2023/01/19 のログ
アッシュ > 「ふむ。だいぶ落ち着いてきたな」

あまり機嫌が良くなかったらしいのが、面倒な仕事でもいつもの日常としてそれに集中してみると、案外いつもの調子に戻るものなのか。
それとも、こいつのおかげかねぇ、とテーブルの上から手に取った押し花を見てニヤリとする。
手帳の一番後ろにまたそっと挟み込み、懐に戻す。

「ま、なるようにしかならん。
 落ち着いたら腹が減ったな……何か食って行くとするか」

空になったカップにもう一杯お代わりと、こういう時は肉だな、肉……と何か今日のオススメの肉料理を頼もう、と店主に声を掛け。

件の浮気性だった貴族の男が、まるっと反省して生真面目になり、件の令嬢と幸せに落ち着くことになるのは、もう少し先の話である。
それから暫しの間、仲人依頼がやたら舞い込むことになるが、目立つのを嫌うこの男にとっては、勘弁してくれぇ、と断って回るのにも一苦労することになるのだ。

ご案内:「平民地区/酒場」からアッシュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の一角」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ > 言いふらすつもりもない
しかし武器持ちらに周知されているメイラ・ダンタリオの特性は怪力と手数
大剣で割り 槍で薙ぎ払い 槌で叩き潰す
愛用する武具は全て 重量 長さ 物を云わせて叩き潰す事に特化していると言ってもいい。

握り替える獲物らで暴れまわる姿
武器の入手場所はどこなのかも知られない。
メイラの願いを叶えた鍛冶師は身内の叔父を除けば、今のところ唯一人
戦場で悪魔だの黒い怪物だのと言われる、現在の場を支える黒い鎧を業前た一人だけ。
その鎧を造り上げた者すら、出掛けで腰に差す愛刀に供する片割れ以外公に求められることはなかった。

メイラはその愛刀二つ
腰に下げた姿 貴族らしからぬ黒で統一された身なりで一人で歩く。
危険など無い。 話しかけてくる破落戸もいない。
不利益と判断されて叩き斬られる、殴打で昏倒するといったイベントですら
もう若い頃の時以来、奇襲以外ないだろう。
馬の鬣で拵えたファーが襟や袖口にあるだけの黒い革のコートを羽織り入っていた店
裏通りへ続く横合いの道は、表通りの立地条件と額では届かない者らの店がひしめいている。

その店は一種のマニアックな店というべきか
剣や槍といったオーソドックスと言えるものではなく
限定的要素で突き詰めた刃が並ぶ 活躍の日の目を見る機会が少ない者が並ぶ場所
店主も破天荒な身なりで、世紀末的な髪型や頬の扱けた姿
革で身を包んだ姿という、一種の馬鹿 破落戸 に見えて
武器に対する執着とマニア性はメイラも買っていた。


「相変わらず、変態ですわね。」


店の中、メイラはガントレットを身に着けた普段の両手
それに嵌め込むようにして刃が連なったメリケンサックを握りしめたり
一本の穂先が付いた握り 暗器と呼ぶべきか殴りつけるように刺すもの
民族武器的なジャマダハルや節鞭といったものまで。

ショートソードや警棒が生娘のように見えてくるラインナップ。

メイラ・ダンタリオ > それらを眺めては、店主をチラリと赤い瞳が見る。
薄暗い店内 腰を下ろすカウンターで明りを固定し、口元をマスクで覆った店主
手にはメイラの愛刀 二代饕徹 を鞘から脱いで眺め、ハァハァと恍惚とした表情でいた。

一種の危ない奴 此処に極まれる表情ながら、その瞳には愛刀の狂いない姿を焼きつけている。
一番最善で最高で最良な姿はどこなのかを知っているから、メイラは愛刀を簡単に見せていた。
口元のマスクは、本人曰くこんな器量に臭い息を吐きかけたくないという他
その吐息の水気を刃に触れさせて傷ませたくないという、基本が守られている。
この店主、先の叔父や鎧製作者以外でメイラが幾つか通っている武器の関係者
二代饕徹の手入れをさせる人物の一人でもある。


『フゥ―…、…フゥー…、…。』


瞳に血を通わせて目を凝らす 頬は染まり、惚れこむ。
酸素を十分に取り込んで、視力を鈍らせず、と。
ストリップバーに初めて通った13歳の青年が乳房を眺めるような食いつき
楽器を眺める少年とは度が違う。


