2019/03/16 のログ
ジード > 「クスリの減りが早いか。…こんなもんだな」

これくらいにしておかないと後が大変そうだと考えながら
薬の材料を考えて少し目を細める。
根城にしている場所に貯蓄している材料を思い返し。

「よし、今度冒険者でも雇って素材を取ってきてもらうか」

誰か丁度いいつてが居たかと考えながら立ち上がって店を片付けて去っていく。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からジードさんが去りました。
ご案内:「地下牢のような場所」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 目を開いても黒、閉じても黒。

「―――……うそ…どこ ここ…?」

目が覚めた少年が起き上がったのは、大人が大の字に寝れるかどうかの狭さの、薄暗い牢のような部屋。
壁や床をぺたぺたと触って、出入り口にあたるものを探すが、薄暗さも手伝って全く判別できない。

少なくとも少年の細腕では、どの面も精一杯押しても、何も起こらなかった。

「んん~~~~っ!…っふぅ…ふぅう…
どうして、こんなトコに…?」

最後の記憶は、王都とシェンヤンを行商として行き来していた時だったか、
落とし穴に落ちただとか、何者かに襲われて拉致監禁された記憶はまったくない。

…あるいは、その実感も与えられないほどの、
何者かの手際なのだろうか。
ひとまず、何者かの存在を仮定して、声を出してみる

「えぇと……だれか、いますか~~~…?
… だれか、いますかぁーーー?」

タン・フィール > ―――因みに。
少年からは見えぬ客観的事実。


この場所の正体は、王都とシェンヤンを繋ぐ街道に掘られた、
奴隷や捕虜を監禁するための地下施設である。

街道からやや外れた場所に数点、移動と罠を兼ねた落とし穴が掘られ、
落下したものはこの地下牢に直通する仕掛け。

この地下牢へは、王都の貧民地区・富裕地区・奴隷市場の、
およそ普通に生活していると気づかない秘密めいた通り道から訪れることができ…
時折、浮浪者や冒険心に溢れた子供や、道に迷った旅人が、
此処に行き着いてしまうことがあるという。

そんな物騒な監禁施設に
少年が薬草にでも気を取られて、偶然穴にはまったのか…
或いは、何者かに意図的にここに連れてこられたかは定かではない。
……いまはまだ。

タン・フィール > 「誰か―――けほ、えほっ…! ふう…」

今の時間が、朝か昼か夜かも判断がつかない漆黒の闇。
助けを呼び続けた喉に負担を感じ始めて、一旦黙り込む。

座り込んで、部屋の中心から前後左右に囲む壁を、
その姿勢から少女のような細脚で、ガンガンと蹴り押して見る。

ゴンゴン…
ゴンゴン…
ドンドン…
ゴンゴン…

「―――! ここだけ、音、ちがう!」


一面だけ音の違った壁を、何度も脚で蹴ったり、
何か僅かにでも脱出の取っ掛かりになるものはないか手探りで探して、
ぺたぺたと壁のあらゆる場所を、小さな手のひらが這い、探る。

ご案内:「地下牢のような場所」にマリアン・ブラックバーンさんが現れました。
マリアン・ブラックバーン > ドガ!

突然、壁の向こう側より手が伸びてくる。
その手は壁の一部を突き破るようにして出てきており、丁度壁を弄る小さな手を掴んだ。

「先程から人の声がすると思っていたら、こんな所に何の用だね。」

壁に出来た小さな穴より腕だけが伸びている状態。
向こう側に居るのは声からして女性か。

少年の居る部屋と異なり、声が聞こえる方向からは一切の光が差しこむことは無かった。

タン・フィール > 「いっ…!!!?」

長い時間、その耳を鳴らしていたのは、助けを呼ぶ自身の声と、壁を蹴る音だけ…
そのなかで、壁を突き破って伸びてくる手。
それが探っていた細腕を確りとつかめば、
驚きのあまり思わず甲高い声をあげて。

「……え、ぁ…?…あ、あのっ…! 気がついたら、ここに閉じ込められてて…!
こっちからじゃ、どうしても出れないんですっ、けど……っ!」

と、必死に腕を振り払ったり、パニックを起こしていないのは、
今のところは掴んでくる腕の力に、敵意めいたものを感じていないから。

それでも、声色から動転は伺えて。
なにせ、光の差し込まぬ暗闇で、常人ではぶち抜けそうもない壁を破った、腕に話しかけているのだから。

…ひとまずは、事故か、悪意かで、
囚われとなっている子供が壁の向こうにいることだけが、伝わってくれだたどうか。

マリアン・ブラックバーン > 「…ふむ。」

壁の向こう側から聞こえてくる声は落ち着いていた。

困惑気味に訴えかける少年の腕を掴んだままで暫し静止。

やがて壁の向こうより声が聞こえて。

「ここは古い地下施設だ。
君は何らかの事故で嵌り込んだか、誰かに入れられたと言った所だろうな。
ちなみに私はここに好き好んで出入りしている。
太陽の光が当たらなくて快適でな。」

壁をぶち抜き伸びてくる手、太陽を嫌うと言う特徴。
声の主がヒトならざる存在であることはこの時点で感づくことだろう。

「さて、提案だ。
私の居る部屋から街まで戻ることは酷く簡単だ。
私は夜目が効くし、いざとなれば魔法も使える。
君を連れて出てやることも構わないのだが、何分対価が必要でな。」

