2022/05/02 のログ
ご案内:「湯殿」にアティ・ロップさんが現れました。
アティ・ロップ > 少し涼しい風が吹き抜ける昼下がりの街。
春ともなれば暖かな陽気が多い中、この涼しさは少々珍しいかもしれない。
その突然の涼しさに後押しされるように、まだ日も高いというのに、酒場などで盛り上がってる人影が散見できるのは、飲食店にとってはいいことなのだろう。

そんな賑わいを抜けた先。
夜ともなれば町の人や旅人でにぎわう旅籠へと人ならざる耳と尻尾、そして各種部位をもつ兎は雑踏の合間を通り入っていくことにしたようだ。

「ん-…久々だけど、相変わらず広いねここは」

涼しい日、それは兎にとっては丁度よかったようだ。
軽く運動するように組み手を施設でかわし。
程よく熱がこもり、汗を纏った体をさっぱりさせるにはおあつらえ向きであり。
涼しくとも、今はまだ空いている様子であれば、兎はのびのびと入ることを目指すように、空いている湯殿を探して旅籠を歩き回っていくのだ。

もっともどこまで込んでいない昼過ぎである。
ほどなくして人気のない脱衣所を発見し、兎はそこへと入り込んでいくのだった。

「さてと…まずはさっぱりと」

ポイポイと半ば脱ぎ捨てる勢いで、手近な籠へと衣服を放り込み。
タオルも手に持つ形で軽い足取りで浴室へと進んでいくうさぎは少々堂々とし過ぎているかもしれない。
もとよりあまり気にしない、ということもあってか人気がないから猶更といったところなのだろう。

薄っすらと漂う湯気の中、上機嫌で進む兎は湯舟へと行き成り沈む。
なんてことはなく。
ちゃんとまずは体を流すために桶を手に取り。
頭からかけ湯をすれば。洗い場へとそのまま進み。
頭から湯をかけ直すままに、備え付けの石鹸で泡を立て。
そそくさと全身をくまなく洗って泡を流すことにしたようだ。

ご案内:「湯殿」にグライドさんが現れました。
グライド > (長期の依頼からの帰り
汗を流すにしても、久方ぶりの王都であれば、のんびりと長湯もしたくなる
故に、普段は余り寄らぬ穴場を目指して、歩みを向けたのは
他に比べても余り人の気配が無い店であった、か

既に幾人かは先客が居る様だが、別に気に留めはしない
先んじて重い鎧と盾ばかりは宿に置かせてもらい、訪れた脱衣籠に肌着を放り込んでは
浴場へと足を踏み入れ、湯船のそばまで、手桶を掴んで寄って行く
程なくして、盛大に頭から湯を被る音が聞こえて来るだろう
無論、湯船へと飛び込んだ音、ではなく、手桶で滝行の如く湯を頭から浴びている其れ、だが。)

「……ったく、予定よりも手間掛けさせやがって。
寄り道が多すぎるってんだぜ…。」

(――本当なら、もう少し早く王都に帰って来れて居た筈だが
護衛依頼の主が、行き先を途中でぽんぽんと変えた為に、矢鱈長丁場となった顛末
その分の上乗せ報酬は当然ながら請求したが、すっかり予定が狂ってしまったと
そんな独り言がきっと、時折響いて、届くやも知れぬ)。

アティ・ロップ > 耳尻尾まできっちりと、泡やお湯が入らないように、流すときはきっちりと一度耳をヘタレさせているのは、兎耳であることのちょっとした手間かもしれない。
きっちりとくまなく洗い終え、体に纏わりつく泡の一かけらさえしっかりと流しきれば、一つ身震いする兎。
周りに人がいないからこそ、といった飛沫飛ばしではあるが。
そこまできっちりと汗を流しきれば、あとは湯舟を味わうお楽しみが待っているわけであり。
どこか鼻歌でも零しそうな上機嫌な様子で兎は立ち上がっていくことになるが。

「…ん?」

不意に響く派手な水音は、兎の聴覚でなくても気付くだろう。
元より人気のない湯殿なのだ。
それこそ自分以外の足音も、響き渡るものであれば、潜もうとしない限りわかるものとすらいえるかもしれない。

不意な音に一つ耳をピクリと震わせ。
タオルを片手に兎はヒタヒタと湯舟へと向かい歩を進めていくが。
音の大本は湯舟の傍から響いているのだ。
当然、その音の主の姿はその視界にとらえられることになった。

「おにーさん、おにーさん、洗い場はあっちにあるよ?」

元々混浴の湯殿なのだ。
一応とばかりに、男の姿が見えればタオルを胸元から、なんてことはなく。
腰に軽く撒くだけの状態で、湯に軽く辺り火照った肌も、雫を纏う胸も晒したまま、何やら行水の様なことをしている彼へと一つ声をかけていくことにしたようだ。
湯舟近くでの湯浴びをしているために、もし知らないのならば。
といった気遣い交じりのことなのだろうが。
男が入ってきてもあまり動じないのは、兎の元々の性格のようだ。

グライド > (湯船そばでの行水は、凡そ癖の様な物だ
普段外に出ていれば、風呂を浴びれる事自体少ない
泉や湖、一寸した水場で水浴びをする事ばかりであり
そんな場所には当然ながら、専用の洗い場なぞ存在はしない

暫くして、そんな事をして居る内に響いた声
其れが自分に掛けられた物だと気付くには、少しばかり遅れたが
髪をかき上げ、声のしたほうへと顔を向ければ、此方を見る娘一人を認めて、一寸瞳を瞬かせ。)

