2019/01/23 のログ
ご案内:「平民地区のオバケヤシキ(地下)」にエルディアさんが現れました。
ご案内:「平民地区のオバケヤシキ(地下)」に紅月さんが現れました。
エルディア > 薄暗い地下空間の一室にぼぅっと青い光が満ちていた。
そこには石灰質の水盆のような受け皿の上に
真珠質で、無数の貝殻質に包まれた巨大な卵に似た物体が宙に浮いており
その周りを無数の立体魔法陣が取り囲んでいる。
人が両手を広げても収まるような大きさのそれは
前面の一部がぽっかりと空いており、今は僅かな駆動音のような音を響かせていた。
その中心には微睡む様な雰囲気で漂う小さな影があった。
それは水中を泳ぐ魚のようにその物体の前へと漂い、
一つ満足げな吐息を零す。

「……はふぅ」

自分用のポットは無事設置出来ていた。
半迷宮と化している此処は隠蔽に丁度良い場所。
暫く拠点(ポット)を設置する事は無かったけれど
そろそろ必要かと思っていたところだったので丁度いい。
表面に軽く触れるとシェルの内側に様々な光と魔晶板が煌めく。
周囲には起動しているポットの影響で様々な物体がふわりと宙へ舞っており
ポットが放つ碧い光を乱反射しながらクルクルと回転している。

「……」

中空に浮きながら少し前の戦闘に思いを馳せる。
何せ今回ばかりは少し損傷が多かった。
おおよそ6000℃超の超高熱をばら撒く術式を
不完全ながら自分をも巻き込みながらぶっぱなして更には防御もせずに突っ込んだわけで……
幾ら発現時間を一瞬に限定しても普通に考えたら一瞬でも溶ける。一瞬で溶ける。
……実際その3割弱程度の火力しか出せなかったけれど、それでも普通に炭化するには十分な温度。
実際一時的に体の大半を持って行かれた。
普通なら即死待ったなし。

「んー……」

今は白い腕を眺める。
表面上は今は治っているように見えるけれど、異常が残っている可能性は高い。
メディカルチェックは一応軽くしてみたけれど何時もの異常値以外にも
やはりというべきか異常値が目立った。
現に今腕にはあまり力が入らず、生活にも”腕”を使うほど。
バランス感覚も微妙におかしく今日だけでも何度もこけた。
逆に気を抜くとドアノブを握りつぶし、引っこ抜き、
ぼーっとしているとドアを”素通り”したりもする。
基本的に痛覚等の体の感覚は狂っているので
咳とか見てわかりやすい症状以外では判断が出来ない。
何かほかの手段で異常を見つけなければならず
そうともなるとポットを引っ張り出す以外思いつかなかった。
……暫くは大人しくするしかない。
まぁ家主は割と緩い人なのでこれくらいは大目に見てくれると思う。

「んしょ」

ポットに入る前に投げて、今はふわふわ浮いているローブに手を伸ばすと
ぽすっと頭からかぶり、数秒静止するともそもそと頭を出す。
これは顔も隠れるし良い匂いがする。良いものだ。
丈が合わず腕も足も出ないがそれはまぁ踏まないようにだけは気を付ければ良い話。

「……」

そういえば家主はもう帰ってきているだろうか。
もう帰ってきているなら良いのだけれど、
もし、まだ帰ってきていないなら……そう考えると
胸の辺りにドロドロとした感覚を感じる。
たまに帰るのが遅いのは……また誰か別の誰かの香りを纏っているからだろうか。
いや、移動機能が十二分に回復していないのかもしれない。
そう考えながら上階に向かおうと扉に手をかける。

紅月 > 「……、…あっれぇ…?」

地下への隠し通路が、開いている。
色とりどりの野菜が入った紙袋を持ったまま、リビングの本棚…正確には、本棚の裏の隠し階段入り口で首を傾げる。
そのまま天井を見上げて上階の気配を探るも…拾い子の気配は無し。
もう一度、階段に視線を戻す。

