2018/11/22 のログ
ご案内:「王都地下/地下水道」に1311さんが現れました。
ご案内:「王都地下/地下水道」から1311さんが去りました。
ご案内:「王都地下/地下水道」に影時さんが現れました。
ご案内:「王都地下/地下水道」にラファルさんが現れました。
■影時 > ――地下水道に潜るのは初めてではない。
地下水道に住まう大鼠や巨大な這蟲等の掃討、排除は駆け出し冒険者の初歩ともいえるものだ。
どぶ攫いのようなことを厭う、報酬が安いから倦厭する類は居てもそれは仕方ない。
装備も装備が不足していることを補えない技量を持たぬものが、一足飛びにドラゴンを殺す。そんな道理も由縁もないことが出来るものか。
今回もいわば、その類の依頼ではある。
何でも、誤って地下水道に流してしまった魔法実験の廃液から、粘着質の身体を持つ怪異が生じてしまったという。
それに排除せよという依頼だ。放置が過ぎれば、水道を詰まらせてしまう危険が極めて高い。
勿論、これは容易いことではない。事前の情報収集、準備が必要だ。それらを整えた上で……
「……思ったより、臭いが少ねェな」
地図を片手に、そして逆の手にはカンテラを手に薄暗い空間を進む影のうちの一つが喋る。
知るものが居れば、その影の一つがいわゆる忍び装束に寄せた肌を隠し、動きやすい戦装束を纏っていることに気づくだろう。
悪臭対策に装束と同じ色合いの目の細かい布で口元を包み、覆面としている。
それでも、少なからず臭いはある。その強弱が思ったより際立っていないことに喜ぶよりも、懸念の色を示す。
立ち止まり、地図を確かめる。
恐らくこの辺りであろう、と。そう察しをつける。
■ラファル > 「くっさーぁい……。」
下水道、初めての場所である―――というよりも、冒険者になって初めての依頼がこれであったりもする。
装備は、何もないといって良いぐらいに、薄着でズボンも短パン胸にはベルト。最初冒険者ギルドに入ったときは舐めてんのかと凄まれた。
凄んできた男は、優しく撫でてあげたら気絶したので、問題はない。
今頃骨の一本で済んだことに感謝してしかるべきだろう、来ていた鎧も凹んでるけどまあそれは知らない。
何はともあれ、師匠に言われて登録して、師匠と組んで、依頼を受けた。
何事も基本が肝心ということで、受付嬢のおすすめ―――魔獣退治を断って、師匠が受けてくれた依頼なのである。
あらかじめ聞いていて、ウキウキしてたが、思った以上の匂い。
一応マスクがわりに布で顔を覆ってはいるけれど――――少女の嗅覚は人間のそれと格が違う。
正直思った以上にきつかった、敵より匂いに殺られそうだ。
「ししょー。魔法使って、いい?」
におい、だめ、きつい。
我慢しろと言うなら我慢するけれど、我慢したくない少女。
明かりに関してはカンテラのそれで問題はないし、なくても見える。
地図を見ている男の服の裾をくいくい引っ張って、少女はおねだり。
■影時 > 見た目は子供連れの強面の男というのも、それはそれで奇異の視線を生む源であったが。
ともあれ念のためと成功報酬を折半できるように冒険者登録を済ませ、連れ立ってこの下水道へと足を運んだ。
王都の地下の施設でもあり、思ったよりも堅牢に作られている。
見える範囲での石組の壁と天井という風景とは、よく考えて設計した古人の知見を垣間見えるかのよう。
大雨が続く時となれば、流れる水量は莫大となる。その備えなのだろう。
「……行く場所が明確なら、そうなるのも火を見るより明らかだろうがなァ。
我慢しろ。使うなとは言わんが、何事も経験だ。ほれ、これで鼻と口元を覆っておけ」
