2018/07/24 のログ
■紅月 > 「…部下さん超イイ仕事してるよ、めっちゃツボおさえてるもん。
普通に手に入れようとしたらシェンヤン経由しなきゃ買うの難しいヤツまで入ってるし」
恐るべし、第六師団。
胃袋掴んでくるとか、マジ恐るべし第六師団。
さて室内に入れば、飾りっ気よりもリラックス重視の部屋の、これまた拘りのフカフカソファーに座る彼。
…やはりイケメンは何しても様になるから狡い、なんて密かに思いつつ紙袋を確認。
「う~ん、飲みやすいのは墨桜かな。
折角だから徳利とお猪口、出そ…お、おう。
りっくんコレコレ、曰く付き…ってか、ハウスフェアリー憑き」
ボトルを眺めながら呟けば、キッチンにある氷の魔石が詰まった冷蔵庫がパカンと勝手に開く…だけでなく、そこからキンキンに冷えた酒器がフワフワ飛んでくる。
どうやら我がユル友は、我が家の先住民達に歓迎されてるらしい。
徳利に酒をなみなみと注ぎ、お盆に乗せてソファーの前のローテーブルへ置いて。
「あぁ、クーちゃんなら、そろそろ…」
言いかけたところで、壁の本棚がひとつ動く…
【あ、兄ちゃん来た!】
【こんばんはだよー、ようこそっ!!】
本棚の向こうに通路、というか階段…そして階段を飛ぶように駆け上がってくる翠の子龍。
ゲイゼリク目掛けて猫まっしぐら…ならぬ、龍まっしぐらである。
■ゲイゼリク > 「まー、優秀な部下達で師団長としては助かるもんさぁ……人材難だけどね」
と、やや遠い目をしつつ苦笑気味に。構成人員が少ないのもあり、一人ひとりの負担が大きいのが現状。
ユル友さんを勧誘したのはその辺りの事情も無関係ではないが、手紙で語った通り、彼女の行動を制限する気は無い。
だからこその”客将”としての勧誘なのだ。普通の団員として勧誘すると流石に行動制限も出てくるだろうし。
ちなみに、胃袋を掴んで…とか全然考えてない緩い男である。打算とか特に無し。
強いて言えば、フィーリングで自然と相手を攻略?しに掛かるタイプと言えようか。
ちなみに、紅さんからイケメン認定されてるとは全然思っていない男である。
むしろ、容姿には割と無頓着だ。貴族で師団長という建前上、それなりに整えてはいるつもりだがその程度。
「そだなぁ、俺、異国のお酒は初体験だから飲み易いならそっちの方が助かるかも――おぉっと?」
いきなり開いた冷蔵庫に目を丸くする。更に、そこからバッチリ氷の魔石で冷やされた酒器がご登場だ。
しかも、どう見てもフワフワ浮いている。どうやら龍だけでなく精霊さんとも相性は良いらしい。
…が!やっぱりというか彼自身はそういうのは無自覚というか無頓着だったりするのだが。
さて、ユル友さんが徳利…というのだったか。それにお酒を注いでお盆に載せて持ってくる。
「…おーありがと紅さ……っと!?」
いきなり動いた本棚にも目を丸くしたが、そこから勢いよく飛び出してきた子竜…クローロをしっかりキャッチ!
何気に反射神経などが優れている事を示しつつ、抱きとめた子竜に笑みを向けて。
「よぅ、クローロ。相変わらず元気そうで何よりだねぇ」
と、笑いつつ撫でたりワシャワシャしてみる。あと、スキンシップしてから頭の上に載せてみたりする。
ある意味で、主?飼い主?である紅さんと同じかそれ以上の親近ぶりかもしれない。
■紅月 > 「人材難、言ってたねぇ?」
彼だけではない、もはや各師団からと言っていいぐらい困っている的な噂を聞く。
数ヵ月前、まだ国が荒れてない頃にも別の師団から声が掛かったことがある、が…その頃は、正直こんなに王国軍側に知り合いが増えると思っていなかった。
…はてなぁ、気が合うどころか性質が似ていそうなユルい上司なら実に過ごしやすそうではあるが。
「…なんか私が住む所って、気付くとカラクリ屋敷になってるんだよなぁ」
あっちはパカリ、こっちはゴゴゴ…
はやくも意図せずマジカルに全自動化されてゆく我が家に思わず苦笑しつつ、ユルいわりにさすが騎士…見事子龍をキャッチする彼に指先で小さく拍手を。
【兄ちゃんもクゥも元気ー!】
【わぁいわぁい、高いトコすきーっ!!】
兄貴分にぶつからないように器用にブンブン尻尾を振りつつ…撫でられればころころと、頭上に乗せられれば尻尾と両翼で器用にバランスを保って。
いやはや、本当に…一足早く人化の術だけ教えようか本気で悩む瞬間である。
…私個人の意思で言うなら、師団参加はアリっちゃアリ、かもしれない。
『将を射んとせば先ず馬を射よ』なんて言ったりするが、チビっ子も懐いてる。
が、しかし…うぅむ。
彼が子竜と遊んでいる間に、二人分のお猪口に酒を注ぎ…後からふよふよ飛んできた新たなお猪口と麦茶のピッチャーをキャッチして、子竜の分の飲み物も用意。
「……、…なーなーリクさんや、客将の件なんだけどさ~ぁ?
