。
実入りはいいので金に困っているわけではないが、一応人界を渡っている以上は何かと消費するし、骨董店など覗けば意外と掘り出し物があるものだ。

しかし何すんだテメェという言葉を飲み込んだのは相手の様子からだ。
(自分よりも)尊大で勝手が平静だったはずだが。
立ち上がり、かがむように見下ろした。

「なんだ、どうなってんだ“サクノス持ち”?」

ユリゼン > 「ふんっ。狼藉者がおったゆえ吹き掃ってやったまでよ」

『竜の息吹』亭の2階が消失。
この事件はそんな見出しで世人の知るところになる。

「甘言をもってこのわしをたばかろうとは、大それたことをしでかすものよな」
「無礼千万。不遜の咎も避けられまい。呆れてものが言えんのじゃ」

もう一度羽ばたいて木屑を吹き飛ばす。
角にひっかかった欠片を煩わしげに捨てて、まだまだ憤懣やるかたなく尻尾で床を打つ。
怒気を燃やして爛々と輝く竜の眼は長い前髪に隠れたまま、錬金術師を睨み返した。

グリュネイ > 「あー」
相手の言を聞けばおよそ推測はつくし想像もできる。
一応初めて会った時から己が作品の出来については随分とアピールしたつもりだったのだが。

「あっ、おい、余計に散らかすんじゃねーよ。くそっ、全く!
 アウト・ディスケ……アウト・ディスケーデ」

短い文言を唱えて、ユリゼンの背後の床に緑色の石を置く。
屋外活動用の一種の結界魔法だが、これで一晩雨風が入り続けることは防げるだろう。

「っで? 随分と自分まで吹き払ったもんだな」
振り返りながら、乱れた着衣に皮肉げなコメント。
ちょっとした愚か者を払いのける程度のこと、竜人には簡単なことのはずだ。
それにしては装いも様子も平静から程遠い。

ユリゼン > 「馳走がしたいと申すのでな」
「むさ苦しい人間どもじゃが、このユリゼン供物の類は無下にはせぬ」

思い返すだけでも眉根が寄って、どんどん声が険しくなっていく。

「…………あやつら」
「酒が入ったとたん本性をあらわしおって!! ええい忌々しいっ」
「お情けがどうとか、ミレーの分際でどうのこうのと…」
「極めつけにあやつ、肉でも喰らうように噛みついてきおったのじゃ!」
「いや噛まれてはおらんのじゃがな、この口に牙を剥いて迫りおって……」
「ここに至っては是非もあるまい。なる様になったまでのこと」

ふだん着崩してはいるものの、協会支給の改造制服は仕立ても悪くない。
それが今では見る影もなくみすぼらしい有様だ。

「これはもう着られぬな。口惜しいがの」
「グリュネイよ、湯浴みの支度をせよ。替えの支度でも構わぬ」
「……なにやらひどく汚れたような心地がしておっての」

手のひらを見て、理由もなくごしごしとこする。嫌悪感は拭えず、増すばかりで。

グリュネイ > 「しょーがねーな。わかってるよ元からそのつもりだ」
そう言って、翼の向こうの肩を押した。器として起動させる時よりも細く感じられる。
そのままユリゼンを背後から進ませていく。

「だーから角や翼はねえほうがいいって言ったのによー。
 それにしたって長生きも長死にも案外役に立たねえもんだな。
 そんなにうぶだとは思わなかったぜ」

後ろから耳元に寄せた口が笑いをこぼす。
よしよしとあやすかのようにまではしないけれども。

ユリゼン > 「翼なき竜などただの大きなトカゲじゃろうが!」
「いや、ない者もおるにはおったがその類では…ともかくじゃな」

茶化されているみたいで少しむくれる。
考えて、言葉を継いだ。

「おのれが何者であるかを見失ったとき、わしは二度目の死を迎えるであろうよ」
「その次はない。その者は、もはや竜ではないゆえな」

ただただ捨て鉢に荒んだ気分で無抵抗に進んでいく。
その先に何が待つのか、知ることさえも望まずに。

「我が同胞(はらから)や子々孫々は一体何をしておる…世も末じゃな錬金術師よ」

グリュネイ > もとより準備があったのか。
あるいはパチンパチンと指を鳴らす動作だけで簡単に風呂を準備するように魔術を仕立ててあるのか。
お安くない借家だけあってそれなりの拵えの浴場へつけば、湯気を向こうに。

