2019/07/07 のログ
ご案内:「森の中」にベルモットさんが現れました。
■ベルモット > 吸血鬼だと嘯く女性との出会いから何事も無く数日が経った。
こうなると単に揶揄われただけなのかもしれない。なんて事も考える。
「そもそも吸血鬼が変化するなら蝙蝠だし、あの人の歯は別に尖っていなかったもの」
不可思議に煌めいて散り消える幻想的な蝶の群。あれはもしかしたらそういう形式の転移魔術なのかもしれない。
きっとそうだろう。そうに違いない──と、思う事で今日のあたしの心は晴れやかだった。
例え今居る場所が鬱蒼とした森の中だったとしても。
「しっかし暗いし蒸すし嫌な感じだわ……」
──王都近郊の森の中。近郊と一言に言っても、街道を一度外れた所に広がる自然は色濃いもので、無用に立ち入る者は数少ない。
依頼を受けた冒険者や獣を狩る狩人。そういった人達を狙う野盗の類が立ち入るくらいな森林は緑の気配に覆われている。
「ま、だからこそ他人に依頼して行ってもらおうってなるんでしょうけど」
朝から宿を出て昼前には森に入った。
それなのに獣道を行くあたしの行く手は鬱蒼として薄暗い。
見上げると幾重にも折り重なる木々の葉が陽光を遮り、ともすれば時間の感覚を奪われかねない。
■ベルモット > 「もうちょっと人の手が入ってるかなと思ってたけど、予想が外れても天才は慌てないものよ。
それにしても案外この国って自然派? 精霊信仰が盛んな印象はあんまり無かったんだけどなあ」
愛用の杖に炎を灯し、腰には虫除けの香炉を括りつけ、背に背嚢を背負ったあたしの独り言が続く。
今日、森に来ているのは茸採りの依頼を受けて。なんでもとても美味しい茸が森のとある地域に生えるらしく、
そこまで判っているなら自分で行けばいいのに。とも思ったのだけど、こうして難儀な道を進むとそういった思考も消え失せる。
今の所魔物の類と遭遇とかはしていないけれど、時折遠くから得体のしれない動物の声なども聞こえる訳で、
ただただ目的地に向かって歩くだけでも神経を使う。というか疲れる。
「ちょっと休憩しましょっと……ああ疲れた」
平地であれば目的地の途中までは乗合馬車も使えようものだけど、森の中ではそうもいかない。
あたしは倒木に腰を下ろし、背嚢から水筒を出して喉を潤してから溜息を吐いた。
たちまちに汗が吹き出してきて、もう一度溜息を吐いてからウエストバッグからハンカチを取り出して顔を拭く。
ご案内:「森の中」にラファルさんが現れました。
■ラファル > がさがさ。
がさがさ。
森の中休憩をし始める女性の少し外れた場所、茂みが動いた。がさがさ。
がさがさ、がさがさ、がさがさ、がさがさ。
音は、徐々に。徐々に、女性の方へと近づいていく。
茂みの大きさは、人の背よりも高いもので、それの揺れ方は、大型の動物が動いているような大きさであった。
がさがさ。
――――がさり。
そんな音を響かせて、茂みから出てくるのは、半裸の幼女、森を舐めるなと、レンジャーの人に怒られるような出達の幼女。
金色の瞳を爛々と輝かせ、その女性と同じ髪型の金のツインテールのお子様。
「およ?ベルモットだ、やっほ?」
左手を軽く上げて挨拶を。
その右手は……。
生きてるイノシシの足をつかんでおりました。
イノシシ必死に暴れてるのに逃げられない模様。
■ベルモット > 茸を採ったら帰り道は重量が加わり更に厳しくなる。
そう思うと、国元で冒険というか、探検をしていた時はパパの高弟が一緒に付いて来てくれていた事をも思い出す。
荷物とか、何時も持っててくれてたっけ──
「……おっと、過去の事を思い出すだなんて縁起が悪いわ。こういうの馬が走るって言う……」
曰く、人は死に際に過ぎ去りし日々を回顧するのだとか。
全く縁起でも無いと肩を竦めると、同時に物影が鳴った。
草木を薙ぐ風がある訳でも無く、明確な指向性を持ってあたしに近づく音だ。
「……………」
先程までの汗とは別の冷たい汗を感じる。立ち上がり、両手で杖を確と構え、意識を集中し、呼吸を整え魔力を通す。
大丈夫、やれる。あたしならやれる。自らを鼓舞し、影から何かが飛び出るに合わせて杖を振りかぶり──!