しかし、やはり大人と子供の感覚に加え、元々の種の違いもあるのだろう。
慣れも相まって堪えられる悪臭が向こうにはそうではない、という。
くいと装束の裾を引く姿に仕方がないな、と地図を折り畳んで懐に仕舞い、腰の雑嚢から予備の長尺の手拭を取り出す。
この覆面と同じ仕立てのものだ。それを差し出し、巻き方は分かるな?と問うておこう。
「それよりも、備えろ。俺の見立てが確かなら――近いぞ。そら、あそこだ」
腰にカンテラを吊るしつつ、前方の暗闇がまるで濡れ光るように光っていることに気づく。
指差した先が、にゅるん、という音を立てるような風情で蠕動し、這い出てくる。
それは半透明に近い色合いの流動体だ。
大人一人を頭から呑みこんでしまえそうな質量は、どれだけのものを生命の有無にかかわらず取り込んで肥えた結果か。
一抱えもある赤い核と思しいものをぼう、と光らせ、未消化の骨やゴミの類をぷかぷかと揺らしながら其れはやってくる。
■ラファル > 見た目的には、冒険者になるにも早すぎるであろう年齢の少女。
実力に関しては、少女が鉄の鎧を着込んだ大男を一撃で伸した上に、もともと冒険者として登録していた師匠のお墨付きもあったので、問題はなかった。
彼の弟子という認識ゆえに、半人前だとしてもちゃんと冒険者として認識されるようにはなっているだろう。
これでちゃんと依頼をこなせば――――一人でこなせば、一人前と見てもらえるだろうか。
そこまでは考えていない少女ではあるのだけど。
「あー……ぅ。
めがしぱしぱするよぅ……。」
もともと、自分でもマスク替わりの布巾は巻いていた、でも足りない。
人間より敏感なそれがアダとなったいい例である。
今度は魔法の道具でもいいからシャットダウンするもの手に入れてやる、師匠の出した予備を顔に巻いて二重にして我慢する。
我慢しろと言うなら我慢する、素直な性格がそこにある。
少女は、少女なりにちゃんと荷物は持ってきている、背中のバックパックは身長が小さいのも相まって背中を守る盾のようにも見えるぐらいだ。
ちゃんと、準備としてスライムに対するための酸中和用のワインとか、松明とか、油とか、いろいろ持ってきているのだ。
「んぃ……。
もう少し引き寄せたほうがいい……かな。」
スライムは物理の効かない相手である。
倒すならば、核を一撃で貫くか、魔法なりなんなりの手段で焼くといいだろう。
そのためにたいまつを持ってきたが、ここは下水道。
水場でもあるので、水から出てきた所ではないと焼くに焼けぬ。
ヌメヌメとした動きは遅いので、とりあえずはマッチで松明に火をつけて、背中のカバンから油瓶を取り出す。
もう少し近づいたらぶつけて油をかけて燃やそうと。
■影時 > 「臭い消しは後にとっとけ。
駆け出しにもこの手のは多分、荷が重いだろうがな。
……駆け出しはまだまだ経験もそうだが、ラファルよ。軽々しく魔法を使おうにも使えん辺りだ。
力があっても、加減を知らぬ。使いどころをよく知らぬ。故に、長く生きてるかどうかもこの辺りで定まってくると云う」
一人前と呼ばれるには実績を積む必要がある。相応の力を信用も共に示すことがある。
如何に大人一人を叩きのめせる力があっても、重視されると言えるのは「何の問題なく目的を果たして生還する」ことだ。
故に、現時点では弟子はまだまだだ。
臭い消しの類も区分や効果範囲によっては、依頼達成の妨げになる可能性もある。
そう諭しながら、覆面を二重にするように巻く姿を見やって視線を前方に据える。
「思っていた以上に、よく肥えたなァ。見ろ。……アレは死体も取り込んで糧にしているようだぞ?