その前に確認?興味?みたいな。
…『魔族』についてどう思うか、ゲイゼリク個人の意見が聞きたい」
いつものユルい調子から、スッと真面目な空気に切り替える。
さて、彼はどう答えるか。
■ゲイゼリク > 「そそ、特に俺の師団は役割に反して人員が引き抜かれたりとか色々とねぇ。
紅さんも話聞いてるかもだけど、第七師団がああなって今は再編中なんだけどさ?
まーー俺の所からも、副官含めて実力者が何人か引き抜かれちまってねぇ。
いちおー抗議と代わりの人員補充を具申したんだけど、お上は渋っててさぁ」
と、困り笑いで肩を竦める。今は再編中の第七師団を初めとして、そちらに人材が確保されている。
防衛や攻勢に秀でた師団が優遇されるのは仕方ない。だがそろそろウチの師団にも補充を、というのが師団長という立場からの本音だ。
そもそも、他師団の全面支援が第六の主な役割だが…人員の能力は足りていても人数的に間に合っていない。
「……紅さん、上手く言えんけど”変わった空気”を纏ってるしねぇ。それもあるのかねぇ」
魔力は感じ取れないが、それ以外の何かで彼女の特異さを男は感じているらしく。
ゆるーい調子でクローロと戯れながらもそんな見解を述べてみたりする。
「おーードラゴンだったら高いトコはやっぱり好きだよなぁ。うんうん」
と、頭にクローロを載せてほんわかご満悦の男である。こうして触れ合って思うが…。
うん、矢張り将来大物になりそうだこの子龍さん。潜在能力が高いのを感じ取れる。
それは勿論、魔力とか単純なステータスではなく、男の家系の血筋から来る龍との感応から判断した事なのだが。
「…おっと?真面目なお話かい?んーーあんましガラじゃあないんだけど…そうだねぇ」
自分の分のお酒を手に取りつつ、少し考えるように…とはいえ、簡潔に答えるならば。
「んーー…全部の魔族に該当はしないだろうけど…人と同じよーに喜怒哀楽があって色々考えてて…。
俺個人は実は特に差別意識も敵対意識も無いんだよねぇ。可能なら平和に終わらせたいし。
まー師団長の立場上、そう表立って言ったり行動は出来ないんだけども…。
…あと、俺としては人にも魔にも寄り過ぎず、どちらも同じように眺められるポジションが好きかなぁ。」
考えつつ言うが、上手く纏まってない気がする…まぁ、いいか。ともあれ、酒をちびり、と口に運んで。
「あ…イケるねこのお酒。…と、例えば紅さんがそっち側だとしても全然気にしないねぇ。
むしろ紅さん美人だし男としてはラッキーというか。ま、気が合えば種族性別なんて別にどうでもいいんじゃない?」
と、あっけらかんと口にして笑うのだ。種族の隔たりや差別、憎悪などこの男にはさして問題ではない。
大事なのは…強いて言うなら、気が合うか合わないか。あとは会話がちゃんと成立するか。
そういう、当たり前の意思疎通が通じるなら戦うよりまず対話をしてみたい。
それが難しい立場なのは承知だが…人と魔を俯瞰してしっかりと見れる。
そういう”視点”があるからこそ、とある魔族にも期待されていたりはする。
「…と、いうか魔族の国の食べ物とかお茶とかすげぇ興味あるんだよねぇ俺」
…一応真面目な会話なのだが、最後が好奇心全開で台無しである。
■紅月 > 「え、副官不在?
