2019/06/23 のログ
ノウブル > (訓練場、と言う物は、己には余り縁の無い代物であった。
戦いとは、狩りの中に在り、狩りによって、同時に鍛えると
――まぁ、こうして外の文明に触れることで
お世辞にも近代的とは言えぬ村であったが故だとは、理解する羽目になったが。

だが、其れは其れとして――一般市民もが利用できる訓練場、と言うものに
余りにも禍々しい気配を感じることになろうとは、思う筈も無かった。
思わず、何事かと様子を見に行けば、其処には紛う事無く「訓練中」の戦士の姿
ただ、矢張りと言うべきか、其の両手に握られている、少々所か物騒にも程がある代物に

―――僅か、片眉を跳ね上げ。)

「――――……元より腕は確かだが…。」

(――呟きながら、其の傍へと近づいてゆく。
相手の訓練、其の邪魔をせぬように、敢えて気配を消しながら、だが)。

ゼナ > 「はぁ…っ、はぁ…っ、はぁ……、ふうぅぅ……っ」

裂帛の気合と共に放った一閃が芝生の切れ端を扇状に舞い上げる。
深く吐き出す息吹と共に火照った体内に漲っていた練気を霧散させ、巨剣を横薙ぎにしたまま止めていた残身をただの立ち姿へと変じさせた。
小一時間にも及ぶ素振りは、照りつける陽光もあって戦士娘の身体中から汗を吹き出させている。上体を覆う短衣は汗の溜まりやすい豊乳の谷間を中心に汗濡れたシミを広げて肌に張り付いている。オフホワイトの色彩が濡れ透けて、乳肉の小麦色を薄っすらと滲ませているが、色々と無頓着な娘はそれに気付いてさえいない。
とは言えこう見えても一流に片足を突っ込みつつある熟達の冒険者である。
前触れ無く振り返るその所作は、刺客の放つ殺気に反応する剣豪のそれに酷似していよう。
稚気を残した童顔の中にあってそこだけが妙に強い印象を残す蒼瞳が、足音も立てずに近付く長駆を捉え――――ぱっとその表情を綻ばせた。

「お久しぶりです、ノウブルさん。こんな所に足を運ぶのは少し珍しいんじゃないですか?」

ペコリと下げた頭部が、顔横の細い三つ編みを小さく揺らす。
筋骨逞しい大男でも持ち上げるだけで一苦労だろう巨剣をヒョイと肩に担いだ立ち姿は、何の気負いも見られぬ自然体。しかし、斬りかかれば淀みない反射行動が切り返しの斬撃を放つだろう姿勢でもある。
それは褐色肌の狩人を信用していないという事ではなく、常在戦場がその身に染み付いている証と言えた。

ノウブル > (獣とは、注意深く、気配に敏い物だ。
狩りとは、そんな獣の死角を突き、認識を欺いて行う物だ。
荒野、森、川辺、様々な状況に於いて数多の獣を狩り続けて来た己も又
猫の如く、或いは闇を舞う蝙蝠の如く、気配を消す術には長けている。

――長けている、筈、なのだが。

一定の距離まで近づいた所で、娘が此方へと振り向く。
淀み無く、必要と在らば其の侭手にした剣を振るえる所作で
然し、其処に殺気や覇気の類は無く、そうする事が当然の如くで在るなら。)

「―――誰かの気配が、凄まじかった物でな。」

(告げて、娘の手にしていた剣へ、ちら、と視線を向ける。
己も己で、気構える事もなく娘と向き合いながら
僅かの間を置いた後、「其れは如何した?」等と問うだろう。
以前、実際に戦場で娘と相対した時には、持ち合わせていなかった筈の其れ
どこかで手に入れでもしたのか、と)。

ゼナ > 見るからに強そうな狩人の口にする"凄まじい気配"とやらが、まさか自身を評しての事だとは思いもしていないゼナは蒼瞳を数度瞬かせつつ周囲を見やる。訓練場の片隅、遠巻きにこちらを見つめる幾人かの姿はあるものの、近くには自分たち以外の人影は無い。
改めて彼に視線を向ければ、その紫瞳が肩に担いだ巨剣に向けられている事に気付き