ただ、手裏剣を投げるだけでは――駄目だな」
ぷるぷると震えながら、自分達の方に這い寄る姿の所作はまだ遅い。
故に験しとばかりに取り出す棒手裏剣を、予備動作なく手を振り上げる動作を以て獲物に打ち込む。
氣を乗せてない、ただ運動エネルギーを与えただけで投じた針の如き其れがスライムの粘着質の表面を弾けさせ、埋まって……止まる。
一抱えもある西瓜や瓜の類を当たれば爆ぜ座せるのも容易い其れが受け止められ、呑みこまれるのは見た目相応の有様だろう。
そんな攻勢の反応として、スライムが表面から数条の触腕を生やして自分達へと伸ばしてくる。
それを後方に飛びのきつつ、懐から取り出す黒色の苦無の刃で切り払おう。
腰の太刀はこの場では少々使いづらい。下水が流れる水路が見える範囲を締める割合を考えれば、弟子の動きの邪魔にもなる。
■ラファル > 「はーい。」
魔法の加減に関しては、精霊たちが自動で行ってくれる……というよりも精霊たちに任せているので大体どのくらい、を言えばいいのである。
その辺は、普通の魔術師の魔法と精霊使いの魔法は違うだろう、が、まずは師匠の言うとおりに経験を積むこと。
工夫はそのあとと、いう事認識して頷いた。
「ほんとだ、ししょーの手裏剣がドロドロ吸い込まれてる。」
飲み込まれ、溶け始めているのかジュワジュワと泡立ち始める手裏剣。
鉄も溶かす程の強度になっているらしい酸の体、少女はうわぁ、と言いながらながめる。
と、スライムから触手がニョロリ、と伸びてくる。
飛び下がる師匠に大して少女は脇へ―――下水の方へと跳躍する。
下水道の足場は狭いし、縦に並べば動きづらくもある。
なれば、脇である感染症とかそのへんは竜には特に問題はないし。
下水から出てる廃材を蹴って対岸へ。
「ししょー。
油投げるよー!」
わんわんと下水道に響く少女の声。
それに続き、振りかぶり油の瓶をスライムへと投擲。
狙いは師匠が放った棒手裏剣、そこに当たればガラスは割れて場シャリと油がスライムを包むであろう。
■影時 > 「もとより、人間と竜の違いもあれば……勝手が違うのも必然でもあろうなぁ」
真相を知ればインチキだ、などと陰で囁くものも居るかもしれない。
そこはどうでもいい。考えなければいい。
肝要なのは魔法だけではなく、他の対処方法も磨くことだ。それには泥にも汚水にも塗れることを厭わぬことだって必要だ。
種族や生まれというスタート地点がもともと違い過ぎている。
人間と同じ方法が最良である訳ではないとしても、まずは順序を踏襲するのは必要だろう。
「決して安くない鉄使ってるんだがな……。
まァ、そういう具合だ。此れが駆け出しには少々辛い由縁よ。
強い魔力が宿った武器なら兎も角、あの丸っこい如何にも弱点と言いたげなトコにぶち込もうとして、逆に手前ェの武器を失くす。
ありがちだが、準備の出来ていない駆け出しが直面する事例だなあ」
自身の手で鍛造した手裏剣が溶ける風景とは、割り切っていても覆面の下で苦笑せずにはいられない。
屑鉄の類だって決して安くはないのだから。
予備武器の準備やら、駆け出し同士で付与魔法や強力な攻撃魔法を使える魔法使いとの協働等、事前の準備の有無が問われる。
対岸の足場に飛び移って、距離を取る弟子の言葉に頷き。
「承知ッ。やれ!」
油瓶を投じる先にあるのは、現在消化中の手裏剣がある辺りだ。其処にぶつかれば瓶は割れ、油が舞う。
その光景を見つめながら、直ぐに片手で印を切り、氣を巡らせ奔らせる。
――火を生む。発火の術だ。ぽっと微かな火種が油の表面に生じれば、轟ッ!という勢いで火勢が荒ぶる。
スライムの表面を焼き焦がし、蒸発させるもののまだまだ、粘着質がたっぷりとした重みを感じさせる風情で残る。
