2020/10/02 のログ
ご案内:「設定自由部屋3」にマレクさんが現れました。
マレク > 【お約束につき待機いたします】
ご案内:「設定自由部屋3」にシンディ・オーネさんが現れました。
シンディ・オーネ > 本業冒険者を夢見なくはないと言うマレクがそれをしないのは、やはり貴族だからか。
そんな事を思いながら踏み出して――

「――っ!?」

しなる渡し板の感触にビクっとなった。
木製とは違う何かだろうかと踏みしめつつ、そろりそろり前進する。
天井に、底にと方々へランタンを翳し、足りないようであれば…

「…ちょっと、明るくするわよ。 …ラー―――…」

らー だか あー だか、発声練習のように声を上げ、魔術の光源を背後に出現させる。
天井なり底なりを見通そうとするが、スポットライト程度の光ではそれでもまだ足りないかもしれない。
息の続くだけ周囲を照らし、声が途切れればかき消える。

やがて渡り切り円盤に足をかければ、唸り動き出すその円盤。
思わず飛び退きそうになる身体を、朽ちかけた柵を握って押さえ。

「生きてるのか…!」

鳴り響く歯車の音、窪んで形作られる階段に目を見張った。

「――大丈夫! 階段が開いて、下りの。
 これは、下って帰って来たら何か振ってくるのかしらね。」

大丈夫そうよとマレクを振り返りながら。
案内板?をマレクが読み解いたところではそんな感じだが、なぜ帰りに?とやはり不安げに天井を仰いだ。

マレク > 「そうはいっても、予備のカンテラは……おお、これは……中々……」

歌手の歌い出しに似た声音に口を閉じた男は、続いて現れた光源に感嘆の声を上げる。音声を媒体にした魔術という説明で呑み込めなかったものが、一回の魔術行使で腑に落ちた。

そして、開く下層への入り口。生きているのかという彼女の言葉に頷いた後、頷きだけじゃ伝わらないと気付き慌てて声を上げる。

「っ……はい。となると、ゴーレムで入れなかった理由が想像できます。この蓋は、人間に反応するように出来ているのでしょう」

シンディの後を追ってやってきた男が自分と彼女を繋ぐロープを解きつつ、口を開けた下層の螺旋階段に瞳型の魔道具を向けた。

「……此処からも、私が先行します。今度は、戦闘に長けた貴女に背後をお任せする為です。先程は冗談半分でしたが……よろしく、お願いします」

何か降ってくるというシンディの読みには説得力があった。笑みひとつなく彼女に頷いた後、男は魔道具を傍らに浮かべて遺跡下層部へ降り始める。

柱型の施設の中心を螺旋階段が貫く形となっており、中心の階段以外は視界が劣悪。カンテラを持つ腕を伸ばしても、照らせる範囲はたかが知れていた。

シンディ・オーネ > 「見えないか、そう見える真っ黒な素材か…」

闇の向こうが気にはなるが、そのためにどの程度の消耗が許されるのか。
…やはりじっくり調査を進めるべきではないかと思うものの、優先順位はあり、
今回は前進優先と納得すれば、手の届かない周囲より前へ目を向ける。

「何のために、かしらね。」

追って来たマレクに、人ないし生物だけに反応するような大掛かりな仕組みを何故必要としたのかと。
先行してくれるのはもう止めないが、向けられる笑みには首を傾げた。

「何かに襲われる、なんて事も、上の仕掛けを思えばどうでしょう?
 手順を踏まない侵入者を排除するような装置はあるかもしれないけど――
 ああでも、風が、きてるのね。」

原生生物やら魔物の類が侵入するような事は無いのでは、
そして案内板のあるような施設なら、侵入者を迎撃とかいうノリでもないのでは、
そんな期待を口にするけれど、奥から吹き上げて来る涼しい空気は、
あるいは別に出入口が空いているのかもしれないとも思わせる。

螺旋の先は照らしたところで見えない。
何か適当に投げ込んでみようかとも思うけれど、先行に任せてせめてランタンを掲げておこう。

「案内板は、何かに降られた人間の頭上に記号が付いてた。
 …あれは、浴びろという事かしら? その何かを浴びておかないと危険という事…?」

消毒的な何かだと考えれば、現在汚染中なのかもしれない。
気のせいか喉がいがらっぽい気がして、ううんと咳払い。

マレク > 「かなり奥行がある、ということでしょうね」

巨大な円盤と比べると、今下っている階段はかなり小さい。光が届かないほど広大な場所、というのが男の推測だった。

そしてある程度階段を降りると、広場に出た。まだまだ下へと降りられるが、浅い場所から調べるべきだろう。カンテラを持つ腕をなるべく前方に突き出し、ゆっくりと進む。

すると、広々とした部屋は沢山の薄い壁で仕切られているということが分かるだろう。遺跡の下層部は、縦に長い無数の小部屋で構成されていた。男はその1つに灯りを近づけて――

「うあっ!?」

普段の男らしからぬ狼狽した声を上げ、後ずさった。余りに無防備だったので、シンディとの距離が近ければぶつかってしまうだろう。と同時に、腹に来る低音が響き渡って壁と天井が発光し、室内の全貌が明らかになった。カンテラを下ろした男が呻く。

「……シンディさんは、下層部は何かの収納かと仰いましたね。加工施設か、とも。よい勘を……されていた」

呟くように言う男の前には、無数の小部屋が1つ。そこには、黒ずんだ人が押し込められていた。小部屋の大きさを考えれば、立つかしゃがむかしか出来ない場所。

その1部屋に1人ずつ、真っ黒に変色した人体が収められていた。滑らかな建材を内臓のようと評したのは誰だったか。黒化した人体は、例外なく壁もしくは床にへばりついており、あたかも胃の中で溶けかかっているかのようだった。