…えぇっ、それで放置とか上は何やってんのホントに。
それならむしろ一旦第七を解体、得意技能でグループ分けして砦防衛請け負う師団に一時編入、各師団に付け焼き刃でもいいから対魔族戦闘のノウハウの浸透…とか、できたんじゃないの?
……いやまぁ、私は門外漢だし現場に居ないんだからアレコレ言う資格は無いんだろうけどさ」
オフだから堪忍なー、なんて付け足して。
この国大丈夫かなと本気で心配してみる。
大体、支援が本分のマルチ師団から人員搾り取るとか…せっかく保険になってくれてた彼らの良さが死にそうなのでは、なんて想像してしまっては。
…なんかもう、呆れるしかない。
戦力云々も大事だけど、この国って…その辺の采配が、もしや致命的なのでは。
師団同士の連携とかも、噂を聞くかぎりはあんまり無さそうだし。
…思わず頭を抱えそうになり、何とかとどまって目と目の間を揉む。
「……、…ははっ、紅ちゃん変わり者だからねー?」
この段階では、まだ…ユルく流す。
まだ、まだ…彼の声そのものを、聞いてないから。
【いつかね、空の上の空を紅月と飛ぶの!】
「いや、あの…私が死なない範囲で頼むね?」
少々でっかすぎる夢をお持ちのチビっ子様に、思わずツッコミを…天文の世界、行けるものなら行ってはみたいが挑戦しようと思ったことが無かった。
チビっ子に比べれば、まだまだ好奇心が足りないらしい。
さて、彼の意見をちびちび酒を飲みながら静かに聞いていれば。
「…っ、ごほっげほっ!
……いや、美人だしって…言いたいことはわかるけども。
しかも、言うに事欠いて、アチラの食べ物に、お茶…ック、ははっ!」
また急にユルくなる彼の発言に思わず噎せる。
完全にカクリと脱力し、目許を片手で覆い…ついでに何か笑えてきた。
「…嗚呼、そっかぁ…そうだなぁ、そうだった……ックク!」
このヒトは、そういうヒトだった。
本当に初対面からブレない事ブレない事。
「……うん、じゃあさ…?」
このヒトになら、賭けるのも面白そうだ…そう、思ってしまったから。
一度酒をローテーブルに置き、髪飾りを引いて外す。
目を伏せて両手で頭に触れれば、触れていた位置からガーネットの角が…耳が尖り伸び、爪が硬質化して黒く染まり、ついでに牙も少々鋭くなるだろうか。
一度ふるりと首を振れば、紅の髪が宝石質の煌めきを放つ。
…縦に割れた虹彩の、紫の中に微かに黄金の揺らぐ瞳で、愉快げに笑みを浮かべながら真っ直ぐ彼を見据えて。
「……、…こういう事で、ついでにマレビトなんだけども。
仮に、退っ引きならない事情で…私の素性が周囲にバレて問題になったら。
そしたら、どうする?」
首を傾げつつ訊ねてみる。
さて、彼は…私の一番の懸念に、どう答えるだろうか。
■ゲイゼリク > 「まーー、第六はそもそもそんな重要視されてないからねぇ…少なくとも上には。
あだ名が【便利屋師団】ってくらいだし。まー師団運営の予算とかはきっちり確保はしてるけどさ?
