2020/03/13 のログ
ご案内:「魔獣牧場」に獣魔目録さんが現れました。
獣魔目録 > 「報酬は高めだけどよー……夜勤ってのは辛いねぇ。」

中級クラスの冒険者である髭面の男の少しだけ酒臭い愚痴が今日も虚しく室内に木霊する。

――…此処は王都の郊外にある魔獣牧場。
大きな木製の門をくぐると、其処には広大な草原が広がっており、幾つか並ぶ小屋には1頭1頭魔獣が飼育され、或いは魔獣が預けられている。

空を飛ぶ魔獣には小屋と共に特別強固な結界が張られ、大地を駆ける魔獣には厳重に首輪と鎖が、水辺に住む魔獣には小さな泉か水槽が小屋の中に用意されている。

24時間出入り自由で、その為に木製の門の傍にも小屋があり、其処には冒険者ギルドから依頼を受けた信頼された冒険者が案内係とじて常駐している……万が一に備えてでもある。

牧場の敷地は魔法で結界が張られており、外からの侵入や中からの脱出を防ぐため出入り口の門以外はたとえ上空でも地面でも水中でも脱出することは不可能で、今夜はそんな魔獣牧場に異様な空気が広がっているのであった。

その原因は1冊の魔導書。
魔獣の皮で装丁された本に獣魔目録と赤い染料で書かれた魔導書なのであるが、是がまた魔獣と相性が有る意味よろしくなく、偶然この魔獣牧場に姿を見せたその魔導書から溢れる魔力で牧場の魔獣たちは妙に興奮をしているのだ。

もし、魔獣を預けているなら牧場の敷地に並ぶ小屋の一つに入り魔獣の様子を見てもいいし引き取ってもいい。

新しく魔獣を飼いたいなどあれば見学も自由、小屋を覗きお気に入りになった魔獣の小屋へと入り込んで愛でてみるのもいいだろう。
もし迷ったら入り口の小屋に常駐する冒険者に尋ねれば好みにあった魔獣が飼育されている小屋を教えてくれる。

勿論見学も歓迎で魔獣を見て回るのも良いかもしれない。
普段冒険でしか見られない魔獣たちの姿をゆっくりと見る事が出来るだろう。

牧場に張られた結界が獣魔目録の魔力に反応して壊れていなければ……だが。

ラウンドウルフ、グリフォンにマジックオクトパス、コボルトなどの獣人その他諸々。

何れも人と比べ物にならぬ力を持った魔獣たち
彼らが獣魔目録に影響された魔獣たちが小屋の中で来訪者を待っている。

――…その眼は爛々と輝いているが、だ。

獣魔目録 > 全く持って暇である。
もし客が来れば少しばかり絡んで話し相手でもさせようと思ったが、全く人のくる気配がない。

「……なんだ、まあ、こんな日もあるってよ。別に暇で死にそうなだけで、仕事が楽っちゃ楽だが……。」

肌がヒリつくほどの危険を感じることも無い。
多少空気が濁っている気がするが、今すぐどうこうって話でも無さそうである。

ならばやる事は一つであろう。
懐より取り出したるは燻し銀のスキットル、それをカウンターにドンっと乗せると、よしっ、と一つ気合をいれる。

新しく牧場に入荷した魔獣のことがふと脳裏を過ぎる。

新種のミミック、肉の塊みたいな奴なのに武具に変化する奴。
知性の高めなレアなコボルトに水陸両用のタコっぽい毒を使う魔獣に……ドコから仕入れてきたんだろうか?

特に此処最近その手の見たことも無い魔獣が増えた気がする。
普通ならば……報告があってしかるべきだが。
と手元に業務日誌を手繰り寄せようと手を伸ばした。