「――――……お? 嗚呼、俺様か? ……悪いな、そいつは気付いてなかった。
まぁ良いさ、今度見つけた時は、そっちを使わせて貰うとするぜ。」

(示された先には確かに、洗い場。
なるほど、と余り深く考えていなかった事伝えれば
態々伝えてくれた娘に対して、ありがとうよ、と礼を向けよう
相手と同じくして、此方も腰に軽く布を巻いただけの姿
湯を浴びたことで、可也張り付いている、が、其処は気にも留めず

そうして、汚れや汗は最低限流し終えた所で、湯船を示せば。)

「嬢ちゃんも昼風呂かい? ま、むさ苦しい野郎と一緒だが、勘弁してくれ。」

(湯船へと、風呂の淵を跨いで身を沈めようとしながら、そんな事を
少なくとも、相手の容姿について、何かしら口に出す事は無かったろう
ミレーか否か、ということについては、割合、どうでも良い価値観の持ち主ではあった)。

アティ・ロップ > 湯殿だって完全に安心できるような街といえば否である。
けれども、中々に屈強な体つきを浮かび上がらせる男性は何か悪い気配を向けることもなく。
湯を楽しもうとしている様子であれば、そのまま湯舟に向ける足を止めることはなかったようだ。

「ま、たまたま私がいただけだしね。
他に人もいなければ気にしなくていいと思うけど」

軽く声をかけたものの、厳重注意というつもりでもなかったのだ。
返される言葉に、笑みを乗せて明るく零していけば、兎はそのまま湯舟へと足を延ばしていくのである。
お風呂はゆったりと気ままに楽しむもの。
老若男女問わずであれば、それが同性であってもやはり気にすることもないのだろう。
もっとも、兎も兎で彼がいなければ湯舟で少し泳いだり位、はっちゃけたことをしていたという可能性もあるのだが。

「体を動かした後は…折角空いてるならさっぱりっとね。
こっちこそ、ちょっと毛とかあるけど気にしないでくれるなら、十分かな」

足先で湯舟を一つ、二つ。
突いて温度を確かめれば、中々に丁度良い温度だったようだ。
元々涼しくても寒くはないのだから、真冬の湯舟程体に響くものはなく。
少々温めのお湯のようであれば、ゆっくりと入るのにもちょうどいいようであった。

彼が種族についてとやかく言うこともなく。
その上異性であったとしても、それもまた気にすることもなければ、兎としても気安いものはあったのだろう。
湯舟を楽しむのをお互いに一緒に楽しむとばかりに、やがて足を沈め。
タオルを頭に乗せ直すままに肩まで彼の近くに浸らせていけば、背を壁に預け。
何とも間の抜けた表情で、肌に沁みる湯の温度に身を震わせながら、気の抜けた息を一つ零していくようだ。

グライド > (湯船の中に身を沈めれば、決して狭い湯船ではないにしても
なんとなし、水かさが増したように感じられるやも知れぬ
娘と同じように、湯心地に心地良さそうな声を零しつつ
湯の中で、腰に巻いた布を外して、軽く顔を拭うだろう

時折、規則は守れと厳重注意して来る連中も居るが
其れはそこに規則がある限り、当然というやつであろう
笑って許してくれる相手かどうかは、目を見て判断するしか無い訳だが
少なくとも、この娘は、そう言った細かい相手では無さそうだというのは
とりあえず、その姿を見ていれば何と為しに察せたか。)

「穴場だから、のびのび出来るかと思ってなあ。
嬢ちゃんも、その口なんだろう? ……ま、人が多いと其の分面倒な連中も多いからな。」

(笑って、そんなことを言いながら、湯の中足を延ばす
軽く両足を開いた状態で背をもたれさせれば、すっかりと湯の加減に浸りつつ
隣の娘の様子は、先刻から、何か恥じらう出会ったとか、そう言った気配が微塵も無ければ
気にせぬ相手なのだろうと、此方も気に留める様子はなく

――されど、もし相手が此方へと視線を向けるなら
あるいは、目に留める事は在るやも知れぬ。 ゆらぐ水面の下、取り去られた布地に隠れていた
雄の屹立――それこそ、気が抜けて、ふにゃりとしている其れ、なぞではない
杭の様な威容の形が、其処にあること、を)。

アティ・ロップ > 「そうそう、ミレーに似てるからって…騒ぐ人もいるしね。
単に広く使えるっていうのもあるけど」

湯舟の入り方に気を使っている。
とはいえ、手足や尻尾の毛並みだけはどうにもできないのはご愛敬か。
それでもしっかりと洗ってあれば、湯舟に使って多少動いたところで獣毛が湯に浮かぶこともなく。
耳の間にタオルを乗せるようにして、気が抜き蹴った表情を見せる兎から零れる声は、同じくどこかゆるゆるとした響きを持っているのは気のせいではないかもしれない。

それでも悪意、それこそ殺気などを浮かべる様な相手がいれば湯から飛び出す勢いで飛び跳ね。
構えの一つをとるのだろうが。

「おにーさんも一仕事あとかな?
見た所…肉体仕事っぽい筋肉の付き方してるけど…」

この時間に入りに来るものと言えば、自営業か不定期な雇われか。
夜の仕事かはたまたと、色々と実際に思い当たりはするのだろう。
何せ色々がありすぎる町なのだ。
返していく言葉に合わせるように、時折視線をゆるりと向けてみれば、その刻まれた傷跡に、鍛えられた肉体は湯越でも十分に見て取れ。
自然と戦いなれていることはそれらから感じられたのだろう。
ポツリと世間話でもするように、そんなことを零していく。

