2023/06/03 のログ
アスリーン > 「あら、あら。お祈りが出来るのね。いい子」

歩み寄る途中でよろめき、それでも近づこうと這って、しかし天使の足元にたどり着く頃に、
祈るように指を組む貴女に天使は優美な表情で微笑みかけた。
よく出来ましたと褒めるような声と言葉で貴女を褒める。
すっと立ち上がれば、天井についてしまうのではないかという巨躯。
3メートルに届かぬが近い背丈をした天使は、音もたてず、重量も感じさせない軽やかさで降り立つ。

「ねえ、敬虔な貴女。お名前は何と言うの?」

天使はたった一歩で貴女との距離を詰め、膝をつき、小さくて可愛い貴女の頬を撫でようと手を伸ばす。
色白の肌、愛らしい淡い桜色の髪。眼鏡の奥にある緑翠の瞳。
天使の手を拒まないなら、触れられた箇所から心地よい温もりと、貴女の好ましく思う香りがするだろう。
触覚、嗅覚。それらから脳まで侵蝕していく幸福感。
それらに抗うことも出来ない貴女を愛でるように、天使の指が、小さくて柔らかい貴方の唇を優しく撫でた。

「そのままじゃ、身体を冷やしてしまうわね。
 ヒトは、とても脆くて、か弱いから、心配だわ。────脱いでしまいましょう?」

雨に濡れた貴女の服を見て、天使は笑顔でそう提案する。
誰もいない廃教会、暗がりの中の光源はうっすらと半透明の天使の羽だけ。
そんな中で脱いでも、何の問題もないというように、天使は貴女を案じて脱ぐように伝える。

アスリーン > 【移動します】
ご案内:「廃教会」からアスリーンさんが去りました。
ご案内:「廃教会」からミンティさんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。

その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。

なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。

「──さーて、今日もブブイーンと張り切ってやりますか、ねぇッ……と」

その中の一室に腕をグリングリンと回しながらやってきたのは作務衣姿の金髪の男。
知り合いからの依頼という形で臨時のマッサージ師としてやってきている冒険者、という立場は今も変わらないのだが、
もうすっかりここの一員として馴染んでしまっていた。
そんな自分に時折疑問を持たないでもないが、男自身としてもなんやかんやこの仕事は
気に入っているのでまあいいか、とあまり深く考えないことにしたのだった。

「今日はどんなお客が来るかねぇ……」

ともかく、男は施術台の傍のスツールに腰掛け、腕組みしながら客待ちを始める。
出入り口のカーテンが開かれ客が現れるか、あるいは魔導機械の通信機を通して客室への
出張依頼が来るか。
いずれかの訪れが、今日の男の仕事の開始の合図となるのだろう。
もしかしたら、受付を経ずに紛れ込んで来てしまうような珍客が現れる、なんてこともあるかもしれないが。