「……やっほ。じゃないわよ~もぉ。ああ吃驚した……」
次には気の抜けた挨拶に思わず此方も気が抜けて、へなりとへたり込んで、けれども直ぐに杖を支えに立ち上がる。
「こんにちはラファル。こんな所で会うなんて奇遇……狩りでもしていたの?」
視線はラファルの掴んでいる猪に釘付けだ。だって生きて、逃げ出そうとあがく猛獣を片手で掴んで離さないんだもの。
彼女が10歳という若さで魔法を修め、高等技能を有する冒険者である事はまだ解る。天賦の才媛と云うものでしょう。
でも、埒外の腕力は不思議に過ぎるというもので、釘付く眼差しはそれらが魔力由来なのかと瞳を細めて睨むかのよう。
「ちなみにあたしは狩りは狩りでも茸狩りよ。この先に美味しい茸が取れる場所があるんですって」
訝しく眺めながらも、それはそれ、と杖で獣道の先を示しもした。
■ラファル > 「ん!ご飯捕まえてたら、ベルモットの匂いしたから、一緒に食べよって思ったの!」
びくびくしている様子の彼女、仕方がないと思う、急に草むらから野生のドラゴンが飛び出すのだから。
あれ?彼女にドラゴンて言ってたっけ、うん、言ってない気がする、ま、いっか。
その証拠に、振りかぶられる杖、確か魔力のすごい杖でほしいと思っちゃうぐらいにお宝の杖である。
あれで叩かれると痛いのかな?金の瞳はきらきらと光輝き彼女の杖を眺めるのだ。
そして、彼女の質問への返答が、冒頭のそれとなるのだった。
「おお!キノコ狩り!焼いてよし!炙ってもよし!美味しい!
あっち……ああ!あの広場!」
野生児にとっては、森とか山とか川とか海とかそういうのは縄張りみたいなもので。
けもの道と彼女の茸とセリフと、方角だけで、大体の場所を把握したのだった。
「案内できるよ?一緒にそこでお昼にする?」
そろそろ血抜きしないとだよね、少女は腰に有る黒いナイフを取り出す。
竜の爪や牙などを素材にした黒い魔法のナイフ。
イノシシの首に突き立てて命を奪い、そのままある程度切り裂いて血抜きしやすいように。
血をだらだら垂らしながら、いく?と首を傾ぐ。
■ベルモット > 「御飯って……貴方御嬢様なのにワイルドよね……え、匂い?やだ、匂う?お風呂ちゃんと使っているし、香水も付けているのに」
向日葵のように鮮やかな金色の瞳を輝かせて子供らしく、実に子供らしく遠慮の無い事を言われてあたしは袖の匂いとかを嗅いでみる。
でも、自分じゃ良く判らなくて渋い顔になった。
「ううん野生的感性の為せる技……という事にしておきましょう。って道、判るの?それじゃあお願いしちゃってもいい?」
ラファルの鼻が良いだけ。そう心に決めつつ、帰ったらいつもより長くサウナを使っておこうと心に決めて、
思考を切り替えて表情も渋いものから崩れて緩む。緩むのだけど、彼女が猪を掴んだまま、片手で血抜きをし始めると
あたしの笑顔は張り付いたようにもなった。
「貴方、ほんっとうにワイルドね……筋力増加の魔術でも使っているのかしら。
……そのナイフも何だか違和感を感じるような、そうでもないような……ま、まあ行きましょうっ!」
余り血を見るのは得意じゃあない。だからあたしはきりきりと表情を身体ごと獣道に向けて広場へと向かう。
とはいえ案内をしてもらうのだから、どうしても視界に猪が入るのだけど、それはこの際割り切ろうと決めた。
そうして二人で暫く進むと木々の開けた広間のような場所に出た。
木々より生え伸びる枝葉は厚く、日を見る事は出来なかったけれど。
「この辺の筈……お、あれかな?」
黒く湿った土ばかりが広がる薄暗い広間をよぅく見ると何か白いものが見える。
近付くと白字に水色の斑点のある茸だと知れた。聞いた通りの色と形にあたしの鼻が得意気に鳴る。
「ふふーんあったあった。ラファルの案内の御蔭ね!見れば他にも幾つも生えているし採れるだけ採って颯爽と街に戻り──」
手を伸ばして茸を取ろうとする。すると目測を誤ったのか手は空を切った。
「……?」
もう一度手を伸ばして茸を取ろうとする。すると目測を誤っていないのに手が空を切った。
茸が動いたのだ。20cm程の茸に小さな足が生えて、うろうろと歩いてあたしから遠ざかろうとしているのが薄暗くとも良く判った。
「…………………………」
それを横目にあたしはウエストバッグから依頼書を取り出す。
成程、美味しい茸の特徴が詳しく絵付で詳しく記されているけど、歩かないとは何処にも書かれていない。
思わずラファルの方をみるあたし。その足元を茸が歩き、足に躓いて転んでいた。
■ラファル > 「だって、生活の半分はこういう所だもん。
お家にいても息苦しいし。
……?うん、香水の匂いもするし、石鹸の匂いもするよ?」
袖の匂いを嗅ぐ彼女に、うん、ちゃんと身だしなみ整ってるよ、とフォローする。
彼女の考えている通りに、嗅覚がすごいのである、視覚も聴覚も、ではあるのだけれど。
渋い顔になるのは、匂いを消したいのかな、という思考は……どっちかというと、シーフな方向の思考。
「うん、こっちこっち。」
だぱだぱだぱ、垂れていく血の道は、なんというか彼女をこちらへどうぞと誘うようにも。
呪術的な意味にも見えなくハイかもしれない、錬金術師の彼女から見れば。
背を向けているから、凍り付いている表情には気が付かない。
「筋力増強……?ボク使えるのは、風の精霊魔法と、竜語魔法だけだよ?