「―――あぁっ、これの事ですか! えへへへ、すっごい剣ですよね、これ。見た目も凄いんですけど、実際の性能もとんでもないんですよ!」

とっておきのお宝を褒められた子供の様な、屈託のないはにかみ笑いを浮かべ、恋人からのプレゼントである竜大剣を構えてみせる。希少な鋼材と古竜の素材を惜しげもなくつぎ込んで作られた巨大剣は、大岩に叩きつけようとも刃こぼれ一つ起こさず、逆に岩塊を断斬する程の威力を有している。
剣刃の内から滲むマグマの如き炎煌と、柄元を侵食する暗色、その中央部に亀裂の如く走る紋様は紫電の輝きを見せていて、しかし、禍々しい見た目に反してそこから滲む気配に邪な物は感じられぬはず。
ゼナに言わせれば恋人の溢れんばかりの愛ばかりが感じられるのだとか。
ぶんぶかと巨剣を振りつつ、ひとしきりその性能を褒め称えたゼナは

「ふふふふー、これはですね、わたしの恋び……い、いえ、その……夫……妻……? ともかくわたしの大事な人からの頂き物なんです❤」

緩みきった笑顔が、小麦の頬を禍々しい剣身に擦り寄せてぷにぷにと歪む。
灼熱を思わせる色彩なれど、そこに見た目通りの炎熱は存在していないらしい。

ノウブル > (――少なくとも他に、あれ程の気配を出せる様な猛者は居ない。
無論、熟練の冒険者や、其れなりに手練の剣士等は居るのやも知れないが
少なくとも、彼らもまた、娘の訓練を眺め見て感心している位なのだから。

剣を指摘された娘が、其れまでの威圧感とは打って変わって、晴れやかな笑みで自慢して見せるものだから
掲げられた其の刀身へと視線を向け、確かに、人目で「真っ当な代物ではない」と判りはしても
其れ以上にはしゃぐ娘自身の様相が、余りにも無邪気なのに毒気なぞすっかり抜かれ。)

「――――――伴侶か。 …確かに、良い獲物だ。
御前が扱うからこそ、輝くのだろうな。」

(ふ、と笑った。 何か良からぬ輩が居たのならば、と気構えたのだが
如何やら、完全に取り越し苦労だったらしい。
どんな武器も、扱う人間次第で其の輝き方は変わる物だが、少なくとも相手が携える一振りは
与えた側、そして、貰い受けた側、何れもの想いが、形を成している様な…そんな、気配を感じられた。

其れと同時に、娘が今しがた口にした「大事な人」と言う言葉に
そう言えばと思い当たる節を感じれば。)

「随分と愛されているらしい、御前は。
……しかし…、……」

(言いかけて、ふと、視線を遠くへと投げる。
其の方向、遠巻きに見ていた観客の内、何人かは
間違いなく、この娘の訓練よりも寧ろ、この娘自身を値踏みする様な視線を向けている。
小さく溜息をついてから、娘の傍へと、其の隣へと歩み寄りながら。)

「――――惚気は、歩きながら聞く。」

(そんな風に、自分なりのからかいを交えながら
娘に対して、この場から離れるように促すだろう。
後は、余計な視線さえ離れれば、食事か、或いは食べ歩きにでも誘いながら
娘の、その「大事な人」とやらの話を、問うかも知れず――)。

ゼナ > 中には狩人の考えた通り、まだ若い見た目に反する確かな実力に瞠目していた者もいただろうが、ほとんどの視線は揺れ弾む柔肉に鼻の下を伸ばしていただけだったりもする。

「えへへ、ありがとうございますっ」

相変わらず堅苦しい言葉遣いが、しかし薄い笑みに柔らかな気配を滲ませ、素直に大剣を褒めてくれるなら、こちらもまた嬉しそうな笑みを浮かべて頭を下げる。
続いて彼が言い掛けて、しかし言い出しにくそうに口を噤む様子には小首を傾げ、見上げる蒼瞳に問いかけの色を覗かせる。

「ふふっ、それじゃあたっぷりとわたしの大事な人の話をしちゃいますね❤」

なんていいつつ立木の手荷物へと歩を向けたゼナは、狩人に背を向けたままきょろきょろと軽く周囲を見回して、いきなりズバッと汗濡れた短衣を脱ぎ捨てる。後ろからでもたわわな曲線が確認出来る豊乳が、揺れ弾む様を見せつけるも、どれだけ注意された所で異性に対する警戒心の薄さの直らぬ娘は「背中を向けているから大丈夫ですよね」くらいの感覚である。
そうして背負い袋から予め準備しておいた清潔な着替えを取り出し着替えると、何事も無かったかの様な顔で言うのである。

「それじゃあ行きましょうか、ノウブルさん。ええとですね、わたしの大事な人はリスって言って、それはもう可愛らしいお嬢様で……」

そうして二人は、戦士娘の自重しない惚気や互いの近況などを話しつつ訓練場を後にするのだった。

ご案内:「街壁外の訓練場」からゼナさんが去りました。
ご案内:「街壁外の訓練場」からノウブルさんが去りました。