2020/02/15 のログ
ご案内:「大風穴」にエルディアさんが現れました。
ご案内:「大風穴」にヴェンディさんが現れました。
ヴェンディ > 五感を奪っても尚、正確に動く。
ただ、それは、今までの戦いからもしかすると、と予想できた事象だった。
手品扱いされるほど、相手には児戯に見えているらしい魔法を駆使し戦い。
そうしながらも、自分の興味本位の行動を少し呪ったが。
それよりもまずは、目の前で弾けた大剣の破片の処理だ。

「っ…」

短く呼吸し、魔法を発動。
身体に与えられる衝撃を、空中にそのまま跳ね返す魔法。
そんな反射魔法で破片を受けたため、大剣の暴風を受けながらもひるむことは無い。
当たってはいるものの、彼の周囲に破片が散らばるのみだ。
そうなれば、童女の感覚通り、ぽっかりと一人分、穢れの破片が降っていない場所がある。

童女にかけた感覚消失の魔法は維持したまま、男は更に動く。
感覚を奪ったなら、後はあの暴威に近づく必要もない。

彼が指揮者のように手を振れば、現れるのは魔族の国に棲む弾丸代わりとなる無数の蟲。
一見甲虫のようなその体。羽根に当たる部分は、小さな、しかし非常に鋭い魔力の刃になっており。
それを展開し、童女の身体を切り裂こうと霧のように無数に殺到する。
羽搏く際の耳障りな音も、今の童女には聞こえないだろうが。

「ダンスには、邪魔物も入ることがあるだろうさ」

その言葉もまた、相手には聞こえていないだろう。けれど、そう呟いて。
自身の気配以外、感じられないであろう童女に無慈悲にそれを差し向ける。

一体一体が、人間の世界の魔導機械から発射された弾丸より酷く着弾した相手の体を傷つける力を持った甲虫が無数に童女に襲い掛かっていく。

エルディア >  
これは所詮、ビーコンのようなものにすぎない。
それが空間に満ちているコンマ数秒、それで空間把握はすぐに終わる。
あとは波を感じ続けるだけ。

「知っテる?」

満ちる瘴気と澱の海の中に新しい感触、何かの群れを探知して
視覚を失っているはずの瞳が嬉し気に見開かれた。
涙の様に零れ落ちる光もまたその流れを多くする。
ああ、新しい手品がまた一つ。

「光が無イ世界ハね。
 ……とっテも綺麗なンだよ」

それでも状況にそぐわない行動……言葉を紡ぐ。
本来戦闘に言葉は必要ない。
言語とは分かり合うために使用するものだ。
こうして圧縮言語で交わされる言葉は音ですらない。
しいて言うならテレパスに近く、実際この会話も
所要時間はコンマ数秒にも満たない。
その言語すら酷く増長に思える。

「ああ、生物は自身の知ル次元以上の領域は
 認識できなイんだったね」

でも、ああ、これに関しては相手が魔族でよかったと思う。
これは魔族や精霊以外ではあまり通じない言語だから。
暴風のように有無を言わさず消し去るのも嫌いではないが
こうやって遊ぶなら言葉を解するモノが良い。
意思のないモノは酷くつまらないから。

「ネェ」

喉を鳴らすそれは宛らお気に入りの物語を
読み聞かせてもらう無邪気な幼子のような声で笑い続け

「キミも視てみたイでしょ」

軽く腕を振る。
それと同時に朧な、けれど巨大な漆黒の掌が
湧き出た”何か”の群体と「ソレ」のいる辺りを
大風洞の大半もろとも薙ぎ払った。

「その気にサせてくれたら
 視せテあげるよ?」

玩具の場所が分かればあとは”手で思う場所に動かす”だけ。
壊れてしまったら?ああそれは残念。
けれどこれくらいで壊れる玩具でもないはずだから気にしない。

ヴェンディ > 涙を流す姿を見ても、これほど何も感じないのは初めてだ。
むしろこの程度で倒せるなら、どれだけ良かっただろう。
何故こんな場所に眠っていたのかわからない化け物。
それを起こしてしまった以上、彼もまた嗤いながら対処する。

「それは光栄だ。ここまで遊んだのだ。せっかくだから見せてもらおう」

相手が使ってきたのは、こちら側の人間は解さないであろう言語。
本来であれば、山脈を超えた向こう、魔族の国で使われるものだ。
光よりも早いほど、意思を疎通できる言語。

それに応えながら、振り下ろされる何か湧き出た漆黒の掌に対処する。
ほんの一瞬、暴風が過ぎ去るその一瞬、自分自身を世界から外れさせ。
いかなる知覚でも捕らえられず、触れられない領域へ避ける。
長時間使用すると本当に世界から消えてしまう魔法だが、得体のしれない攻撃の回避には最適。

感覚を閉ざしたからか、おおざっぱに放たれた大風洞を崩壊させかねない一撃を避ける。
蟲はそのまま暴威に巻き込まれ、薙ぎ払われたが、彼は無傷。

「まったく、見るか話す程度に留めるつもりだったのに、骨折り損だ。
これほど魔力を振るったのはいつぶりか」

避ければ、苦笑を滲ませながら、不可知化を解き、再び童女の前に現れる。
勿論、圧縮された言語で話しかけながら。
彼もまた、無言で戦うのをよしとしない。
どこか楽し気に、言葉を交わす。