メイラはタナールで負った頬を抉った矢傷を塞ぐように白の布を張り付けた片方の頬
その姿で興奮している様子を眺め、手元の山刀形状の鋸歯刀の刃をザリザリと撫でる。


「研ぎにはどれくらいかかりますの?」


じっくりと眺め、状態を確認する素振り
厚み 刃 鍔 部位によって専門的な者がいるものの
刃のみ扱わせるから手間もない。
メイラは凝視する様子に声をかけるタイミングを見計らって問うと、答えはたっぷり30秒かかった。


『…、…一か月。』


「ざけんじゃねーですわド馬鹿。」


一か月は掛けたいという熱量ならまだしも、一か月眺めたいにしか聞こえない
表通りでの口調よりも砕けたメイラの言葉に、チッと舌を打つ店主

ご案内:「王都マグメール 平民地区の一角」にアクラさんが現れました。
アクラ > 扉の開く音
続いて小さな足音
明らかにこの場に似つかわしくない子供が扉をくぐる

「おぉぉ…変なのがいっぱいだ。」

にんまり笑顔を浮かべるフードを着た子供
所狭しと並ぶ変わった武器達を眺めながら店内を物色する

人の使う武器の勉強、その為に王都中の武具店を梯子していたがここには今まで見た事のない様な物が盛り沢山
ふと店主が居るであろう場所を見れば客らしき女性と店主、そして鋸歯刀の武器を見れば

「なんだそれ…剣なのか?
斬られたら痛そうだ……」

なんて物が有るんだと顔を引きつらせる
見ためすらここまで凶悪な武器まであるのかと

メイラ・ダンタリオ > 鋸刃 こんなもの 傷口を襤褸にする以外拷問用途でしかないように見える
必殺ではなく常傷させるものの凹凸をツンツンと指先のガントレットで触れながら
メイラは、マニアックな店だけに訪れる者が少なく、その研ぎの単位は一日以内と踏んでいる。
じっくり触れ合う機会を逃す店主でもなく、他にかまけるよりも熱中する。


好きなだけ眺めさせる傍ら、ドアが開く。
珍しいこともあるものだとみれば―――


「子供?」


小さい呟き。
最初こそ、利用者が他にも来たかと少しだけ意外そうに思えた
しかし次に出た言葉は未知との出会いに好奇を募らせる言葉
ローブ姿 黒い瞳 無邪気
店主に目配せをすると、首を横に振う。
つまり初見 一見である。

赤い瞳とギザ歯で、購入意思もない冷やかしほど店にとってはいなくていい存在。
金さえ落とせばいいかもしれないものの、変態店主からしてみれば武器に喜ぶ表情は〇
しかし求める意思は見える限りでは×。
来るのがいかにも早すぎる手前に見える。


「趣味嗜好が偏った武器に傾倒すると碌な目に合いませんわよ?
 一つお勉強になりましたわね。」


カタンッと鋸歯を戻せば、子供の行為
武器を眺めたら心が躍るという気持ちもわからなくはないものの
わざわざこんな店に何をしに来たのか 店主は早々に興味を無くし
いらっしゃいという言葉すらないまま、刀を眺める作業を続けた。

カタンッと取り出した砥石粉末を綿毛棒に眩し、刀身に施しては
その刀身の脂を拭って裸にした状態を眺める方向にシフトしている。

メイラはと言えば―――。


「…、…。(スン、スン)」


感じる匂いに、鼻をヒクつかせていた。
大脇差の柄に左手指を添えて、その隙間なく巻きつけられた雁木巻を撫でている。
赤い瞳は、ローブ姿を眺め、ギザ歯が薄く開いた口元。
口元の形は、三日月から、楕円。