「あんまり疲れては…いないみたいだけど」

それともつかれているからこそだろうか。
そうしていれば主張するように目に入る、そそり立つ肉棒。
ともいえる様相に目を一つ瞬かせながらも、ポツリとそんなことを合わせて紡いでいくが。
黄色い声で騒いだりすることもなく、肉体に比例して立派。
とばかりに軽く観察するように視線をしっかりと滑らせていくのは、慣れか動じなさか。

グライド > 「だろうな、此処はそう言うのが根強い国だ。
俺様は生憎、学がない分、そう言った"教育"はからっきしでな
……別に気にすんな、野山の泉なんて、どんなに綺麗でも虫くらいは浮いてるもんだ。」

(其れに比べれば大した事は無い、等と告げては、湯を軽く肩に掛ける
嫌なら個室の風呂にでも入れば良いだけの事、気にしなくて良いと呟いた
初めて利用したにしては綺麗な湯屋、内装も質素ながら悪くない
覚えて置こうと、のんびり次の利用も考えながら、ふと視線を巡らせる
何処かに酒でも、なぞと思ってはみたが、流石にただで置いてはいない、か。)

「……うん? 嗚呼、俺様は傭兵だ。 冒険者紛いな事と兼業ではあるがな。
依頼次第で、色々請け負っちゃ居る。 護衛だとかもな。」

(今回は護衛の依頼だったが、タナール等の戦地へ出向く事も多い
故に冒険者と言うよりは傭兵、其れも、盾兵である事を告げれば
隣からの向けられる視線に、一瞬横目で応えた後。 ――視線がやけに下を向く様に
二度見して、そして、自らの下肢に視線を落として。 ――嗚呼、と。)

「――――……戦地やら依頼やらで暫く気を張ってるとよう
ま、自然とこうなっちまうもんさ。 ま、本能って奴だろうよ。
……なんだ、興味があるなら、別にじっくり見たって構わねぇが。」

(随分と凝視するじゃねぇか、と、きっと笑いながら指摘する。
恥じらうような相手ではないと思ってはいても、軽口めいてから、また少し脚を開くのは
より、相手に見えやすいように、なんておふざけでも在るし
――乗るなら、其れは其れで歓迎という、意志でもあったか)。

アティ・ロップ > 「中々思った以上に野性的っていうか豪快だね。
傭兵っていうのも…なっとくかも」

教育があっても、細かなことは気にしなさそうね気配すら感じられる言葉である。
細かいことを気にし過ぎない、という意味では兎としても気楽なところはあるのだろう。
普段は気ままに思うままに飛び回っていることの多い性格、というのもあるのかもしれないが。
返される言葉にしっかりと納得してしまうのは、やはり予想道理だったからのようだ。

それ程に鍛え上げられていて、傷も刻まれているのに戦いに縁がない。
といった仕事であれば、逆にそれはそれで謎めいていて根掘り葉掘り質問を投げかけていたかもしれないのだが。

「生命の危機に陥った時とかにも、っていうのは聞いたことあるけど…」

リラックスしているのだから逆に緩むのでは、と考えるのは兎も一応雌だからか。
説明をされれば、言葉通りにまじまじと興味のままにしっかり見てしまうのは、堂々とし過ぎていると言われても仕方がないだろう。
相手が見せつけるようにしてくるのだから、というちょっとしたノリに乗っているというところもあったようだ。

「体格も立派だし…おにーさんって、そういう人にも名が知れてたりする?」

この街は食欲性欲睡眠欲、あらゆる欲を満たせる場所は多いのだ。
金銭があればこそというところでもあるが、傭兵をしていればよほど豪遊しなければ、色々な施設を使う余裕位あるかもしれない。
相手の体格や、その豪快さから娼館などでも結構知られてそうとばかりにこぼしたのもまた、興味心からのようであり。
まじまじと観察をさせてもらったうえで、兎は一度身を起こしていくのだ。

温めと言えども、ずっと入っていれば籠る熱をすこし零すように、そのまま湯舟へと向かい足を薦め。
最後に硬さでも確認するように、足先でこつんっと軽くその剛直をつつけば、湯舟のふちへと足をかけ。
足湯のような形へと移行しながら、まだ少しだけ寛ぐようだ。

グライド > 「全部が全部細かく気にしてちゃあ、遣ってられんからな。
気にするべき事なんざ、他に幾らでも在る。」

(豪放だけでは生きて行けぬ、繊細過ぎてはやって行けぬ
傭兵稼業なんて物は、得てしてそう言う物だ。
常に命を危険に晒して居ると言う意味では、確かに娘の言う事にも一理は在りそうか
だが、少なくとも今、この湯船の中で命の危機に、と言う訳はあるまい
命の危機に晒されて居たのは、あくまで依頼の最中。 此れは、余波に過ぎない。)

「……さぁ、そいつは如何だかな。
知り合い連中はそれなりに多いが、名が知られてんのかは気にした事もねぇ。
存外、妙な悪名が広がってるかも知れねぇぜ。 根も葉もない奴がな。」

(別に、歯牙にも掛けぬ連中に、そんな悪評が出回っていても如何でも良い
依頼には関係が無い上に、一寸した箔にもなろう
夢を持った冒険者達とは違い、そんなお行儀が良い仕事じゃあない。
とは言え、こんな砲身では、娼館周りに完全な無名と言う事も無かろう
女遊びをしない清廉潔白さ、とは程遠い自覚はあるのだ。