と、いうより予算はあるんだけど人員がねぇ。そこが一番大事なんだけども…。」
と、ため息混じりに口にする。第七師団の再編に関しては、曖昧苦笑いで誤魔化す。
誤魔化す、というよりそっちは自分が口を出したとしても何も変わらないと割り切っているのだ。
それに、第七の再編が進められているのも無理は無い。対魔族、もといタナール砦方面は主に彼ら・彼女らが主体だったから。
「…ま、紅さんの懸念はもっともってね。このままだと王国はアレだよねぇ。
――既にもう斜陽だとは思うけどさ。俺としては知人友人は守っておきたいもんでねぇ」
別に男は聖人君主でも正義感でもない。自分が知った仲以外の赤の他人は正直どうでもいい。
だが、逆に言えば知り合った連中は出来る限り手助けしたいとは思う。
それに、”契約”もある…師団長の立場を放棄する、というのは最終手段にしたい。
ちなみに、第六は任務の性質上、広く浅く他師団と交友はあるが深くは無い。
なので、連携は最低限は出来るが綿密に、となると正直厳しいものがある。
「いいんじゃない?こっちも師団長なんて変わり者しか居ないしねぇ…まぁ、俺も含めて」
変わり者の自覚はある。そもそもが”中身”からして人間ではないからしょうがない。
それでも、ゲイゼリクを名乗る限りは人間として生きると男は決めている。
「空の上の空…星の海を飛ぶ、かぁ。浪漫があるねぇ」
それが実現するかどうかは別としても夢のある話だ。実際、そこまでの高さとなれば浪漫どころではない過酷さがあるのだけれど。
あと、いきなり咽るユル友に「大丈夫かー?」と、苦笑気味に暢気に尋ねるのだ。
「…って、いうか俺は紅さんにどんな目で見られてるのかねぇ。
まぁ、悪印象ではないと思いたいけれども…と、ゆーかそんな変な事を言ったかねぇ?俺」
と、緩く首を傾げながらお酒をちびり。男としては自然体の受け答えだから彼女の態度が不思議でしょうがない。
――さて、ユル友が一度お酒の器をテーブルに置けば、髪留めをサラリと解いて。
続いて生じた様々な変化に、僅かに目を細めつつも…露骨に驚きはせず、むしろ自然体のままで眺めて。
「ふむふむ……うーん、本来の姿?の紅さんも美人ですな…あ、マレビトとかそういうのは別に気にしないんで。
…あと、周囲に紅さんの素性がバレた場合は、か。そんなの…。」
と、そこで言葉を切ってお酒をグイッと飲み干してから笑顔で。
「其の時は俺の全力で助けるだけだねぇ。最悪俺の首が飛んでもそれはそれで。
そん時は師団のメンツの助命と、紅さんの身の安全だけは”絶対に”確保するさぁ」
言い切った。ただただ緩い笑顔で、それこそ明日の天気でも答えるような気楽さで。
真面目な空気でもなく、あくまで何時もの調子ながら…碧眼はひたり、と彼女を見つめて。
嘘か真か、そんなのは彼女が決めれば良い。男はただ宣言した事をやるだけなのだし。
■紅月 > 「べ、便利屋…なんつー勿体ない。
もーアレだ、冒険者ギルドに紙貼り出してみたら?
目安としてざっくりグレードで線引きして、試験採用と本採用にテスト挟んで。
実力次第ではグレード低くても騎士になれる可能性ありますよーみたいな?
いつの時代にも成り上がりたい人っているしさ」
ゲイゼリクにつられ、つい己も溜め息が。
今の情勢だと、それでも集まるか怪しいところではあるが…それにしたって、上のダメさが目立つ。
もう上は金蔓だと思って割り切るしかないのかな、やっぱり…やれやれ。
人間は好きだけど、面白いのと腐ってるので落差が激しすぎるのが珠に傷だ。
「だぁねぇ…うんうん、手の届く範囲だけはね、守りたいよね」
紅月の場合、その他大勢もついつい気になって手をのばしてしまいがちなのだが…それでも聖人であるつもりはなく。
彼女のやりたい事が、たまたま人助けに繋がる事だっただけであって…当人的には勝手気儘に生きているのである。
「えー?
…ん、うーん、確かに個性派揃い、かも
でもまぁ、リクさんはシャキッとすれば常識人寄りだと思うよ…シャキッとすれば」
フォローしようと思ってみたものの、少なくとも自分の関わった相手はどこかしらフリーダムだった気がする…と、悩んでしまう。