「……エル、知らない?」

近くにトテトテやって来た子竜に紙袋を預けつつ訊ねれば、尻尾の先で示す、床…すなわち、地下。
いつの間にバレたのかと頭を抱えつつ、とりあえず階段を降りて隠し部屋の中へと入れば…そこには転移魔法の高位魔方陣や魔法石がゴロゴロと。
紅月の神出鬼没さのタネが、所狭しと詰まっていた。

「あー、やっぱり…魔素残ってら」

転移魔方陣の一つ、常に使えるようにしてあるそれはこの家の更に真下…地下空間へと転移するもので。
溜め息ひとつ…かの魔族幼女なら大概の事は力業で突破しそうであるし、どちらかと言えば彼女の身よりも我が家の倒壊の方が若干心配で。

「…迷子になったら可愛そうだもんな。
エル~、お迎えですよー?」

若干ふらつきつつルームシューズから靴に履き替えて転移陣を発動させれば、其処は地下らしくもなく明るい…壁や天井に明かり代わりの魔石が配されていたり、燐光を纏う妖精の類いがあちこちに居る為に過ごしやすいくらいだ。

「……ん、ぅ?」

カツカツと靴音を立てつつ散策していれば、妙な気配。
目を遣れば、小石が浮いている。
…いやいや可笑しい、仕掛け扉は作ったけど重力操作の絡繰なんかまだ作ってない筈だぞ。

「……、…エル…?」

隠し扉に触れ、開こうと…奇しくも室内の少女と同じタイミングだったらしく、扉が開くと同時にうっかりバランスを崩して室内に転がり込む事になる、か。

エルディア > 「んぅ?」

ドアに触れて解錠すると同時に扉が開く。
鍵はハックしたけれど自動機能を付けたつもりはないのだけれど……
同時に飛び込んで床あたりを漂う人物を見ると少しだけ瞳が真ん丸になるが、
その所々に残る冷気……外気の香りに気が付くと

「……いま、かえり?」

目が細められると同時に辺りの気温が数度下がる。
見上げればローブで陰になっている顔の、瞳だけがぼんやりと光って見えるかもしれない。
傍目から見れば完全にオーバーサイズのローブを纏い
萌え袖余り丈で宙に浮かぶシーツお化けの亜種のような見た目。

「……」

胸の奥にドロリとした不可解な感覚が満ちる。
これも異常の一つだろうか。

「こーげつ」

中空から見下ろしながら短く一言。

「……こっち、くる」

そのまま空中を滑る様に部屋の外へと進んでいって……
同時に背中から一本の禍々しい腕が家主へと伸び
まるで人形の様に鷲掴みにして持ち上げようとするだろう。

紅月 > 「……い!?…たく、ない…?
え、わ…あわゎ、と、とっ……」

ころんと空中で一回転…奇妙な浮遊感に閉じた目を開けば、何だか色々ふよふよと浮いた不思議空間。
最初は普通の喫茶店舗付き家屋だった筈のこの我が家…かなりの魔改造をしたつもりだったが、ここも大概である。
慣れない無重力の中でどうにかバランスを保ち、キョトンと見渡していれば…見覚えのある布、もとい、ローブを纏った探し魔族の姿。

「あ、エルいたっ!
ただいま~…帰ったら2階に居ないんだもん、ビックリしちゃった」

ホッと一息…どうやら変な所に迷い込んだとかでは無かったらしい。
ふわりと笑いかけ、た…後。
何やら不穏な空気を感じ取り、固まる。

「…え、あ…はい?
……いやあの、エルさん?…エルさ~ん?」

名前を呼ばれたから返事、後、思わず敬語…次いで冷や汗。
何故だかはよくわからないが御立腹らしい魔族っ娘…その背から生える巨大な腕に胴を鷲掴みされるも、とりあえず抵抗するでもなく好きにさせてみる。
何処かに行きたいんだろうか…いや、それより、何か悪い事したっけ?
掴む指の上に両腕を置き枕代わりにしつつ首を傾げ、ぷらりと足をたらし…様子見。

ご案内:「平民地区のオバケヤシキ(地下)」からエルディアさんが去りました。
ご案内:「平民地区のオバケヤシキ(地下)」から紅月さんが去りました。