熱塊へと、相手が足先を触れさせるなら、押し返すような頑健さが伝うだろう
鉄芯の様な硬さとしなやかさを、ほんの僅かだけ伝えた上で
湯船の淵に腰かけた娘の、足先でつつくだけ、なんて悪戯紛いな行為に
可笑しそうに口端を吊り上げ。)

「扱いが随分とひでぇもんだ。 ……ま、ただ一人で湯に浸かるより
嬢ちゃんみたいのを眺めながらって方が、随分贅沢させて貰えてるがな。
……嗚呼、悪い意味じゃあないぜ?」

(お返し、のように、軽く伸ばした片掌が、相手の太腿に触れようとする。
其の肌を叶うなら、湯水と共に、するりと膝元まで撫ぜ降ろして遣ろうとしつつ
されど、もし叶わなければ、深追いはしないだろう
ただ、視線はそのうち、相手の腰の辺りにある兎の尻尾に向けられるやも知れぬ
純粋に、物珍しさから来るものだろう、が)。

アティ・ロップ > 「危険の中に身を置くなら…命あっての物種だもんねぇ。
それに、悪名といっても、指名手配とかされてないなら…気にしても、かな」

ある程度戦いを兎も収めているは、冒険したり何だりしても、身を守れるためである。
例えば裸を見られて恥ずかしがって隙が、なんてことは、命と比べれば恥ずかしさは二の次だろう。
細かく気にし過ぎない、という言葉には兎もどこか納得するようにうなずきを見せていくのだった。

もっとも、悪名悪評に関しては気にしてない以前に、兎は耳にしたことはないのだろう。
彼のような特徴を持つ人の悪評、なんてことを聞いていれば気づかないはずもなく。
娼館回りをしているなんてわけでなければ、興味心から本当に聞いただけだったようだ。

「踏んずけたり、握りしめる場所でもないしね。
見られて減るものじゃないし、ミレーを気にする人はそういうことすら言わないから大丈夫」

手でつかむ以上に、兎の脚力でそっとではなく触れられる方が、人によっては急所なのだから怖さもあるかもしれない。
己の脚力を理解しているからこそ、突くといった悪戯程度でその太さ堅さ、張りつめた剛直ぶりを確かめることにしたのだろう。

見られても減るものではない。
ミレーであれば普通の意味で視線を送らない人もこの街では少なくなければ、彼の言葉を当然悪くこともなく。
肌を振れる手に、温泉によってより決め濃さを増した感触を感じさせながらも、振り払うことはなく。
その撫でていく手を視線で追っていくようだが。

「足の良さには自信がって…ん?
ウサギの尻尾珍しい?
普通にはえてるだけだよ?」

足でつついたのだから、撫でられるくらいはお返しと思っているようである。
けれども視線が、他の種族に比べれば小さく横からでなければ見にくい、兎の尻尾へと向けられれば流石に気づくことになった様だ。
これもまた見られても減るものではない。
とばかりに、座る位置をずらし。
彼の方に縁によって押される尻肉と、背骨から繋がる様に、腰からピョコっと映える尻尾。
半ば背を向けるような様子で見せるようにしていくが。

グライド > 「傭兵なんてのは、生き延びてこそだ
ま、其の為なら卑怯と言われる事でもするがな。
戦場じゃ其の位は当然の事さ、其れで指名手配だのと言われてもよう?」

(逆に言えば、街中でそんな事をする必要はない
無論、悪意に対して、悪意を返さぬ理由など無い、が
其れは其れとして、憲兵やら騎士やらに目を付けられるのは面倒この上ない
生憎ながら、兎娘のことについては、此方は何も知らぬが
悪意ある者、とは、流石に見て取る方が難しかろう。)

「そう言う性癖の奴も居るっちゃ居るがなぁ、ま、俺様は違うが。
随分と肝が据わってるもんだ。 ……しかし、随分鍛えられてんな。
嬢ちゃんも、割合荒事が行ける口、って所か。」

(――脚へ触れる指先は、初めの悪戯めいた撫で方から続いて
思ったよりも鍛えられた、無駄のない肉付きに、何処か感心した様な触れ方に代わる
兎だからなのか、或いは娘の職業故か、いずれにしても
軟な男では、蹴り飛ばされれば堪った物ではないだろう。

そうして次に指が向かうのは、娘の腰裏、尻尾の位置
微かに飛び出した兎の其れは、獣人であるならば、当然と言えば当然なのかも知れぬが
目前間近で眺める、なんて機会が多いわけでも無ければ
珍し気に触れて、其の尻尾を軽く捉え、根元の辺りを軽く捏ねてみようとするだろう
骨の付き方や、弾力と言った部分を確かめるため、ではあったが
背骨へと直に繋がって居るなら、尾てい骨を刺激されるのと同義かも知れず。)

「……いや、良く酒場やら娼館やらで、飾りで付けてるのは見るんだがよ。
へぇ、こんな風にくっついてるもんなのか。」

(ふに、くに、触れて、擦って、軽く捏ねて
時折指が尻肉の肌に触れる感触と、尻孔へ近い部分を掠める気配を伝えながら
拒まなければ、暫しの間、触れ続ける指が、悪戯ともつかぬ動きで)。

アティ・ロップ > 「お仕事を差し引いても、素直にお命頂戴、なんてさせてあげる理由はそうそうあいもんね。
明らかにそういう感じじゃないし…冒険はしてるから逃げの一手くらいには自信がね」