【そんでね、紅月にお星様とってくるんだよ!】
「あー、流星の欠片は確かに気になるねぇ…隕鉄好きって言ったのを覚えてたのかしらね?」
そう、実現するかは別として、だ…子供の想像力や熱意ってすごい。
応援したくはあるが、どれだけ結界を重ねれば上手くいくのか想像つかない。
「……その、なんと言うか、さっきもなんだけど。
私は私を綺麗だと思ってない、から…ビックリ、する。
私は鬼神と精霊の『混ぜ物』…人喰いの血が、混じってるんだよ?」
しかも美人だとナチュラルに言ってくるから余計にビックリしたのだが、そこまで言う前に照れてしまった。
顔が熱い…きっと耳までポッと色付いていることだろう。
何かの間違いでは、と、思わずもじもじモゴモゴと否定的な事を言い出す。
…けれど。
笑顔で、いつもの調子で誓われたら心動かない訳もなく。
「…ぜったい、絶対かぁ……」
暫し真っ直ぐ見詰め合っていたが…スッと、瞳を閉じて。
そのままポフリとソファーの背凭れに沈む。
ふぅ~…と、長く息を吐く。
「……みんな、聞いた?『絶対』だって」
目を閉じたまま、何処へともなく呟けば…部屋のあちこちから控え目な物音がカタッ、コトッ、と。
ふふっ、と、静かに笑って。
「…ね、リクさん。
リクさんのフルネーム、もう一回訊いていい?」
■ゲイゼリク > 「そうだねぇ、それも考えてみるかなぁ…。」
人材難は何処の師団もあるかもしれないが、人員が少ない分、負担が大きいのが困り者で。
彼女の意見に、それも手段かなぁと苦笑気味に頷いてみたりする。
既に上がアテにならないのは、彼女よりも更に身近で人間…正確には王国の上層部を見てきた事から男は半ばもう悟りの境地だ。
「勿論、俺が守れる範囲でってだけだけどね…俺の手は二つしかないし、個人の力は限界があるからねぇ」
守りたいものの取捨選択。何でもかんでも守れる程、世の中都合は良くないし甘くも無い。
なるべく多くのモノを守りたい、という気概や気持ちは応援するが男自身はそこまでのモノはない。
彼女と同じく、男も男で自身の赴くままに生きているだけで…今の立場も何もかもが過去の契約に従っているだけだ。
「俺はシャキッとするのは苦手だなぁ。マイペースにやるのが性分だし」
むしろ、この性格でも師団長の仕事を一応はこなしているのだから、ある意味器用である。
とはいえ、基本サボリ傾向が強く他の師団長に比べたら怠け者扱いされそうだが。
クローロの言葉に、真面目な空気も緩和されてついつい笑みが零れてしまう。
こういう空気は苦手でも嫌いでもないが、矢張り緩く気楽に行くのがゲイゼリクという男の基本なのだ。
「うーーん、紅さんも色々と種族的にもマレビトっていう立ち位置的にも複雑なのは何となく分かるけど。
…うむ、どー見ても美人さんだけどねぇ。ムードがあったら押し倒してるかも?」
と、笑って口にする。冗談めかしているが割とマジだ。このマレビトさんがイイ女なのは確定的に明らか。
別に口説いてるつもりはない…そういう性格である。ある意味で天然タラシかもしれない。
「そもそも、混ぜ物とかいうけど、だからこそ今の紅さんが居る訳じゃない?
だったら、無責任な意見かもだけど俺はありがたいけどねぇ…。
もし、そうじゃなかったらこうしてユル友とかになれなかったかもしれないんだし?」
これである。とことんマイペースで緩くありつつ、不意打ちでストレートに口にする。
これで無自覚、というか男は自然体であまり意識してないのでタチが悪いと言えば悪い。
そして、お互いジーッと見詰め合って。彼女が瞳をフと閉じてソファーに背中を預ければ緩く「おや?」という感じの表情を浮かべて。
彼女の言葉に、あちこちから物音が聞こえれば「おや、家の妖精さんにも聞かれてたか」と笑って。
そりゃ、普通に聞かれているだろう。彼ら、彼女らはこの家のあちこちに居るのだから。
「…ん?ああ、ゲイゼリク・ヴァン・アルカンシエルだけど…長ければミドルネームのヴァンは省略でいいよ…って、俺のフルネームがどうかした?」
■紅月 > 「ふふっ、そりゃそうだ!
あぁでも…ひとりひとりが皆、せめて真横にいるヒトだけでも守れたら。
きっと、哀しくならずに済むのに…なぁんて!