タン・フィール > 「ちか…施設…っ」

掴まれた腕でもしも脈を測っていたとするならば、その混乱と不安は、
非常に複雑なリズムを刻んでいたことだろう。
けれども、徐々に激しさと混乱が静まっていくのは、壁向こうの染み入るような声に、多少なりとも影響されたからか。

「なるほど……ここに入ったときのこと、覚えてなくて…。
こ、このままじゃどんな目に合うか、わからない、から…」

ごくり、と一瞬、細い喉を鳴らしつつ。

「…わかりました…
あ、あの…ボクは、薬師のタン・フィールといいます。
できることなら、お礼はなんでもしますから…っ
ここから、出してもらえますか…?」

と、罠に嵌ったにせよ、何者かの監禁にせよ、
このままでは此処にどれだけ閉じ込められるか分からない状況に比べれば、
言葉の端から感じた、人ならざる者の、人ならざる対価であろうと、受けようと。
それらも受諾したように掴まれていた腕の力を抜いて、
その態度と言葉で対価を受け入れ、あらためて助けを乞う。

マリアン・ブラックバーン > ひたすら早くなっていた鼓動が次第に落ち着きを取り戻していく。
こちらの説明に状況を理解できたのか。
壁から伸びている腕は少しだけだが力を抜く。

「覚えてないとなれば今更究明は難しいな。
まあ、君の読みは正しいだろうな。
この辺りは日の当たる場所に出れない者達がよく現れる。」

頭が回る様になれば飲み込みも早い。
この少年は本来聡明なのかもだろう。

「私はマリアン・ブラックバーンと言う。
今言った言葉を忘れるなよ。

…まずは壁をぶち抜く。
危ないから離れていたまえ。」

タンと名乗った少年の手を離すと、一度穴から腕が引っ込んでいく。

彼が穴の開いた壁から十分に離れたのを確かめれば、次の瞬間派手な音と共に壁が木端微塵になって崩れ落ちる。

埃が舞い散って視界を塞ぐが、暫くして暗がりの中にフードを被ったヒトの輪郭が見えるだろう。

タン・フィール > 「は…はい…っ!」

一度離された手と、離れているようにとの指示に、
壁からそのまま後ずさるのではなく、破片などが飛んでくるのに備えて、
90度脇に逸れた角度で身を引いた要領にも、
落ち着きを取り戻せば目端の効く子供であることが伺いしれた。

そうして、宣言通りに、壁が壁でなくなる一撃。

もうもうとけぶる埃が舞い、それが晴れると、フードを被った救世主の眼前に、脇から小さな人影が姿を表して。

「……凄…い。  …あ、あのっ…ありがとう、ございますっ!」

深々とお辞儀をしてから顔を上げたのは、
丈の短いベストと短いパンツに、所々に薬の袋や瓶の袋を下げた小柄な少年。
声変わりのない声色やなめらかな肌の肩や肢、長いまつげの大きな目は、
ひと目見ただけでは少女と見紛う者も多いだろう。

嗅覚に優れたものは、その肉体から日頃取り扱う薬草や香草の名残を嗅ぎ取り…
その血や、瞳を覗き込めば、遠く魔族の血も混ざっていることも分かるだろう。

今の所、その魔性は全く垣間見えず、マリアンと名乗った吸血鬼の眼前には、
行儀よくお礼と挨拶をする、一人の薬師の少年が佇むだけで。

「よっ…と…とと…っ…」

瓦礫を避け、1歩、2歩と牢から出るために歩き出すが、なにぶん魔族でなければ不自由する暗がり、
おぼつかない足取りと、頼りなげに壁を探る手が揺らめいて…

マリアン・ブラックバーン > こんな所に放り込まれた少年は意外に器用な少年であった。

腕が当たることのない直角の位置にすぐに離れている。
こういう危ない場所での経験が豊富なのだろうかと女は内心感心していた。

「礼には及ばん。等価交換だ。」

闇に隠れてしまいよく見えないだろうが、フードを被った女は緩く笑みを浮かべていた。
何せこれから脱出するまでにかかった手間は全てこの少年から請求するのだから。

しかし…。
夜の眷属だけあってこの暗がりでも視界に不自由しない女。
赤い瞳が少年の中性的な身体つきを、嗅覚が匂いを、そして魔力が彼のおおまかな素性を掴んでいく。

それでも今の所互いの立ち位置に変わりは無い。
彼は自力での脱出が出来ず、こちらはそれが出来るのだから。

「おっと。 大丈夫かね。」

今にも転げそうな小さな体を受け止める女。
身体が触れあえば、互いに柔らかい感触が跳ね返ることだろう。

「せめて街に着くまでは五体満足で居てもらわないとな。
その後のことは保障できないが。」

タン・フィール > 「は、はい…あの、ありがとう、ございます…っ」

ふらついた小さな体を受け止めてもらって、
照れくさそうにしながらも安堵した小動物のように、
体重も、行先も…もしかしたら運命すらも、
今は自分を救い出してくれた女性に預けて。

「五体満足って……あはは、こわいな…」

と、頬を掻きつつ、
女性に手を引かれて、暗闇の廊下を連れられていく…

ご案内:「地下牢のような場所」からマリアン・ブラックバーンさんが去りました。
ご案内:「地下牢のような場所」からタン・フィールさんが去りました。