■ラファル > 「それに執着すれば……武器だけじゃなくて、あんなふうになるんだね。」
戦闘を生業にする者にとって、武器は生命線である。
予備の武器がなければ、戦闘中に壊れた際に換えがきかずに、死ぬしかなくなる。
準備というのは、そういった物も含めてのものなのであろう。
ジュルジュルと溶けている手裏剣は、流石に鉄なのだろう、すぐに溶けて消えるということはなさそうで。
自分の言葉に頷いた師匠、そして投擲されるガラスの瓶は狙い違わずに命中。
燃え始めるスライム。
それを対岸から見る少女は、バックパックからもう一個油瓶を取り出してもう一度振りかぶる。
「おまけだてりゃー。」
二つ目の油瓶、まだ燃えているが、残っているスライムに勢いよくぶつけ。
序でに手に持つ松明を投げる。
ガラス瓶がスライムにぶつかり、受け止められてそれにぶつかる松明、火に引火し、火勢はさらに強まり、一層燃え広がるスライム。
一応三個目の瓶を用意しつつ、近くで眺める師匠を見やる。
これ以上は必要ないと思うけれど念のために合図があれば投げるつもりで。
■影時 > 「おうよ。
見ての通り一人で挑むとなりゃァ、やはり替えの武器が要る。容易く打倒できる類じゃないぞ? あれは」
鉄を溶かすボディは武器を受け止め、無手で挑む無茶を為すものが居れば備えがなければ、その者ごと取り込むだろう。
それほどのものだ。あのサイズのスライムの類を倒すのは実際のところ、容易な仕事とは言い難い。
必要なのは溶解能力を持ったボディを貫き、核を破壊するための手段だ。
火勢に加えて、色々な雑味を取り込んで養分とした粘着質が焼け焦げ、蒸発することで悪臭が立つ。
「――そこまでにしとけ、ラファルよ。遣り過ぎると、俺達の方まで焼けちまう。
風で火の粉と臭い除けついでに煽る位でいい」
駄目押しの油瓶の追加に松明まで投げられると、さらに延焼効果が倍増だ。
火勢が増す。閉鎖空間に上がり出す煙はそもそも伴う悪臭も相まって、無視するには少し辛い。
神経の類は通っていなさそうなスライムが、緩慢な動きでのたうちながら伸ばす触腕が唸る範囲より逃れ、指示を出す。
溶かされる心配のない特製の苦無を別の取り出す襤褸布で拭い、本来の定位置である腰裏の鞘へと納める。
そうしながら、別途取り出すものを足元に置いてゆく。
新たな清潔な布、瓶入りの中和用のワイン、そして清水だ。
■ラファル > 「はぁい。
ボクの場合は―――。うん。」
自分の場合はどうだろうと考える。
解1、爪で引き裂く
解2、ソードブレイカー:ドゥンケルハイトで引き裂く
解3、封護で引き裂く
どれも、問題はない、大きくなっているとは言え、それが竜のウロコを溶かすほどのものではないだろう。
黒いナイフも強い魔法の力のあるナイフだし、小刀も同じく。
取り込まれるよりも前に、突き刺し引き抜くことだって可能である。
ブレスは、相性が悪いがその衝撃で破壊することができるであろう。
対岸で蒸発しているスライムを眺めながら、考える。
少し離れているので悪臭は流石に届いてないので、良さそうだ。
「はぁい、シルフィード、お願い。」
少女は師匠の言葉に従い、風の精霊に願う。
願うのは風の防壁でスライムを隔離するように。
空気が動き、スライムの周囲を旋風のように回る風、これで火の粉が外に出ることもスライムが逃げることもできなくなる。
さらに言えば、空気がかき混ぜられることにより火勢も強くなり、スライムが萌え終わるまでの時間が短縮されるだろう。
確認しながら再度ヒョイっと師匠のいる方の岸へと跳躍し、したた、と師匠のもとへ。
ああ、スライムの体液を拭うんだな、と準備しているものを見て考える。