命の取り合いで、人質などはまだしも、多少のことで卑怯も何もなく。
勝たねばならないというのはわからなくもないのだろう。
ウサギの場合は大抵の相手は、魔物やトラップだったりするわけだが。
同じように素直にやられてあげる。
何てことはできないわけであれば、種族に足して特徴を伸ばすように、鍛えられた体はその一環といえるようだ。

そのためか、普通に鍛えているところを見る。
といった触り方で感想を零していく様子を見れば、兎は蹴り上げる様なことをしたりはしないようである。
湯舟を蹴り上げるだけでも、中々な水柱は立てられる脚力だから猶更なのだろうが。

「ん…ひっ…弱点って程じゃないけど、強くつかんだら…良くないからね」

見せているのだから触れられるくらいは既に予想はしていたようである。
知らないものに興味を向ける。
それは人なら往々にしてあるものであり、兎としてもそういう楽しさを求めて、遺跡などに潜っているのだから当然か。
もっともしっかりと握られれば腰砕けになるような種族などもいるのが尻尾である。
根元付近を掴まれたりすれば、ビリビリと背筋に刺激は走るのだろう。
ピクっと背筋を耳を震わせながらも、息を一つ整えるように零して注意を促していくが。

「骨の延長だからね…ほどほどに、だよ?」

まん丸のようで、少しだけヘラの様な平べったさがあり。
中にはちゃんと尾椎が通って、骨と繋がっているのがそこまでしっかりと触れていれば感触でも伺えるだろう。
暫く触れるままに、ピクピクと身を震わせ続けながらも、明らかな悪戯。
といったことをしなければ振り払うこともなく。
臀部から尻孔付近の付け根全体まで、近く指が振れれば、同じく肉付きと吸い付くような肌質をその手に伝えることになった様だ。

そのまま揉み続けていれば、兎は一度手から尻尾を満足したか確かめるように、腰を引き。
後ろからプクリとピンクを覗かせる、恥丘が見えた状態でも尻尾を手から戻そうとするようだが。

グライド > 「そう言う事だ。 まぁ、遣られた敵さんに賞金くらいは掛けられてると
其れこそ傭兵としては箔が付くって奴なんだがなぁ。」

(魔族相手か、或いは周辺の敵国か。 戦場で相対した相手からの指名手配であれば
納得もするし、歓迎すべき所では在るのだろう。
掛けられた賞金が多ければ、其れは己が知名度にも繋がる
掛けられた金額と名声とは、等価値と言える筈だ。
無論、其の分戦の際は、より狙われる事に繋がる訳だが――

盾兵、という其の役割上、狙われる事は寧ろ、好都合でもあるのだ。

娘の場合、例え逃走の為の脚力でも、蹴りには転用出来る筈だ
成程なぁ、なぞとつぶやきながらに、鍛えられた其の脚に視線を落とし
そして、其の延長で眺める尻尾の方には、悪戯とはまた違う利を得る。
やはり、感覚器官としては鋭敏であるらしい其の場所を、次第に掌で握る様にしては
掌全体で、もみ込むようにして、"刺激する"
娘の注意を受けながら、良くない、であるとか、ほどほどに、であるとか
そう言った行為が要するに、"弱い"のだと解釈すれば

――娘が、逃れる様に腰を浮かせた刹那に。
先刻までよりも少々強めに、きゅう、と尻尾を握りしめる
痛みを与える為でも、痛めつける為でもない、加減をした物では在るが
叶うなら其の儘、今度はきっと、其の時ばかりは悪戯めいて
其の突起を、濡れた掌で、扱く様に。)

「――――……あんま強く引っ張ると、抜けちまうって言うからなぁ。
そんな事はしねぇさ、判ってる。」

(――もう片方の腕が、娘の腰元を支える様に、回される。
もし力が抜けて崩れても、湯船に沈む事は無いだろう
純粋な興味故、には違いない。 ただ、其の方向が、先刻までと違うだけ)。

アティ・ロップ > 「場合によってはそれって、相手からの逆恨みまみ…んひぁ!?」

お互いに理由はあれど、お互いに命を狙ったのだから潔く。
何てことにはそうそうならないのが世の常だろう。
負けた相手が次こそはと牙を磨くだけではなく。
生き残っていれば賞金を懸けて周りからも攻めてくる。
堂々巡りにもなりかねない部分を持っていれば、戦うことを生業にすることの大変さの一端ともいえるものを、垣間見えたようだ。
もっとも彼は、それが獲物集めや狙われること自体丁度いい

と考えているまでは、戦いを生業にはしていない兎には推測できなかったようだ。

そんな風に会話を続けていれば、そろそろ姿勢を変えようとしたところで、しっかりと握りしめる。
掴むではなく、今までのように探るわけでもなく。
加減した上でしっかりと尻尾を捉えるという掴み方をされれば、流石に驚くことになった様だ。
痛みはなくとも、今までと強さが違うのだ。
手の湿気で改めて毛並みから雫を滴らせつつ、素っ頓狂な声を上げ。
今まで以上に背筋をピンっと張る様に動いてしまうことになったようである。

「こ、こらぁ!
それでも十分…不意打ちじゃ威力あるんだからね?」

そのまま崩れ落ちて、膝でも淵に強打。
ということは、支えるように回された手のおかげで、力が抜けても大丈夫だったようだ。
とはいえ、どう見ても悪戯心方面の興味であることは、注意を聞いたうえでであれば、予測はできるのだろう。
蹴り上げたり反撃にはでないものの、多少文句を言うように、彼へと軽く支えられたまま肩越しに顔を向けて零していくが。

