2020/03/08 のログ
■獣魔目録 > いい加減とっておきの相棒を取り出して、熱いキスをかわして次の交代要員が来るまで仮眠でもしようか、と懐に手を入れたところで、まだ来る筈のない交代要員を自称するが小屋へとやってきた。
「あーあー?何だまだ交代の予定は……と、ちょっとまってろ……。」
頭の中は仮眠するぞ、と意識をさぼりに向けていた為に今一ぼんやりとしているが、是でも一応冒険者の端くれである。
無条件に相手の言い分を信じるのも問題であるし、自分の中の常識だけを信じるのも……というわけで手元にある業務日誌に手を伸ばすとぺらぺらと日誌の頁をめくりながら、視線をチラと少女へと向ける。
「あーっと交代要員な!交代要員。引継ぎって程じゃないが、今夜は魔獣たちが微妙に騒がしくてな?特に奥の小屋のマジックオクトパスやーえーっとコボルトの若い個体は特にその気が強い風に感じるから、もし夜回りの確認するなら要注意だ。あとはミミックの新種を掴まえたとか、あれも気をつけろといわれたな……それと最近魔獣なんかわからないが狼を見かけるって噂も。……あー何か質問はあるか?」
冒険者ギルドからの連絡不足か、日誌を見ても特に緊急の連絡は無い、確か記憶を辿れば自分は明けた日の昼に交代の筈で、珍しく長期間の仕事だった気がと眉間にくっきりと皺を寄せて今一交代という事にぴんときた表情を浮べない。
でもまあ仕事が終わって帰れるなら、ラッキーと言う事で一応少女に簡単な引継ぎの言葉と最後に質問がないかを確認をして、露骨に途中で適当に引き継ぎ内容を濁して帰る気満々な態度でソワソワとし始めてしまう。
■リムリア > どうにも連絡がきちんと行っていなかったらしい。
そのあたりの手続きも自身の仕事の一環ともなれば、当たる相手も自分なわけで。
「申し訳ありません、ギルドからちゃんと連絡が行ってなかったみたいで…
マジックオクトパスにコボルトですか…分かりました、気を付けます。
ミミックの新種っていうのは初耳なんですけど……」
依頼書を見ていれば、それだけでも魔獣の名前には詳しくなる。
その生態を勉強するにもギルドは訊ける相手も資料も数多い。
そうであっても、その新種というのはまだ聞いたことがないものだった。
「質問……だったら、あの、もふもふっとした魔獣っていたりは……?」
話を聞いて、資料を読んで勉強するだけでなく、実際に目の当たりにして分かることもあるだろう。
そんな勧めもあって引き受けた仕事ではあるけれど、やはり見るならおっかない魔獣よりは可愛いものの方が良いわけで。
ダメ元でそんな質問を口にしてみたりはするものの、仮にそんな魔獣がいたところでそれは外見だけのものだろう。
■獣魔目録 > 随分と素直に謝罪をする少女だと冒険者は素直に思う。
この業界、謝罪したらつけこまれる何て良くある話。
依頼主が少しでも報酬を安くとか、まあ理由は諸々多々有るがあまり即座に謝罪をするというのは好ましくない、が其処を強く突っ込むのはまた相手の矜持に踏み込む事もあるからと、謝罪は受け入れる事にして……軽薄そうな笑みを口元に浮べる。
「ああ、良いって良いって良くある事だろうよ。誰が悪いわけじゃねぇって。それでも、もし気にするんだったらよ、今度一緒に食事でもどうよ?」
軽いナンパも忘れない。
口説き文句も軽く罪悪感につけこむような言葉も戯言で、本気のつもりなんて欠片も無く、軽く声に出して笑った後にあーっとちょっとまってろよ?と言葉を繋げて、業務日誌から近くにある案内図に手を伸ばして、指先で案内図を摘んで取ると少女の方に差し出して小屋の密集地を指でぐるぐると囲むように円を描くようになぞった。
「この辺がお嬢ちゃんが気に入りそうな魔獣を預ったり、飼育してるところだな。この辺で噂の狼ってのはたぶん此処から逃げ出したのでも見たんじゃねぇかなっておじさんの予想。こっちの小屋には珍しいお嬢ちゃんとおんなじくらいのサイズのでっかい真っ白い体毛の雪狼が居て、こっちにはヨにも珍しい体毛に包まれた蛇だな、後こっちはミレー族に欲似てるけど獣人の類だなワーラビット?ウサギっぽい特徴の獣人がだな……後はこっちはケルベロスだってよ、覗いたけど本当に頭が三つあっていつもケンカしててさぁ……。」
