2018/12/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 西はずれの居酒屋」にぼたんさんが現れました。
■ぼたん > 平民地区の西はずれにある、ごく狭い居酒屋。
まだ宵の口だが、表の提灯に灯りはなく、店内にはカウンター席に突っ伏している店主の女がひとり。
何やらことことと、煮付けている香りが漂っているが、女が顔を上げる気配はない。天井近くの壁にあるぼんやりと灯りに照らされて、商売する気があるんだか無いんだか…
ご案内:「王都マグメール 平民地区 西はずれの居酒屋」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 「やっと見つけた」
平民地区の外れという情報だけ聞いて探して、ようやく見つけたそのお店。
中からは何時も食べているメグマール料理とは違う、優しい匂いが立ち込めている。これは、和食という物だろうか。
「おじゃましまーす」
そう言って、お店の扉を開ける。
すると、中にあるのは何やら突っ伏している店主の姿
「あ、あれえ?どうしたの?大丈夫……?」
そう言って、彼女に近づいていく。
■ぼたん > 店の戸を開ける音がして、億劫そうに顔だけをそちらに向ける。
「ンん…」
横たわった世界に見知った姿を見つけて、数度瞬いた後そのまま気だるげに笑う。
「おやまァ…ひさしぶり」
ゆっくりと身を起こすと、ぼやっとした瞳で横髪をかき上げながら
「ごめんよ、ちょっと眠たくなって…お腹、減ってるかい?」
■クレス・ローベルク > 流石に厨房に立つのは憚られ、カウンター越しにぼたんを見る。
こちらに気付いた様だが、どうにも気だるそうだ。
前に森のなかで会ったときには、確かに意識はぼやけていたが、しかし寧ろ、森のなかに行くという確固たる意思の様な物があった気がするが。
「お久しぶり。ようやくお店を見つけたんだけど……この分じゃあ、お仕事は難しそうだね」
と苦笑する。
「いや、お腹はあんまり空いてないよ。
ご飯食べた後の散歩で、偶々見つけたんだよ。今日は半分、挨拶のつもりで来たんだ。」
いや、実際には今日は和食のつもりで此処に来たのだが。
しかし、此処で本当のことを言っても、恐らく料理などできまい。
「お店、閉めたほうが良いんじゃない?何なら、手伝うよ?」
■ぼたん > ふあ…と小さくあくびをして、下がり気味の目尻を擦ってまた気だるげに笑う。
「大丈夫…ここンとこ少し、仕事が立て込んでただけだから…」
座ってくれ、と手で示しながら立ち上がって、煮付けていた鍋の様子を見る。そうしてから首を傾げて
「じゃァ、お酒、燗でも付けるかい?折角来たんだし…」
言いながらもう、燗につけるための徳利を棚から出している。
■クレス・ローベルク > 「まあ、それなら良いけど」
前回の出会い方が尋常でなかっただけに、少し警戒しすぎたかもしれない。
取り敢えず様子見しよう。となると、此処で必要以上に気遣うのも相手に失礼かと考え、厚意に甘えることにする。
「うん、じゃあ頼むよ。
東国のお酒はあまり飲んだこと無いから、楽しみだ」
一応、シェンヤンの酒ならば経験はあるのだが。
それとはどの様に違うのだろうか、と少しワクワクする。
■ぼたん > 気だるげな笑みを深くすると、徳利に酒を注いで燗の用意をする。火にかけた湯で温まり始めれば、すこし甘い香りが漂い始める…
その間に何やらまた棚から出して、まな板で切り分けながら
「ちょっと最近借金こさえちまって…落ち着かないから早く返そうと思って、昼働きすぎたみたいなンだよねえ…」
切り分けた茄子の浅漬けを小皿に盛って、彼の前に置く。そうしてからはた、と目を瞬いて
「と…お箸、使えるかい?」
■クレス・ローベルク > 「ああ、カン、って燗の事か。温める酒か……。
ホットジンとか、ちょっと毛色は違うけどホットワインみたいなもんかな……。それよりは、まろやかな甘い匂いだけど」
一応、酒の味はある程度知っているつもりだが。
それにしても、この甘い匂いは良い。
ホッとするなあ、と思うが、それとは別にぼたんが語るのはややヘビーな話題だった。
「借金?経営が悪いのかい?確かにお客はあんまり入って……」
と、ちょっと失礼な事を言いかけた所に、小皿が置かれる。
紺よりも尚濃い、青黒い色のそれは、確かナスと言う物だったか。
ともあれ、フォークかスプーンをと机の上を見回すが、あるのはハシとかいう、これまた自分にはあまり馴染みのないもの。
