2019/07/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 街中」に紅月さんが現れました。
紅月 > ーーーざわざわ、ざわ…

はて、どうしてこうなったのだったか。
上機嫌に手を振りながら去っていく身形のいい男に手を振り返しながら考える。
朝、ギルドに顔を出したら名指しで依頼が入っていて、宛先が王城だったから緊急かと駆け付けてみれば…何の事はない。
近頃のシェンヤンブームの火付け役である帝国の姫君…の、専属デザイナーがスランプを起こしたそうで。
"金・黒・茶髪以外の女を寄越せ"と言い出したから、偶然警備にあたっていた騎士がたまたま思い出した"王城にちょくちょく顔を出す冒険者"の名を冗談半分で例に挙げた…それが私だったらしい。

丸一日、公主とデザイナーの着せ替え人形もといモデル紛いの事をさせられ…依頼人が服作りに燃えている間、公主の話し相手や依頼人当人の部屋の片付けや食事の差し入れやらをして。
基本報酬ついでに今日作られた服(頼んでないけどオーダーメイドのようなもの)を贈られて…嬉しい反面、気疲れなんてレベルでは済まない妙な疲労感を背負う羽目になった。

「……着替える気力なかったから、そのまま送ってもらっちゃったけど…
やっぱり、浮くんだよなぁ…」

…現在地、平民地区・冒険者ギルド前。
今の服装、シェンヤンドレスにシェンヤンシューズ。
苦笑気味に見上げた空はジャスミンティーのような、目に眩しい黄金色…もうじき黄昏がやって来て、夜の帷と共に屋台の帷も降りるのだろう。

紅月 > 「…全く、困ったもんだねぇ」

視線、視線、視線…あちこちからチラチラと向けられる視線が刺さるようだ。
然もありなん、宣伝代わりになるとばかりに城から富裕地区、平民地区までも徒歩でゆったり帰ってきたのだ…作者と共に。
元々目立つ紅の髪に揺れるタッセルや花飾りに加え、普段しない化粧まで完璧にコーディネートされた姿は"流行の体現"とも言えるだろう。
…つまり、やたら目を惹く。

「茶屋にでも行こっかなぁ。
さすがに、この格好で独り酒は…」

真後ろにあるギルドに再び入るという選択肢は、無い。
間違いなく、確実に、何かしら弄られる。
かといって突っ立っている訳にもいかず、けれど折角お洒落をしたのに直帰は勿体なくて…ただ、街を歩けば昼間とは違い、酔っ払いも徐々に増えてくるだろう。

だとすれば、だ。
もう、いっそ何処かにサッサと入ってしまえばいいと。
…とりあえず歩き始める事にした。

ご案内:「王都マグメール 街中」にグライドさんが現れました。
紅月 > 一度覚悟を決めてしまえばどうという事もない…というより、見られ慣れてきてしまった。
今となっては、深々と入ったスリットへ向けられる下卑た視線も何のその。
それより何より甘味、である。

「確か、この辺りから…あぁ、あった!
よかったぁ…ちゃんと着いた」

地元民ならではの小道を幾つか進み、ようやっと出た先は…平民地区と富裕地区との境辺りにある、通称甘味通り。
サッと見渡せば焼き菓子やショコラ、紅茶専門店にカフェ…まるで女の子の夢を詰め込んだような街並みではあるが、外観は甘いだけではなく洗練されたものも多い。
メインの客層は女性だろうに…こういった男性への配慮もされている辺り、さすが富裕地区だなぁといつも関心させられる。

グライド > (――普段と何も変わらぬ街中、筈なのだが。
ふと、気付けば周囲が何やら騒がしい。
誰も彼もが、同じ様な噂話で持ちきりと言うのは、まぁ無い事ではないし
何より、其れが女の話であれば、またどこぞの令嬢でも「送られて」来たかと思う所だ。
一寸した用事であった為、今は身軽其の物、普段みたく矢鱈と目立つ巨大な盾は背負っていないが
まぁ、明らかに一般市民とは言い難い巨躯なら、其れは其れで目立ちそうか
無論――美人ほどには興味を持たれないのは定めだが。)