■影時 > 「……手段を問わねェなら、いくらでもある。だが、最小で最大の効果を見込むなら数は限られるわなァ」
極論、スライムを一つを潰すためにこの地下水道の区画一つを潰すことだって、手段だ。
それで目的を果たす事だけは出来る。しかし、その対価となる後始末がそれこそ天井知らずのものになってしまうが。
故にこそ、地味でも確実に効果を挙げられる手段を己は尊ぶ。
こういう仕事は基本を弁えて、堅実に片付ける方がいい。そう信じる。
核を潰すのは一番であるが、安全に事を進めるとなると、この場合どうするか。
「――さァて、アレでだいぶ嵩は削れたことだろう。
だが、元々アレは水気を多く含んでいるものだ。詰まりは本質的には燃えにくい。
焼けたなら、その個所は溶解する力を失せさせている。
小分けに刻んで、さらに削ってな。文字通り手も足も何も出なくなるまでする。
もう少し小さな個体であれば、使い捨て出来る槍やら直ぐに体液を拭う前提で剣で突いてもいいがな」
自分が居る側の岸に戻ってくる姿に頷きつつ、躍るように唸る風の中で燃えるスライムを見遣る。
表面から焼けて、剥がれて、また焼けて、剥がれての繰り返しで次第に体積を減じさせてゆく有様がそこにある。
それを見ながら、講釈と共に左腰の太刀を抜く。
大振りに振り上げるには不安のある天井の高さだが、それを弁えた上で振ることが出来る。
薄闇の中に灯る火の光を受け、冷たく輝く龍殺しの刃は魔力故に酸に損なわれないにしても、備えは必要だ。
風が収まったら取り掛かるぞ、と。そう告げよう。
■ラファル > 「うん。罠の時と同じ考え、だよね?」
状況によって、最適を見つけ、それにあったものを仕掛ける。
最小で最大の効果、というのは、彼が最初に教えてくれた罠に関しても通じることである。
限られていても、手段があるならばそれを講じるのが、冒険者。
資源は有限である、魔力にしろ、体力にしろ、道具にしろ。
それを弁えるべきだ、と少女は認識した。
「削って削って削って。
……結構小さくなったね。」
小さくなるにつれて、水分の含有量が増えるのか、火が小さくなっていく。
かけた油も吸収した分は燃えたと考えていいのであろう。
左の腰の太刀を引き抜く師匠に視線を向ける。
目的は、その中央部に未だ残る核。
「はあい。
シルフィード、そろそろいいよ。」
風が収まったら。
精霊にお願いして起こしている風ゆえに、自然には消えることがない。
だから、シルフィードにお願いをして消してもらう。
徐々に弱まる風。
少女も腰から彼の持つ刀の兄弟刀の封護を引き抜き、動きを合わせるために、師匠の動きに注視する。
■影時 > 「よく覚えていたなぁ、偉いぞ。アレと同じよ」
食肉を切り分けるのに、大剣を持ってくるのは愚か者のやることだ。合理的ではない。
手頃な長さの小刀があれば事足りる。
装備の損耗を避けるなら、少々迂遠な手段を経ることにはなっても、結果的に買い替えのコストを抑えることに繋がる。
故に、その認識は間違いではないと師として頷く。
「……いや、此れは思っていたよりも残っている方だなァ。
魔薬作りの廃液を誤って流したやら聞いたが、変な反応でも起こしたンだろうなこりゃ」
火勢が減じるにつれて、ぷすぷすと煙を上げながらまだ嵩を残しているスライムを見る。
何の魔法薬作りの廃液かは知らないが、何か水気を蓄えるような作用でもあるものだったのかもしれない。
その手の法的なあれこれは、考えない。そもそも管轄外だ。
最終的にこの怪異を安全に鎮圧、掃討することこそが己の仕事だ。
後で他に同類が出ていないかの調査もあるが、今はこの獲物を討ち果たす。
「……――よーし、掛かるか。
俺は左から、ラファルは反対側で回れ。細切れにして、核が剥き出しになったら穿て」