「耳とか尻尾は、そのくらいでも結構響くんだからね?
戦いのときに…弱点として狙うのはありだけど」

感覚器官とはえてして他より鈍いということはまずないのだ。
悪戯した子供を叱るかのように、一息つけば、多少苦笑交じりで改めて重ねて注意をしていくが。
体格や見た目でみれば、そんな様子は少々状況を知らぬものが見れば奇妙にもみえるかもしれない。

グライド > (随分と素っ頓狂な声が響いた
弱いと判って居る尻尾を敢えて掴んだのだから、当然か
崩れ落ちそうになる身を、片腕で支えてやりながら、咎める様な目が向けば
くつくつと、やはり悪戯めいた笑みを返した事だろう。

案の定、相手の唇からこぼれたのは、弱いという事実。
ただ、あっさり自らの弱点を告白してしまう事には、少々警戒心が足りぬなぞと思いながら
――そこについては、あえて指摘はしてやらぬのだ。)

「一度掴んじまえば、大分有利っつー事だな?
ま、何の機会に生かせるかは知らんが、良く覚えて置くとするさ。
……ところで、力が抜けるのか? それとも気持ち良いのか?」

(湯船から、軽く身を起して、肩越しの会話を交わしつつ
最後に、戯言交じりで直球に問いかけるのは、尻尾の刺激は、快楽か、否か。
最後に、するりと根元からくすぐってやりつつ、されど、ゆっくりと掌を離せば
不意打ちによって力の抜けた其の身を、暫しの間は、支えていてやる事だろう。

悪戯は此処まで。 何せ、あんまりにも遣って居たら、互いにのぼせて仕舞う。
果たして、この邂逅が、この後何処まで続くかは判らないが
とりあえず、この湯屋を出るまでは、悪戯に責任、もとい、詫びも兼ねて
勝手に面倒を見てやろうとする筈だ――)。

アティ・ロップ > 危険な相手だったり、悪意がある相手。
そんな状況であれば耐えたり、弱点であることを細かには零さないのは間違いないだろう。
けれども、尻尾を触ってみたいと触れていたからこそ、注意をするように教えることにしたという部分があるようだ。

戦いに身を置くものからしたら、それは不用心。
というのは全く理解してはいないわけではないようだが。
フレンドリーともいえる気質が、それは彼に対して二の次という考えにしているようだ。

「…命がかかってる…時はその限りではないだろうけど…。
そこは…触り方次第、かな」

それでも一瞬の虚を突くのには十分すぎるのである。
掴まれても耐えるということに意識を割く。
それだけで戦いの場にあっては、中々効果的なのは間違いないだろう。
それこと全力で握ったり引っ張れば、激痛となるのは確実なようだ。

もっとも弄り方次第では普通にリラックスできる心地よさから、快楽的な刺激にまでなる側面もあり。
支えられるままに兎は、加減次第とそれだけ範囲が広いことを大雑把に零していくことにしたようである。
細かく教えたら教えたで、技術をいろいろ学ぶために試したりしそうな気配もあったのだろう。
のぼせるという状況でなければそれもまた一興、という側面もあったかもしれないが。

話が弾むままに、彼が何かを返そうとするなら、兎は湯屋にいる間は連れまわし。
簡単な安い飲み物などくらいは、おごってもらったりはしていったようである。

ご案内:「湯殿」からグライドさんが去りました。
ご案内:「湯殿」からアティ・ロップさんが去りました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」に影時さんが現れました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」にジギィさんが現れました。
影時 > 対する忍者の荷物も目を見張るような、大荷物ではない。
最悪の場合は現地調達は見込んだこともあるが、荷物の多くはコンパクトな非常食や携行食だ。
籠に放り込んだ斧は戦闘のためではなく、伐採のためのもの。
持参した酒と干し肉は、手頃な樹が見つかれば伐採前にこの地の神や精霊に捧げるつもりとして用意したが――はてさて。

「……あー、あるけぇ、に、て、てろす? そういう呼び方じゃァなかったな。
 俺が聞いたこの土地の発音だと、スプルースと呼ばれる奴だ。

 立ち枯れとかなさそうなのはいいことだが、それはそれで厄介だな。
 俺の故郷の風習に倣って捧げ物は用意してきたつもりだが、ダメそうだが――……ン? つまり、俺たちが手ぇ下さなきゃいいのか?」

精霊語か己も知らぬ古語か。
かろうじて聞き取れた発音に舌が絡まりそうな感覚を得つつ、依頼主の使いから可能であればと提示された樹の名前を口に出す。
常緑の針葉樹であり、良材が得られるとされる樹の種だ。ほかに候補はいくつか提示されたが、できる限りクライアントの意向は優先したい。
そのために考えるべきことは、目的の樹を見つけた後に如何にして伐採の手立てをつけるかである。
エルフの言いぐさ、言葉を考えれば、ルールに抵触する行為はいずれも邪魔が入る恐れが高いように聞こえる。
では、樹を押し倒しかねない魔物のどさくさで折れ倒れたとすれば、この場合は問題にはならないのだろうか。それを問うてみつつ、行き着く先を見る。
小川のせせらぎが流れる谷が見える。その淵に足を止め、応えを一瞬待てば続く仕草に微かに目を見開き、唇の端を枉げよう。

