2019/04/30 のログ
ご案内:「王都マグメール ホーレルヴァッハ邸」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 御約束待機中です
ご案内:「王都マグメール ホーレルヴァッハ邸」にクレマンスさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > ヤルダバオートから人攫いの様に聖女を連れ去ってから数日。
王都に構えた屋敷――本家の屋敷は領地内に存在するので此処は謂わば王都の別荘、ホーレルヴァッハ家の王都支部といった有様だが――に落ち着いて二日。

取り敢えず彼女を屋敷の使用人達に紹介し、王都を散策するに困らない金を与えたまでは良かったが、積もりに積もった書類の山と押し寄せる追加の書類やら面談の予定やらで大忙し。
結局、彼女と語らうどころか碌に褥を共にする暇もない程、延々と仕事の山を捌いていた。

「……此の書類はヴェルリナスへ。決済は済んでいる。公主達との夜会は3日ほどキャンセルしてくれ。本家から独身の縁戚を何人か送るとの事だから、それを待つ。来週にはハイブラゼールへ赴く故、馬車とホテルの手配をしておいてくれ。カジノの査察と彼方のギルドとの会合だ」

矢継ぎ早に書類に判を押しながら、入れ替わり立ち代わり訪れる部下に指示を飛ばす。豪奢な家具と装飾品に囲まれた己の執務室は、若干の喧騒に包まれていたが――

「……よし。火急の案件は是で一段落だな。皆も下がって暫し休め。残りは明日でも問題なかろう」

一通りの書類と予定の段取りがついたところで、部下達に暇を出して一段落。
一礼して立ち去っていく部下を見送れば、先程までの喧騒が嘘の様に執務室は静まり返っているだろう。

「……もう昼過ぎか。朝食も取っていなかったな、皆には悪い事をした」

窓から天高く輝く太陽の位置を眺めて思わず苦笑い。
小さく溜息を吐き出すと、無駄に豪華な造りの椅子に深々と腰掛けて肩を回した。

クレマンス > 二日というのは長いようで短く、またある意味では短いようで長い。
新生活に慣れるには短く、一日どころか人生の大半を教会で過ごしていた聖女は
“貴族の側に侍る女性”としての振る舞いを知らぬまま、どうにか生活している。
王都の教会に顔を出してみようかと思う程は未だ時間が経っておらず、整理することもある。
だが一日中追われるようなことでもないために、ふと窓の外を見れば一日は長いと感じる。
聖書を読んでも神と対話しても、時間は余っていた。

今朝、新たな手紙が義父から届いた。
納得しているようにも見えるが、隙あらばお前の意思で戻って来れば良いと言いたげな文章を
読み終え、手紙を元のサイズに追って引き出しの奥へ。

聖女は与えられた部屋からおもむろに出ると、廊下を歩いて行く。
今日は天気が良いのでお庭でも散策しようかと思っていたが、途中見掛けた部下が執務室方向から来ていたのだと気付いた。
二十歳前後に見える聖女、実際は人生経験三年ということもあり、たまに子どもっぽい真似をする。

とととと…と早足に執務室の前まで来ると、ノックを二度。
鼻をつまんで声色変え、なるべく低い声を出そうと努め。

「ギュンター様。御覧頂きたい資料がもう一つ残っておりました」

これで中に少年以外の誰かがいたら困るのだが、そこは半分龍の血が入った身。
彼の気配以外を感じないのを知っていての行動である。
気が散っているとたまに外れることもあるのだが。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > ぐったりと椅子に腰かけていれば、部屋に響くノックの音。
はて何事か、と思って居れば、聞き覚えの無い部下の声。
官僚の誰かが宮中から来たのだろうかと思いなおし、姿勢を正して椅子に腰かけ直して――

「…部屋には私しかおらぬ。構わぬから、そのまま入ると良い」

部屋の扉を主に代わって開く侍従すら、今は暇を与えたばかり。
やむなく幾分声を響かせて、扉を叩いた相手に声を投げかけるだろう。

——まさかその相手が、己が攫ってきた聖女だとは夢にも思わぬまま。
机の上に広げていた資料に視線を落としながら、相手の入室を待つのだろう。

クレマンス > 部屋の中に一人という確信が得られると、畏まる必要はなくなる。
扉を開け、その隙間にするりと身を潜らせ入室。
一息ついたのかと思って入ってみたが、少年は未だ仕事中に見える。
こちらに視線が向くまでの間どれだけ近付けるかは分からないが、近付けるだけ近付こう。
声が楽に届く距離まで行ければ良い。そして、気付いた時にはほんの少し驚いてくれれば満足である。

「資料というのは……これなのですが」

今度は鼻をつまむことなく地声で、スカートのポケットから取り出した紙を両手で差し出した。
王都の一部の地図。それにいくつか印が付けてある。
女性向けメニューが豊富だと銘打つカフェや、自然に溢れた公園など。

昨晩一人で過ごす時間、どこに行ってみたいか考えていた。
王都は初めてではないが、訪れるの繋がりのある教会か、寄付をしてくれた貴族に礼を述べるための行脚程度。
俗世間には疎いからこその選択といった場所を点々と示した地図。