2020/08/30 のログ
ご案内:「しゃぶり尽くされた遺跡」にシンディ・オーネさんが現れました。
ご案内:「しゃぶり尽くされた遺跡」にレギオンさんが現れました。
シンディ・オーネ > 遺跡群の一つ、かつて魔導機械の発掘されたこの場所は、既に盗掘の限りを尽くされ今では誰も見向きもしない。
それだけに一部の治安維持機関からはがらんどうの遺構に何か『別のもの』が居を構える可能性が警戒されているが、
今のところそれらの危惧が現実になったと裏付けるような事は何も確認されていなかった。

そんな場所についての依頼が冒険者ギルドに寄せられる。
依頼主は魔術鉱石を研究する学者。
内容はこの遺跡の随所にまだ残されていると思われる『使用済み魔術鉱石』の回収だ。
年代やら型式やら何やらの都合で無価値と目されている『燃料』の残骸だが、
学者にとっては太古の電池的な何かがどのように消耗したかを検証するのに意味があるとか何とか。

――そういう依頼を受けて、一人遺跡に潜っている。
ちょっと気まずいお別れになったノウブルを誘おうかとも思ったけれど、
既に探索の限りを尽くされているとされるこんな場所こそ二人で挑む必要なし。

現物の回収に対して報酬が支払われるという形式は他の冒険者との競合が怖いけれど、
その金額もパッとしないので、あまり心配する必要は無さそうだった。

ステッパーズ遺跡にすら翻弄される初心者が、遺跡という場所に慣れるには丁度良いかもしれない。
それに魔術の素質として生まれついて魔力を感知できる自分であれば、
その技能が無い者よりもスムーズに魔術鉱石を発見できるのではないか。
魔術鉱石と言っても出がらしだそうで、アドバンテージが本当にあるかも定かでないが…

「――ああ、アレね。」

冒険者向けのゴツイランタンに照らされる廃墟の一室、
ぱっと見た限りで四方向に入り口のある講堂のような場所、
その壇上の奥に当たる壁面の向こうに魔力を感知して、一人きりだというのにホッとした声を漏らした。
本当にソレが魔術鉱石なのかはまだ分からないが、オリエンテーション的にもそうだろうと当たりを付けて、
すり鉢のように奥へ向かって低くなる部屋を下って行く。

レギオン > ―――有体にいえば、それはつまらない依頼だった。
既に採掘され尽くした遺跡にあるものの採取。
研究者に売りつける『使用済み魔術鉱石』の回収依頼。
場末の商人らしいしみったれた用件だ。
おまけに、競合相手がいた場合は実力で排除しろとのお達し。
少々面倒な可能性のあるごみ拾い――それ以上でも以下でもない依頼。
けれど、仕事は仕事だ。

「あー…最悪だ。」

前方には広い空間。
そこにある可能性が高いだろう、と当たりをつけ、足を踏み入れる。
さっさと終わらせて報酬で酒飲んで女でも買って寝よう。
そんな意志が十全に込められた一歩は、先客が降りてくるすり鉢の底。
ちょうど、彼女から見て右手の入口から室内へと刻まれ――。

「うわ……マジかよ―――」

そして、交錯する二つのランタンの光。
あいさつ代わりに向けられたのは、そんなげんなりしたような声だった。

シンディ・オーネ > 「――!?」

初めての遺跡で持ち込んだ装備はほぼ全損。
新調した少し小さめのリュックを下ろそうと歩きながらゴソゴソしていて、
もう一つの光源が部屋に差し込んでようやく、相手の存在を知覚した。
――ぱっとはじかれたように振り返り、浮かべる表情は相手と同種のもの。
こんな場所だけに、誰かと会ったら同じ目的の可能性が高いのだ。

「…用が済んだらすぐに帰る。
 あなたがここで何をしようと関わり合いになるつもりは無いからお構いなく。」

…何かやらかして追われているとか、そういうのがねぐらを求めてやって来たなら邪魔するつもりは無い。
と言ってみるが、やっぱりナイような気がしてううむと唸り。

「私の方が先にこの部屋に入った。
 魔術師で、場所の当たりもつけてる。
 あそこのは私のだと思うんだけど、どう?」

リュックを下ろしてレザースーツの腰に手を当て、じっと挑むような眼を向けて。
避けたい話題だがどうせそうでしょうと、よく通る声で所有権を主張する。

レギオン > ランタンの頼りない光量で、観察する。
距離はそれ程遠くない。その気になれば数歩で間合いを詰められる。
周囲に、遮蔽物になるようなものはない。
石造りの床と高い天井――最悪生き埋めという危険性が薄いのは救いだ。
と、そこまで見たところで、相手を見る。
頭ひとつ分小柄で、ひと回り程度年下の外見の娘。
全身を覆う衣服は、動きを阻害しないもの――格闘術使いか。