「……――そう来やがったか」

このエルフが、素直に己の思惑に乗るかと思えば違う。如何にも“らしい”という感慨とともに、口元が苦笑めいた形に歪むのを自覚する。
紐を結わえた矢を射放てれば、何処かの木に引っかかったのだろう。紐の張り加減を確かめ、勢いをつけて走り出せば危なげなくブランコめいた動きで向こう側へと渡って行ってしまう。
残る己は、向こうに渡ってはピースサインすら見せる姿に肩をすくめて少し考える。
とりあえず紐は回収されずに残っているが、問題は引っかかった先である。エルフ一人の目方を支えても危なげないとは思うが、諸々担いだ己の場合はどうだろうか。
全身甲冑フル装備は、重すぎてこのような野外活動にはまったく向かない。とはいえ、自慢するまでもなく己はエルフよりも間違いなく重いだろう。

(……ふむ)

念のために、と。右腰に束ねて下げた細い縄を確かめる。先端に鉤を付けたそれは、いわゆるフック付きロープという奴である。捕り物にもよし、高所移動にもよしと色々使える道具である。
回収せずに残してもらっているのであれば、少なからず使い出はあることだろう。
万一のための備えを確かめたうえで、二歩、三歩と後ろに下がる。そのあとに勢いをつけて走り出し、跳躍。
背にした荷物の重みを意に介することなく虚空を渡り、伸ばす左手はぶら下がった紐と一瞬掴む。その支えを手掛かりに身をしならせて、足音低く対岸にわたって見せよう。

ジギィ > 「スプルース?
 あー んー 確か、精油でそんなの見た気がするな。 名前がちょっと違った気がするけど。
 こっちの言葉、大体覚えたけど固有名詞はまだ一致しなくてさー
 
 捧げものはその辺りの精霊に依って内容変わるからねー 音楽だったり、コイバナだったり、髪の毛ってのもあったな。 あ、でもお酒は結構好きなの多いかも。
 あんまり力が強いのが相手だと美女とかいわれたりするけど――――…」

世間話のように雑談を姦しくしつつ、最後、彼が言った『俺たちが手を下さなければ』のくだりには含み笑いをして返す。肯定のようでもあり、そもそも不可能な方法だというようでもあり。

彼の親切な申し出にも関わらず、さっさと己独り渡り終わったエルフはピースサインを送った後対岸で仁王立ちで彼を待つ。お手並み拝見、のつもりもあるし、己を抱えて渡ろうとしたくらいだ、問題など無いのだろう。

「お―――― さーすがー」

着地地点もよくよくとらえたもの。暗い森の中、あちこち根太が這っている地面で音立てずに降り立てる場所は中々少ない。
見る眼があった、と笑いながら小さく拍手を送って、エルフはくるりと彼に背を向ける。

「さ、てー
 この先少し行ったらちょっと上り坂になって行くから。 多分お目当てはそこ登った後の下りの斜面か、続く登りの斜面かどっちかにあると思うな。
 取り敢えず下りの斜面で見つからなかったら、谷に沿って暫く歩くのがいいかも」

このさき、と言って指を指す。獣道さえ見えず、思い思い様々な樹々が立ち並び、それでいてどれもが枯れずに育っているのは森を見慣れたものからすると一種異様な光景だったかもしれない。
日光は天井高い樹の葉を透かして淡く、薄暗い。
その光の中でも、蝶があちこちで舞っているのが確認できるだろう。

エルフは一度彼を振り返り、口元のマフラーを一瞬引き下げて笑いかけて見せてから歩き出す。速度は決して早くない。下栄えを掻き分ける音が、鳥の声だけが通っていた森の中に響く。

影時 > 「ああ、スプルースという奴。精油になる……のかねぇ。
 ジギィ。お前さん、リュート弾いたことはあるか? 弾いたことがあンなら、見たこともあるかもしれねぇな。あれの表材に使われてんだそうだ。

 ……音楽はともかく、コイバナはネタに詰まるから勘弁願いてェな。
 流石に魔性がかかった樹まではいらねえや。良材になりそうな樹なだけでいいんだが」

精油までは、流石に己も少々疎い。
流行りを漁れば香水の調合に用いる草花や、香油の類を集めてほしいという採取ではなく、生産者向けの依頼の方が目立つ位か。
自分で掘りに行って、採掘した鉱物を調合するなら兎も角、精油をまとまった量で納品出来るのは、それなりの施設を自前で用意していられる者位か。
物にピンとこない様子であれば、実物の例を挙げる方が恐らく想起はしやすいことだろう。
しかしながら、含み笑いめいた仕草には肩をすくめる。目当ての良材を狙えそうな樹がどれだけあるかどうか、にも寄るのかもしれないが。

「ま――この位は、な?」

さて、対岸に跳び移ってみせればそこに仁王立ちめいた姿のエルフが待っている。
太い根が複雑に入り組んだり、腐った落ち葉が堆積している場所などは、ともすれば足場を誤るだけで勢いを殺せないこともありうる。
わずかな光の入り具合と、良さそうな足の踏み場を見出すのは培った経験が不可欠だ。
土地が違っても、その感覚はかなり似ることだろう。拍手を送る姿に口元を覆う黒い覆面の下の唇を歪め、目尻を下げて笑う。

「心得た。何にしてもまず、目星はつけておきたい処だ。当て所なくさ迷い歩くのは、道連れがあっても辛い」

“この先”と云うコトバとともに、指さされる方角を眺めやる。
一見して、不可思議なところだ。特定の樹種に偏ることなく様々に立ち並ぶ樹木は、いずれも枯れずによく育っている。
まるで獣すら寄り付かないのは樹にとっての楽園、なのだろうか?
足の踏み場となりそうな獣道のような、踏み均した痕跡をこの目ですら伺えない。薄暗い木漏れ日の中、蝶舞う姿を見やっては先ゆく姿に頷く。
そうして、そのあとに続く。この場合はおそらく、弁えている者に続く方がきっと正解だ。

――そうして遠く、遠く。ざわざわと音が動く。風景そのものが続くように。追い縋るように蠢く。

ジギィ > 「リュート?あるよ! そうなんだ。…私が触ったのはツギハギの素材だったかな。こっちってあーいう形の楽器多いよね。バラライカとかマンドリンとか…ヴァイオリン?

