2022/05/15 のログ
ご案内:「ノクターン家邸宅」にミセス・ラプソディアさんが現れました。
ミセス・ラプソディア > 「……ただいま戻りました。…お茶にします、庭で準備を。」
コツ、コツ、コツ…と規則正しいハイヒールの靴音を響かせ、馬車も護衛も連れず外出から、一人の貴婦人が戻ってくる。
肩にかけていたケープをそっと外すメイドの仕草にさせるまま、自分は庭へと足を進め……お茶用の小さなテーブルへ…執事がそっと椅子を引くのを待ち、優雅に腰掛ける。

「ありがとう。」
そう執事に告げる礼の声とハイヒール以外の音が衣擦れ一つおきない、お手本と呼ぶにも細部まで力が行き届き過ぎたような作法の仕草。
普通の令嬢が同じことをしようとすれば、10分足らずで汗だくになりそうな神経の張り方を、しれりとした顔でこなす当主夫人にごく自然に傅く程、ここでは当然の光景であった。

「…全く、本家からの頼みで渋々顔は出しましたが…色に金にと…つまらぬことばかり。……旦那様よりも私を熱くさせてくれる殿方というのも、中々居ないものですね…まぁ、当然ですが。」
お茶が届くのを待つ間、そばに使える執事に愚痴を零すかのようにはふ、と小さくため息…女の心は、今でも星となった己が夫へと思いを馳せると同時に…親戚から頼まれて出席したパーティと呼ぶには淫蕩すぎる催しを思い出していた。

「全く…亡くなられた御夫君より貴女を満足させてみせよう…だなんて、面白い事をおっしゃられるから…つい、銀のカップを握りつぶしてしまったわ。
旦那様だったら手が傷ついてないか心配してくれるというのに、その殿方ったら…ねぇ?」
そそくさと去られてしまわれたわ。と憂いを帯びたため息を漏らす女の呟きを、その場面を想像してか小さく震えた執事に何も言わない、何時もの事だ。
そのままメイドが運んできた暖かな紅茶とお茶請けを受け取ると、そのメイドに再びありがとう、と小さく笑みを向け…業務を引き継いだ執事がゆっくりとカップに注ぐ紅茶を眺める。
自分の好みを完璧に把握した砂糖とミルクも注がれれば、執事にも礼を告げて…ようやく、彼女のティータイムが始まる。

ご案内:「ノクターン家邸宅」からミセス・ラプソディアさんが去りました。
ご案内:「ノクターン家邸宅」にミセス・ラプソディさんが現れました。
ミセス・ラプソディ > 「家を継ぐのは養子で構わないでしょうに…何を焦っておられるのだか。」
確か本家は子だくさんだったはずだ。それこそこの分家を継がせても構わないだろうに、自分に子を作らせようとあれこれ世話を焼く癖に、庶民から養子を取ろうとすれば血がどうのと文句を付ける…ならそっちから養子を、といえば口ごもるのだ。

「養子に来た子は私に見劣りせぬよう、武術も礼儀作法もしっかり鍛え上げて差し上げますと申し上げましたのに…何がご不満なのでしょうね?」
そう不思議そうにお茶の合間に独りごちる貴婦人の疑問に、面と向かって答えるものは今この場に居ないだろう。
かつての戦場で戦斧を素手で傷一つ追わず受け止め、刃を握りつぶして奪い取り、その持ち主を柄の部分で鎧ごと粉砕した化け物に見劣りしないようになるだけの「武術訓練」など、怖くて自分の子を養子に出せないだけである。

ご案内:「ノクターン家邸宅」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ > 馬車の車輪が ガラガラと音を立てて進行する。
目的地は貴族が住まう地区の中で、まるで自身の身内のようにすら見えるかもしれない 一人の貴婦人の邸。
馬車にはダンタリオの家紋があり、一人で妖馬や二足蜥蜴に跨らず、形式を造った貴族らしい移動方法。
そんなことをする必要性がある場面など、王城や何等かの式でしか、メイラにとってはありえないだろう。

人民に対する貢献度は、脅威が目の前に迫らなければ目に見えるものではない。
故に同じ貴族や剣を取る者しか、その家紋には反応しづらいだろう。
貴族は貴族としか見られていないかもしれない 所詮ダンタリオとて、取るに足らない一人である。

目的地へと着くまで、メイラは窓を眺めながら頬杖を突いている。
鞍に跨るのではなく、シートの上に足を組んで運ばれるという感覚。
偶にはそんな出来事も悪くはないだろう時間も、あっという間に過ぎた。

邸の然るべき場所で留まる馬車
降りるのはメイラただ一人である。
街中故に護衛というべき護衛もいない。
馬の世話と馬車を守る御者へと、一言。

「ご苦労様 友人と少し時間を費やしますわ。 貴方も楽にしていなさい。」

ダンタリオは強さと王に対する敬意を重んじる。
しかし、身内に対する意識もまた高いと言えた。
待っている間は退屈なものだろう しかし小遣いを上乗せしてもらえる御者は
その日独り身なら娼館へと繰り出せるし、家族がいるのならばおいしいものが出せるのだから
一言、見送る言葉と共に、先んじて渡されているゴルドの入った革袋をいそいそと無くさないよう
秘密の場所へと納めていくだろう。
後は主が戻るまで、馬車で金色髭棒の干しパイプでも燻らせていればいい。

そうして、メイラは腰に刀の大小を携えた姿
黒い喪服よりも威圧のある一張羅
ウルトラロングヘアが揺らめている中で、両腕の七分から覗く肌は黒い刺青を覗かせ
その四肢の先は黒鉄が嵌め込まれている。

足取りは革靴の踵が石を打つ音
カシャカシャと、蛇腹状の重なるプレートがこすれる音が小さく響くものである。

出迎える者らへと、アポでもとっているかのような態度でクルリと見つめ。

「ごきげんよう、“斧人”は何処にいらっしゃるの?」

イントネーションが若干違う言い方。
普通なら夫人と聞こえればいいだろう。
しかし、メイラからしてみれば、お前はただの雌ではないだろうというかのような
そんな言葉遊びを交えて案内を受けた。

この空間はそれぞれが職務を全うする構え 一定の緊張感と主に対する敬意で構えられており
メイラ自身も剣を握って訓練場で立っているかのような気分にさせられる。
その緊張感が、メイラからすれば嫌いではない。

やがて世間一般では、海底黒大蜥蜴と海底火吹き黒大蜥蜴が向かい合っていると言われているような
そんな似た者同士が対面しあうだろうか。

「ごきげんようラブ。
 冴えない顔をしていますわね。」

赤い瞳とギザ歯で三日月を描くメイラは、座っているヘヴィ級の夫人に声をかけると
略称で機嫌を伺っては、目の前に腰を下ろすのは、椅子が引かれてからである。