「お前は竜か。竜はお前か。
 ふん? なるほど、なるほど」

端々引き裂かれ薄汚れた服を引く。
ついでに己のベルトについたフックを外した。
「ほら脱げ脱げ。制服の替えぐらいすぐにアイツらが用意するだろうよ。
 今のお前を見せてみろ」

ユリゼン > 「今は我らの世ではないが、あまり畏れられぬのも寂しいものでな」

嘆息するようにため息をつく。

「この身は元より、この言葉とてそなたらの造った器が語らせるもの」
「わしでなければならぬ理由などどこにもあるまい」

ドリー・カドモンが成体として生を受けるために構築された共通言語プロトコル。
思考を言語化するためのアーキタイプを移植され、今では魂に深く溶け込んでしまっている。

胸に手をついて、皺の寄ったスカートを落とす。
飛び出すときにぶつけたのか、ふとももに赤い打ち身のあとが残る。
糸のほつれたスクールベストとブラウスを一緒に脱ぎ捨てて、手首を強く握られた痕に気づいた。
抵抗したときか、その後についた生傷を目にするたびいよいよ嫌悪感が強まってしまう。
脚の付け根を覆う最後の薄絹一枚、膝をすり合わせ、指をかけて下ろしていく。

「相伴を許す。そなたも供をせよ」

グリュネイ > 「ふふ、またそれだな。寂しいのは、不安だからか。
 って、あーあーこんなに痕残しちまってよ」

ユリゼンの精神状態もまた一つの興味深いデータではある。
そういう意味では非道で冷酷に応じているとも言えるが、肩にそっと触れる手はそこまで計算づくの行為ではない。
労るように指の腹が傷のない肌をなでる。

ユリゼンの言葉に頷けば、自由になった乳房を揺らして相手の手をとった。
「ああ、キレイにしてやるよ」

そうして立ち込める湯気へと引いていく。

ユリゼン > 「不安? かもしれぬが、それだけではあるまい」
「何しろ旧き世界の最後のひとりなのでな」
「くく、報いは受けたぞ錬金術師よ。あやつらも、この身もまた然り」

羨望のまなざしを浴びる事には慣れている。慣れてきているといった方が正しいかもしれないが。
最近になって気づいたことだが、それは必ずしもこの角や翼に憧れてのことではないらしい。
人間にとってはこの身体つきの方が重要なのだ。

「おぬしは噛まぬじゃろうな」

まだ冗談を言う余裕はない。半ば本気で問いかけている。
濛々とたちこめる熱気の向こう、手を引かれながら長耳の顔の金の瞳を見た。

グリュネイ > 「でも今のお前はここに居るお前だ。この体の。
 お前だって自分で歴史の下の古竜と同一の記憶は保持してないと言ったじゃねーか。
 錬金術棟のやつらがどう言ったかは知らねーけどな……ま、少なくとも同じ阿呆が来ることはねぇわけだ」

続く言葉を笑おうとしたが振り返ってやめた。
見えるそれは怒りというべきか怯えというべきか興奮というべきか緊張というべきか。
まっすぐ問うてくるのは可愛らしくも感じる。
だからそっと黒い前髪に触れた。己を捉える宝石を見るために。

「ああ、しないよ」

ユリゼン > 「それには及ばぬ」

前髪を暴こうとする手を押しとどめ、ひかえめに顔をそむける。

「至近の距離から竜の眼に視られたことなどあるまい」
「そなたらでは耐えられぬ。この瞳はな。心の臓を竦ませる」
「小さき者らを死に至らしめ、命を奪うだけではない」
「勇士の魂すら容易く砕ける。再起叶わぬほどに深く、終生癒えぬ傷を刻む」