 えーっ 折角この森に来たんだから、魔性のものを持って帰ろうよ。美人のドライアドが宿ってるのと、ひと時の恋に落ちてみるのもいいかもよ?」

マフラーの下けらっと笑い声を上げて、笑い含みの流し目をちらりと彼に送る。きっと渋面を返してくれるだろう。
薄暗いというのか淡い光が落ちているというのか、どちらとも形容できる森の中を進む。足裏には根太を確かめ、振り落ちた小枝や葉でつくられた土を確かめる。何れも踏み固められてはおらず、ともすればふわふわとした印象さえ受けるだろう。
それでも野に敏感なら気付くはずだ。進む先はゆっくりと上り坂になっている。物慣れない侵入者なら、いつの間にか息が上がっているのに不思議に思うほどの微かな角度。

「―――たしか、あの藪の向こうが本格的に斜面になってる筈…」

エルフが再び前方を指す。特徴的な樹影で薄明りにも解る、茨の樹の繁みだ。低く立ち込めるように広がったそこは、かなり身体を屈めないと通り抜けられないだろう。――――或いは飛び越えることも可能かもしれないが、向こう側が見通せない限りはお薦めできない選択だ。

「んん… カゲトキさん、荷物引っ掛かるかも」

エルフは連れを振り返って、少し首を傾げる。
はいつくばって漸く通れそうなそこは、荷物を背負ったままでは抜けるに難いように思えた――――ので

「ちょっとまって…」

そう言ってエルフが取り出したのは細い棒。長さは掌よりも少し長いくらいだろうか。
エルフはマフラーを引き下げてそれを横に唇にあてがうと――――透き通った音が響く。風の音に似ているけれど、ほんの少し高く。
茨をずっと眺めていたならその間、茨の樹影が蠢くのを確認できただろう


不図その音は途切れ、エルフは笛を唇に当てた恰好のまま、眉を曇らせて長耳を揺らす。

「……ねえ、 何か聞こえてこない?」

振り返らないまま、視線を辺りに巡らせて
音が近付いて来そうならば、段々と腰を落として…

影時 > 「あンなら話は早ぇな。――あれのいっとう高い奴やら、イイ奴はわりとそうらしい。音が違うんだそうだ。
 ヴァイオリンはナリは似てるが、弾き方は違わねぇかな。

 ……どれも弦を弾いて鳴らすのは変わらんが、音の緩急や響かせ方が違うのが形の違いに出てンだろう。
 魔性ってもな。お前、美人な木霊が宿ってるにしても……材木抱えて、抱いて寝ろとか流石に無ぇぞ。抱くならお前がいいや」

ご期待通りの渋面は、きっと覆面越しにもありありと向こうに見えたことだろう。
肉感たっぷりの美女が付いてくるなら兎も角、依り代が切り出した丸太や製材した材木を抱き枕にする図は、流石につらい。
代償や何やらは兎も角、持ち帰り方が非常に問題が過ぎる気がしてならない。
薄暗いとはいえ、少なからず光が漏れていれば視界を確保するのには困らない。
どちらかと云えば、足の踏み場が困る。堆積した腐葉土めいた土壌は、湿り気が強かったら泥濘と同義だ。

履物の底には鉄板の類はない。厚く重ねた魔獣の革は足音を殺すためではなく、地面の状態を感じるためのものでもある。

「……ああ、道理で少しずつ上がっているような気がしたワケだ」

そう、それだ。足元の危うさ加減は、踏みしめている大地が傾いているか否かを計りがたくする。
垂直に立てる、あるいは吊るせるものがあれば、錘をつけた糸を垂らすと傾いているかどうかを計れるかもしれない。
しかしながらこの場合、その基準点となるものを用意しがたい。頼りになるのは、体感の感覚だ。
気づかないものであれば、あるいは教えてもらえなければ、知らずのうちに体力をさらに消耗していたか。
行き先を示されれば、さらに見えてくるものに眉を顰める。

「十中八九引っかりそうだ。荷物を下して、押しながら前に行く方が……ン?」

茨の茂みである。侵入者を寄せ付けない有様は、まるで騎兵の足を妨げる逆茂木めいた風情だ。
斬って払うは恐らく御法度。そこで取り出したるエルフの道具は、笛か?
風の音めいた音が高く、涼やかに響けば注視する茂みが蠢きを見せる中、がさり、ざわり、と。音がする。軋みが聞こえてくる。

「……おいおい」

この場は薄暗いが、決して全く光がないわけではなかった。それが一層陰って影を落とす。
影を落とすのは高く、茂っている枝葉があるからだ。問題はその枝葉がまるで生き物のように蠢いていること、か。
太根が張った地面をめくり返すように、四方に広がる蔦めいた、蛇めいた根張りが奔る。
それが己の足元まで這い寄ってくるのを察すれば、エルフが居るほうまで跳んで避ける。

緑の臭いが、濃くなる。淀みめいたものさえ感じるかの如く。