2022/09/11 のログ
マーシュ > 「──……っ」

手の動きがやらしいです、とかいろいろ言いたいことはあったのだが。
けれど結局は守るためにしてもらってることなのでそれ以上は口にできない。
触れあってわかる、男の熱の在処が反応したのに少し唇を戦慄かせ。

「────…は、ぃ」

もう少し、との言葉に返事。
腹部に宛がわれた手のひらは、特にセクハラめいた動きをするわけでもなく、ただ、温もりが添えられるのは心地のいいことだった。
はたから見たらどうか、は、ある意味そのための行為なわけだが。────少し体を預けたまま、頤を天井へと向けた。

ややあってからの背後からの溜息。
湯の揺れる音とともに抱き寄せられるのにはあらがわず───。

「お疲れ様です……?」

安堵の吐息に、己を抱き寄せる手に手を重ねて。ただそれだけの仕草を返す。

ヴァン > 抱き寄せたのは無自覚だったのか。
手が重ねられるとはっとする。急に手を引っ込めるのは乱暴だし、失礼な気がした。さりとてそのままも良くはない。
緩々と離すのは、どこか名残惜しそうにもみえる。
耳を澄ませると、浴室内は普段の状態が戻っているようだった。

「もう……もうハプニングは起きないと思いたい。
マーシュさんこそ、お疲れ様。本当に……変なことに巻き込んですまない。
ここから出て、浴衣に着替えようか」

雨音は静かだが、まだ微かに感じ取れる。傘があれば帰れるだろうか。
女にしている腕の束縛を解き、湯船から立ち上がると先導するように時折後ろを見ながら脱衣所へ。

ひとまず浴衣に着替えた後、番台の従業員からまだ服が乾いていない旨告げられ、マーシュと顔を見合わせる。
しばらく待てとロビーへと放り出された後、男はあらぬ方向を向いて言った。

「マーシュ…………さん。
さっきも言った通り、服が乾くまで食堂に行って何か食べて時間を潰そうか。
あるいは、ここは客室を時間貸しするらしい。のぼせたのを治すために休憩する?」

マーシュ > 手を重ねたことで、何かに驚いたように拘束とも言えないような抱擁は緩くほどけてゆく。
特にそれに追いすがることもなく、女もまた手を放して。

そうしているうちに浴場内の悩ましい声も静まって、静かになっているのに気づいたのにそれを潮目に、とかけられた言葉に女は首を横に振った。

謝罪の言葉に、しばらく耳を傾けて、それから己自身に問うように緩く目を伏せる仕草。

あえて言葉は返すことはなく、前髪をかき上げ、さらされている相手の額を軽く突いて。戻ろうという言葉に頷いた。

これ以上使っていてもきっと逆上せてしまうだろうから。
気遣う様にしつつ先を言ってくれるのにつかず離れずの距離でついて歩きつつ、お互い体を拭いて浴衣を身にまとえば、くすぐったいような羞恥からは解放された。

ロビーに戻って、準備ができていないといわれたのならばそれは致し方がない。自分たちと同じような客も多かったからだろうとは思う。

「……?」

どうかしたんですか、と問うような眼差しを向けた。食事というのにも早い気がするのは、お茶をしたからか。

「じゃあ、休憩しましょうか。たしかに少し長く浸かっていましたから───」

水か何か補給できると嬉しいですね、と言葉を重ねながら、己も、だが。相手の表情の変化が珍しさは、確かに得難い経験だ。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からマーシュさんが去りました。