私も、マッタリのほほんとしていたいや」
どんなに世の中の苦さに揉まれても、どんなに治癒術を学んでも…この『御人好し』という末期めいた病は治らなかったらしい。
さらに言えば、当人に自覚が足りないから更にややこしい。
むしろ、この女の場合は『のほほんとして居られたが故の弊害』かもしれない。
子竜は、紅月の真剣な様子に真面目に話しを聞こうとするものの…まだ難しいらしく、しきりに首を傾げている。
「…っ!? お、押し、倒っ……」
あわあわ、と…色事にあまり耐性のない紅娘は、今度こそ湯気でも出そうな程にゆで上がってしまっている。
「……、…ありがたがられたのは、初めて、だなぁ…そ、っか、そっかぁ。
…えへへ」
まるで、褒められ慣れていない子供が珍しく褒められたような…嬉しいような気恥ずかしいような。
言葉を噛み締めるような、何とも言えない表情で笑う。
そして、彼が名乗ってくれている最中…ゆるりと目を開けば、ソファーから立ち上がり。
ローテーブルを回り込んで彼の隣へ行けば、彼の手にそっと触れて。
【……焔皇童子が末子、紅月は…
『ゲイゼリク・ヴァン・アルカンシエル』に、出来うる限りの助力を致しまする。】
再び、彼の瞳をじっと見据えながら…そう、誓いをたてて。
「…客将の件、謹んでお受け致しまする」
ふわり、肩の力を抜いて微笑みながら首を軽く傾けようか。
■ゲイゼリク > 「いーんじゃない。俺だってしょーじきこんな対立なんて放り出して魔族の国に美味い食べ物探しに行ったりしたいしねぇ。」
むしろ魔王化の能力で一度出向いているのだが、そこは流石にユル友には直ぐには話せない。
いずれ、魔王化の能力や”中身”についても彼女にはぶっちゃける時も来るだろう。
もっとも、勘が鋭い彼女の事だから…”中身”については、正体は分からずともゲイゼリクという人間が普通ではない、というのは察しているかもしれないが。
…ちなみに、緩い性格とかも有る意味で普通じゃないけどそれはそれである。
クローロにはまだ難しいようで、しきりに首を傾げている様子に頭の彼に片手を伸ばしてポフポフと頭を撫でつつ。
「……ふぅむ、紅さんって結構純情さん?」
と、ケラケラと笑いながら湯気でも出そうな勢いで火照ってるユル友を眺めつつ。
「んーー、さっきの魔族への印象でも似たような事を言ったけどさ。俺、差別とか敵対意識なんて異種族さんだろうがマレビトさんだろうが特に抱かないし。
それが美人さんなら尚更だしねぇ。…むしろお近づきにならないと男とが廃る!というか」
嬉し恥ずかし、という何とも言えない感じで笑うユル友に笑顔でそう付け加える。
”壁”というのものが根本的にこの男には無いのだ。勿論好悪の感情は相手次第では抱くけども。
だが、例え悪感情を抱いても相手の在り方や生き方を露骨に否定はしない。あるがまま、ありのまま。
俯瞰にして自然体。それが少なくとも”人間”ゲイゼリクの本質に近い。
「…お?…おぉ?」
と、こちらがフルネームを名乗る間に、こちら側へと回りこんできた紅さんに不思議そうに。
そっと触れられる手にどうしたんだろう、と思いつつも続く言葉にキョトンとした顔を浮かべ…
「…やーー、そこまで改まられるとこっちが照れ臭くなるんだけどなぁ。
まー気楽に行こうさ”紅月”。…あ、給金とか行動制限はしない、というのはちゃんと守るんで安心してなー?」
と、照れ隠し?かそう述べつつこちらも碧眼で見返して。第六師団に凄腕の治癒師の助っ人が加わった瞬間である。
「あ、えーと。特に服装とかも自由でいいし規則も大それたのはないけどさ?
城を歩き回る時はコレ、一応腕とかに巻いてくれると身分証明にもなるから助かる」
と、懐から取り出したのは一つの腕章だ。第六師団の紋章なのか「獅子と竜と山羊の頭」に交差する剣をあしらったそれ…キマイラをベースにした紋章らしい。
様々なモノが混じったキマイラ…色々な者が集い、様々な仕事をこなす意味合いでこれが採用された。
とはいえ、禍々しいデザインではなくそれなりにカッコイイ感じにアレンジはされているが。
彼女がよければ、その腕章を手渡しておこうと。これを付けていれば第六師団の一員、という事で変に咎められたりもしないだろう。
■紅月 > 「ふむん…?
紅があからさまに『それっぽい』から、一緒に行けば案外大丈夫じゃないかな?
…あっ、アチラの紅茶ならストックあったかも」
と、魔族然とした自分を指差しながら首を傾げ…ハッ、と、紅茶コレクションを思い返してポンと手を打つ。
紅月の方はと言えば全力全開でぶっちゃける…元々隠し事は苦手な気質、種族を明かして言霊を用いた誓いまでたてたら怖いものはない。
…特に今夜はさっきの今、何か訊ねればアッサリ答えそうだ。
ポフポフと撫でられた子竜はと言えば、嬉しそうに尻尾をピコピコさせて男に頬擦りしている。
「……う、うぅぅ…くっそう。
もうひとつの"形"の時であればあんまし恥ずかしくならないのに、どうしてこう…
あー、据え膳食わぬは男の恥…故郷にそういう言葉があるよ」
どこの国も男は男だねぇ、なんて苦笑しつつ。
やっぱりこのユルさが落ち着くなぁ、居心地いいなぁ…と、思うのだ。
「ふふっ、ケジメですケジメ。
あいな、後日正式に執務室に…って認識でいいのかねぇ?