「それはこっちの台詞だな。
 見なかったことにして回れ右して帰ってくれると、世はことも無しなんだが。」

軽く肩を竦めるような言葉をかける。
ディパック風の荷物を、右手にゆるりと提げて持つ。
腰の後ろの得物には――まだ手を伸ばさない方が良いだろうと判断。

「お嬢ちゃんも、狙いはこの部屋にあるアレだろ?
 てか、それひょっとして説得してるつもりか?
 そんな理屈が通るかよ。お互い泥棒仲間かごみ拾い仲間同士だろ?」

挑むような眼差し。よく通る耳障りの良い声に、少し笑う。
揶揄るような色合いを込めた響きの言葉。
あまりにも真っすぐで素直な言葉は、好感が持てる。
そして、わざわざ名乗ってくれた。魔術師という単語も記憶に留めておこう。
格闘術と魔術――少なくとも、手札はそれだと見えた。
だから、何気なく一歩、二歩、間合いを詰めながら。

「そういう時は、何かメリットを提示するとスムーズに話が進むと思うんだが?」

なんて、言葉をひとつ投げかけておいて。

シンディ・オーネ > 「…あなた、この部屋に魔術鉱石があるって確信してる? 本当に場所が分かる?
 私が立っているのがここで、あなたはそこ。
 あと少しあなたが遅くて、私が魔術鉱石を手に持っていたら諦めがつくなら、今だって実は大差ない。
 だから、あれは私のだ。
 女だからと甘く見ない方が身のためだぞ、そこはもう私の間合い。」

相手も魔術師である可能性は否定出来ないが、第一発見者をはっきりさせて権利を主張しようと。
しかしやはりそう簡単には譲ってくれないようで、接近する相手に顔を顰めて距離を取るように部屋の奥へ進み始める。

「この遺跡に残りがこれっきりって事は無いでしょう。
 こんな物のために、お互い消耗することはない―― 近付くなら敵対と見なす。」

距離を詰められまいと相手を見ながら少し早足に部屋を下り。
壁に埋め込まれているのだろうと考えていたけれど、
どうも壇上の壁面にはそれらしいパネルなり何なりが見て取れないなとチラッチラ。
という事は裏側かと、バックヤードへ回り込めそうな小さな入り口を見て。

「メリットも何も、謝礼を出せるような報酬じゃないでしょうそもそも。
 逆に、私が譲るためにあなたは何を提示してくれる?
 山分けするにもシケてるし、一緒に探すなんて無駄もいいところ。
 こんな所で時間を無駄にしないで次を探した方が、持ち帰れる本数はきっと増える。」

だから譲れと、しっしって感じ。

レギオン > 「おや――思ったより、口が回るじゃないか。」

思わず、というように笑い声をあげる。
彼女の言っていることは間違いなく正論だ。
此処で争うのは時間の無駄だし、回れ右して次を探す――そういう選択も有りだろう。
他を探すのと、ここのものに固執するのと、手に入る確率はどう程度。
けれど、それで説得されてやるには重要な要素を忘れている。

「――でも、残念。それじゃ、まだまだだ。
 オレみたいな紳士的なオジサンさえ説得できないぞ。」

足早に歩く娘の後を、追いかける。
数m程度の距離、先程のそれを積極的に詰めもせずに。
邪魔はしない。けれども、言葉も止めない諦めない。
言い換えれば、まるで揶揄るような、或いはその時間を楽しんでいるような所作。

「そうだな。
 譲ってくれたら、安酒の一杯くらい奢ってやるよ。
 つまみも二品までならつけても良い。
 ――ちなみに、その入り口から入って
 多分、ごちゃごちゃ置いてある遺物の中にあるぞ。なかったらここはもう外れ。」

しっし、という感じの言葉に、嫌われたもんだ、なんて苦笑しながら添える言葉。
あっさりとした言葉を信じるか、信じないかは彼女次第。
言葉通りになっているかは、運次第というところ。
ましてや、そこに幾つあるのかなんてのは、最早確率論ですらない。

シンディ・オーネ > 「……。」

口が回る。
緊張を見透かされたようなその言葉に、ぐっと詰まる。
平静を装って黙ってしまうのがまた間抜けな気がして、やりにくそうにまごまご。

「――何が『まだ』? 早い者勝ち、お互い立場が同じなら無駄な争いは無し、それでいいでしょう?」

先に入室したのは私だ。
しかし、他に戦利品も期待できないこの環境で、
他に目標を見つけられなければここをウロウロした時間の全てが無駄になる。
いや無駄ではないかもしれないけれど、今回の場合タダ働きだ。

相手が粘る気持ちも分からないではない。
自分だって、一歩遅いくらいでは魔力感知を理由に譲らないかもしれない。
相手の楽しむような調子に苛立ちを覚えて、一発お見舞いしてやろうかと思うが、
逆に楽しんでいるうちは本気の敵対ではないとも取れる。
先に手を出して火を点けるのも控えたいところで…

「――よし、乗った。
 安酒とつまみ二品、戻ったらあなたに奢るので、この壇上ど真ん中裏手にある魔力の発信源は私の物だ。」

いいね!?
と、提示された条件をこちらのものとして、迫る。
詰められはしないが広がらない距離に緊張しつつ、裏手への小さい入口へ。
中は狭そうだ。

「そこで止まれ。確認する。」

相手から目を離せず、入り口をくぐれず、かと言って先に行かせる事も出来ずに立ち止まり。