2019/01/08 のログ
ご案内:「王都マグメール/平民地区/防具屋/」に幻鏡の迷宮さんが現れました。
幻鏡の迷宮 > 王都マグメール、のとある防具屋にある試着室の一室が今宵日常が崩れ非日常に歪む運命に有る。

無論それを阻む手は無数にあり、一番簡単なのはそれに近づかない、その試着室の扉を開けない事であるが、不思議な事に夜遅い時間帯だと言うのに冒険者や服や装飾品を見に来た人間が疎らに居て、誰しもが各々購入予定の商品を抱えている人間たちが自ら購入した商品を試着しないで購入などするであろうか?

サイズ、着心地、望んだ防御力であるかデザインであるか、誰に見せるのか自己満足する為か理由は様々有るだろう、複数有る試着室はそんな客で埋まったり、空いたりと忙しない。

だが、不思議な事に『彷徨いの呼鈴』が備え付けられた試着室に近寄ろうとする人間はいない、寧ろその部屋だけがもとより存在しない部屋の様に店員ですら見向きもしない。

しかし不幸にもその存在に気がつく者がいるとするなら、末路は創造に容易い、扉を開けその風圧で『彷徨いの呼鈴』は金属板を爪で引っ掻いたような不愉快な音をたたせ、聴く者に怖気立つ程の恐怖を与え、狭い試着室は試着室ではなく、謎を解き明かし報酬を得て其処より逃げるための密室になるだろう。

狭い室内、大きな姿見、人間の腰程度の高さに所持品や貴重品を置くための申し訳程度の棚があって其処に『彷徨いの呼鈴』に置かれている。

店員が悪戯に設置したのか、誰かの忘れ物か、理由は様々考えられるが確かに其処に災いの種は存在していて。

幻鏡の迷宮 > 様々な理由が融解し、此処に何故『彷徨いの呼鈴』が存在したか、謎が解ける前に『彷徨いの呼鈴』はとろりと溶けて、不可思議な色の粘液と成り果てて試着室の床へと垂れ落ちる。

垂れ落ちた粘液もやがて床に吸収されて、其処にはそれが存在したと言う魔力の残滓だけを残して、試着室は再び人の手へと戻る。

誰も其れが存在していたとは気がつかない
誰もこの試着室が使われていなかったとも気がつかない

ご案内:「王都マグメール/平民地区/防具屋/」から幻鏡の迷宮さんが去りました。