アクラ > 「普通の武器はここ以外で沢山見たからな。
変わった武器も知っておきたいのだ。」

剣や槍等は色々と見慣れている
実際に店をめぐり機能や構造の理解が深まったが、ここに並んでいる武器は斬新で物珍しく好奇心を刺激される

加えて、実際こんな武器を使われる可能性もなくはない

「な、なんだお前…獣みたいだな。
……いや、獣じゃない。ほんとになんなんだ?」

此方を見る女性、パッと見た感想は黒い奴と言った所
近付いてみれば匂い獰猛とも言える口元に少し警戒する

小奇麗にしてはいるが取り切れない程に染みついた血の香り
人間から普通はしない香りを感じれば警戒するなと言う方が無理が有る

メイラ・ダンタリオ > 店主が、刀を鞘に納める。
メイラの表情 目付き 口元
何かを察するように、渡すとメイラはそれを黙って腰に差し直すだろうか。

左の手指は柄を撫でる手指が鯉口にいく。
腕を置くような姿勢であるものの、見下ろす子供に対するそれ
メイラは、まだ店主が察した状態を解いてない。


「―――わたくしを見て“お前”と呼ぶ子供がいるわけありませんわ。」


平民ならあり得ず 流れ者でも危機感がなさすぎる。
子供の姿ではなおさらに。
しかし眉を顰めながら、武器を見たかったという答えは正直、本当だろう。
これは偶然? それとも、必然だろうか。


「なんなんですの “お前”。」


メイラが殺気を膨らませた。


「人間でも亜人でもありませんわよね。」


笑みが形になる。
赤い瞳は絞られ、三日月を描く。


「普通は見慣れた? この都に随分と居ますのねぇ…、…。」


普通の武具店を望く気持ちが失せたほどなのかと
この魔がのんびりと出歩いていたのかと。
右の手のひらがメイラの貌を覆った。


―――我が王 お許しを。
―――わたくしがありながら、なんという。


メイラが悔やむ姿など幾久しいか。


「ハァ…、…研ぎ、また今度にしますわね。」


店主にごきげんようとカテーシーすら取らない言葉。
店主も、冷や汗一筋
店内で今から暴れるつもりかと思った事柄は回避された様子。


メイラが、ジリッと一歩踏み出す。


「こうなったら“ダンタリオ”がお前を見逃すわけがありませんわ。」

アクラ > 「ん、そうなのか?」

はて、と首をかしげる
基本的に相手が誰であろうと名前を知らない相手はお前と呼んでいる
悪意が有る訳ではなく誰にでもそうなのだ

そう、普通はそんな呼び方があり得ない相手で有ろうとも

「なっ…お前こそ人間じゃないだろ!
普通の人間はそんな目をしないぞ!」

殺気を向けられれば姿勢を少し低くし歯を見せる
人の子供で有れば気絶するであろう程の殺気を向けられ思わず本能的に動いてしまう
そして冷静に瞳の動きを見れば人間のソレとは違うと気付く

「はっ、いいぞ。いきなりでびっくりしたがお前なんぞ……ダンタリオ?
……ダンタリオ!?」

ダンタリオ、と言われ頭の中に電流が走る
王都での勉強に移る前、魔族が噂していた悪魔の名前
砦での情報収集で名前だけは知っていた存在

あの男に負けてからもう近付かないでおこうと決め忘れかけていた存在が目の前で獰猛に笑っている

「……思ったより普通だな。」

混乱もあってかそんな事を呟いた
恐ろしい怪力で無双する化け物としか聞いていなかったので筋骨隆々の化け物じみた姿を想像していたのだ

メイラ・ダンタリオ > ダンタリオという名前に反応
普通という反応
怪力令嬢 はたまたその特性の噂を聞いた者
魔であり子供も擬態 若しくはなにかしらの一致しない部位がある
無知な様子が本当に見えても 価値 それは 此処から一刻も早く消すということ。

メイラの行動は早かった
翻して逃げるかもしれないと思った反応ではなく
その有様が普通だった様子に対する 拍子抜け という姿。

これに対し、メイラが放ったのは、普段の鎧も重量武具もない
獣のような速度 右足での踏み込みに合わせた鍔を切る親指
抜刀の瞬間の障害のない足元


右半身を内側に捻りこみ、バネのように解放する抜刀。
剛刀が、その全身を戦闘で抜かれる姿 最近王都や出かけ先では余りなかった機会に
刀も鞘から引っかかりもなく流暢に抜かれ


          「シ ャ ア ッ ! !」


         ―――“ギンッ!!”―――


嬉しげに一閃を鳴らす音が、子供の背丈に合わせ、下方横薙ぎ
子供の姿に容赦なく断とうと踏み込んだ一撃
表に出るという間もつくらないまま、店内で発生した。

アクラ > 通常、人であればこの場合どうするか
逃げる?命乞い?もしくは覚悟を決めて戦うか
アクラの場合、相手がこちらを襲うと判断した時点で殺す以外選択肢などない