指差すのは、焦げた未消化物も散乱させたスライムの方だ。
己がスライムを中心にして時計回りに旋回し、刻む。その逆側を回って同様に刻め、と指示の上地面を蹴って進む。
反応が鈍いが、旋回することで想定される反撃を鈍らせる肚だ。
小刻みな動きで白刃が閃き、焦げた処ごと削り落とし、更に続く太刀で別の箇所を刻む。文字通りに刻んで切り分けて行くのだ。
■ラファル > 「えへへへー。」
褒められた。やはり、罠の時と同じらしい、と言うよりも万事そういうことが良いのであろう。
コストに関しては、生まれと育ちのせいで、それなりに理解している。
商人の方の母親がいつも、コストがなんたらかんたらとか言っているのを思い出したから。
今度はそっちの方も考えないといけないのだろうかとか、思考。
「じゃあ、本来のスライムはもっと弱いんだ。」
残っている分量が多いらしい、師の言葉にへー、と感心する。
普通じゃないスライムだったら、もう少し警戒したほうがいいだろうかと思うけど、師匠はそこまで警戒している様子はない。
なら、大丈夫だろうと、少女は思う。
「あいっ!」
右から回れと言われて元気に返答し、少女は動く。
踏み込みながらゆっくり出てくる触手を切り裂き、返す刀でスライムの本体を削る。
師匠に同調するように加速し、剣戟を閃かせれば銀線が閃く度にスライムは嵩を減らす。
徐々に、徐々に減っていくスライム、小刀でも十分通るぐらいに小さくなったところ。
「せい!」
少女は小刀でスライムの核を貫き、そのまま引き上げる。
ずぽん、という音がしてスライムから核が引き抜かれた。
■影時 > 「帰ったらご褒美をやろう。
――あー、本来のというのは正しい表現じゃねェわな。核に文字通り直で手が届くかどうか、だ。
そもそもこいつみたいに目に分かる核の類がない場合だってある、らしい。
俺もすべてを見ている訳じゃねぇからよくは知らんが、そんな場合はすべて丸ごと滅却できる手段が要るわな」
忍者とは基本的に合理性を重んじる。
対価となるものが多い手段は極力選びたくはない。明日の糧にも響くものであれば、猶更だ。
手間がかかっても、総体として最小限の犠牲とコストで片が付くのであれば、それが一番である。少なくともそう思う。
合理性ばかりの生き方はしていないが、依頼を果たす段となれば思考は忍びの其れに戻る。
弟子の放つ言葉に肩を竦めつつ、蓄えた知識の一端を口にする。
この個体は目に見える核があるからまだいい。全体が核となっているような類が、一番後始末も含めて面倒だ。
「よォし、いいぞ!
刻んで切り離した分は動かん。削って中身さえ出しちまえば後はそれで片が付く!!」
己と動きを合わせ、触腕やスライムの残存する粘着質を削り、切り落とす弟子の手並みを善しと頷く。
全体として量のある個体だった故に、強く統制を行うための器官として核を生成したのだろう。
其れが逆に仇となったか。小刀で貫かれた核が良い音を立てて、引き抜かれる。
残ったものが水をぶちまけるような音ともに力感を失い、粘液としてその場に飛散する。
それを見届ければ、ふぅと息を吐く。後はこの核を持ち帰れば依頼達成の証にもなるだろう。
防水生地の風呂敷を雑嚢から取り出せば、使えと弟子の方に投げ遣ろう。
■ラファル > 「やったごほうびー!
スライムにもいろいろあるんだねー……。
目に見えない核かぁ……すべて滅却とか大変そう。」
炎の魔法は覚えてはいない、風の魔法と衝撃のブレスを持つのが少女。
最悪踏み潰すぐらいだろうか本当の姿で。
やはり、師匠のような術を早めに習得したほうがいいだろうとおもった。
先ほどの、火がぼあーってなる奴とか。
「あい!だしたよ!!