これは、おかーさんがくれたの。いいでしょー。」
魔術に関しての質問に関して、視線を向けて返答するのだ。
まあ行きましょうのことばにうん!と、嬉しそうに返答して、先にとことこ。
「えへん!」
案内が成功したらしい、少女は無い胸を張って全身で偉いでしょ、アピール。
そして目的の茸らしいそれを見つけて、近づく彼女。
歩き出す、茸。
戸惑う様子がみてとれる。そして、彼女はこっち見てる。
「それアルキダケ、っていうんだよ。
元気に歩く方が、おいしい奴だから、うろちょろしてるのをとるといいよ。
バターソテーがすごくおいしいよ。
あと、奥の方に、アルクダケっていう、頭の赤いやつがあるけど。
そっちは、人間には毒だから、取っちゃだめだよ。」
はい、困っている様子の彼女に、にぱーっとわらって、解説。
この辺を根城にしてるだけあって詳しい模様。
そう、言いながらてきぱきと、草の少ない所に、木の枝と石ころでかまどを作っていく幼女。
血抜きをし、内臓をとって。
イノシシを手際よく解体し、皮も剥いでいく。
彼女がキノコを採っている間に、美味しそうなイノシシの焼肉が出来る事であろう。
■ベルモット > 「成程元気に歩く奴……そうと判れば!」
あたし達の声に呼応するように広場の茸達が動き出す。
とはいえ20cm程度の大きさでしかなく、ただうろうろと歩いて逃げるだけで危険な魔物?では無いのなら問題は無い。
あたしは背嚢を下ろして藁袋を颯爽と取り出すわ。
「赤いのが駄目なのね。解ったわ、たかが歩く茸、なにするものぞ!」
そもそも茸が歩こうが歩幅の問題であたしの方が圧倒的に有利なのだから何の問題があろうか。
高笑いを引き連れながらに茸──アルキダケを追いかけ、容易く追いつき引っ掴んで袋に放り込む作業が今、始まる。
「そういえばさっきの話だけど……貴方って鼻、いいのね。普通森の中で石鹸の匂いまで判らないと思うのだけど。
それにその腕力も……親から……?そういうのってある……あるのかしら……いや、でも魔術の才能は遺伝するとか聞くし……」
ラファルは商会を管理する姉と錬金術師の姉が居る御嬢様で、当人は親から特異な体質を遺伝している。
そうなると、その遺伝が原因で彼女はこうして奔放にしているのかしら?
アルキダケを追いかけながらに話題を投げると、ラファルは慣れた手つきで火起こしの準備をし、猪を解体していた。
一人旅を続けるなら、あたしも解体とかを憶えた方が良いのかな?と少しばかり顎先を撫でて思案とてする。
すると、仲間を捕らえられた事を理解しているのかアルキダケがあたしの足に頭突きをしてきて、あたしに捕まり、袋に消えた。
「うーんこれくらい捕まえればいいかなあ。バターソテーが美味しいにしても、ちょっとあたしは食べる気がしないけど……
というかそもそも換金用だし。こんな茸が1本……いや一匹?100ゴルドだなんて物好きはいるものね」
ラファルの準備が終わるころには藁袋の中身はもさもさと蠢くアルキダケで満載で、
あたしは晴れやかな笑顔で彼女の元に向かう。機嫌がいいから、物言わぬ猪の頭にウィンクだってしてみせる。
■ラファル > 「がんばえー!」
肉を焼きながら応援する幼女。美味しそうな肉汁が炎に落ちて、ジュといい音もする。
てきぱきと取っていく姿がとても凛々しくてかっこいい、すごいな、と少女は目を輝かせるのだ。
「うん、怖くないからー!」
毒キノコでなければ問題ないし、毒キノコならボクが食べればいいだけの話だし。
あ、高笑いしてる彼女に、思わず物まねして見せる。
をーほっほっほっほ。お嬢様ぽいな!すごいな、と。
「ん?そかな、普通だと思うけれど……。
あ!そだ。
この間の、飴ちゃんのお礼!」
忘れてた、と幼女はぽむ、と手を叩く。
話題を投げられ遺伝の話、そうそう、と思い出したように。
懐……というか、ベルトの隙間から5枚程の鱗、鮮やかな緑の色をした
爬虫類的なそれである。
「ベルモット、あげる、ボクのだよ!お友達!」
戻ってきた彼女に嬉しそうに笑いながら差し出す。
彼女ならそれが何かわかるだろう、若くても高位の竜の鱗である。
ひんやりとしたそれは、風をまとっている。
硬さや重さ、バランスは投擲武器に良いだけではなくて、風の精霊魔法の触媒にもなろう。