「―――――……うん?」

(其の通りは、別に用があった訳ではない。
ただ、自らのねぐらに戻る為の近道であっただけ、だが
其の途中、矢鱈周囲の視線を集める箇所があると気づいた。
同じ様に視線を向ければ、なるほど、其処には道を歩く女の姿
此処最近王都に入って来た異国の文化、見慣れぬ、と言っても大分見慣れてきた
稜線美を主張するような其の衣装。)

「―――――……。」

(ただ、暫く其の姿を眺めている内に。
一寸、違和感に気付いた。 ……と言うより、覚えが在る。
どこぞの令嬢なんぞではなく、如何考えても――)

「……よう、どこぞの宴にでも呼ばれたか?」

(かける声音は、後ろから。
遠目から見ているだけで、声を掛けたりなんてしない男連中を気にも留めず
其の隣へと、並び立つだろうか)。

紅月 > 「…ん~?
カフェ・タトルがあそこ、フェリシタがあっちだから…」

きょろきょろ、と辺りを見回す。
その視線はお菓子ではなく、店名の書かれた看板やディスプレイを忙しなく飛び回って…何かを探している事は伺えるだろう。
当然、歩調はゆっくりとしたもの。
長身の男であればアッサリと追い付けるだろう。

「……んぅ、あれっ?イドさん!?
わあっ奇遇!
ふふっ、宴なら良かったんだけどなぁ」

呼ぶ声に振り向けば、珍しく…少なくとも紅月にとっては珍しい私服姿の彼が目に飛び込んで。
…ふわり、髪飾りにも負けないほどに花が咲いたような笑顔を向ける。

「ちょっと変わったお仕事だったの。
なんかね、作家のスランプ脱出のお手伝いする事になってね…気付いたらこんな事になってたわ」

相変わらずザックリな説明をすれば、クルリと回ってみせる。
シャラン…と、涼しげな音が髪飾りと腕輪から鳴った。

グライド > (そう言った衣装自体には眼にする機会が在るが
其れを、この女が着ているというのは確かに珍しい事だ。
そもそもが異国の女で在るからして、珍しいいでたちでは在ったが
どちらかと言えば、しゃらしゃらと布地を多く着込む性質では在ったし。)

「……なんだ、そう言う訳じゃねぇのか。
……へぇ、作家ってのは、アレか? 物書きか、其れとも服飾か。
まぁ、どっちにしても良くわからねぇが。」

(事情については何ともだ。 何せ、女の格好に為る流れは読めない
だが、女が相変わらず、良く判らない愉快な出来事に巻き込まれたと言う事だけは理解して
可笑しそうに、けらけらと笑う、か。

暑い季節には、確かに涼しげな衣装だ。 代わりに熱烈な視線を集めていた気もするが。)

「矢鱈目立ってたぜ? 何せ、随分と色っぽい事になってたしなぁ」

紅月 > 彼の軽口に「あらやだ、えっち」だとか「目立ちたい訳じゃないもん」なんて軽口で返し…ながら、やはりスリットの辺りを隠そうとしてしまうのは性分だ。
ほんのり頬も桃色に染まっているやもしれない。
…そんなことをすれば今度は胸が二の腕に挟まれ、それはそれは眼福な事になるのだが。
案の定、当人に気付く様子はない。

「ん? ん~…
……えっと、ね、イージュンっていう…帝国から来た服飾作家、なんだけど」

ぱちくり、と瞬いた後…口許を隠すように指を添えて紡いだ言葉は何とも歯切れが悪く。
はてさて如何に、どこまで説明したものか…と。
彼なら口は固そうであるし…というか、それなりに気に入っているだろう女の不利になるような事をするような小物じゃあない。
いい機会だし、色々話してしまおうか…なんて、思い至れば。

「…ん、よし!
イドさん、このあとお暇?
もしよければお茶でも…なんて」

一つ頷いて再び男へ視線を向ければ、コテリと首を傾げて問うのだ。
行き先は元々行くつもりだった帝国式喫茶か、それとも食事処か、はたまた酒場か…
ダメならダメで、また今度どこかで待ち合わせればいいだけの話だもの、と。