帰宅できる。
それだけでテンションはウナギのぼりと言うもんで。
ぺらぺらぺらっと捲くし立てるように一気に言葉を吐き出すと、最後に大きく息を吐き出して……少しだけ真剣な面持ちで、指差した枠に近しい少し大きめの小屋を指差して。
「こっちには絶対に行くな。寧ろ此処から鍵を持っていかなくちゃならんから行かないと思うが、この小屋の周囲には柵があってな?その奥の小屋は猿人の類の珍しい魔獣がいる、だからといって本当に行くんじゃないぞ?フリじゃないからな?」
と言うだけ言って冒険者は立ち上がる。
あとは?と真剣そうな表情は言葉の終りと共に消して首をかしげ軽薄そうにまた笑うのだった。
差し出した案内図には小屋の位置、小屋で飼育されている魔獣の名前と簡単な説明、諸々が記載されている。
もし興味があれば希望する魔獣がいれば案内図を見ながら小屋に行けばきっと出会えるだろう、それだけ多くの魔獣を飼育している――…故に此処は魔獣牧場なのだ。
■リムリア > ギルドの受付嬢なんてものをやっていれば謝罪もナンパも慣れたもの。
それが冒険者相手ならば、なおのこと。
「食事ですか? はい、ギルド併設の食堂がお勧めなので、そこでなら。」
ちゃっかり営業しつつ、同僚の目が届く安全地帯を推しておく。
食堂のマスターも睨みを利かせてくれているから、滅多ことは起きないだろう。
ひとつだけ難点があるとすれば、お酒が飲めないことだけれど。
取り出された地図を覗き込み、相手の慣れた説明に興味深そうにふむふむと頷く。
どうやら本当にいろんな魔獣がいるらしい。
まさか本当にもふもふがいるだなんて思いもしなかったけれど。
「狼は故郷でもよく出ましたから……でも、白いのは見たことないです。
毛のある蛇…っていうのも初めて聞きました。」
獣人はどうなのだろうと首を傾げる。
奴隷の類で連れてこられたのかもしれない。
可哀そうな気もするけれど逃がしてあげることも出来ないわけで。
「え? 頭同士で喧嘩してるんですか?
それって餌とかどうしてるんだろ……」
むしろ身体はどうやって動かしているのか謎でしかない。
そんな名前だけは有名な魔獣も確かにもふもふではあるかもしれない。
けれど、そんな危なっかしい魔獣の傍には近づきたいとは思わない。
「猿人……? そちらも獣人なんですか?
危ないところには近づかないですよ。見てのとおり後衛職なんですから。」
ローブの裾を摘まんで見せる。
一応は見回りも業務の内には入っているのかもしれないけれど、あくまで門番が主。
世話は専門の魔獣遣いがしているのだろう。
一番もふもふっぽい狼のいる小屋には顔を出してみようと心に決めて。
細々としたことを確認すると、お疲れさまでしたと前任者を見送ることに。
■獣魔目録 > アー喋った喋った数か月分喋ったわ……と、愚痴りながら先程取り出しかけた酒瓶を胸元から取り出すと、口で咥えて軽くコルクの蓋を捻って開けると、ペッと蓋を自分の手の上に穿いてから酒瓶を口につけ中身を軽く呷る。
「……詳しい話を聞きたきゃ、今度その食事の時でもなー。ハイハイお疲れさん、明日の昼間では誰も来ないだろうから、気を抜いて適当に適当に」
と軽薄な笑みを浮べ手をヒラヒラとゆるくふって冒険者は帰宅の仕度を整えるべく、小屋の奥にある扉の向こう側へと消える。
直ぐに男の調子ハズレの鼻歌が響くだろう。
――…雪狼
真っ白い体毛とその毛並みから冷気を放ち、怒りと警戒によりその冷気の温度はぐんぐん下がるといわれている目下研究中の精霊の一種では?と言われている純白の狼。
それが飼育されている小屋は様々な理由から比較的少女がいる入り口の小屋から近くにあり、小屋の密集地でもっとも入り口に近い小屋で飼育されている。
見れば一目でわかる。
他の小屋と違い、明らかに新しく綺麗な小屋で、中はまだ傷の少ない木材の床と雪狼が眠れるように積んだ藁の上に真っ白なシーツが被せられた簡易ベッドが備え付けられている。
後は簡単な水場と緊急用の小屋の中を監視する為の装置が天井に柱にと、後は室温管理用の魔導玉がついているだけの非常にシンプルなつくりである。