相手がただの捨てられた兵器のようなら、ここまで付き合わず、転移などでこの場を去っていただろう。
だが、会話しながらも気を抜けば壊されかねない相手と戦っていれば、自然と笑みも浮かぶというもの。

次の手は、あの掌の正体を看破魔法にて見破るまでの時間稼ぎだ。
少し後ろに飛び退ってから拘束の魔法。
地面が変質、鎖となって童女に襲いかかり。
その鎖には、童女が興味を示した…カルマ値が溜まっている相手をより強く拘束する術式が組み込まれており。

一瞬でもその動きが止まれば、彼は目の前を手で縦に切るような仕草。
そこに、万物を切り裂く刃を創造、投擲する。
使えるものはなんでも使う。
もはや加減などしている場合ではない。
魔法を創造できるとはいえ、これほどの存在を即死させる魔法などは、非常に集中が必要になる。
この状況ではそんな時間ができるのは期待できず。

同時に、先ほどの甲虫を更に召喚、刃で同士討ちしないよう、同時にけしかける。
魔力が最低限となるまでは、争いは続けるつもりだ。
彼もまた、相手がこの程度で死ぬとは思ってなどいない。

エルディア >   

「えぃ」

小さな掌を握りこむと同時に振るわれた掌が
巻き込んだ物をまとめて握りつぶす。
その中に目当ての”波”は無い。
一瞬領域自体から消えたところを見るとずらすタイプの回避法か。

「……この程度で消耗するなンて歳じゃなィ?
 私若いカら魔力切れとかわかんナい」

再び感じる質感の方へぐるりと首を向けると同時に
形を取り戻している大剣を無造作に持ち上げ
地面から蛇のように飛び出す鎖を黒曜の腕で掴む。
絡みつこうとするそれに僅かに視線を向け一笑すると

「こレ返すね」

地面から引きずり出しながら術者本人に叩きつけるようにそれを振るった。
そのまま体を翻し飛来物をよけながら大剣を振り上げた。
その腕がかすむと同時に藍色をした魔力性の火花が散り、
目の前に虫の形をしていたものが真っ二つになり落ちていく。

「ああ、この程度」

切っ先が薄紙一枚くらいずれたなぁとぼやく。
しばらく武器をにぎらないとこのざまだ。
対象は距離をとったようだし、丁度いい。
何ならもう一回”斬って”おこうか。

「リハビリに使ウね」

そう囁くと同時に地面を蹴り、対象の元へと滑り込む。
その動線中にいた虫を精密機械の様にすべて真っ二つにしながら。

ヴェンディ > ぼたぼたと蟲が切られていく。
得物は大きいにも関わらず、繊細に真っ二つに両断されていき。

「返されても扱いに困るのだが、なっ…」

バカにするように声を発されても、彼は笑みで返すのみ。
引き抜かれ、飛来する鎖には捕縛の魔法も込められているため、ひとりでに何かを捉えようとしていて。
それがその性質ごと返されれば、同じく地面から、土人形を何体か生み出し。
その人形を鎖に絡ませることによって事なきを得る。

その土人形は鎖に絡まれたまま、蟲の形をしたものと共に真っ二つに、あるいは四半分以上になっていく。

「なら、そのリハビリとやら、協力してやろう」

召喚魔法の応用。
魔族の国から、魔鋼と呼ばれる精錬できれば、異様な硬さを誇る鉱石を呼び出し。
それを強固な壁として、瞬時に精錬。厚さが成人男性3人分はあろうかという厚さの壁に変化させる。
だが、それに童女がぶつかった瞬間に更に仕掛けが作動。
魔法、物理共に耐性が非常に高いその壁は。

少女がぶつかった瞬間、壁の一部をひしゃげさせ、棘へと変化させる。
相手を刺し貫いても、何の問題も無いだろうと。

更に壁が切られたとしてもその破片が尖りながら追尾し、童女を刺し貫くように飛ぶ。
まるで自立した武器のように少女に襲い掛かり。

大剣で切れば切るほど面倒が増え、その分魔鋼の棘も増えていき。
彼自身は更に広くなったように感じる大風洞の中で大きく飛び退り続け。
掌が振るわれる間合いには入らないようにしている。
途中、常人なら一吸いで昏倒するであろう睡眠ガスの魔法を展開しつつ。

「身体を動かさなければ、と言う強迫観念は必要だろう。
鈍っているのなら、ある程度は付き合ってやる」


そんなからめ手が有効かどうかはわからないが。
彼の魔力を白瞳に通し、抵抗がかなり難しい妨害を行っていく。
次は、切れるモノばかりではなく、切れないものも混じっており。
空気の流れも、ガスと細かく細かく刻んでも童女を追う魔鋼の棘によって乱され、感知はしにくくなっていき。
彼自身も視界をある程度曇らせながら、結局は浮遊の魔法で天井近くまで浮かびあがり、童女の様子を見る。