「いや……一応子供の頃にマナーだけは叩き込まれたけど、かなりうろ覚えだなあ……。
ナイフとフォークがあれば良いんだけど」
■ぼたん > 彼の困った様子にくすりと笑って、ひとまず、とフォークを差し出す。そうして甘い香りが強くなってきた燗の温度を確かめて、火を弱める。
「今日は…ってェか、夜休みがちになっちまったから、ちょいと客足が遠のいてンのは確かだねえ…昼の仕出しとかより、店やったほうが儲かるのは確かなンだけど…」
困り顔で徳利を湯から引き揚げて、手ぬぐいで拭ってからお猪口を彼の前に置く。それを手に持つように勧めながら、はたと目線を上げて
「あァ…借金は、高いクスリ買っちまったからだよ…」
ちょっと聞こえが悪い言葉をつるりと
■クレス・ローベルク > 「あ、有難う。っていうか、やっぱりフォーク欲しいってお客さん居るんだね」
それに何だか安心感を得つつ、フォークで刺してぱくりと一口に。
水っぽい食感と、しょっぱい味。発酵食品の様だが、ピクルスとはだいぶ違う。とはいえ、これはかなり言い表しにくい味だ。
「美味しい……けど中々独特な味だね。食感が……こう……って、それならお店やったほうが良いんじゃ……?」
何かいい表現を見つけようとしていたが、ぼたんが話しかけてくればそちらに応答。何か、事情があるのかと首を傾げる。
そして、
「クスリ……?何か病気なのかい?」
最初に会った時は何処か強かな所があった故に、意外ではあった。
■ぼたん > 「まァ、箸で大丈夫てェひとのほうが少ないよ…」
微笑いながら、徳利を持って首を傾げる。病気かと問われれば、ううんと逆側に首をひねって
「なンかアタシ、寝たまま何かしてる時があるらしくって…『夢ン中から、寝てる自分が何してるか見れる』ってェやつを買ったンだけど…ちょいと、そいつがね…」
結局まだ使ってないンだけど、と自嘲しながら肩を竦める。
「まァ、大したことないよ…ほら、注いだげるから、お猪口持って」
徳利を目の前に掲げて見せながら
■クレス・ローベルク > 「寝たまま何かしてる……ねえ、っておっと失礼」
余りに会話の内容が衝撃的だったので、器を持つのを忘れていた。
猪口を持って、注ぎやすいように少し傾ける。
「ふうん、そういえば前に森で会ったときもそんな感じだったね。
でも、成程。そういう魔法薬の類なら高いよなあ。でも、何で使ってないの?」
普通、自分の記憶がない所で自分が何かしているなど怖くて、一刻も早く確かめたいと思うが。
「大分大してると思うけど……まぁ、人それぞれといえば、人それぞれなのかなあ……」
そう言って、徳利の中身を味わうようにゆっくりと呑む。
■ぼたん > 「よォく考えたらアタシ、いつそンなになるか解らないンだよねえ…毎日、飲むわけにもいかないしサ…」
注ぎ終われば徳利はカウンターの上へ。少し甘口だが、そこそこ強い酒だ。口当たりはさらりとして、後味があまりない。
「まァだから、お守りみたいなモンかな…結局」
残っている借金をかんがえると、少し憂鬱そうに
■クレス・ローベルク > 「……っと」
呑み干すと、ちょっと驚いたような顔。
流石にくらっと来るほどではなかったが、匂いの印象とのギャップが、少しばかり意外だった。
「結構強いね。でも、飲みやすくて美味しい。
……となると、結構な女殺しだな……?」
酔わせるのに使えるか、等と助平心がつい顔をだす。
とはいえ、憂鬱そうな表情を見ると、流石に味に酔ってばかりともいかず。
「お守りかあ。定期的に発症する訳でもないなら、そうするしかないよね。
それこそ、毎日監視してくれる人でも居なきゃ意味ないし」
心配ではあるが、だからといって出来ることもない。
精々、この店を誰かに宣伝して、金と出会いを増やすことぐらいか。
■ぼたん > 「…ちょいと、あンまよからぬ事考えないどくれよ…」
呟きを聞きとがめるとじとっと横目で睨む。
心配してくれている言葉を聞けば、あはは、と屈託なく笑って
「ごめんごめん、不景気な話しちまったね…実際は大したことないよ。返せない、ってェほどじゃないから…」
言いながら、ことこと音を立てていた鍋を再度伺って、火を落とす。ふわりと出汁の香りが漂う…
■クレス・ローベルク > 「おっと、聞かれちゃってたか。大丈夫、送り狼ってあんまり好きじゃないんだ。
精々、酔った女の子の何時もと違う一面を見て楽しむくらいさ」
だからご勘弁を、と手を立てて拝むように。とはいえ、目は笑っているので、あくまでも冗談だろうが。
「……ま、ぼたんが言うならそうなんだろうけど。あんまり無理しないでよ?