シンディ・オーネ > 「下った分、上るのね。」

それで音を上げたりはしないが、気を紛らわせるようにぼやき。
広場へ出れば、一応段数とか走り書きして後に続こう。

「?……っな、何っ!?」

その構造にはてなとどういった場所なのかを悩み。
マレクがらしくない声を上げると、驚き身構える。先に言われた通り3歩は距離を空けていれば、ぶつかりはしなかった。
咄嗟に防御的な魔術の構成を編むが―― 低音と発光。
その仕掛けには歓迎されているようだと感じたけれど。

「……。
 アレかしら、ほらシェンヤンの薬学。
 こんな感じになってるトカゲとかをクスリにしてるの見た事あるわ。」

何かがこれを押し込んで加工した?
ただの収容所ではなさそうだが拘束の有無は等、しげしげと眺めて動じないのは、
もうマレクが驚いてくれていて、ここに並ぶ推定人の死体がフレッシュではないからか。

「…私達と同じヒトなのかしら。
 この施設が建造された当初の生き物…?
 持ち主が変わって用途の変わる遺跡も珍しくないけど…」

印象としては消化だが、建物に? …動く者はいないだろうなと、周囲へ視線を戻そう。

マレク > 「ああ……やはり、シェンヤンにはお詳しいのですね」

初対面では帝国人でないとは聞いていたが、繋がりはあるんだろうか。シンディの顔立ち、肌の色を見遣った男が深呼吸して落ち着きを取り戻し、周囲の物に目をやった。魔道具で撮影させた階段傍のプレートを読む。

「指導……罪人……集団……と、書いてあります。ここは収納であり、加工所でもあり。気味が悪いと思うのは、彼らに拘束された形跡がないことです。鎖や、縄……それが無くとも、押さえつけられていたような姿勢ではない」

シンディに敵を警戒して貰っている傍ら、階段脇の収納棚を覗き込む。太いペンのような物体が5つ並んでいたのを手に取った。その後、棚の傍でひび割れた建材を一かけら摘み上げ、予め用意しておいた小瓶に入れる。

「……此処へ来るまでにもう3つ、正体不明の存在に出くわしました。今回は引き返すとしましょうか。手土産も出来たことですし」

棚で見つけたものと、建材の破片を女性に見せる。未踏査地域への初調査だ。欲をかいてどんどん進み、事故が起きてから焦っても遅い。上層、下層両方に足を踏み入れたのだから、成果としても充分だろう。
上層にいたころは撤退を提案したシンディにかぶりを振ったが、今度は男の方から引き上げるよう提案して。

シンディ・オーネ > 「残念、それを見たのは最近、メグマールで。
 シェンヤンに行った事はありません。少なくとも覚えてはいない。
 物心つく頃には養父と地方村の… ええと、知っていますかゾス村の方で――」

ざっと故郷の地理を説明してみるが、これといって特色の無い、地図から消えてもあまり気付かれなさそうな村である。

マレクが読み上げてくれる単語には、なるほどそれも教育機関かと頷いた。

「…指導、にしては後戻りの出来ないところまで行っていそうだけど。
 ストレートに人体実験していましたの方が分かりやすい。」

でもそう単純ではないのだろうなと、これまで原型を留めている死体を見やる。

「昏睡させて運び入れるなら拘束の必要は無いけど、
 眠らせっ放しで死ぬまで放置じゃ指導も何も――
 …あ! コレ、一体運んでみましょうか、上のプレート、円盤で振る雨にコイツを当てれば
 なんか干物みたいな感じで生き返るのかも!」

私気付いちゃった!みたいな感じで言うが、この床や壁にへばりついてる感じの死体を引っぺがして運ぶのは骨が折れそうだ。
マントをタンカにして… などと考えてみるけれど、マレクが引き返そうと言ってくれれば、
死体に手を出すのはその辺の色々が分かってからでも遅くはないかなと思う。

「せっかく降りてきたのに少し惜しいけど…
 このまま長居して、へばりつきたくなってきても嫌だし。」

戻りましょうと同意し、物品回収は任せる姿勢。

マレク > 「ゾス村の方となると、帝国に近いとも言えませんね」

探索中だが、シンディの身の上話を聞けば声を落として返す。シェンヤンの人間ではないというのは確かかな、などと考えた。

「……蘇らせたとして、私達に協力してくれるでしょうか。最低でも、襲い掛かってこなければそれだけで御の字ですが」

苦笑混じりに言うものの、確かに魅力的な提案だ。しかしどうやって壁や床から引き離すか、というのは分からない。物の回収を任されれば頷いて、バックパックに詰め込んだ。そして降りてきた階段を上って、下層部の入り口まで戻ってきたその時。

「……何だ!?」

円盤に足を乗せた次の瞬間、回転砥石になまくらな剣を押し付けたような不快な音が辺りに響き渡る。真上で別の異音が上がったが、特に何か降ってくる様子はない。

何かがやってきたのは、遺跡の上層部から。輪状の施設からだった。内壁の各部が開いて、大人の男が一抱えほどもあろう真鍮色の球が3つ飛び出して巨大な円盤に乗る。その上半分が割れて伸び上がり、人型の上半身になった。

同時にくぐもった音が上がって、先程通った渡し板が輪状の建物へ引っ込もうと動く。だが故障しているからか、小刻みに前後するばかりだった。

「これは……先史文明のゴーレムです! どうやら彼らの役割は侵入者を撃退するのではなく……」

下層にいた者を、出さないため。後半の言葉を飲み込んだ男は、球体の下半身を持つ敵を見渡しながら二振りの剣を抜き放った。