手をはなす。顔を近づける。

「常人ならばな」
「それでも構わぬなら続けるがよい。錬金術師よ」

好奇心に足が生えたような生物をかえって煽ってしまったかもしれない。
グリュネイを無為に傷つけることは本意ではない。そう言おうとしたのだが。
平気なら平気で結果オーライだ。このグリュネイという女、どこか得体の知れないところがある。

グリュネイ > そむけられた顎を空いた左手の指がそっとつまんだ。
隠されてはいない金の瞳が近づく。

「確かにはるか古のそれはねーな。でもお前はそのものじゃねーだろう」
そこは勿論自分の担当ではない。モローがどうしたのか。過去よりはるかに劣っても、まだ恐るべき威光だろう。
一応データはおおよそ見ている。
というかそれならそもそも暴れるまでもなく狼藉者も簡単に片付いたものを。偲びないとでも思ったのだろうか。

「ほら、見ろ」

かきあげる。
瞬間、精神結界が四枚同時に解体した。
無粋ではない論理的な処置だ。なにまだまだ計算のうち。
それに、もう、止める時間はない。

ユリゼン > 指先がおでこに触れる。

髪のあいだに極細のスリットができた瞬間から圧力が生じた。
1秒後の生存すら疑わずにはいられなくなるほど強烈な死の匂いが発散される。
強烈なストレスが全ての臓器に負荷をかけ、弱った器官があればたちどころに機能不全に陥りかねない。
そして心の臓が凍りつき、哀れにも血の涙を流して死んでいくのだ。
かつてはその不可逆の事態が一瞬のうちに進行した。こちらが気づいて止める間もなく。

何もかも、この旧支配者(グレート・オールド・ワン)の直視に晒された者が常人であればの話だが。
たっぷり数秒見つめたあと、ふと表情が和らいで重圧が去った。

「よく見えておる。そなたが竜であれば妻女に加えてやったのじゃがな」

満足げな笑み。口の端を吊り上げただけではない。
クラスメートたちがするように、その眼もまた愉快でたまらないと言いたげな表情に変えて。

グリュネイ > 残りの結界全てが吹き飛んで、あとはいわば体力勝負。
オートバフはマシマシですいけます受ける瞳とて五橋の至宝よりこのオレが手ずから作り上げた特製の水晶体。
逆巻く軍勢最上位機ウラノメトリアに並ぶあっそうだ思い出したモローあいつユリゼンの竜玉から眼球用意したなくそなにしてんだそりゃ現物あるならオレだってします。
精神距離取れないかな無理だねもう遅いよね舐めるなクソがオレ様の作りあげたこの体が残りのプレッシャーを浮き止め切れないとでも思ってんのか睡眠不足とも仕事のストレスとも無縁肌の張りは何百年だが忘れたが常に直線進行曲がり角など永久に見えん最強無敵の美少女エルフ錬金術士様だぞコラ。
だいたい何が旧き竜だ今日日はやんねーんだよカビ臭い時代遅れのあっこっちはやばいオレのアイデンティティに関わる迂回しろルート変更なんだあれだそうそう先史文明の強大にして精緻な超技術に比べればそうこのロジックで抑えこむぞよし。
えっまだ三秒しか経ってないの?

さりとてオレの珠玉を内にして寂しいと言わせているわけにはいかねーだろう。

「――――――…………っふ」

ここまできて眼球や鼻孔から血をながす羽目になどしない。
やや垂れた耳の間の顔は白に赤みを保ったままだ。
むしろそれは竜眼の効果のわずかな余波か。
妻にという言葉への反論を飲み込んだまま、至近の距離をつめて唇を重ねようとする。

ユリゼン > 「おぬしも大概に意地っ張りじゃのう」
「わしが言うのも何じゃが、これしきのことで命を粗末にするでないわ。大戯けめ」

いきなり血を吐いて死んだりしないだろうか。
邪視の呪眼よりずっと強烈なシロモノに晒された者たちの末路はよく知っている。
後遺症がないかと心配になってぺちぺちと頬をたたく。肩をつかんでゆさぶる。
アウトだった場合これがトドメになるかもしれないというのはこの際忘れておく。