グライド > (元来は、こう言う方向で目立とうとする性質ではない
無論、其の女らしさは、正直衣服で隠した所で余り隠せる物でもないが
相手の底抜けな明るさが、何よりも毒気を抜いてしまうのだろう。
軽口めいて指摘はしても、だからといってセクハラめいた事を往来で指摘はしないだろう
どちらかと言えば、直接話をしない周囲の連中こそが
彼女の仕草に悩殺されていそうな気はするが。)

「……イーシェン? ……流石に知らねぇな、ソッチにゃ詳しくねぇ。
まぁ、用事は終わってるし、暇っちゃ暇だがよ。」

(女から、誘いの言葉が向けられれば
少し考えた後に、構わないさと了承しよう。
場所は別に何処だってかまいやしない、周囲の視線も大して気にしないし
今は私服だ、何時もの鎧姿と違って、喫茶に向かっても別に浮いたりはしないだろう)。

紅月 > シェンヤンドレスはタイトなラインが売りの民族衣装だ。
きっちり採寸して、体にぴったりのサイズを作るそのデザインは…迂闊に体型を変えられない程には稜線を際立たせる。
故に、何処かを隠そうとすれば別の曲線が強調される訳で…幾人か、明後日の方角へ足早に立ち去っていく。
女性からはどことなく生温い視線が向けられ始めた事だろう。
それを「あ、針の筵(視線)が軽くなった」と能天気に呟く辺り、やはり、ズレている。

「彼らが来たのは割と最近らしいからね~…
わ、やった!
ふふっ…折角こんな格好してるんだし、帝国料理のお店行こっかなーって思ってたんだ」

作家の名を知らぬと答えられれば、そりゃあそうだと頷いてみせ、後に続いた承諾に嬉々と声を弾ませる。
言い終わればスッと手を伸ばし、男の手をとろうとしてみる。
それが叶えば、こっちこっち、とはしゃいだまま手を引いて案内をするだろうし…叶わなければ、服の裾をちみっと摘まみ、のんびり案内する筈だ。
…とは言え、指差す先に"それっぽい"雰囲気の吊り看板が見えている為、案内するまでもないような気はするが。

王都の建築様式に帝国の飾りを適度に散りばめたその茶屋は、どうやらデザートの他に点心…粽などの軽めの食事なら出してくれるようだ。
飲料は茶の類いがメインであるが、桂花陳酒や紹興酒なども幾つか置いてあるそうな。

グライド > (耐性がない連中にとっては正しく刺激が強すぎるだろう
娼婦と言うには下卑さはなく、かといって扇情的には違いない
幾人かが何処かに去っていくなら、まぁ、理由はお察しだろうか)

「こっちとの交流が活発になってんのは知ってるがな
そう言う芸術関係の連中とは余り縁がねぇのさ。
遺跡とかで引っ張ってくる骨董品なら見る機会も多いがよ。」

(多分、王都で元々活躍している連中も、今一知らぬ。
現代的な流行と言う物を全く知らない訳じゃないが
そもそも自分には御洒落と言う物とは縁が遠いのだし。

女が帝国料理と言うなら、確かにこの近くには幾つかそう言う店が在ったと思い出す。
差し出された手に一寸瞳を瞬かせ、其れから、ふ、と笑って見せれば
其の手を取り、引かれるままに女の後を付いて行くだろうか。)

「コッチの酒はアンマリ飲んだ事がねぇな、そういやよ。
伝来で偶に手には入るが、そんなに質は良くなかったからな。」

(そう言う意味では文化交流の恩恵と言うのは受けているのだろう。
今までは手に入りにくかったものが、こうして簡単に眼に掛かれる様になったのだ。
自分では入らない店だから、基本的には女に任せる事となるだろう、が
酒や料理の類は、自分よりは詳しそうな女へと、問うて見るだろうか)。