おー………。残りがドロドロってなくなってく。」
刀が核の中央を捉え、半ばまで突き刺して引き抜いた。
その方法は正しかったのであろう、師匠の快哉と溶けていくスライムの姿。
残りは放置していてもいいのだろうかとおもいながらも。
「ししょー、ワインかけとく?」
それなりに小さくなっているし、ダメ押しでワインで酸を中和しつつ、下水に流せば問題がないだろうかと。
刀を軽く振って、核についた粘液を落とし、防水生地の布を受け取りながら問いかける。
■影時 > 「自然発生する代物かどうかも怪しいが、兎も角色々だァな。滅却となると俺だって手を焼くぞ」
滅却も理屈の上ではできない訳ではない。
鉄をも溶かす熱量を前に無事でいられる粘液質がそもそも、あるかどうかが怪しい。
居た場合は最早手が付けられない可能性だって出てしまう。それほどのものだ。
「見立て通りの個体で良かったぜ。
……そうだな。あと、俺の手持ちの油が残っている。念のためそれをかけて焼くか」
水の瓶で刀を洗い、清潔な布で拭っておけば魔法の品ではない鞘にも影響は出ないだろう。
一先ずそのようにしながら、弟子の言葉に頷こう。
油をかけて焼くにしてもまた、悪臭が出る。せめてワインをかけた上で少しはましな臭いになるだろう。
刀を濯いで拭った後に鞘に納め、その場にしゃがみ込む。
床に手を当て、念を凝らしながら周囲の気配の動きを暫し探れば、一先ずそれらしいものはない。
小動物の動きと思しい小さな氣の動きを探れば、胡乱な動体の反応はない。
■ラファル > 「師匠でも手を焼くんだ……」
それだけの大火力は、姉の方であろうか。
姉でも難しいかも知れないと、うーん、首を傾ぐ少女。
どんなスライムなんだろうかと好奇心もむくりむくむく。
「はーい。
じゃあ、ワインをー。」
自分の荷物からワインの瓶をとりだして、スライムの核と、溢れたスライムの残滓にかけていく。
それを見て、少女は思う事がある。
油も三つ目の瓶を取り出してドロドロとかけてから、最後に風呂敷に包み込んでいく。
「……おいしそう。」
じゅるり。
ドラゴン的にはこういうものも食べ物みたいなものである。
ワインも掛けたし、食欲がひょっこり出てくる。
時間的にもそろそろお昼のご飯であろうから。
でも、これは提出するものだから、我慢我慢。
■影時 > 「考えてみろ。
切っても焼いてもその都度再生するモノなんぞ、まともに相手にしてられンぞ」
故に策を講じなければならない。
再生力を上回る火力で滅却するか。そもそもの再生作用を阻害し、再生できなくようにするかだ。
勿論、そもそも関わり合いにならないことこそが至上であるが、対峙せざるをえない事態だってあるだろう。
会うとすれば――年月を経た怪異の類か、もとよりそのように作られた特別製か、か。
「おう、頼む。……戻ったら飯にするか。その前に一風呂浴びたい気分だが」
装備の点検は、戻ってからでもいいあろう。
ワインかけのうえ油かけとなったスライムの残滓に手指を組み、印を切って再び発火の術を投げかける。
忽ち上る酒精の香り混じる炎の臭いを嗅ぎつつ、聞こえてくる言葉に笑って頷こう。
朝から出ていれば、腹も減る。
地上に戻って依頼達成の報告をすればいい頃合いであろう。
喰うんじゃねェぞと。スライムの核に舌なめずりするような風情の姿に笑って、残滓が灰になって散るのを見届ければ踵を返そう。
この時間の飯屋だと、何をやっているか。其れが少しばかり気になる――。
■ラファル > 「……うわぁ、めんどくさそぅ。ぱっくり食べたほうが早そう」
切ってもダメ、焼いてもダメ、そんな存在……なんか聞いたことあるかも。
竜ではなくて蛇のたぐい、ヒュドラだっけ、家に帰ったら聞き直してみよう。
とはいえ、そう言うのもいるんだなぁ、とか思えば、うえぇ、と言う気分になる。
「ボクはご飯のほうがいいなー。
お風呂もいいけど。お腹すいちゃった。
――――たべないよー。」
流石に、そのぐらいの分別あるもん。
食べるなという念押しに、ぷく、と頬を膨らませる子供。
スライムの核をバックパックに押し込んで火を放つ師匠を眺める。
そして、師匠の後ろに付いて歩き始めて。
ご飯はなにを食べようか、そんなことで頭いっぱいにしながら、初めてのクエストの終了である―――
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ご案内:「王都地下/地下水道」から影時さんが去りました。
ご案内:「富裕地区 シガーバー」にティリアさんが現れました。