「ガァッ!!」

子供の姿が一部歪に歪む
体躯に似合わない巨大な腕部、その表面には岩の如き鱗がびっしりと張り付いている
鱗と肥大した肉と骨
両の腕の骨にまで達した刀を受け止めれば子供は睨む

「い、良いのか?
ここで戦うなら私はお前以外を巻き込むぞ。
巻き込んで巻き込んで何をしてでも逃げてやるぞ!!」

フッー!!と威嚇するのは先程までと変わらない子供の顔
しかし中身はと言えば人と言うより獣のそれ、脅しでも何でもなく追い詰められた獣は文字通り何でもするだろう

メイラ・ダンタリオ > 鎧もなく 重量武器もない
本質からやや欠けた今のメイラの姿
しかし怯むところなど一切ない。

剛刀 二代饕徹の露と散らせる
王に首を捧げて謝りたいという気持ちで満ちていた。

放つ抜刀に、反応を見せる速度
足でも無ければ体勢でもない その剛腕を一瞬で出現させるどころか
造形も対応済という点。

不定形 変態 状況対応

何気に少ない類の可変生物か
それとも一部強化が得意なのか
先ほどまではふざけた隙だったのに 場慣れ それは油断も隙ももう無い。

メイラは押し込んだ。
刀が完全に防がれているなら、その鉄を前に押し出し、両腕がミシリと膨らんだ。


―――バリッ!


歯軋り一つ
入口が半分砕けるようにして互いがこの横道通りに露出する。
その音程度では、この街で衛兵が慌ててくるはずもない。
続ければ野次馬でも生まれるか?
そんな、状況だ。


「その答え、単純明快に極まってますわね
 ハァァッ…、…最適解ですわ。
 判断能力 造形の出現
 シェイプシフター? まぁいいですわ。」


そう言ってメイラは構えを解かない。
刀を携えるまま、右側に刃を寝かせて姿勢を低くした。
破壊力よりも切れ味に傾く愛刀では、決定打に欠けそうな状況。
一対一を、周りを巻き込んで被害を広げてやると脅す素振り
白い吐息を吐き出し、熱量を伝える。
そしてそれを褒めるかのような返答と、見敵必殺の表情のままの笑み。


「…、…。」


沈黙と共に、足先をジリジリと詰めていく。
答えはもう出ている。
止まるわけがないし 調子に乗らせない。
変身か不定形かわからないものの 殺すまで斬れば済むのだろうと。


「でもお前、欲しいですわね。」


なによりも、今メイラが動きをやめない理由は
目の前の王の領域に踏み込んだ不届きものを殺すという気概と
王の為に目の前の女を手に入れさらなるものを求めるダンタリオの欲がある。


「ねぇ、お前、孕めますの?」


殺すか否かを問うてみた。
目の前の性格上単純明快に仕上げたふざけた問。

アクラ > 確実に防いだ一撃
それでも目の前の敵は怯みすらしない
今防げたのは単なる偶然、巨腕を落とすと思って斬られていなかっただけに過ぎない
次は同じ方法で防げる補償などない

「シェイプ…?よく分からんが私はアクラだ!」

種族として自分が何なのか理解まではしていない
自分の名を口にすれば切り裂かれた腕は粘土細工の様にその傷が塞がる
骨まで達していた傷も見た目上は無傷に戻れば異形の手先も自由に動く

「私はお前が欲しくないぞ…

む?試しては無いが多分孕んだりしない…
私は雄のも雌のもついてないし卵も産んだことがないからな。
人間の股の棒も穴も作れるには作れるが。」

今の顔すら美しい子供には人間は無条件で優しい、警戒心が薄れると学習したからこの顔をしているだけ
雄雌の概念もなく美しい衣装を着ている様なもの

「…美味い食い物をくれるならお前に従ってやってもいいぞ。
その時は人間もお前が選んだ相手だけ食べて我慢してやる。

それでも私を殺すと言うなら死ぬ気で逃げて、手当たり次第に人間を殺してやるぞ。」

プライドや意地等欠片もない
ただ生き残る事だけを考えた提案を口にする

メイラ・ダンタリオ > 敵意も殺気もない魔。
名前をアクラと述べた女童型のそれに、メイラは一定の興味を抱いたまま答えを聞いて黙った。
野生に尽きる反応 抵抗 のみの姿。
用がなければ斬り捨ててしまうことは決断できていた。