…ん、キマイラ、かな?
城に行くのが楽しみになっちゃった、ありがとうリクさんっ!」
腕章を受け取れば、紋章をじっくり眺めながら指先でなぞるように触れて。
ぎゅっと腕章を掴んだまま、ぱあぁっと花でも舞いそうな程に嬉しげな笑顔を浮かべると…嬉しさのあまり、思わずゲイゼリクに抱き着く。
■ゲイゼリク > 「…ほぅ?…よし、紅さん。ズバリちょいと分けてくれ。金払う!!」
ほほぅ、という感じで目が光る。ちなみにポロッと口から漏れる可能性も高い緩さだ。
少なくとも、魔王化については彼女の種族とか改まった誓いを聞いた今では割と普通に話す可能性は高い。
クローロと会話の合間に戯れつつ。地味な所で子龍の兄貴分ゲージが溜まっている。
「…形?変身とかそういうの?…あーうん、その諺、だっけ?部下から聞いた事あるさー。
まぁ、無理矢理とかより雰囲気で押し倒すのが俺は好きだからねぇ…そういう場になれば張り切っちゃうけども」
まぁ、この男も緩さが際立つが男に変わりは無い。美女を抱きたいという欲求は健全だ。
とはいえ、何だかんだ理性的なのが緩さに隠れがちだが垣間見えるか。
「ケジメ、ねぇ?紅さんユルいけど結構律儀というか筋は通すタイプ?
…ん、そうそう王国騎士団の師団の紋章にしてはどうかと思う、とか言われるけどねー。
割とウチは訳ありとか異種族のハーフさん、ミレー族の子や異国の子も居るからさ。
”色んな人が交わっている”という師団の性質と色んな仕事を綯い交ぜでこなす、という意味に関連付けてのキマイラらしいさ。
まー、この紋章考えたのは俺よりもっと前の師団長さんらしいから詳細は分からないけどねぇ」
と、腕章を手渡せば手を引っ込めつつケラケラと。執務室には時間がある時でいいさ、と補足しつつ。
…で、嬉しさ極まったのか…紅さんに抱きつかれました。あ、スタイル良いですねユル友さん。
「紅さん大胆だねぇ…じゃあ、このまま添い寝とか膝枕して貰おうかなぁ」
と、楽しげに。流石にエッチは避けるがそれ以外は割と攻めて行きたい。
むしろ、こっちからも軽く抱き返してユル友の体温とか柔らかさを堪能中。
■紅月 > 「あらあら、まぁまぁ。
いや、むしろ今ある全種類少しずつ持たすから、好みの決めといてよ…執務室常備用に買ってくるから。
…他に魔族領のって言ったら調味料とスパイスかな、うちにあるのは。
アチラで会った吸血姫さん的には『料理は人間の文化』らしいよ?」
キッチンを指差しながら首を傾げる。
第六師団長御用達、魔界バイヤー爆誕の瞬間…かもしれない。
もはや、兄貴分の頭上はボクの指定席だ!と言わんばかりに、すっかり肩や頭上に落ち着いてしまっている子竜である。
…実は紅月はと言えば、男が肩凝り起こしやしないかと内心若干ヒヤヒヤして見ていたりする。
「…ん?そうそう。
紅は元々"どちらかの性を選べる"生き物です故、男にも化けられるの。
父上の熱い希望にて女として育てられはしたけれど…何だかんだ、冒険者としても上手く使い分けてるねぇ。
…街では面倒に巻き込まれない為に、男でいる事が多いかな?
ふふっ、確かに…雰囲気も何もないのは物足りないねぇ?」
じつは中性というトンデモ暴露が飛び出す…あくまで選べるのであって"どちらか"であるのだが。
故、当然、現在股間は平坦である。
「あい、やることキッチリやってから存分にゴロゴロしとう御座いまする。
…と、いうか、たまに『いい加減休め』って職場からポイってされまする。
わぁ!多種族揃った職場っ!
種族毎に治癒のコツが違うから、人種ごちゃ混ぜの方が鍛練になるんだよねぇ…ありがたやー!」
ニコニコ上機嫌に語りつつ…入団前から既に過労気味だった可能性をポロリと。
しかも、初めて聞いた構成員に更なるスキルアップを見出だし嬉しげですらある。
野良の鬼は"仕事の鬼予備軍"であった。
「ふふっ、そういえば膝枕の約束だっけね?
