2019/12/30 のログ
ご案内:「無名遺跡/書庫」に獣魔目録さんが現れました。
獣魔目録 > 無名遺跡を進むとよく見かける部屋がある。
モンスターが巣食っている部屋よりはマシ、だけど宝箱のある部屋よりはハズレ、中から宝を探すにも鑑定力や魔力を判別する能力がないと人海戦術か時間をかけるしかない、そんな部屋である。

その名は書庫。
古の知識の宝庫と言われているが、実際は遺跡作成に関わったとされる人物が適当に本を詰め込んだだけの代物である。
なので部屋自体で当りハズレが大きくでる。

それもだ。
どの部屋が当りか等も全く判別つかず、入ってみて、あさってみせて手にとって、鑑定するなりしなければ判らず非常にめんどくさい部屋でもあるのだ。

もし魔術を極めんとする者が居れば必死に本を探すのもいい。
魔術に興味がなければ適当に探すのもありだ。

だが、しかし今夜はそう簡単には行くまい。
書庫は王都の学園の教室くらいである、天井には人の気配を感知すると室内を明るく照らす仕掛けもある。
だがそれでも探索を困難にするのは1冊の魔導書が原因である。

幾つかある書架の中にある本と違い、床に無造作に転がっている魔導書、それは既に発動しており無造作に開かれたページからは魔獣が召喚されている。

それは姿無き追跡者。
ヘルハウンドの亜種なのだが、その姿形は普通の眼では追跡が困難な透明なる獣。

良く眼を凝らせば何も無い空間がゆらゆらと揺らいでいるのに気がつくだろう、その姿なき追跡者が一匹狭い書庫をうろうろしているのだ。

――…それに見つかっても直ぐには終われる事は無い。
たとえ本を拾い上げてもだ。

彼が追う条件は本を持ち出す者。
運よく拾って本を閉じるのであれば本へと戻り、書庫に備え付けの机と椅子に座るか、個室に入って読む分には彼は襲い掛かったりしない。

個室に入って本を開けば彼に襲われなくても似たようなことにはなるのだが、そうするかそうなるか、そう堕ちるかは書庫に入り込んだ人間が選べばよい。

獣魔目録 > そう選択肢は幾つもあるのだ。
その結末が闇に堕ちるか富みを得るか、得るも堕ちるも無い代わりに命を永らえるか、大体はこの3つの結果が待っている。

本来なら偶然呼び出された姿無き追跡者は契約者もなく、獣魔目録に刻まれた愚者の手に書物が渡らぬようにする為にウロウロと広くない書庫を歩き回り警戒をしている。

時折書庫内に作られた個室のほうも確りと覗き込んで警戒し、書庫から獣魔目録を持ち出そうとする愚者がいないか確認し、居ないとわかると再びうろうろをし始める。

――…まあ時々さぼって床に突っ伏して動かなくなるのも魔獣であるが故になのだ。

獣魔目録は知性有る魔導書ではない。
それを感じても沈黙し、何も発することは無い。

床に落ちて「姿無き追跡者」の頁を開いたまま、ただただ手にする者が訪れるのを待つだけなのだ。

様々な本がならずボロボロの書架。
そこに収められたどんな本よりも危い気配と豊潤な知識を宿す魔導書。
狭い書庫の中で本は僅かに獣臭を放っている。