しかし、大体の姿は応用でき、男も女にもなれる
孕むのはしてみなければわからないとまで正直すぎる回答。
戦力 魔族 メイラが数多に手を差し出し 手元に来い と何度も今まであった。
そして何人もが、メイラと交わした契約がある。


「…、…人間くらいいくらでもありますわよ。」


どれだけの敵を屠ると思っているのだと
タナールは例外ながら、アスピダ 盗賊 山賊 ハテグ
そしてこの街で処される者に至るまで。
それらと美味いものをくれたら、従うという素振り。

メイラの強さ 有り余る狂気に対する反応ではなく
飽くまでも雇われるのと似たような感覚。
メイラは構えを解き、しかし刀を握ったまま左手指で顎を撫でていた。


「なんとも真っ直ぐですこと…、…。」


ジッと赤い瞳が見つめながら考えている様子
刀は先端をぴくっぴくっと動かすあたり、挙動に対していつでも斬りかかろうとしている右腕である。


「最初は貧民街に誘導して殺してやるつもりでしたわ。
 あそこでいくら死のうが関係ありませんもの。
 隙間ができてもすぐに埋まる。」


適度に蹴り飛ばし、適度に方向を変え、貧民街に入ったところで起こすつもりだったと。
いくら死のうが貧民街では悪潤めいた場
なんの不利益もなく王も困らない。
民殺しの無能と走端に言われようが関係ない。

全ては王の為に。
それでいい。


だからこそ、メイラは悩んでいた。
ダンタリオ 一口に言っても、目の前で暴れる代表のメイラは怪力という象徴である。
無論、魔に秀でて力を身に着ける者 翼の生えた者 いくらでも魔と混ざり合って生まれた
好き結果のダンタリオはいることだろう。
メイラ・ダンタリオは一例にすぎず、目の前のシェイプシフター擬きはメイラの中
ダンタリオをより王の為にする為にという意識に向けさせるものをもっていた。


「…、…アクラ。」


始めて名前を口にすると、刀を鞘にゆっくり 残心を以ってカチリと納めていく。
両手が空いたところで、腕を組んでから顎を撫でるまま問を投げる。


「お前 ――――――とかにはなれますの?」


造形希望を一つ出してみた。
やってみせろと。

アクラ > アクラは基本的に嘘をつかない
嘘をついてもそれを突き通せるほどの知識がないと言うのも有る
だが、その大部分はそもそも嘘をつく必要が無かったというのもある
自然界において嘘をつくなどと言う行為を行ってこなかったのだから

「む、それは良い事だぞ。我慢してるとイライラするからな。」

食べて良い人間が沢山と言われると笑う
純粋に嬉しいのだ

「貧民街…あそこは臭いしヤダな、転がってる奴等も肉が無さ過ぎて食べる気も無かったぞ。」

異形の腕は元に戻さず構えも崩さない
話しをしているがいつまた斬りかかられるかも分からない
武器を仕舞ったと油断が出来る相手出ないのは身をもって理解している

と、警戒のダンタリオの言葉に首を傾げる
そんな事してどうするのだとは思うが、逆らわない方が吉である

「それ位は簡単だが……いきなり斬りかかるんじゃないぞ!」

そう言いつつ異形の腕と小さな体躯が文字通り蠢く
柔らかな粘土、もしくは粘性生物の様に身体が変わっていく

腰まで伸びた白い髪に同じく白く透き通った肌
黒い瞳にくびれた腹、たわわに実った胸と臀部を一枚のフードだけが隠している
顔つきも子供のそれが成長したような綺麗な顔で…

「こんなものか、人間の美醜は色々と練習したからな。
悪くは無い筈だぞ。」

ふふん、と胸を張る
見た目が変わっても中身は変わっていない様子

メイラ・ダンタリオ > 造形をまともに目の前で変化として見るのは中々にない。
変身術 獣化 ライカンスロープ
そう言った物とは違う 0を1にする光景。
1が別の1になるわけではない光景。

都の中で長い間いただろう言動
野性的な しかし敵を造らない素振り
この造形が変えられる手段もまた、いろいろとつかえたのだろうとわかる
練習はたくさんしたというそれ。