通常であればその様子は外から覗きこめるように内側からは壁にしか見えない特殊な魔術処理のされた窓があるのだが、何故か今宵はそれが霜で覆われて覗くには難しく、本来であれば厳重に施錠されている筈の小屋への出入り口の鉄の扉が何故か薄っすらと開いていて、中から光が漏れているのと中に居る魔獣のシルエットが影が室内から外へと零れている。
近づけば雪狼を弱らせるために室内は温かい空気が満たされているのか、少し暖かすぎる空気が零れ、窓が霜で覆われているのに中だけは温かい様子が想像つくだろう。
そのシルエットは小屋から出ようとしているのか、それとも何かあるのか、出入り口に近づいてはまた小屋の中へと消えるというのをくり返していた。
――…何故なら魔導書がそう魔獣に命じているのだ。
小屋から出ろ、出て本能に任せて肉を喰らえと、だが雪狼はそれに抵抗しているのか、故にウロウロと小屋の出入り口を行き来している。
■リムリア > 男が酒瓶を取り出すのを見ると、ちょっぴり視線を鋭くなった。
決してまだ仕事が終わっていないことを見咎めるわけではない。
仕事上がりのお酒が羨ましかった…わけでも、きっとないはずで。
「はい、お疲れさまでした。気を付けてくださいね。」
ご機嫌な様子の男を見送れば、さっそく見回りに出ることにする。
この時間ならば、男が言ったとおり明日の昼までは誰も来ることはないだろう。
聞いたばかりの雪狼の資料を手に、まずは小屋の方へと出向いてみることに。
装備はやって来たそのままだから、特に他に準備するものはない。
暗い夜道にも慣れた様子で地図に記された真新しい小屋へと向かう。
もっとも薄く開いた扉からは、明かりが漏れていて分かりやすいのだけれど。
「……灯り??
誰もいないはずなのに、灯りなんてつけてるの…?」
魔獣も夜は寝るはず。
夜行性であっても、暗くしておくべきだろう。
扉が開いていることからも、誰かが忍び込んでいるのかと警戒して、そっと中を覗き込む。
けれども、そこには目の覚めるような真っ白な毛並みをした件の雪狼の姿しか見えず。
うろうろと歩き回ってはいるようだけれど、怪我をしたりはしていないようでとりあえずはひと安心。
むしろ放し飼い状態で扉が開いていることに、危機感を募らせ―――
■獣魔目録 > 魔獣を弱体化させる為の室温の調節
小屋と外界を繋ぐ唯一無二の鋼鉄の扉の施錠
何かトラブルが発生した際に起動する監視用の機材
魔獣を鎖で縛りつける捕縛用の道具
時間により明るさが自動調節される室内の照明
――…それら全ては魔力を動力として動いている。
だからだろう、それすらも魔導書の望むがままに魔獣を魔獣たらしめんが為に動作する。
出入り口の施錠は無力化、室内の照明は魔獣を覚醒させるために明るく、室温もまた蒸し暑い温度から今は小屋の中を温かく多少汗ばむ程度の室温へと変わり……
雪狼、魔獣は魔導書により興奮或いは発情状態を維持したまま鎖と首輪を無力化し解き放たれている、それでも小屋から出ないのは魔獣にも理性というものが存在している証左である。
――…が、本能がそれを容易く上回ってしまう事案が発生する。
それは魔導書が望んだように運命の糸は手繰られて、少女が魔獣が増えるための良い繁殖相手になろう人間が小屋に近づいてあまつさえ中を覗いてしまったのだから。
丁度少女の瞳に重なる小屋の住人である雪狼の瞳は透き通るような冷たい青、其処に金色の筋が走る妖しくも不気味な視線を重ねた後に、雪狼は真っ白な体毛をふわりと揺らし身体を揺らしながら鼻先を少女の方へと寄せて、素早く少女の新緑色のローブの裾に喰らいつくと、鼻先を振って強引に小屋の中へと少女の身体を引き摺り込んで小屋の中に押し込めようとする。
その小屋の中は既に異常。
綺麗なはずの床には何かの染みが点々と、室内の匂いを嗅ぐなら獣が発情した際の特有の獣臭とそれ以外にあの白濁の香りに似た匂いが広がっているのであった。
そして雪狼は歓迎する。
喉を震わせてグルルルルルと唸り声をあげて。
ご案内:「魔獣牧場」からリムリアさんが去りました。
ご案内:「魔獣牧場」から獣魔目録さんが去りました。