構いませぬよー?」
普段は誰にもあまり近寄らないわりに、実は結構人肌好きな紅娘…勢いとはいえ、せっかく引っ付いたのだからとそのままに。
クスクス笑みながらアッサリと膝枕を了承して。
■ゲイゼリク > 「え?いいの?じゃーお言葉に甘えようかなぁ。以前、タナールでちょっと魔王さんの一人と相対してさぁ。
まー俺が交渉して穏便に済ませたんだけど、その時に交渉に平穏に応じてくれたお礼にあっちのお茶の葉を貰った訳さ」
と、気楽に笑いながら言うが、そもそも魔王級と平和に話し合いで場を収める、というのは簡単ではない。
その辺り、当時の事情もあるのだが主にこの男の緩い性格が大きかったりする。
あと、紅さんはもう客将兼魔界バイヤーでいいんじゃないかな…。
ちなみに、クローロに関しては重いのか平気なのか男は平然としたままで。
むしろうりうりーと、擽ったり撫でたりしてめっちゃ可愛がっていた。
「へぇ、中性…って事でいいのかなぁ。そういう使い分けは便利かもねぇ」
男と女のそれぞれの側面を使い分けできる、というのは世渡りという意味では強みかもしれない。
まぁ、中性だからこその苦労というのもありそうな気はするのだが。
「あーー紅さん?張り切るのはいいけど、オーバーワークは駄目よ?
勿論、その辺り俺は制限する気は無いけどもし倒れたら強制看病だからなー?」
第六師団長直々の看病、ザ・一日中の刑に服して貰おうか。
彼女の過労気味の現状、というか今までを彼女の言葉からきっちり看破して苦笑気味に。
それでも、行動制限は矢張りしないのは甘さか彼女への信頼か…。
「うーい、じゃーよろしくー。何か良い感じに眠気も来たしねぇ」
クローロには悪いが、一度頭の上からヒョイッと下ろして抱きかかえる。
そして、名残惜しいが紅さんから一度身を離し…そのままポフンッとその膝に頭を乗せようか。
ちなみにクローロはお腹の上に乗せておく。既に男は目を閉じており。
「じゃー紅さん…少ししたら…起こして…くれなーー。…あと…客将の件…ありがと…さ…。」
と、最後までお礼を言い終える前に静かな寝息が聞こえてくるか。
そのまま、彼女の膝枕にてすやぁ、と仮眠を。無防備全開なのは彼女への信頼の現われだ。
きっと、彼女が適当な時間に起こしてくれるまでは深い眠りに落ちていただろう――。
ご案内:「平民地区 不思議な民家」に紅月さんが現れました。
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ご案内:「」に紅月さんが現れました。
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■紅月 > 「魔王と、交戦じゃなく和睦…いいなぁ、理想的。
ん~、せめて茶葉の缶やパッケージが残ってれば探しやすいんだけどねぇ…?
家に同じ茶葉あればいいんだけど」
今度、魔界の紅茶全種類コンプしてやろうかしら…なんて呟きが、ポロリ。
欲しいと思ったら手に入れる…変なところで魔族らしさを発揮。
最近天馬が仲間になったから旅しやすいし、多分気が向いたら気紛れに色々仕入れて来るだろう。
それにしてもこの子竜の懐きようである。
…出勤の際は連れていく事にしよう、と密かに心に決める。
「ふふっ、とりあえず温泉宿で全温泉をコンプできるのが目下の利点かな…?
後はアレだ、いろんな依頼に対応できるから食うに困らない」
実に楽しげに、アッサリと宣う。
…さすがに『変装ごっこが地味に楽しい』とは言えず、なので他の理由を言ってみたのだった。
「え、何でこの間倒れたの知って…る訳じゃなかったのねハハハ」
思わず顔ごとそらす、この気まずさよ。
ゲイゼリクにじっくり看病されるのも遠くなそうだ。
「…ふふっ、紅にお任せあれ、なぁんて、ね?」
己の膝でゆっくりと休む団長殿。
クスクス、と笑んで…寝てるのをいいことに、髪を撫でてみる。
…紅月までうっかりウトウトしていたのは、彼女と妖精たちのヒミツである。
ご案内:「平民地区 不思議な民家」から紅月さんが去りました。