2020/03/20 のログ
ご案内:「魔獣牧場」に獣魔目録さんが現れました。
■獣魔目録 > 「此処はあくまでも魔獣牧場だぜ?ミレーの奴隷なんて扱ってないっつーの……。」
髭面の男は今夜も夜勤なのであるが、何だか此処最近妙に忙しく楽な仕事ではなくなりつつあった。
原因は【とある噂】である、
魔獣牧場では魔獣と人間やミレーとのハーフが買える。
寧ろ魔獣と一緒に預けると出産まで面倒を見てくれる。
など等……である。
今も今日だけで通算20件目の噂に踊らされた客を追い払ったところで、今夜もまた中級クラスの冒険者である髭面の男の少しだけ酒臭い愚痴が虚しく室内に木霊する。
――…此処は王都の郊外にある魔獣牧場。
大きな木製の門をくぐると、其処には広大な草原が広がっており、幾つか並ぶ小屋には1頭1頭魔獣が飼育され、或いは魔獣が預けられている。
空を飛ぶ魔獣には小屋と共に特別強固な結界が張られ、大地を駆ける魔獣には厳重に首輪と鎖が、水辺に住む魔獣には小さな泉か水槽が小屋の中に用意されている。
24時間出入り自由で、その為に木製の門の傍にも小屋があり、其処には冒険者ギルドから依頼を受けた信頼された冒険者が案内係とじて常駐している……万が一に備えてでもある。
牧場の敷地は魔法で結界が張られており、外からの侵入や中からの脱出を防ぐため出入り口の門以外はたとえ上空でも地面でも水中でも脱出することは不可能で、今夜はそんな魔獣牧場に異様な空気が広がっているのであった。
その原因は1冊の魔導書。
魔獣の皮で装丁された本に獣魔目録と赤い染料で書かれた魔導書なのであるが、是がまた魔獣と相性が有る意味よろしくなく、偶然この魔獣牧場に姿を見せたその魔導書から溢れる魔力で牧場の魔獣たちは妙に興奮をしているのだ。
もし、魔獣を預けているなら牧場の敷地に並ぶ小屋の一つに入り魔獣の様子を見てもいいし引き取ってもいい。
新しく魔獣を飼いたいなどあれば見学も自由、小屋を覗きお気に入りになった魔獣の小屋へと入り込んで愛でてみるのもいいだろう。
もし迷ったら入り口の小屋に常駐する冒険者に尋ねれば好みにあった魔獣が飼育されている小屋を教えてくれる。
勿論見学も歓迎で魔獣を見て回るのも良いかもしれない。
普段冒険でしか見られない魔獣たちの姿をゆっくりと見る事が出来るだろう。
牧場に張られた結界が獣魔目録の魔力に反応して壊れていなければ……だが。
ラウンドウルフ、グリフォンにマジックオクトパス、コボルトなどの獣人その他諸々。
何れも人と比べ物にならぬ力を持った魔獣たち
彼らが獣魔目録に影響された魔獣たちが小屋の中で来訪者を待っている。
そして牧場の奥。
その奥でもまた来訪者をまつ何かが居る。
噂の元凶、牧場主が手を出してしまった闇。
奴隷よりもなお奴隷らしく扱われている者達もまた来訪者を犠牲者を同胞を待っているのだ。
同じ煉獄を味わえと……だ。
何も知らず売られてくるか、拉致されてくるか、簡単な仕事だと騙されてくるのか……。
■獣魔目録 > 「全く噂は噂だ。昨今行き成り追加報酬があったが、景気がいいだけだろ?まったく、奴隷が欲しければその手の場所に行けっての……。」
――…冒険者の勘が深い入りするなと言っている、気がする。
追加報酬は口止めのためって言われればそんなタイミングである。
だがそれを知ったところでどうするか、更に追加報酬をせびる?暗部を暴いて英雄になる?一枚かませてもらう?どれもお断りだ。
結局その全ての選択肢の行き着く先は口封じだろう。
それに時々見回りをしているが、そんなモノは見たことがない。
だが、冒険者の知らぬ先で自体は牧場はズブズブと闇に沈んでいる、違法行為は儲かる、その甘い誘惑に牧場主は逆らえていない。
ある筈の無い裏口。
存在しない筈の結界の切れ目。
魔導書が放つ魔獣への理性を喰らい本能をむき出しにさせる魔力。
どれもがそれを行うに良い環境を作り、環境が生まれているのであった。
もし、そちらの人員として簡単な仕事で儲かると誘われたのなら冒険者にあわず奥の区画の小屋に若い獣人により案内をされるだろう。
もし、何も知らず売られてきた、あるいは拉致されてきたのなら目隠しと首輪を嵌められて、その先に繋がる鎖を引かれ獣人に奥へと連れて行かれる。
――…表から入ればまだ夢がある。
裏から入るのであれば悪夢が待っている。
■獣魔目録 > キュポ、と酒瓶の蓋を開ける音が受付小屋に響く。
そう、正式に飲酒も許可された、まあお客様が居ない時に限りである。
その音の後にふわりと広がる濃厚な酒の香り。
「………冒険者ー端くれとして、嫌な予感ってのは消えてないんだよ。あれかー適当なところで逃げるか……。」
髭面の冒険者は酒瓶に直接口をつけ、がっと呷ると喉を焼くような酒の喉越しと体内を巡る酒気に熱い息をクハーッと吐き出して、さて、今夜はまだ時間がある、仮眠にはちょいと早いとカウンターに肩肘を突きながら、手を伸ばしてパンフレットを一枚引寄せて、指先で適当に頁を開いて読み流し始める。