変幻自在な野生児 扱いやすさも込みで そんな評価か。


「種族すらわかっていないくせに、本当にそのままですわね。」


シェイプシフターとは厳密に違うかもしれないものの
好みの姿に変えて惑わす夢魔や魔物娘のドッペルゲンガーのようなものか。
傾国の美女に鳴れと言ったわけではない。
凹凸極まる大人の姿になってみろといっただけ。

だが白髪の外見とそれで、メイラも決まったようでズカズカと普段の歩調で近づこうか。


「ん。」


無造作にムニュッと両手でローブの上から鷲掴まれる胸部。
持ち上げてむっちりと確認すると、ローブを首元から広げて捲ってみる。


「ふむ。」


斥候 潜入 無機物に化けることも容易だろう
石像や岩など、正面突破だけがダンタリオではない。


「んー…、…。」


この時点でダンタリオも考えは勧誘に代わっている。
殺気もなく、四肢も赤い瞳もギザ歯も、唯々そこで眺め動くのみ。


「うん、決めましたわ。」


長考していたのは行く先のこと
そう言ってローブから手を放すと、腕を組んで三日月の笑みでギザ歯が開く。


「嫁になりなさいな、アクラ。」


契約ではなく囲い込む
メイラは手元に置くではなく手に入れるにしたらしい。
嫁?と聞かれたら


「番ですわ つ が い。」


と述べて、最後に。


「おいしいお肉食べれる場所一杯知ってますわよ?」


殺し文句も添えた。

アクラ > 異形に変じる事も人に化ける事も息を吸う様に行ってきたがそれに疑問を持つ事は無かった
手が何故物を掴めるのか悩む事が無いように、今行った変身も当たり前の事なのだ

「そんなの気にしたこともないし気にしても分からんからな。」

考える事は有っても考えた結果は分からないしかないので気にする事もやめた
重要なのは変身ができる事、そしてその精度なのだ

「や、やるのか!?
むっ……」

ズカズカと近付かれれば思わず細くなった腕を構える
延ばされた手に殺意を感じないため大人しくしていたが、胸を掴まれれば恐怖的な意味で鼓動が速くなる
羞恥と言った感情が皆無なせいか胸を掴まれても堂々とはしている

「嫁?」

番と言われればなんとなく理解する
さっき斬りかかった相手に何を言っているんだこいつは、と思うが次の言葉に思考は切り替わる

「おいしいお肉が沢山……良いだろう、悪魔の嫁になってやるぞ!」

うむ、と頷く
そう、アクラは知っていた
番になった動物は片方がせっせと働き食事を集めもう片方が食事を食べると言った夢の様な暮らしが有る事を
嫁の概念はあまり理解していないが今ここで斬り殺されるよりは遥かにましであると判断した

メイラ・ダンタリオ > 「あら、早い決断ですわね。」


縛られるのは嫌だと言われたら強引に手に入れるか斬るかする選択だった
それを野生の勘か 何も考えず美味しいお肉で手元に来ることを選択したのか。
変化自在の野生児が、メイラの女になると決まった。

先ほどまで殺し合った相手に、欲しくなったから手に入れる
王の利益になると、手の平を返す素振りで何人の男女を戦力にしているのか。
メイラが目を向ける優秀なればこそだろう。


「ダンタリオを名乗るのかどうかは、まぁ好きになさいな。
 貴女がもっと育ったら考えましょう。」


ここがね、と言ってガントレットの指腹でアクラの額をトントンと触れた。
身も心も幼いのなら、こうはならなかっただろう。
これは野性的に成熟していないだけだとした。
後にロリコンだと変態だと言われようものなら、堂々と否定もする。


「これで貴女はわたくしの“味方”
 “敵”に寝返ったり“いけない事”をしたら―――」


したら?と続く様子なら


「ブっ殺してさしあげますわ♡」


にっこりと満面の笑み。
野生児には窮屈に見えるだろう
しかしメイラが手元で共に暴れ貪らせればいいだけなのだ。
そう言ってドアを破壊した経緯や周囲にやっとメイラがやり合っているという話が伝わり
衛兵が来ようものなら腹パンを一発。
こうなった事態と結末を告げ、解散させるだろう。

ドア代を支払うことになったものの、安い買い物だ。
思わぬ収穫に、後々タナール砦に出向いたことや戦闘経験が意外とあることなど
悪魔と呼んできた所以を聞いてメイラはより機嫌を好くしただろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区の一角」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の一角」からアクラさんが去りました。