2018/07/10 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート エマヌエル教会/私室」にリータさんが現れました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート エマヌエル教会/私室」にバルベリトさんが現れました。
リータ > 教会の扉は深夜を迎えるまで開いている。
闇の中に迷い込んでしまった人の目印になるようにとの理由であったが、
今宵の訪問者に関しては聖堂を抜け、関係者以外は通らない廊下を歩き、
生神女の私室まで案内されることになる。
何故なら、彼は王国を守る重要な役職にいる1人だから。
それなりの対応をすべしとの判断がなされた。
詮索する様な質問も、不穏な武器所持の確認もなく、すんなりと奥まで入ることが出来るだろう。

案内役の修道女が軍人である彼の前を進み、私室に辿り着いたところで中に声をかけると、少女はすぐに扉を開ける。
室内には既に紅茶の香ばしい匂いが漂っていた。

「当教会指導者のリータです。お見知りおきを、師団長様。」

指導者と呼ぶにはいささかあどけない少女は、想像より訪問者の背が高く大柄だったので顎を上げる。
緩やかな笑顔を向け、挨拶もそこそこに室内へと案内する様に
先んじて部屋の奥に戻り、皿やカップをテーブルに並べ。

バルベリト > 軍事的な意味で宗教を扱うつもりは微塵も無い。ただ、先日。部下にして諜報担当の一人から興味深い報告が上がってきていた。
曰く、ヤルダバオートの名のある教会の主とも言える少女が王都で切々と神の救いや存在について説いていたこと。

これだけならば特に目立つ報告でもないのだが――足をとめる民衆が一定数いた事。
少女の声には一定の真理ないし真実が宿り、それが人を引き寄せたのではないのか。であれば――少なくとも今揺れている己にとっても、少女の話と言うのは何かしら。方向性を見出す一つの助けになるのではないか。

そう考えて余り良い手ではないが、第八師団長としての名前を出した上で少女、リータとの面会を求める正式な書面を起こしたのだった。
それが数日前のこと。驚くほど迅速にそれは認められ、、武器所持の確認等をさせては相手にとっても負担だろうと思ったが――それらすらなく、すんなりと通された。

「あ、あぁ。お初にお目にかかる……ります。第八師団長、バルベリトと申します。この度は急な申し出にも関わらず、このような場を設けていただき感謝に堪えません。」

入り口を開くと鼻腔を擽るのは紅茶の香りだった。
顎を上げて此方を見てくる少女は緩やかな。そして今の情勢にも関わらず穏やかな――人を安心させる笑顔だった。
こちらの緊張感や対話する相手を緊張させる事もないだろう、華やかな笑顔と言って良い。

案内役の修道女に礼を向け、室内の少女に改めて頭を下げると部屋の中へ。
少女に続くようにして室内に入ると、少女にだけお茶の準備をさせるのも申し訳が無く。椅子の角度や、何か手伝える事が無いかと尋ねながら共に茶の準備を。そして――準備が終われば先に少女が座ってから自分も座ろうとするか。

「夜分遅くに申し訳ないな。――あ、いや神についてというか――リータ殿が先日、市民に向けていた声というか話の内容に興味があって。それで、肩書きを遣わさせてもらったが――悪い、疲れてたりはしないか?」

少女は多忙な立場であろう。まして華奢とも言える体つきだ。
指導者としての激務も考えれば自分の為に時間を割いた今が無理をさせていないか流石に不安の一つも覚えてくる。尋ねながら、紅茶のカップのすぐ脇に小さな包み紙。
中には手作りではあるが小さな一口大のクッキーが入るそれを添える。

リータ > 表向き、警戒のない教会側だったが無知な生神女はともかく周囲の大人は疑り深い者もいる。
彼ら曰く、第8師団長は己とかなり年が離れた大人の男性であるとの情報だったが、
どことなく緊張しているというのか、横柄にふんぞり返っていたって
誰も文句を言わないのに気を遣う様子が情報とちぐはぐで、少女は少し可笑しかった。

腰を落ち着けると、ますますこちらに気を遣っているのが伝わる言葉をかけられ、きょとんと。

「それでは今夜は軍のお話ではないのですか?
 …てっきり私は難しいお話をなさるのかと思っておりました。
 私はここ以外のことに明るくないものですから、的確なお返事が出来るのかとドキドキしてました。」

肩書を使っただけの、プライベートな事情で来たのだと知ると心なしか安心した様に。
疲れていないかとの問いには首を左右に振る。

「師団長様こそ、今はお忙しいのではありませんか?」

魔族との戦争は王都から離れた土地でも人々を賑わせている。
穏やかな空気に相応しくない話題に、一瞬少女の眉は緊張感を帯びたが、
思わぬお土産に添えてくれたクッキーに、その表情も一転、綻んだ。
教会で用意しておいた茶菓子もあるが、資金の乏しさが見える様な質素な物しかない。

「まぁ、有難う御座います。奥様の手作りですか?」

バルベリト > 緊張感が透けたのは、結果的には良かったのだろうか。
少女の続けた言葉と、ほんの少しでも安心したかのような言葉からの力の抜け具合を察知でき――釣られた様に自分も、笑みは浮かぶ。
近頃の緊張感と疲労から解放されるかのような、力の抜けた――どこか緊張感から解放されているように、頬も緩んではいる。
それは淫らな意味の緩み方ではなく、安心した緩み方だっただろう。

「あー。いや、俺もそういう難しい話は苦手なんだ。
それに、教会にしても、宗教にしても。人心の拠り所だろ?出来る限りそういう場所に、こう、なんていうか…血生臭いっていうか、人の心を乱すような要素は持ち込みたくなかったしな。」

クッキーに綻ぶ少女の顔は、代表者という肩書きよりも歳相応の少女の顔に見える。
――本来はそれが望ましいとも思う。どんな職責を担う事になろうとも。人の心を癒す事の出来る要素は、自然な笑顔なのだとも思えるから。
紙袋をあけると漂った甘い香り。甘さを連想させる香り付に、アルコールを飛ばしたリキュールを一滴垂らして香りと味に少しだけ工夫を加えたもの。

「不真面目な師団長って見ない人は何時振りだ…?くっ、目頭が。
あぁ、それと俺は独身。おっさんの手作りなのでありがたみは無いかもしれないけど、良ければ暇な時にでも食べてくれ――っていっても、なんとなくリータ…殿は信徒の皆で少しずつ分け合いそうな気がするけど。」

本当は軍事とか軍備とか。それに掛ける金銭は、少ない方が良い。
こういう場所にこそ、少なくとも悪意と隔絶されたような空間にこそ支払われても良いとさえ思う。
ただ、今はそれが出来る状況じゃない事に歯噛みをするしかない。だから少ない、乏しい資産でも決して文句や不平を言わない彼女達には尊敬の念は忘れなかった。

「んーと、本題……なんだが。凄い抽象的な質問で悪いんだが。神様っていうのは、例えばだぞ?人間と魔族が、分かり合えるというか――種族の垣根を超えて、力の差こそあれど手を取り合うっていうのは――祝福してくれるような存在なのかなってな。そういう所を聞いてみたくて。」

立場的には大っぴらに聞くのも憚られる。
国は魔族の脅威に晒され、今治安が悪化している原因の一つも、引き金は此方側が引いたとはいえ魔族にあると信じている民衆も少なくない。
そんな状況で、他人が耳を欹てているかもしれない中では聞けない話を。
善良に見える少女に向けて、尋ねてみた。