紅月 > どうやら彼はガッツリ荒事寄りの人だったらしい。
予想はしていたから「あ、やっぱり?」なんて相槌を打ちつつ、納得したように頷いて。
…彼も磨いたら光るんじゃないか、なんて思ったのは、いつかお出掛けで買い物に付き合わせるまでは黙っておこうと密やかに誓う。

それも含めてホクホクと楽しげに…けれども歩く姿は衣装に相応しく、普段より少しばかり小さな歩幅のままに店にたどり着けば。
着席ついでにオーダーを。
自分にはジャスミンティー、彼には紹興酒(帝国の米酒で、確か我が故郷の米酒に酸味や苦味を足したような味だったはず)と…とりあえず甘い物としょっぱいものをバランスよく選び、好みそうな物を追加で頼む事にする。

「アッチとコッチ、仲悪いみたいだもんねぇ。
少しでも仲良くなってくれたらいいんだけど…なんかちょっと、何とも言いがたい雰囲気よ、お城ン中。
色ボケしてるし、キナ臭い感じもするし…」

いつも通りの平和主義かつ理想論な希望を口に…は、できなかった。
何とも困ったような、諦めたような…微妙な表情で声を潜める。
ひょっとしたら噂として既に広まっているやもしれないが、一応だ一応。

言い終えた所で届いたのは小ぶりの春巻と醤油仕立ての鶏肉粽、胡麻団子に月餅…サッと出せるものから出したのだろうラインナップだ。
…紅月の目は言うまでもなく甘味に釘付け、すかさず胡麻団子のひとつに箸をのばす。
他に頼んだのは小籠包、焼売に餃子、杏仁豆腐…蒸す時間がかかるものはそのうち届くだろうが。

グライド > (少しだけ忙しない歩みの女に、僅か抱く疑問
ただ、暫くしてその理由が、大股で歩けば
唯でさえスリットが目立つ衣装が大変な事に為るからだと察して
多分、僅か常よりも歩みは緩めと為るだろう。

店に入り席に着けば、余り知らぬ料理名に眼を通しながら
適当に、肉入りの料理――この場合は小龍包を注文して。)

「仲悪いのがこうなってんだ、ま、色々思惑が在るんだろうよ。
っても、一般市民レベルじゃ関係のねぇこった。
城ん中で何やって様が、コッチに伝わらないんじゃ意味がねぇしな」

(――どこか心配そうな女の物言いに対して、此方はばっさりだ。
どんなに何某かの策謀が国家単位で行われていたとしても
其れを個人で如何こう出来はしないと、割り切っているが故に。

先んじて届き始めた料理には、其の見目の鮮やかさに感心しながら手を付けて行く。
箸、と言うものはどうにも使い慣れない故に、フォークを頼んで使うのだが
美味い美味い、と評しながら、味わうんだろう)。

紅月 > 歩み方が違えば、背丈もほんのり違う。
普段と違う靴だからであるが、おおよそ7cmは低い筈で…椅子に座るまでは、その辺りも新鮮さに一役かっているやもしれない。

「一般市民、なら…ね。
そうなんだけど、ねぇ…?」

含みのある言い方で一度止め、ジャスミンティーで一息。
料理を気に入ってくれたらしい彼の食事風景に和んで僅かに現実逃避しかけるも、何とか意識を戻す。
いただきます、と呟いた口が空いているうちにどうにか次の句を言わねばと。

「……いや、そのぅ…実はですね、私、軍人さんの知り合い増えまして。
特に第6師団とは懇意に……それで、あー、えぇと…
その第6師団の団長さんの手助けするために、外部協力者として…客将、してたり」

言った、ついに言った。
御人好しを極めたが為に将紛いの事をしている、と…ようやっと白状できた。

「それでまぁ、ちょこちょこ城を出入りしてるから顔覚えられてたらしくてさ…今日の依頼人、なんと最近話題の帝国公主専属の、ファッションデザイナーさん」

外で子細を話さなかった理由がこれだ。
もしそのまま言っていたら、きっと面倒な事になった…そんな気がする。