「まだ生きておるかの。ならばこのまま永らえよ」
「よいな! これで死なれては寝覚めが悪すぎるのじゃ」

顔が近い。近づいてくる。おでことおでこがぶつかるような距離。
嫌悪感と結びついたフラッシュバックが蘇る前に唇に柔らかいものが当たった。

「―――――――っ……?」

なにか意味のある仕草に違いない。けれどその意味まではわからない。
頭上に?をたくさん浮かべてフリーズした。

グリュネイ > 頭のなかでまだ衝撃の余韻がぐわんぐわんと鳴っている。
生死の話を限界まで抑えこんだのは確かだが、相手の威をもろに受けたのは事実。
だから唇を離して、荒い息とともに吐き出した。

「……死な、ねーし……妻女にも、なら、ねー、よ」

言葉の通り目尻から噴血して倒れはしないが、うすく水が潤んでいる。
理解できない相手をおいて、もう一度唇をついばむと、囁きながら腰を下ろすよう相手にも促した。

「いいから……お前の体、洗うんだろ……」

ユリゼン > 唇が重なりあい、鼻にかかった甘い吐息が漏れる。
問いかけの言葉も封じられ、我にかえった時には細い銀糸がのびて途切れていた。

「――――――……はっ」
「おぬし今何をした?? いったい何のつもりじゃ…?」

感触が残る唇を指先でなぞり、解せぬと怪訝な顔をする。
もしやあの不届き者もこれを狙っていたのでは?
人間たちにとってこの仕草に特別な意味があることは間違いない。
ならばされっぱなしというのも良くない様に思われた。

ボディタオルを泡立てて渡し、泡だらけの手で顔を挟んで唇を近づける。

「………こう、かの…?」

グリュネイ > 「――――っく」
返答の代わりに笑おうとした。
洗うなら洗うでわかるが、わざわざ泡立ててから唇を寄せてくるのがおかしすぎる。
それでも紅潮に引きつった顔では声らしい声にもならない。

程度は違うがかつて同じような戸惑いがあった記憶はあるし、
だからやはり妹のような可愛さを感じるもする。
洗ってやらなければと言う思いから相手が伸ばしてきたタオルに手を重ねるが、
至近に寄れば叩きこまれた衝撃の余韻が、顎を突き出して応えるように唇をついばんでしまう。

「ん……❤」

妹のような感覚があるはずなのだが、背丈もそう変わらない相手にこれでは親鳥に餌をねだる雛だ。

ユリゼン > 口移しで餌を与える親鳥のような位置関係。
せがまれるほどに良いものなのかと思い直して、舌先で唇を割り開く。

人間にとって口ほど大切な器官はないかもしれない。
日々の食事を取るだけでなく、想いを伝える言葉を紡ぐために欠かせないものでもある。
それは竜にとっても同じこと。
その大切な器官を相手に委ねるというのは、信頼や親愛の情を示す証のようなものなのだ。
おそらくは。推察でしかないが、現にグリュネイは満更でもなさそうな表情をしていた。

互いの唾液が行き交って溶けあう。自分とは違う姿をした女の口腔をさぐる。
深く。もっと深くへと。グリュネイの舌をつつき、誘って、ざらざらと擦れる肉の味を感じた。
浅く息を継いで、もう一度口腔深く潜っていく。今度は息が続かなくなるまで戯れあった。

「…………ぷは!」
「これでよかろうなのじゃ」

いい知れぬ満足感を覚えて腰を下ろし、黄金の翼と太いしっぽの生えた背中を向けた。

グリュネイ > 「っふ、ぅ……ん、ん……ぷぁ……っ
 ぉ、ぃ……ん、ん~~~~~~~~~~~……❤」

別に慣れぬことではない。
だが唇を重ねるだけのつもりが、不意打ちで息が切れるまで内側で貪り合ってしまった。
不覚……頭の中の響は体まで降りてきている。
肉食獣、というと正確ではないし、プライドを損ねるだろうが。