金は……まあ今ちょっと出せないけど、手伝える事があったら、言ってくれれば力になるからさ……っと」
何かは解らないが、芳醇な匂いが鼻腔をくすぐる。
旨味が匂いに乗っている、とでも言うのか。甘いとも違う、不思議な匂いだ。
「ううん、美味しそうな匂いだ。何だか、お腹が空いてくるなあ」
先程からずっと火にかけられていたが、どんな料理なのだろうかと期待しながら料理を待つ。
■ぼたん > 仕方のないにィさんだね、と息を吐いた後、力になる、という言葉には目を細めて微笑う。
「ホント、大丈夫…ありがと」
お腹が空いたと聞くと数度、瞬いて
「じゃァ、少し食べてくかい?お腹にそンなたまらないかもしれないけど、あったまるよ…」
大きな鍋の蓋を取ると、出汁の香りが更に漂う。お椀を手に取って、蒟蒻と、大根と、卵と…と呟きながら数種のおでん種を取り分けて、最後に昆布だしのつゆをたっぷりかけて。
「…ホントは一度、冷ましたあとも一度あっためた方が染みるンだけど…」
湯気が立つお椀を彼の前に
■クレス・ローベルク > 「おお?良いのかい?それこそ有難う。っと、おお」
蓋を取られて一層強くなった匂いを嗅ぐと、思わず口の中に唾が出てくる。
食べたこともない料理でも、美味しそうに感じる。
東国の料理って凄いな、と素直に思う
「形式としてはポトフに似てるけど、この匂い……それに、具も全然違う。
この柔らかいのは……大根かな?」
ほろりと崩れた大根を口の中に入れると、大根の苦味と一緒に出汁がじわりと溶け出る。
「お、おお……出汁がじわりと出てくる。
卵も……うわ甘い。まさか、ゆで卵がこんな美味くなるとは……」
ゆで卵といえば切ってサラダの具にするか、手間をかけても潰してポテトサラダぐらいしか使い道を思いつかない身としては、ちょっとしたカルチャーショックだ。
「美味い、どれも美味いぞ。東国の人ってこんなん食ってるのか……!?」
■ぼたん > 美味しそうに食べる彼を、カウンターの反対側から嬉しそうに見守る。
「まァ、そンな手が込んでるわけでもないから、結構どの家でも作ってると思うよ…」
熱いから、火傷しないようにね…と言いながら、冷えた水をグラスに注いで、カウンターの上に。
■クレス・ローベルク > 「この味で手間かかってないの!?
それは……もう、ちょっとした発明なんじゃあないか……?っと、有難う」
舌を火傷はしないまでも、流石に口の中が熱くなってきたので、有り難く水を頂く。
二口三口食べては水を飲むを繰り返せば、食べるペースも上っていき、
「ごちそうさまでした」
結果として、汁まできれいに平らげた。
ふぅ、と椅子に背を預けて脱力し、
「美味しかった。こりゃ、この料理を食べるためだけに、此処に来る価値あるな……」
やや大袈裟に言っている節もあるが、しかし本心ではある。
暫くゆったりしていたが、やがて思い出したように懐から懐中時計を取り出し、
「うぉ、しまった。もうこんな時間か。そろそろ宿に帰って寝ないと明日の船に乗り遅れるや……えーと、お会計、お願いできる?」
■ぼたん > 気だるげに笑って、ゆっくり首を振って
「…今日は開店休業みたいなモンだから、特別…次回ちゃんと、たべさせたげるから、そンときに弾んどくれ」
■クレス・ローベルク > 「ありゃ、そうかい?それなら、遠慮なくごちそうになるよ。
次会う時は、もっといろんな東国のお酒と料理、教えてね」
そう言うと、食器をカウンターの上に上げて、男は出て行く。
ちょっと心配だけど、今日は良い日だったと、そう思いながら。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 西はずれの居酒屋」からクレス・ローベルクさんが去りました。
■ぼたん > 彼が出ていけば、ぼんやりとした店内の灯りのなかにひとり。
思い出したようにふわっと欠伸をして、眼を擦って…
ご案内:「王都マグメール 平民地区 西はずれの居酒屋」からぼたんさんが去りました。