「よかろうって、何もよくねーよ……」
かろうじてそう絞り出し、口元を拭う。
洗えということだろうから、キスの間に手にとったボディタオルを翼の生える背へと伸ばした。
だが、タオルではなく己の体そのもの、脂肪の塊を翼の付け根と背へと押し当てる。

ユリゼン > 「この翼、存外に傷つきやすいゆえ心するがよい」

洗いやすいようにほんの少し拡げて、背中を丸めるようにする。
ごつごつとした金の竜鱗に触感はないが、薄い膜状の翼には感覚がないわけでもない。
素肌の感度はふつうの人間とまったく同じ。

けれど翼の下、なだらかに落ちていく背の途中からふたたび竜麟がのぞきだす。
長大なしっぽがあるために、骨格がだいぶ違うのだ。
背の空いている椅子でなければ座れない所以でもある。
今は手持ちぶさた気味にしっぽを揺らして、振り返ろうとした矢先に柔らかい感触があった。

「先に言っておくがの。しっぽにまたがるのはならぬぞ。禁止なのじゃ」
「そなた一人を持ち上げる程度は容易い、が…竜と見れば乗り物と思う不逞の輩がおっての」

グリュネイ > 「ん、はいはい……わかってる、よ」
膝を立て、またがらないようにした。
ややかぶさるような態勢になって、立てられた泡が肌と肌をすべる。
生え際の鱗が胸にこすれるのが心地よく、当たるたびに背筋がぴくんと震えた。

支えを求めるように、回した両手で左右からユリゼンの双丘を掴もうとする。
先ほどのキス、されっぱなしは本意ではない。
ただ愛しさのある体に触れたくなった、というのもあるだろう。

ユリゼン > ぬるぬると肌がこすれ、肉の質量がぶつかりあう音がする。
硬い鱗にあたって怪我をしないかと案じながら、何かをする訳でもなく。
逃れるように胸を張って、追いつかれてグリュネイの十指が柔らかな肉に埋もれる。

「何をしておる。任せておけば訳のわからぬことばかり」
「くすぐったいのじゃが?」

胸の頂がくすぐられ、たとえ服の上からでもそれとわかるほどに硬さを得ていく。
甘ったるいわななきが走り、身動ぎして鼻を鳴らす。
手をとりのけ、グリュネイの正面に向き直って胸のあいだに石鹸を挟んだ。

「こういう洗い方もあるのじゃな。成程、理にかなっておる」

タオルを使わずに泡まみれになるだけ。二人一度に洗えるというのは合理的だ。
胸のあいだに溜まった泡を手のひらにすくい、錬金術師の身体に塗りたくっていく。

グリュネイ > 「ま、まあな……」
理にかなっている、わけがないのだが。
向かい合わせでこすり合わせると、お互いの先端がひっかかってまた甘い痺れが走る。
手で触れられるとぢゅくりと奥が熱くなる。
だから代わりに自分も相手の肌を撫で、泡を塗る。

普段なら相手の乳首を楽しげにつねりあげでもしているはずなのだが、
調子の狂ったまま、つい唇をねだるようにまた突き出してしまった。
立てる必要のなくなった膝が落ちてぺたんと尻をつく。

ユリゼン > 石鹸の冷たさとグリュネイの体温が入れ替わりにやってくる。
いかにも重たげに震える胸をつかみ、にゅるりと滑ってしまうまで揉みくちゃにして。

「なんじゃーその奥歯に物の挟まったような物言いは。怪しいのう」
「グリュネイよ、このユリゼンをたばかると後で怖いのじゃぞ。わかっておろうな」

錬金術師がつねづね誇示して憚らないこの肉体は、人界では極めて稀少な類のものだと理解している。
均整の美というのは未だによくわからないが、この肉付きの良さは極めて良好な栄養状態を示すものだ。
生物として惹かれる者がいても不思議はないと思うに至っている。ずいぶんな進歩だ。

へそのあたりからメリハリのきいた腰つきまで揉み下し、その背に腕を回す。
突き出された唇に赤い舌が覗く。この身はその味わいを知っている。
押し合い圧し合い目まぐるしく位置を替える互いの胸を押し潰しながら、蒸れた熱気で肺を満たして唇を吸った。